なんだかんだって結局なんだった?|路上実験イベントなんだかんだレポート

3月30日、4月1日に開催された路上実験イベント「なんだかんだ」。
「あたらしい神田の縁日をつくろう!」をテーマに、
ご近所の方やゆかりのある方が集まって
あたらしい出会いや体験を楽しむ場がたくさん生まれました。​​

路上を実験するイベントということもあり、
普段は見られないようなあんなことやこんなことが次々と起こった二日間。

果たして「なんだかんだ」とは、一体なんだったのでしょうか?
神田の一角で生まれたさまざまな光景をレポートでお届けします。

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▶︎SCENE 1
街の人の協力があれば、路上に畳をたくさん敷ける

なんだかんだの大きな求心力となった畳たち。
路上に敷くなんて、おそらく畳も驚いたことでしょう。
前代未聞のチャレンジングな試みでしたが
町会や警察署の協力により実現しました。

畳を敷けることになったものの、広〜い路上に敷き詰めるとなると一大事!

かと思いきや、
畳を待ち構える行列が。
ボランティアの学生のみなさんの出動により
瞬く間に敷かれていきます。
特に打ち合わせしていないのに、きれいなまでの流れ作業。
すいすいと敷かれていく様子はもはや心地よい。
おかげで100枚以上の畳が数分で設置完了!

作業はあっという間でも、みんなで敷くと達成感もひとしおです。
たくさんの準備ののち、いよいよ舞台が整いました。

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▶︎SCENE 2
畳を敷くと、〇〇が起きる

畳を敷いてみると、
あちこちでさまざまなことが起きていきました。
街中に畳があるという光景は、日常ではそうあり得ない不思議なものですが
すんなり馴染んでしまうのは神田の土地柄か、畳のパワーか。

畳を中心に繰り広げられたあれこれをダイジェストでご紹介します。

畳に入ってしまえば、路上でも周りを気にせず無になれる。
畳の上では、赤ちゃんも身を委ねてのびのびできる。
畳を敷けば、ギャラリーがお茶の間になる。
畳でかるたは当然に盛り上がる。
畳で書道は当然に落ち着く。
畳があるとおしゃべりが弾む。
畳があると、読み聞かせに集中できる。
畳に茶道の精神が揃えば、結構なお手前をじっくり楽しめる。
畳があると、身体をめいっぱい使って踊れる。
畳なら、こんなに大胆になっても大丈夫。
畳をフロアに、DJプレイができる。
畳のそばに脱いだ靴が並ぶと、
誕生日会で同級生たちが家に来た日みたいでわくわくする。

屋外なのに、いや屋外だからこそ
ポテンシャルがおおいに発揮された畳。

畳には、懐かしくほっとする心地よさと
あらゆることを受け入れる懐の深さがありました。

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▶︎SCENE 3
道のたのしみ方いろいろ

なんだかんだは、神田の道のおもしろい使い方を考え、
あたらしい出会いや体験の場となることを目的とした
「実験イベント」​​ということもあり、道の使い方も実にさまざまでした。

ここから道の様子をご紹介。

通り沿いのビルも使って、ダイナミックに演劇ができる。
みんなの視線を感じつつも、プロに写真撮ってもらえると嬉しい。
文房具が並んでると、なんだかときめいて引き寄せられる。
道路の袖に芝生があればモルック大会が開催できる。
サウナチャンピオンだって開催できる。
道端で右ストレートを披露すると拍手がもらえる。
道にお店が並べば、あっという間にお祭りムードになれる。
道端で、超老舗店にふらりと出会えるとより嬉しい。
道路の上でも神社は出張できる。
竹尾の紙絵馬が並ぶと道が華やぐ。
路上であっても、全身を委ねるハンモックは気持ちいい。
最先端のモビリティに乗れば、優雅に神田の街並みを楽しめる。
道端でも工作大好き。
ちょっと開けた場所には即席でプレーパークだってできる。
道の一角でも神輿を担げばたちまち熱気に包まれる。

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神田の道の上が一人一人にとっての
「あたらしい出会いの場」になってほしいという思いではじまったなんだかんだ。
たった二日の出来事でしたが、同時多発的にこんなにもの光景が生まれ
あたらしさとうれしさが溢れる場だったように思います。

