障がいや病気があっても旅を諦めてほしくない。「ume, yamazoe」から広がる旅の未来|こんなだった、なんだかんだ6

「日常と違う場所に飛び込む」ことは、旅でこそ味わえる楽しみの一つ。
ですが、障がいや病気がある方にとってはそれがハードルにもなり、日常と違うけれど飛び込んでも大丈夫だと思える場所は選択肢が非常に限られてきます。

そうした現状を変えるためには、設備やサービス、制度などさまざまな面のあり方を考える必要がありますが、独自の取り組みをしているのが、奈良県東部の山添村にある宿泊施設「ume, yamazoe」です。障がいや病気がある方とその家族に向けて旅の選択を増やすことを目指した「宿泊招待 HAJIMARI」という名の取り組みは、山奥の小さな宿から少しずつ反響を呼んでいる現在。どのようにして不安をほぐしながら、旅の楽しさを届けているのでしょうか。

今回はume, yamazoeを運営する梅守志歩さんとHAJIMARIのメンバーとしてともに取り組む桂三恵さんをゲストにお招きし、取り組みへの想いや課題、これからについてをお話しいただきました。
題して、「なんだかんだ6 〜ume, yamazoeの取り組みいろいろ聞いてみようか 〜」の開催です。

この日はume, yamazoeがある山添村の山で取れた葉っぱや、お茶を煮出して作ったロウリュ水を用意したスペシャルサウナも実施。奈良名物の飛鳥鍋も特別メニューとして用意し、山添村を肌と舌で感じながらトークの時間へ移ります。

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●障がいや病気がある方の、旅への気持ちをほぐす

ume, yamazoeがあるのは奈良県山添村。コンビニもスーパーもなく、85%が森林、15%が住居といった自然に溢れた集落にあります。築100年以上の建物を使った宿は、段差や坂道が多くて電波が入りづらく、不便で不自由とも言える環境だそうです。しかし、それゆえにこの場所でしか味わえない時間があり、旅の目的地として訪れる方も多い人気の宿となっています。

そんなume, yamazoeでは、2022年から障がいや病気のある方とその家族を無料で招待する「宿泊招待 HAJIMARI」という取り組みをスタートしました。「無料で招待する」という思い切ったこの取り組みはどのように始まったのでしょうか?
「本日のイベント、東京で開催ということで、だいぶドキドキしながら奈良の山奥からやってきました。ただ今サウナに入ってきたのもあって、気持ちがふわっとしてるかもしれないです(笑)」とはにかみながら梅守さんが話してくださいました。

梅守「障がいや病気がある方にとって外食や旅行をすることは、物理的なハードルよりも心理的なハードルがあるんじゃないかなと考えていました。例えば、医療機器をつけているとびっくりされるかもしれないとか、障がいによって急に大きな声を出すかもしれないとか、周りからこう思われるんじゃないかという理由で諦めてしまうことが結構あるんです。
そこで、旅をしたいけどできないと感じている方たちに、施設側から『ここならできますよ!』と迎えることでまずは気持ち的なハードルを下げていきたいと思って取り組みを始めました」

そんな梅守さんの強い想いとともにはじまったHAJIMARI。宿泊招待の他にも、さまざまな施設で同様の取り組みが実施できるよう、宿泊事業者向けに「障がいや病気がある方への接客研修プログラム」も開発・展開しています。

梅守「2年間さまざまな方を招待して、ちょっとした心構え一つで超えられるハードルがたくさんあると気が付いたんです。そこで、私たちが培ってきた心構えや接客ノウハウを、研修プログラムにして広めていくことを始めました。
やっぱり私たちは山の中にある小さな宿なので、ここだけで取り組んでも世界は変わらないと感じていて。でも、研修を通してもっと多くの地域で迎えられる場所が増えれば、障がいや病気がある方がより外出しやすい未来になるんじゃないかと思うんです」

●目の前のできることからはじめていく

実際にHAJIMARIでは、どのようにして「ちょっとした心構え」でお客さんを迎えているのでしょうか。

梅守「訪れる方も招く方もお互いはじめて接するので、どこまでのことならできるか毎回伺いながら、可能な限りトライできるようにしてます。体が不自由な方を担いでサウナに入ってもらったこともありますが、新しいことに挑戦する様子を見てご家族もとても喜んでくださいました。でも、実際そこまで特別なことをしているわけじゃないんです。
車椅子を押すことは技術が必要なのでできないけど、車椅子の周りにいっぱいある荷物を一緒に運ぶことはできるし、食のこだわりが強い場合は、メニューにはなくても作れる範囲で対応する。基本的にできる範囲のことしかしてなくて、ハード面を整えたりお金をかけずとも、いまあるスペックでできることがたくさんあるんです」

専門的な知識はなくても、一歩寄り添って考えるだけでできることは大幅に広がる。そのことに気づくだけでも十分に意味があると話します。
そうした日々の気づきを取り入れた研修プログラムは、現在もブラッシュアップ中なのだそう。HAJIMARIのメンバーとして活動する桂三恵さんは、研修を通しての課題を話してくださいました。

「さまざまな企業の方に研修を行う中で、伝え方がとても難しいと感じていて、一歩間違えると『そうは言っても自分たちにはできない』『何かあったら責任が持てない』と捉えられてしまいます。
自分が知らない障がいがある方への接客は不安もあると思いますし、知るほどにリスクも感じてしまう気持ちはわかるのですが…ただ知らないからと言って遮断するのも違うかもと感じていて…。
障がいに関係なく、お客さんからの要望に対してこれはできる・できないといった判断軸はどんな施設にもあるはずで、それに沿って対応することと同じなんです。病気や障がいがある人には優しくしないといけないという漠然とした固定概念も却って考えを狭めているような気がしていて。そうした考え方や不安を私たちの研修で取り払えると、できることが広がるんじゃないかと思っています」

●旅の楽しさを諦めてほしくない

日々宿を運営しながら、未来を変えるべく取り組み続ける梅守さんたち。そのまっすぐな想いには、ご自身の経験が根幹にあると話します。

梅守「私は四人姉妹の三女で、一番上の姉が後天的な重度の精神疾患があるんです。姉は短大を卒業して働いていましたが、ある日突然精神的に不安定になり、2、3歳ぐらいの知能にまで落ちました。またその2年後には妹が白血病を患い、無菌室の外から見守ることしかできなくなったんです。
そこからレストランに行ったり見たことがない景色を見に行ったり、家族みんなで何か同じ経験をすることは、私たちにとっては今後一度あるかないかという遠いものになりました。…というよりも、それは選択できるはずがなく、選択してもいいということさえ忘れてしまっていたんです。

どこか我慢して気持ちを閉じ込めたまましばらく日々が過ぎていったのですが、ある時自然の中でゆっくり過ごすことがあって、ふとそんな自分の心の状態に気が付いたんですね。自然や旅に出てその場に身を委ねることで、自分の気持ちだったり家族との関係を俯瞰して見直すというタイミングってあるんだなと思って。そこで、同じような気持ちを抱えている人にも心の状態を解消できるきっかけをつくりたいなと思いました」

HAJIMARIの取り組みを始めて2年が経つ現在も、お客さん一人一人とコミュニケーションを重ねながらその人にとっていい旅の時間を考えて提供しています。決まった正解はなく手探りの日々ですが、HAJIMARIを通して宿泊にきたお客さんからのあるメールが、梅守さんの目指すものに繋がっていると話します。

梅守「自閉症のお子さんとお父さんが宿泊に来てくださって、最初こそ不安そうにしていたのですが、少しずつ話してくれるようになり、最後は本当に楽しかったと言って帰ってくれました。その後お父さんからいただいたメールがとても心に残っていて、少し紹介させてもらいます。

“関わり方とかスタッフさんもよくわからないことがあったと思うんですけど、息子も大絶賛でした。当事者と家族が一番救われるのは、プロのテクニックではなくて、寄り添いやわかろうとしてくれるその気持ちです。同じ病気や障がいでも、人によって必要な配慮とか自分のやりたいことは全然違う。そのため、どんな人にも適用する魔法のテクニックはプロの現場でもありません。お客さんと一緒に手探りで対応策を決めて、楽しい時間を作っていくことと、お互いが無理せずにできることが一番いいんじゃないでしょうか”

私たちの取り組みは『福祉』というカテゴリーに括ることもできるかもしれませんが、福祉のことをやっている感覚はなくて。これこそ、私たちがこういう距離感でやっていけるといいなと目指していることなんです」

「ハード面で便利にしていけることはたくさんあるけど、そこを突き詰めると旅先にしかない魅力や楽しむ要素がどうしても減ってしまいます。お客さんがここに来て新しいことに挑戦したり積極的になれるのは、旅先で起こる発見やワクワクする感覚が損なわれていなかったから起こることだと思うので、『旅の楽しさを提供すること』は諦めずに大事にしていきたいです」

福祉サービスではなく、旅の時間をつくりたい。その想いが、HAJIMARIならではの体験につながっているのかもしれません。

●HAJIMARIが目指す景色

2年間で24組94名を招待し、今年また新たに12組程招く予定です。継続的に続けていく仕組みも検討されており、昨年は活動資金のクラウドファンディングを実施。今後は研修プログラムを広げながら、スポンサーを増やすことも考えているそうです。

梅守「『いつでも来てください!』と繰り返し発信しているうちに普通に予約してくださるようになって、この前は海外の観光客が一組、若いカップルが一組、車椅子の方のご家族が一組という組み合わせで。いろんなものを超えて同じ空間にいる感じがすごくよくって、私が見たかった景色がある!と思いました。
ただ、現状この取り組みが大事だと思っている人がまだまだいません。でも、誰しも何十年か経てば体の変化が起きるはずで、いまのように何も気にせずに旅ができるとは限らない。そう考えると障がいや病気がある方に向けた活動に見えるかもしれないですけど、本当は自分たちの未来を作るためにやってるんじゃないかなと思ってます」

●参加者のみなさんと対話実験

梅守さんと桂さんのお話は多くの気づきを与えてくれるとと同時に、大事な問いを置いていってくれました。ここからは参加者のみなさんと対話という形式で、そんな問いについて話を深めていきます。

「大変な話、難しい話で終わらせないためはどうするか」「障がいや病気でフィルタリングしない関わり方」「障害や病気のある人が身近にいない立場ができること」など、それぞれの経験や考えを通してゆっくりじっくりと言葉を重ねていきました。

さまざまな立場の参加者の言葉を受け取り、また自分の中で新たな言葉が湧き上がり、じんわりと熱を帯びていくその対話の場は、答えに向かっているわけではないけれど、確かな兆しに向かっているように感じられました。
1時間の対話を経て、改めて梅守さんと桂さんから感想をいただきました。

「言葉としては知っているけどわかっていなかったことがたくさんあるなと思っていて、例えば『自閉症』と言っても、感覚過敏の方も大きな声を出してしまう方もどちらも当てはまります。でも梅守さんを手伝うまで身近にいなかったので、漠然としたイメージしか持ってなかったことに気付かされました。

私自身、そこまで当事者意識があるとは言いづらくて苦しく感じることもあるのですが、たどり着いた考えがあって、『俺か、俺以外か』に尽きると思うんですよね。ローランドさんの言葉なんですけど(笑)
多様性ということでもなく、そもそもが違うというか。同じ障がいや病気でも、みんな違うし、嬉しいことも違うんですよね。というか一番身近な家族でさえ、お互いに根っこで考えてることを実は知らなくて、すれ違うこともあるじゃないですか。それくらい人のことは実はわからない。そういうスタンスで目の前の人に向き合って、都度理解していくと、当事者かどうかに関係なくすごくフラットに考えられるので、改めてそこはぶれないように活動していきたいです」

梅守「今日はもっといろんな人に取り組みを知ってもらいたくて、山奥から東京までやってきました。これまで活動してきた中で、人によってはすごく尊い取り組みという印象だけで終わってしまうこともあったのですが、いざみなさんの話を聞くと、自分たちが思っている以上のことを受け取ってくれてすごく感動しました。
先ほども言ったように私たちは福祉のことをやっている感覚はなくて、ただ単純にもっと楽しい未来の方がいいと思っていて。そのために、私たちが考えていることをどう伝えて、受け取ってくれた人がどう変わっていけるといいのかずっと難しく考えていたんです。でも答えは結構シンプルで、今日来てくださった皆さんが身近な人に伝えてくださったり、街で障がいのある人がいたらちょっとおおらかな目で見るとか、それくらいのことでも心の中に芽生えていたとしたら、素晴らしいし嬉しいと思いました」