なにより路上でたのしいことが起きていると、
歩くたびにたのしい光景がすぐに目に飛び込んできて
街自体がその空気に包まれていきます。

たのしいことを考えて披露した皆さんと、たのしく過ごす皆さんが出会う様子に
たくさん触れることができた、なんだかんだでした。

Text: Akane Hayashi(BAUM LTD.)
Photo: TADA(YUKAI), Mariko Hamano

なんだかんだ ふたりの町会長と街あるき

2023年3月31日、4月1日に開催がせまる路上実験イベント「なんだかんだ」。
神田ポートビルと神田スクエアを会場に、神田の道のおもしろい使い方を考え、たくさんの人をつなぎ、あたらしい出会いや体験の場をつくります。

ふたつの会場は歩いて5分ほどと行き来しやすい距離ですが、当日はそれぞれの会場を巡回をするモビリティが登場。モビリティに乗って風景を楽しむのもよしですが、街の歴史を感じながら回るともっと楽しいのでは?
ということで、イベント開催に先立って町会長による神田の街歩きツアーを決行。
春の訪れを感じる陽気に、どこか色めき立つ街をぐるっと巡りました。

当日お越しになる方はこのレポートとともにお楽しみください。

〜案内してくださった人〜

〜なんだかんだ 会場MAP〜

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学士会館の前に参加者の皆さん集合。
この日は5月くらいの暖かさで、絶好のお散歩日和です。
前田町会長が用意してくださったガイドを片手にいざ出発。
錦町コーデでいらっしゃった前田町会長。
隣りの大きなブロンズ製のモニュメントは、「日本野球発祥の地」の碑。
かつてこの地にあった第一大学区第一番中学で
アメリカ人教師が学生に野球を教えたのが始まりだそう。
この日は日本中が湧いたWBC優勝直後ということもあり、石碑も一層輝いて見えます。
学士会館の建物は、1928年に竣工したもの。
ドラマ「半沢直樹」で土下座が行われた部屋があり、中も立派です。
いまでこそきらびやかな印象ですが、
火災や震災による2度の全焼を経ていまの姿があります。
さらに学士会館をぐるっと回っていくと…
生垣の間に「東京大学発祥の地」の碑と
新島襄生誕の地の碑が。
このあたりはかつて蕃書調所(江戸幕府直轄の洋学研究教育機関)があったり
上州安中藩の江戸上屋敷だった背景があったりと、
あらゆる物事がはじまった地である学士会館。
学士会館を後にし、桜を横目に神田警察通りを歩いて行きます。
通り沿いにある神田税務署は、かつて錦輝館という大規模な多目的会場があり、
1897年に東京で初めて映画上映が行われた場所です。
(税務署からは到底結びつかない歴史…)
当時は三等席でも盛りそば11枚相当の料金だったのだとか。
こちらは東京電機大学の創立者でもある、
廣田精一​​が立ち上げた電気科学系出版社のオーム社。
紙の専門商社の老舗、竹尾も100年以上神田錦町に本社を構えます。
一見ビルが並んでいるように見えますが、実は古くから高校もあります。
こちらは1896年創立の正則学園高校。部活動が盛んで、最近は花いけ男子部が有名。
そのお隣には錦城学園高校。1880年に創立し、1889年に神田に移転しました。
100年以上もの歴史を持つ場所が次々と現れる驚き。
そしてなんだかんだの会場、神田スクエアに到着。
この石はもしかして…
電機学校(後の東京電機大学)発祥の地の碑でした。石碑多し。
日本で初めてテレビの公開実験が行われたのもここなのだそう。
一方で、町会長たちが子どもの頃はここがラジオ体操の会場だったとか。
野球、大学、テクノロジーと発祥のジャンルが多岐にわたる神田錦町、奥が深い。
続いて神田スクエアからすぐの老舗そば店、更科へ。
ランチタイムが明けたばかりのお店を抜けて堀井町会長が合流です。
更科の前にあるビルもかつては映画館で、
神田の町にはどこにでも一軒は映画館があったのだそう。
神田錦町三丁目にあった「南明座」という映画館は
そのさらに昔、南明館という勧工場​​(百貨店の前身のようなもの)で
↓のような立派な建物があったようです。見てみたかった…
『風俗画報』増刊 第193号「東京名所圖會 神田區之部 上巻」
(明治32年7月25日発行)
堀井町会長はアドリブの案内スタイル。ずんずん紹介してくれます。
ビルの隙間にひょっこり現れる五十稲荷神社。400年(!)以上鎮座する神社。
なんだかんだでは、神田スクエアに出張所をつくり、限定御朱印スタンプを行います。
左にある社殿・社務所は、次の100年に向けて2021年に建てられたのだそう。
やはり神社は見据える時間のスケールがすごい。
なんだかんだのポスターも貼ってくれていました。
神田スクエアの方へ戻ります。
敷地内を見ると、ここにもひっそりと豊川稲荷がありました。
明治時代にこのあたりで立て続けに火災があり、社殿も荒れ果てていたところを
町内の有志が集まって清掃修復を行い、以来残り続けているそうです。