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悩みながらもがきながら未来に向かうお二人の言葉は参加者にも深く届き、これからも折に触れて思い返すであろう大切な時間になりました。
そして、投げかけられた問いは一筋縄ではいかないものだとしても、自分一人がまずできることとして『俺か、俺以外か』の心持ちがあればいい。それがわかっているだけで未来につながる一歩を踏み出せる気がしました。

この日の話を、温度のある声として受け取ることと、画面上の文字として受け取ることで、言葉の届く深さは異なるかもしれませんが、この記事を通して少しでも多くの方に届き、何かの支えになることを願います。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI)

誰かと一緒に鑑賞するからこそたどり着く何かがある。写真家・白鳥建二さんとの美術鑑賞会|こんなだった、なんだかんだ5

「鑑賞」を辞書でひくと、『芸術作品について、自分の立場からそのよさを味わうこと』といったことが書かれています。「自分の立場から」とあるように、捉え方は一つではなく、自分の感じるままに楽しむことができる。それが作品鑑賞の醍醐味の一つと言えるでしょう。

味わい方はさまざまある中で、「全盲」という立場からアート鑑賞を行っているのが美術鑑賞者/写真家の白鳥建二さん。目を通して作品を見ることはできませんが、独自の鑑賞法を編み出し、日本全国の美術館をめぐっています。

一体どうやって、目が見えない中でアートを鑑賞するのでしょうか?
実際に白鳥さん独自の鑑賞法の体験と、そんな白鳥さんを追ったドキュメンタリー映画の鑑賞、そして参加者のみなさんとの対話を通して、そんな問いに迫りました。題して「なんだかんだ5 〜写真家・白鳥建二さんに会ってみたい!みんなで映画を観たあと、お話聞かせてください。〜」の開催です。

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●白鳥建二さんと、自由な会話で美術鑑賞

初めて美術館を訪れたきっかけは、恋人とのデートだったという白鳥さん。そのときの経験から「目が見えなくてもアートを楽しむことはできるのかもしれない」と思うようになり、あちこちの美術館を訪れていったそうです。そうしていつの間にか「自由な会話を使ったアート鑑賞」という独自の鑑賞法を編み出しました。
この「自由な会話を使ったアート鑑賞」とは一体どういったものなのか。白鳥さんをお招きして、鑑賞会を開いていただきました。

この日の会場である神田ポートビルでは、京都府亀岡市にある「みずのき美術館」の展覧会中ということで、その中からいくつかの作品を選んで鑑賞することに。参加者全員で一緒に作品を見て話し合いながら、じっくりと鑑賞するというのが白鳥さんのスタイルです。
何から話せばいいのだろう…という空気が漂う中、白鳥さんはこう話します。

「まずは作品を見て、色や形などすぐ言葉にできそうなものから話してみてください。慣れてきたら、連想したことや思い出したことなど、作品に関連することであればなんでも大丈夫です。
あと、僕は誰かが喋らないとどんな作品かわからないんですが、あまり僕のことは気にしないでくださいね。僕のための鑑賞会ではなくて、このメンバー全員で鑑賞するという時間にしたいんです。みんなの意見がまとまってもバラバラになってもなんでもOKなので、自由に喋ってもらいたいです」(白鳥さん)

白鳥さんの言葉に場がほぐれ、いざ鑑賞会へ。なんとなく目に留まった絵についてぽつりぽつりと話していきます。

「この作品は黄色いですね。オレンジでもないし、山吹色というのかな」
「とにかく抽象なんだけど、何かに見えなくもない」
「私は焼き魚を食べた後みたいな気がします」
「ああ…!茶色が皮で、白いのがちょっと残った身か」
「皮は食べない派だ」
「実は僕も同じように感じてたんですけど、昨日アジの開きを食べたからそう見えるのかなと思って躊躇してて(笑)」
「あはは!」(一同)
「みんなもそう見えてて安心しました」

「これは今日の絵の中で一番小さい」
「タイトルをつけるとしたら『真夜中の森のえのきだけ』」
(一同笑)
「植物的なものを感じますよね」
「これがワインのラベルだとしたらどんな味?」(ソムリエをされているという参加者に向けて)
「黒っぽいところが丘で…直線に区切られているのは畑ですね。白い塊が石灰石だとすると…そういった土地柄でも育つブドウはミネラル豊富で結構シリアスなワインな気がします。イタリア北東部の」
「なるほど〜すごい!(笑)」
「完全に見え方変わっちゃったよ。味がしてきたね」

1時間半たっぷり使って鑑賞したのは4作品。一つの作品を20分程かけてじっくり鑑賞していきました。そして再び輪になって白鳥さんと鑑賞会の振り返りへ。
参加者からはこんな声が飛び交いました。
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“「見る」ということが体感により近づいた感じがしました”
“絵には正解がなくて無限の可能性があるし、相手のことを想像しつつ自分のことも投影されていく感覚があって面白かったです”
“作品だけでなく、作品について話すその人に対しての関心も出てきました”
“このメンバーで時間をかけて鑑賞しないと得られない体験をした気がします。その場にある絵や人や居心地など、すべての要素が鑑賞に必要なことで、その場だからたどり着く何かがあるんだと感じました”
“専門家じゃなくても絵を見て感じたことを言ってもいいんだという安心感が心地よかったです”
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鑑賞会を経て、みなさんの感想もどこか饒舌に。そんな様子に白鳥さんは「ふふふ」と微笑みながら耳を傾けます。鑑賞中も、みなさんの会話を楽しんでいる様子が印象的でしたが、白鳥さんの頭の中には会話からどのような絵が見えていたのでしょうか。

「僕の場合、みなさんの話を聞いてイメージを頭の中に描くことをゴールにしてないんです。時にはイメージが浮かぶこともありますが、今日だと言葉の方が印象として強く残っています。
鑑賞会時は基本的に音で情報収集してるんですが、それは発せられた言葉だけではなく、参加者が作品とどれくらい距離をもって見ているのか、 作品の周りをどのように移動してるのかなど、足音だったりちょっとした物音も含めて情報として得ています」(白鳥さん)

人と一緒にいるということも含めて絵を見てるという白鳥さん。それは20年以上鑑賞会を続けていく中で見つけた面白さだそうです。

「最近気づいたのは、ゴールや答えを決めないことがこの鑑賞会を続ける中で一番飽きないところかなと思っています。僕は誰かが楽しんでいるのを見るのが好きで、みんなが盛り上がってくると僕も盛り上がってくるので(笑) そんな感じで楽しんでるんです」(白鳥さん)

アート業界には「対話型鑑賞」と呼ばれるメソッドがありますが、白鳥さんの鑑賞会には決まったメソッドがあるわけではなく、その場に集まった人とその場の空気を楽しむことを一番大事にしているそうです。
とにかくその場のあらゆるものを受け入れて楽しむこと。白鳥さんの様子に感化されるように、この日の鑑賞会も得も言われぬ一体感があり、終始あたたかな空気に包まれていました。

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●映画を鑑賞してオープンダイアローグ

美術作品の鑑賞会の後は、ドキュメンタリー映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』の上映会へ。白鳥さんの「全盲の美術鑑賞者」としての20年を振り返りながら、美術鑑賞の様子から、普段の生活、周りの人々との交流を記録したドキュメンタリー映画です。

約100分の映画をじっくり観た後、感想が湧き上がるままに白鳥さんを交えたトークの時間へと移ります。

50人近い参加者同士で映画の感想を共有し合い、白鳥さんに感じたことや疑問を投げかけていきました。

参加者① 私は普段美術を教える立場にいますが、作品の説明を求められても正直わからないことってあるんです。でも、本来美術鑑賞はフラットな関係をつくることができるものなんだと気付かされ、対等になれることが面白さだなと感じました。

白鳥 美術作品って「わかった」と言ってしまえばそれで終わりとすることもできると思うんです。でも、20年以上鑑賞会をやっていると、美術好きの人から慣れてない人までいろんな人の鑑賞があって飽きないんですよね。なので、答えを求めずに話す方がいいんじゃないかという気がします。

参加者② 映画を観て、白鳥さんの生き様というか力強さを感じました。はみ出して生きようみたいな姿勢が生まれたのはいつ頃でしょうか?

白鳥 特に「はみ出そう」とは思ってはいないのですが(笑) 天邪鬼だという自覚はしていて、カテゴライズで決めつけられたくない思いはあります。
そのきっかけというわけでないですが覚えていることだと、子供の頃に祖母から『目が見えないから頑張れ。見える人の何倍も頑張らなきゃいけない』と言われたことがあって。そのときに、『見えないから苦労する』という感覚が理解できなかったんです。幼かったのでまだ経験も知識もないし、言葉の意味はわかるけど『本当に?』って思ったんですよ。そこから「目が見えない=苦労する」と決めつけられるのが嫌で、天邪鬼な感覚になっていったのかもしれません。

参加者③ 映画の中で写真活動をされている様子がありましたが、シャッターを切るタイミングはどのように決めていますか?

白鳥 写真は2005年から撮り始めていて、最初は車のエンジン音とか、人の足音とか、お店から聞こえてくる音楽とか、音がする方にカメラを向けてボタンを押すことをルールとしていました。いまは歩くリズムだったり熱を感じる方だったりとルールが増えていて、もうほとんど意識せずに撮り続けています。ただ、歩きながら撮るということはずっと変わらないですね。あとは気分が乗らないときは撮りません(笑)

参加者④ 白鳥さんは相手に話をさせるのが上手で、もっと来い!と言われてるような感じになります。何かテクニックがあるのでしょうか?

白鳥 元々自分から喋るのが苦手で、相手の話に乗った方が面白いんですよね。だからどんなことに興味があるか、何が好きなのかを質問して、それをいかにもわかってる感じで聞いていくんです。全然知らないことでも。そうするとどんどん喜んで話してくれる。鑑賞会もそういったところがあって病みつきになってます(笑)

そんな白鳥さんにすっかり乗せられてしまった参加者のみなさんからは時間ギリギリまで質問が飛び交い、トークが尽きることはありませんでした。
アフタートークの後のフリータイムには、ナチュールワインを楽しめる「響くワイン」も開催され、お酒好きの白鳥さんとワインを飲み交わしながら残りの時間までたっぷりと楽しみました。

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この作品は何たるものか、お互いが何を考えているのか、いろいろなことを探りつつも、ゴールを決めずに漂うように言葉を投げかけてみる。
白鳥さんとの鑑賞は、作品を見れば見るほど、話せば話すほど、新しい視点や感情が開かれていくようなひと時でした。

考え抜かれた発言も、脱線するようなジョークも、「ふふふ」という微笑みも、すべてが居心地に繋がっていることに気づくと、その場が途端に大事なものに思えてきます。白鳥さんとの鑑賞会にはまさにそうした感覚があり、なんだかんだが目指すべき心地よさがありました。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI)

障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所。「駄菓子屋 横さんち」の話|こんなだった、なんだかんだ4 【前編】

『もっと日常的に、障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所がなくてはならない』
静岡県掛川市にある駄菓子屋「横さんち」は、そうした思いから生まれた場所。さまざまな障がいを持つスタッフたちで日々お店を運営しています。

神田から遠く離れたところにありますが、これまでの路上実験イベント「なんだかんだ」にもはるばる参加してくださっている横さんち。
改めてその取り組みをじっくり聞き、そして多くの人に知ってもらいたい!ということで、運営サポートをしている池島麻三子さんとボランティアスタッフとして通う高校生の佐野夢果さんをゲストにお招きし、たっぷりとお話を伺いました。
題して、「なんだかんだ4 〜駄菓子屋横さんちの取り組みとそこに通う夢果ちゃんの願いとかいろいろ聞いてみようか〜」の開催です。

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春の訪れを感じる暖かな陽気の3月16日。畳を敷き詰めた神田ポートビルの会場に30名近くのお客さんが集まり、ゆるやかにスタートしました。

●駄菓子屋 横さんちのきっかけとは?