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徒歩5分圏内をあちこち巡ってあっという間に1時間。
町会長のお二人の話には、この街に生まれ育ち、これからを考えているからこその想いが溢れていて、歩いたり調べただけではたどり着くことができない、街の一面を見ることができました。

ツアーの最後に、堀井町会長がこうお話ししてくださいました。
「当時の街の商人は、あらゆるものに神が宿ると考え、植物から建物まで街にあるものすべてを大切にしていました。時代とともに街の風景は変わっていきますが、いまの時代の人にも街を大切に思う気持ちは変わらず持ち続けて、もっといい街にしてほしいと思いますね」

街の歴史は自然に積み重なるものではなく、実際に過ごし、残し、語り継ぐ人の存在が欠かせません。
街のみなさんとあたらしい出会いや体験をつくる「なんだかんだ」も、神田の歴史をつむぐ特別な日となりますように。ぜひお誘い合わせの上、お越しください!

Text: Akane Hayashi(BAUM)
Photo: Yuka IKENOYA(YUKAI)

路上実験イベント なんだかんだ

なんだかんだと、かんだはあたらしい。

神田の道の上で、 縁日のようなイベントを開きます。
金魚や、風鈴、綿菓子……縁日で、何かをお土産にするように、
神田の路上に開くオープンなスペースから、体験や出会いを持って
帰ってもらいたいです。

たくさんの人が、いい体験をした、いい時間をすごしたと思ってくれたり、
好きなもの、好きな人に出会えたと嬉しくなるように、準備しています。

もちろん、たくさんの人にきてほしいです。
でも、人がたくさん集まれば集まるほど、イベントは「大成功!」なのでしょうか?
「人が集まる」ということをコロナ禍のなかで長い時間、考えていました。

せっかく集まるのですから、なんだか盛り上がっておしまい、ではなくて、
神田の道の上が一人一人にとっての「あたらしい出会いの場」になってほしいです。

ぜひ、お誘い合わせのうえ、お越しください。

会期
2023 年 3 月 31 日 ( 金 ) 11:00-19:00 / 4 月 1 日 ( 土 ) 11:00-18:00
会場
神田ポートビル(東京都千代田区神田錦町 3-9)、神田ポートビル前道路、
神田スクエア(東京都千代田区神田錦町 2-2-1)、五十通り 他

特設ページはこちら▼
https://nandakanda.jp/

参加作家/団体(※五十音順)

▼神田ポートビル

石澤宗彰(息継庵) / 画材循環プロジェクト 巡り堂(みずのき美術館) / 共立女子大学 建築・デザイン学科 藤本ゼミ / 熊本千絵(Però) / サウナラボ神田 / SayakaMiyauchi / シアターカンパニー・カクシンハン / 篠崎芽美 / 立ち喰い梅干し屋 / とくさしけんご / TOBICHI 東京 / 中川りえこ(Raw) / 仁科勝介 / 日本ユニバーサルモルック協会 / 就労継続支援 B 型事業所ハーモニー / 星野概念 / 株式会社ほぼ日 / マガジンハウス <こここ> / マグ万平 / やついいちろう / 株式会社ゆかい

▼神田スクエア

Warehouse 北欧紅茶 / ON プラス / 神田古書店連盟 / 五十稲荷神社 / 世田谷ファームランド / ソーシャルグッドロースターズ / 株式会社竹尾 / 千代田区商店街連合会 / 東京都市大学 都市生活学部 都市空間生成研究室 / 豊島屋酒店 / ブックハウスカフェ / Marcomar japon / 野美屋 / Linio