はじめに、駄菓子屋「横さんち」の運営サポートをしている池島麻三子さんから、取り組みを紹介いただきました。
店長である横山さんの愛称が店名の由来である横さんち。元々は企業に勤めていた横山さんですが、ある経験がお店をつくるきっかけとなったそうです。

「幼少期から車いす生活を送っている横山さんですが、釣りやスキー、飲み会などどこへでも出かけるパワフルな人なんです。そんな横山さんは、企業に勤める傍ら、障がいへの理解を深めるために学校で講演をしたり、車いす体験会を開いたりと福祉教育の活動をされていました。しかし、そうした機会はせいぜい年に一度、人によっては一生に一度しかないようなもので、それだけでは伝え切ることができません。そこから『もっと日常的に、障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所がなくてはいけない』と考えるようになり、駄菓子屋『横さんち』の誕生につながっていったんです」(池島さん)

運営サポートをしている池島麻三子さん

そんな横さんちの店舗は、車いすユーザー向けに空間設計がなされており、スタッフはさまざまな障がいのある方、後期高齢者の方、障がいはないものの生きづらさを抱える方などがそれぞれできることを発揮して働いています。

「例えば、キラキラなビーズが好きなスタッフの服部くんは、アクセサリーを作るワークショップを毎週開いています。参加するのは小学校高学年の悩み多き年頃の子たちなんですけど、服部くんは受け止め上手なのでアクセサリーを作りながらお悩み相談をしていて信頼が厚いんです。

横さんちで働く人には、なるべく個々の得意なことに合わせたお仕事をお願いしたいと思っていますが、それを見つけるのもそう簡単にはいかなくて。服部くんもいろいろな仕事をしてもらいつつも、長い間お互いにこれだ!と思えるものが見つけられなかったんです。
横さんちのコンセプトは『障がいのある人がいきいきと働く』なので、社内会議でもその仕事はその人がいきいきしているかどうかということが論点に必ず挙がってくるんですが、ビーズのワークショップを始めてから、服部くんは楽しそうで私たちも嬉しいんです」(池島さん)

●働く人も訪れる人も補い合うことは当たり前

それぞれの得意を仕事として活かすことができる横さんちですが、得意ではないことは補い合いながら働いています。補うのはスタッフ同士だけではないそうです。

「レジに時間がかかってよく行列ができるんですが、お客さんが商品のスキャンや袋詰めを自然と手伝ってくれるんです。ここを利用するお客さんの間には、補い合うことは当たり前という感覚があっていいなと思っています。手伝ってくれるのは子どもたちが本当に多くて、手伝ううちに違う学校の子同士で仲良くなったりと交流の場にもなっていますね」(池島さん)

働く人も訪れる人も自然に関わり合うことができ、街に開かれた場所として親しまれている横さんち。
肩肘張らない「駄菓子屋」という場の力も絶妙に関係しているように感じますが、いまの時代にはなかなかめずらしい形態です。実は、運営会社による一事業という側面もあります。

「『横さんち』の形態は、ITエンジニアの人材派遣会社が運営会社となっていて、そこの一事業として取り組んでいます。そのため、ここで働いているスタッフは“社員”という扱いで、いわゆる一般就労になります。
きっかけとしては運営会社の規模拡大に応じて障がい者雇用をすることになったものの、エンジニア向けの会社なので新たな仕事やポジションを考える必要があったんです。ただ、当初から見えないところで単純作業をするだけではなく、いきいきと働ける職場をつくろうという思いがありました。そこを出発点に生まれたのが、駄菓子屋というアイデアなんです。
いまの時代、駄菓子屋という形態のみで利益を出すことは難しいですが、その代わりに地域に開いた福祉や教育の場になったり、子どもたちの居場所となるように取り組むことが事業の役割になっています。地域に貢献するお仕事としてみなさん働いていますね」(池島さん)

この日は「駄菓子屋 横さんち」が神田ポートに出張出店してくださり、
お子さんはもちろん大人も「懐かしい!」と目を輝かせていました。

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横さんちの様子を思い浮かべながらじっくりお話を聞いていると
すっかりお店のみなさんに会いにいきたい気持ちに。
この日も出張で駄菓子屋さんを開いてくれましたが
駄菓子を囲むとあっという間に距離が縮まるようでした。

続いては、そんな横さんちに通いながら自らさまざまな活動を行う
高校生の佐野夢果さんにお話を伺っていきます。

後編へ続く

神田いらっしゃい百景|五十稲荷神社

神田の街を歩くと次々に目に飛び込んでくるお店たち。色とりどりの看板や貼り紙は、街ゆくすべての人に向けて「いらっしゃい」と声をかけているようで、街の人の気風を感じることができるでしょう。

神田いらっしゃい百景は、街に溢れる「いらっしゃい」な風景をご紹介します。

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五十稲荷ごとおいなり神社
〒101-0052 東京都千代田区神田小川町おがわまち3-9
アクセス:
地下鉄淡路町駅より徒歩5分
地下鉄新御茶ノ水駅より徒歩5分
地下鉄小川町駅より徒歩5分

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訪問者 林亜華音
オープンカンダ編集スタッフ。
神社は見据える時間のスケールが違うな…と実感。
オープンカンダも長く残るものにしたいです。

フォトグラファー 池ノ谷侑花
オープンカンダ撮影スタッフ。
鳥居さんがいらっしゃる神田明神、
毎年ゆかいメンバーで初詣に行っています。
いつもお世話になっております!

ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみました|こんなだった、なんだかんだ3 【#1】

3月3日のひな祭り。ひな祭りといえば、女の子の健やかな成長を祈るイメージがありますが、実は年齢に限りはないそうです。
あらゆる女性が主役となるそんな一日を、なんだかんだ3では“レディースデー”として広くとらえて、神田ポートビルに関わるさまざまなメンバーと考えたイベントを開催しました。

題して、「なんだかんだ3 〜ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみます!〜」。
踊ったり、語ったり、ととのい尽くしたり。さまざまな身体や心に嬉しいことが集まって、生まれてまもないレディーから人生経験豊富なレディーまで、のびのびと過ごす一日となりました。

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●身体と創造力をとことん解き放てば、どこまでも踊れる
伊藤千枝子・篠崎芽美ワークショップ「なんだか不思議な体感」

神田ポートビル一階では、ダンサー・振付家の伊藤千枝さんと篠崎芽美さんによる、ダンスのワークショップ。心のそこから、身体のそこから、自由に、思いついたままに、感じたままに、あれやこれやと一緒になってダンスをしていきます。

ワークショップはたっぷりコースの1時間半。会場に集まったみなさんに一体何が起きるのか若干の緊張感がただよう中、「まずは体を洗っていきましょう!」という伊藤さんの明るい一言で、体をごしごしと洗うところからスタートしていきます。

自分の体中をさすったあとは、近くの人と背中、脇、お腹、お尻同士をごしごし。
不思議なポーズで体を寄せ合っていると、だんだんと笑いがこぼれていきます。

今度は床に寝転がって、誰かと出会ったらその人にごろんと乗っかってみます。
子どもも大人も一緒に乗っかりあって大はしゃぎ!

乗っかった後は、トンネルくぐったり自分がトンネルになったり。
みんなで大きなジャングルジムをつくってくぐっていきます。

一人をくぐる。

二人の間をくぐる。

複雑にくぐる。

とにかくくぐる!

くぐり、くぐられ数十分。
「くぐる」という一つの動きに対しても、
全身を使うとかなりのレパートリーができて新たな発見の連続です。

その後は、いろいろな足の数で歩いてみたり(0本や20本という難題も!)、
馬や象になってみたり。

どんどん創造性が広がっていき、みんなで作った大きなタワーは芸術的な仕上がりに。

最後は記念撮影をパシャリ!

伊藤さんと篠崎さんに誘われるまま、身体と創造力を解き放って踊った一時間半。
ほぼ初対面のみなさんでしたがえも言われぬ一体感が生まれていて、なんだか不思議な体感にたどり着いたような光景が見られました。

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● 意外と身近にある薬草の味に出会う
新田理恵(tabel)「薬草のちから」

ダンスワークショップの隣では、伝統茶「tabel」の薬草調合師・新田理恵さんによる薬草茶shopがオープン。
独自のアプローチで薬草茶の味わい方や薬草のある暮らしを提案する新田さんが、一人ひとりに合わせてブレンドティを淹れてくださり、日本の薬草茶の世界を味わえます。

はじめて薬草茶を飲む人向けに用意してくださったのは、月桃、よもぎ、はす、黒文字と生姜、葛、紅花、金木犀の中からそれぞれ一種類の薬草を選びます。
効能で選ぶのはもちろん、どれも身体にいいので香りで選ぶもよし。

日本中をリサーチし回って選んだという、厳選された薬草でいただく一杯はよく染みる。45都道府県までコンプリートしていて残るは埼玉と宮城のみなのだとか。

「金木犀や紅花などはじめて薬草茶を飲む方にも馴染みのあるものをご用意しましたが、道を歩いていても薬草って意外とたくさんあるんです。これまで機会がなかった方も、身近なものとして楽しんでほしいですね」と新田さん。
聞き慣れた草木でも、味や効能を知るだけで風景の見え方がぐっと広がりそうです。お客さんも新田さんの解説に聞き入って薬草の世界に引き込まれていました。

#2へ続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: TADA(YUKAI), Mariko Hamano

#2「食+デザイン」|アートディレクターの秋山具義さんと、地元・秋葉原をめぐり直す。後編

「〇〇のおともに」をテーマに、あるものとあるものをたし算することで広がる神田のたのしみ方を、その道のプロフェッショナルをお迎えして紹介する「おともにどうぞ」。

第二回のゲストは、アートディレクターの秋山具義さんをお迎えし、具義さん縁の場所や最近気になるスポットを巡りながら、今と昔の神田の話を聞いていきます。

あらゆる食とデザインに触れてきた具義さんだからこそ見える神田のおもしろみとは? 多忙なはずなのにとにかく情報収集力がものすごい具義さんと歩いてみると、ちょっとした散歩でも思わぬ発見にあふれたひとときになりました。

前編はこちら

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 ●店のデザインってここが面白い

具義さんが初めてお店のデザインをしたという
ご実家でやっていた“お好み焼き アッキィ”の、カエルのロゴマーク

神田祭のポスターを通して地元を応援し続けている具義さんですが、最近では広告界きっての美味しいもの好きということもあり、お店のデザインを手がけることが増えているそうです。
お店もまた人の想いがこもった場所。どのようにデザインに向き合っているのでしょうか?

「やっぱり看板が大事。ネオンなのかのれんなのか、外からどんな風にお店の名前を見せるのかを一番考える。
よく行く店のスタッフさんが独立されたり、新店を出すときにオファーされることが多いけど、相談してくれる人がどんなお店にしたいのか、好きなロゴとかイメージしているロゴがあるか、ちゃんと会話して聞かないといいものはできないよね」

かたちにする前に、相手の思いをしっかり引き出すこともアートディレクターの大きな役割。この日もデザインの仕事ではないものの、ほたて日和の店主にいろいろと質問をしておしゃべりが弾んでいた具義さん。作り手との対話に長けている姿が印象的でしたが腑に落ちました。

「店名を考えることも結構あって、住所が南青山七丁目だから”南青山 七鳥目”とか、警察署の横にあるから“Buger POLICE”(バーガーポリス)とか、オーナーが若い頃サッカーをしていてポジションがライトウィングだったから“右羽”(うう)になったりとか、いろんな方向で案を出すんだけど、意外とひょんなところから決まったりする。
Buger POLICEなんかはお客さんがお店に行ったことをSNSで『出頭してきました!』って言うようになったりしてるんだけど(笑)、その場所らしいコミュニケーションが生まれるのもいいよね」



 ●とっておきの日の手土産は「竹むらの揚げ饅頭」

さて神田・佐久間町界隈を中心に具義さんの庭をそぞろ歩いたあとは、お世話になっているある方への手土産を買いに、具義さんお気に入りのお店に向かうことに。池波正太郎はじめ、多くの食通に愛された1930年創業の甘味処『竹むら』で、名物の揚げ饅頭を買います。

連続テレビ小説『虎に翼』でヒロインの寅子が度々訪れる
甘味処『竹もと』は、ここ『竹むら』がモデル。

『竹むら』の揚げ饅頭は、具義さんにとっては「ここぞ」という時の手土産なのだそう。
大学時代、アートディレクターである友人の青木克憲さんとともに、グラフィックデザイン界の巨匠・仲篠正義さんに作品を見せに行くというときも、『竹むら』の揚げ饅頭を持っていったという勝負土産です。

そんな思い出を振り返りつつ到着したのは…

ジャン!ほぼ日の本社!