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主催
神田プレイスメイキング実行委員会
○ 実行委員長 中島伸(東京都市大学 都市生活学部)
○ 幹事 小川町三丁目南部町会、神田錦町二丁目町会、千代田区商店街連合会、錦町三丁目町会、錦町三丁目第一町会
○ 事務局 渡部裕樹(事務局長、株式会社日建設計総合研究所)、田紳華(株式会社日建設計総合研究所)
○ 実行委員 住友商事株式会社、株式会社日建設計総合研究所、安田不動産株式会社、 株式会社ゆかい、ヤマハ発動機株式会社、バカンス株式会社、4FRAMES
○ クリエイティブディレクター 池田晶紀(株式会社ゆかい)
○ アートディレクション 広岡ジョーキ
○ ロゴデザイン 大日本タイポ組合
○ アートワーク 渡辺明日香
○ ネーミング 糸井重里(株式会社ほぼ日)
協力
共立女子大学、東京都市大学、神田古書店連盟、株式会社共同製作社、五十稲荷神社、サウナセンター、株式会社サウナラボ、スカイスパ横浜、株式会社精興社、株式会社竹尾、タナカカツキ、田中啓介、Nikken Wood Lab、ブックハウスカフェ、星野諭、株式会社ほぼ日
後援
千代田区、東京文化資源会議

神田未来妄想談義 at ちよだプラットフォームスクウェア

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さまざまなオフィスビルが立ち並ぶ神田の街に、日本におけるコワーキング文化の先駆けとなるシェアオフィスがあります。
その名も「ちよだプラットフォームスクウェア」。「シェア」という言葉がまだ新鮮味を帯びていた2004年、神田錦町3丁目に誕生しました。以来、新たなビジネスや文化を生み出していくための拠点として、多様な人や地域と混ざり合う場所となっています。

そんなちよだプラットフォームスクウェアは今年で創立17周年。シェアオフィスとしてはベテランですが、人間でいうとまだまだフレッシュな年頃。新型コロナウイルス感染拡大が様々な影響を及ぼす中、シェアオフィスとして街の一拠点として今後どうあるべきか、ひいてはこれからの神田の街や都市のあり方、一人ひとりの働き方がどう変化していくのか、重要な岐路に立たされているとも言えます。
そうした未来について、シェアオフィスらしくさまざまな人とオープンに模索するべく、神田にゆかりのある方々が集まって鼎談会が開催されました。

ゲストとして登壇されたのは、元東京都副知事であり、都市政策を研究する青山佾さん(明治大学名誉教授)、2020年秋に神田錦町にオフィスを移転された糸井重里さん(株式会社ほぼ日 代表取締役社長)、神田淡路町や錦町のまちづくりに取り組む須川和也さん(安田不動産株式会社 常務執行役員)。
そしてちよだプラットフォームスクウェアを運営する丑田俊輔さん(プラットフォームサービス株式会社 代表取締役社長)をモデレーターに、まだまだ試行錯誤の途中にあるこれからのオフィスや街について、その答えに近づく一歩として、さまざまな立場や視点から考えを深める場となりました。

神田の知られざる魅力やポテンシャルの話に始まり、これからの暮らしや街のあり方にまで幅広く展開されたこの談義。いくつかのトピックとともに今後のヒントとなるお話をご紹介します。    

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●意外と知られていない神田のあれこれ

まずは、ゲストの方それぞれ研究者、クリエイター、デベロッパーという全く異なる立場で神田と関わっているということもあり、各々から見た神田の良さについて語りました。

1.街自体が人懐っこい

2020年秋にオフィスを移転したばかりの糸井さん。神田に来てまだ日は浅いですが、街を歩いていると気さくに話しかけてくれる人が多いようで、この日もご近所の方がたくさんいらしていました。

「そういう身近なやり取りがあることで地域を感じるというか、街自体が人懐っこいですよね。自分はこの場所の人間なんだと思える理由がたくさんあるなと思います。
それに、神田は人が暮らしている匂いがちゃんとする。移転を考えたのも、人の日常や生活がある街に会社を構えたかったからなんです。だから思っていた通りで、毎日やってくるのが楽しみなんです」(糸井さん)