ごめんくださ〜いとエレベーターを上がると、糸井重里さん!

具義さんはほぼ日のキャラクター「おさる」もデザインしていて、糸井さんとはほぼ日刊イトイ新聞の創刊当初からのお仕事仲間。しかし、実は具義さんが広告業界を目指したきっかけは、広告や雑誌やテレビで活躍していた糸井さんに憧れたからなんだそうです。

揚げたてで熱々の揚げ饅頭を見て
「なんかこう見ると卵の天ぷらみたいだね」と糸井さん。

さっそく竹むらの揚げ饅頭をお渡しすると、「これめちゃくちゃ甘いんだよね〜。しかも揚げたてじゃない」と目を細める糸井さん。熱々の揚げ饅頭を続けざまに2つ、ぺろっと食べてくれました。

揚げ饅頭をほおばりながら近況をお話しするお二人。

「糸井さん、今日僕ら“ほたて日和”に行ったんですよ。めちゃくちゃ美味しかったです」
「あ、あの昆布水のところ? いいねぇ。神田のつけめんと言えば、金龍もうまいんだよ」
「(食べログを開いて)あ、行きたいマークつけてるところだ」
「俺はさ、今日ついに行ったんだよ。謎のうなぎ屋。メニューがない店でさ、でね……」

と、神田のグルメ情報や、最近の店の変なシステムとか、トンカツとかうどんとか食の話で大盛り上がり。年を重ねても衰えることなき好奇心と情報収集力。さすがです!

具義さん愛用の2024年度版「ほぼ日手帳」に
「超素敵」の言葉を添えてサインを書く糸井さん。
この儀式は毎年行われているそうで昨年は「豆大福」だったそう。

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ほぼ日を出た我々は、本日の最終目的地、神田ポートビルに到着。お疲れさまでした!

ゲーム、アニメ、漫画、アイドル。さまざまなカルチャーが渦巻くまちで、具義さんはどう過ごしたのか想像しながらまわった今回の散歩。
たった数時間の散歩でしたが、個人的な思い出とともに立ち上がる風景を見ると、まちから具義さんへ脈々と流れる血筋ならぬ地筋を感じました。

お話の中では、作品にしても食にしても、膨大な数をキャッチしていることが印象的だった具義さん。そしてただ受け取るだけでなく、その「良さ」の理由を見渡して捉えるアートディレクターたる姿勢に、ものごとを広く深く楽しむヒントがありました。
幼少期から秋葉原カルチャーを浴び続けることで培われた業のようでもありますが、そんな眼差しを少しでも意識してみると、一皿の食事もぐっと豊かなものになりそうです。

さて、次は神田でどんな〇〇+〇〇をたのしみましょうか。


Text: Miyuki Takahashi
Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI)

#2「食+デザイン」|アートディレクターの秋山具義さんと、地元・秋葉原をめぐり直す。前編

カレーの街として名高い、神田。学生が本を片手に、スプーン1本で簡単に食べられるということから、カレーの需要が高まったという。読書のおともにカレー、新幹線旅行のおともに駅弁、ドライブのおともに音楽。おともがあると、楽しみもぐっと増す気がします。この企画では「〇〇のおともに」をテーマに、あるものとあるものをたし算することで広がる神田のたのしみ方を、その道のプロフェッショナルをお迎えして紹介します。

第二回のゲストは、アートディレクターの秋山具義さん。広告、パッケージ、ロゴ、キャラクターデザインなど幅広い分野でアートディレクションを行うかたわら、広告界きっての美味しいもの好きとしても有名な具義さんですが、実は神田佐久間町のご出身。秋葉原周辺で漫画やゲームに囲まれた幼少期を送ってきたそうです。

今回は、そんな具義さん縁の場所や最近気になるスポットを巡りながら、今と昔の神田の話を聞いていきましょう。
あらゆる食とデザインに触れてきた具義さんだからこそ見える神田のまちやお店のおもしろみとは? 多忙なはずなのにとにかく情報収集力がものすごい具義さんと歩いてみると、ちょっとした散歩でも思わぬ発見にあふれたひとときになりました。

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●ホームタウン・神田佐久間町。
電気街のそばで過ごした幼少期を振り返る。

本日のスタート地点は、秋葉原駅の昭和通り改札前。電器屋がぐるりと囲む秋葉原のど真ん中ですが、ここは具義さんのホームタウンです。
全員集合していざ出発と歩き始めて10秒、さっそく第一思い出スポット発見! 駅前の「秋葉原公園」で足を止めました。

「昔はここらへんに大きいロケット型の遊具があってさ」と具義さん。
今はベンチとちょっとした緑がある広場ですが、かつては遊具もあり子どもたちの間で「ロケット公園」と呼ばれて親しまれていたそうです。

「この辺りは公園が結構あって、よく行っていたのは佐久間公園。ラジオ体操しに夏休みは毎日通ってたね。しかも近くに美味しいパン屋があって、帰りに必ずあんぱん買ってたんだよ。小学校から帰ってきて公園に行く前に立ち食いそば屋でコロッケそば食べるのにハマってた時期もあったなぁ」
とおもむろに歩き始め、佐久間公園に向かいます。

道中、この辺りには
漫画『月下の棋士』の舞台となった将棋倶楽部や
メロンソーダ飲み放題のゲームセンターがあったことなど、
知る人ぞ知るディープな情報が次々飛び出します。
佐久間公園近くの「青島食堂」は
具義さん行きつけの人気ラーメン店。
新潟5大ラーメンの、長岡生姜醤油ラーメンが食べられる。
昨年末には1時間半並んで食べたほどお気に入りだそう。