2. 意外と近くて、意外と広い

続いて都市計画に関わる須川さんと青山さんは、神田には地理的なおもしろさがあると言います。

「神田という言葉から思い出すのは、JR神田駅周辺が多いと思います。でも実際に来てみると、神保町や錦町、それから駿河台も秋葉原も全部神田です。かなり広いし、場所によって性格も異なっていて、そのあたりは何度訪れてもおもしろいと感じます」(須川さん)

「向かう方角によって景色が異なりますが、まさにそこが神田の良さですよね。大手町も東京駅も歩いていけますし、秋葉原や御茶ノ水も意外と近い。他のメジャーな街でも、駅から5分歩くともう商店街が途切れしまうといったことがありますが、神田はさまざまな街につながっている。この実力を生かしてくことが、さらに神田の魅力を高めると思いますね」(青山さん)

「神田には長い歴史があって、広い地域の中にいろんな要素がたくさん残っている。神田に含まれるそれぞれの地域の人たちが連合国のように自分は神田の人間だと思っていると逆にポテンシャルとなるんじゃないかなと思いますね」(糸井さん)

●まだまだある、神田ののびしろ

人々の生活が根付いているからこそ、各地域の個性が立っている神田。一方で、まだまだ活かしきれていないポテンシャルがあるようです。

1.23区内でも圧倒的に広い道路

青山さんは、都市計画の視点で東京の他のエリアにはない神田のポテンシャルを指摘します。

「神田に長く関わる中で、いろいろいじった方がいいと思うことの一つが道路。まず神田地域は道路面積率がとても高いんです。東京の23区に占める道路面積の割合は16%ですが、千代田区は圧倒的に高くて28%ぐらい。そういった状況なので、私が参加している神田駿河台まちづくり協議会では、15cmずつ歩道を広くしてきました。やはり人が歩きやすい街になると神田のこの一体性がさらに増すので、そういったことを考えていかなくてはいけないと思いますね」(青山さん)

2.鮭理論と学生寮

神田淡路町のエリアマネジメントにも関わる須川さんは、ワテラスという施設での取り組みを通して期待されていることがあるようです。

「2003年問題が騒がれていた頃、神田の中小ビルからもテナントがいなくなってしまうのではないかという話があり、そうした中小ビルをコンバージョンして学生マンションに転用しようということを考えていた地元の方がいらっしゃいました。その考えを基にワテラスに学生マンションを導入しました。このあたりは大学が多いので需要も見越していましたが、主な狙いとしてあったのは10年20年と長期的なタームで考えて、街にゆかりを持った学生を増やすこと。鮭理論と呼んでいましたが、鮭が生まれ育ったところにまた戻ってくることと同じ発想です。

学生が関われば、神田の賑わいにも資するんではないかと考えて、ここに住む学生は街の取り組みに参加してもらうようにし、自主イベントも盛んになっています。OBOGも増えてきて今後何らかの付き合いができることが楽しみです。息の長い話ではありますが、こうした取り組みは大事だなと感じていますね」(須川さん)

3.観光地としての要素

糸井さんは、外からの目線で、神田の見え方、魅力の伝え方をお話くださいました。

「引っ越してきてから遊びに来てくれる友達みんな、来てみたらいい街だねって言ってくれるんです。特別な場所に行ったわけじゃないけど、ぶらぶらしてるだけでこの街ならではの雰囲気を感じられるというか。観光地的な側面を神田が持っているんじゃないかと思います。
その理由のひとつとして考えているのは、家賃を払わなくていい人が多いので、利益にそこまでガツガツしなくていいところがある。そういう人たちが混じっていることでできている雰囲気なんじゃないかって思うんです。

一方で、利益を出そうとすることで、外の人の行き来がたくさん増えていいんじゃないかとも思いますね。ポツポツとでも人が集まる観光地が混ざらないと、やっぱり街として伸びない。それはどの場所も同じで、ちょっと神田にいってみようかという観光の要素がこれから大事かなと思っています」(糸井さん)

オフィス街としてのこれから

オフィスビルが集積する神田の街。住む人よりも働きに来る人が多い中で、働く場としてどうあるべきか。登壇者の皆さんが仕事の場として何を感じているのかお聞きしました。

1.質的に異なるオフィスのニーズが増える

そもそもオフィス全般の話として、実際のところどういった状況になっているのか。須川さんと青山さんから意外なお話が繰り出されます。

「コロナウイルスの影響でオフィスが今後どうなっていくのか、まだ何とも言えません。現状としてはオフィスを退去したとしても、同じエリアの別の場所に移転したり、増床するケースもあります。
リモートワークの便利さを受け入れつつ、コミュニケーションの質が見直されているように思います。やはり仕事においては他の人がどういった顔をして話を聞いているかだったり、なかなか言葉で説明できないようなノウハウが大事なので、オフィスがまだ減っていない状況につながっていると思います」(須川さん)

「リモートワークの浸透でオフィスの需要は増える要素の方がちょっと多いんです。なぜかというと、再びオフィスに人が集まるというときに、換気対策をきちんと取る必要が出てきます。天井を高くして、部屋の空気のボリュームを増やし、換気を良くする、といったことが求められるので、より床面積のあるオフィスビルを建てなければいけなくなりますよね。リモートワークが進み、地方移住する人もいますが、東京都心のニーズが減るわけではなくて、むしろ質的に違うニーズが求められているんです。なので、これまでとは異なるビル、あるいはマンションを提供していくことが必要になる。常に時代に合わせて、質的な変化に対応していくまちづくりが必要だということを強調しておきたいと思います」(青山さん)

2.コロナに問わず感受性を引き出す環境をつくる

そうしたオフィスの現状を受けつつ、糸井さんはぶれずに考えていることがあるとお話しします。

「コロナはあまりにも大きいニュースだったわけですが、だからこそ足をすくわれないようにしようと考えてましたね。どんな時代でもやりたいことは変わらないと思って、人が元々持っている力や感受性をどう引き出せるかということばかり考えていた気がします。
いまのオフィスはフリーアドレス制になっていますが、コロナは関係なくやろうと思ってました。交じり合うことがすごく大事だと思っていたので。ただ、人って自分の場所というのを確保しないと嫌なので、ロッカーだけは個別に持てるようにして、プロ野球にあるようなロッカールームをつくりました。
結果としてコロナの時代に合っていたかもしれないんですけど、人の快適さをどんな時期でも考えようと思っていたのがよかったような気がしますね」(糸井さん)

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2時間の談義は、縦横無尽にお話が繰り広げられて、あっという間に終了時刻に。
最後は参加者の皆さんへ、同じ神田に関わる立場として問いかけしていただき締めとなりました。

「神田はこうした都心で、元々住んでいる人がいまでも多く商店や事業を営んでる一方で、大学や企業が立地してるというとても珍しい地域。まずそういう良さをこれからに生かしていくということが大切だと思います。すでに神田地域の勉強会なんかは、街場の人が積極的に発言できる場として機能しています。必ずしも既存の法律や都市計画の手法ではない、民主的なまちづくりがもっとできるように、神田から発信していきたいと思っています」(青山さん)

「この神田のエリアでまちづくりは、基本的に地元の方々が集まって膝をつき合わせながら話をします。ただ、この街には住む人の他に働く人が非常に多く、街に関わる存在ですので、企業にも意思表示をするような機会があるといいのでは思っています」(須川さん)

「神田の街にはまだ足りていない部分もあるけれど、そうした要素も前に出していくことで応援したい人が増えていくんじゃないかと思いますね。何かのモデル地域になるというか、神田ができたんだから自分たちもできると思ってもらえるような可能性を持ちたいですね。神田から世界に問いかけることは、僕らいくらでもできるような気がします」(糸井さん)

神田の良いところも悪いところも赤裸々に語られた今回の談義。歴史が深く、確立されているようにも思える神田ですが、お三方それぞれの視点でこの街の可能性が語られました。

この日の談義は街の歴史にとっては束の間の出来事かもしれませんが、さまざまな視点からオープンに語られ、それをさまざまな人と共有できたひとときは、新しい神田につながる瞬間に立ち会えた気がしました。そしてこの話の続きは、これから街で体感できるのかもしれません。

オープンカンダでは、これからも街の会話に耳をすまして、神田に眠るさまざまな発見をお届けしていきます。

Text: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI)

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