駅から300メートルほどの距離を濃密に歩いたところで佐久間公園に到着。カラフルな新しい遊具のある公園ですが、歴史は古く、片隅にお稲荷さんが祀られているのが特徴的です。

「当時はブランコに乗りながら時計塔を狙って靴飛ばししてたなぁ」
と具義さんが振り返りながら公園を見渡すと、なにやら立派な石碑が。なんの気なしに覗いてみるとびっくり。

ここ佐久間公園はなんと、ラジオ体操会発祥の地!
1928年に国民の健康増進のためにテレビ放送を通して広まったラジオ体操ですが、朝に集まって体操を行う「早起きラジオ体操会」を全国に先駆けて始めたのがここ佐久間公園というわけ。
具義さん、すごい由緒正しき公園でラジオ体操していたんですね。

そんな秋葉原のど真ん中で育った具義さん。このまちでいったいどのように過ごしてきたのでしょうか?

「小学生の頃は、ジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオン、キングあたりの少年漫画雑誌はほとんど読んでたよ。アニメージュやジ・アニメっていうアニメ雑誌も愛読していて、漫画・アニメ好きだったな。中学に入るとアイドルも追いかけるようになって、伊藤つかさ、石川秀美、林紀恵と、ファンクラブに三つ入ってた。
あとは電気街が近所だったからゲームセンターによく通ってて、インベーダーゲームなんか40分くらいゲームオーバーなしでプレイし続けたこともあったな。ヘッドオンっていうゲームが好きで、すごく音がいいからいまでもたまに聞きたくなるね」

まさにあらゆるカルチャーを網羅していた具義さん。秋葉原がゲームやアイドルのまちとして知られるようになる前の時代なので、アキバ系のはしりと言えます。
作品やコンテンツをキャッチする量の膨大さがいまの具義さんの活動につながっているように思えますが、その類稀なるスキルはこのまちで育ったことで培われてきたものなのかもしれません。



 ●地元に誕生した注目グルメ。行列必至のつけ麺をいただく

公園をぐるりと回ったところでお昼の時間に。具義さんがいま一番気になっているという佐久間町の「Tokyo Style Noodle ほたて日和」へ向かいます。

「ほたて日和」は2022年12月にオープンしたばかりですが、有名ラーメン情報サイトのランキングで1位を獲得したこともあり、テレビでも度々取り上げられる超人気店。この日は編集部が朝8時に並んで記帳しておいたためランチタイムぴったりにお店へ入れましたが、事前予約必須の代物。具義さんも嬉しそうです。

この日注文したのは「特製 帆立の昆布水つけ麺 黒【醤油】」。
割烹かと思うほど盛り付けが美しく、昆布水に浸った麺が光輝いて見えて期待が高まります。
お店の方が美味しい食べ方を丁寧にレクチャーしてくださり、言われた通りの方法でいただきます。

はやる気持ちを抑えて、
いただく前にスマホでぱしゃり。
真俯瞰で構えるのがおいしく撮るポイント。

最初は、店名にもなっている北海道産帆立のカルパッチョを一口いただいてから(当然美味!)、次にぬるぬるの昆布水に絡んだ三河屋製麺の麺をそのままいただきます。

昆布水の旨味とぬめり、こしのある麺の食感が合わさって、何もつけてないのに抜群の美味しさ。ここに鰹塩やわさび、ディル(さわやかな香りとほろ苦さを持つセリ科のハーブ)などで味変しながら麺とトッピングを楽しみます。

美味しすぎてどんどん食べ進めてしまいますが、つけダレで食すのも忘れずに。マイルドなつけダレでいただく麺も当たり前ながら最高です。さらに、味変効果の高いトリュフオイルを絡めて麺だけを楽しみ、最後はスープ割りを堪能しました。

店主の及川さんと。ごちそうさまでした!

味の変化を感じながらいろんな食べ方を楽しんだからか、コース料理を食べ終えたかのような満足感!
「めちゃくちゃ美味しいし食べ方も楽しいし、すごかった!」と具義さん。気さくな店主とのおしゃべりも弾み、充実度たっぷりのひとときになりました。

味はもちろん、食べるまでのプロセスや作る人の背景など、「美味しい」という気持ちに少し立ち止まってそのまわりを眺めてみる。そんな具義さんの眼差しに、広く深く食を楽しむヒントを感じられました。



●“中の人”として続けてきた神田祭の町会ポスター制作

昼食後は秋葉原を抜けて、
旧3331 Arts Chiyoda(現ちよだアートスクエア)へ。
旧練成中学校の校舎を改修してできた建物ですが、
なんとここが具義さんの母校。

佐久間公園やほたて日和のある神田佐久間町は、まさに具義さんが生まれ育ったまち。通っていた小・中学校へをめぐりながら、30年近くボランティアで作り続けている神田祭の佐久間3丁目ポスターについて聞いてみました。

「ポスターは1991年くらいからやってるかな。まだ広告代理店に勤めていた頃に近所の知り合いにお願いされて引き受けたんだよ。会社の仕事とは違うところで、自分で自由にデザインしたいと思っていた時期でもあったし。
あと、自分の地元に関わるデザインをしている人はたくさんいるけど、町会という規模でやってる人はなかなかいないでしょ? 町会くらいの距離感になると本当に中にいる人じゃないとできないことだし、そこに取り組むのはおもしろいと思ったんだよね」

江戸時代から続くこのまちの一大イベント・神田祭。具義さんもポスター制作だけでなく、神輿担ぎや子供神輿のサポートなど、町会の一員として担当したこともあります。

「デザインは毎回3〜4案出してるけど、30年以上デザインを続けているともうネタが尽きて大変なんだよ(笑)。だから、ポスターに入れる要素と、赤と黒の2色刷りというルールは決めておいて、その時代に合わせた内容でデザインを考えるようにしてる」

例えば令和5年度版では、コロナ禍を経て久しぶりの開催だったため、「かつげるって、しあわせ。」のコピーと涙を流すイラストがデザインされました。

「あと、普段の広告の仕事だと看板にきれいに掲示されるけど、町会のポスターはまちの人たちが自分の家や店先とかフェンスとかにベタベタと貼っていて、そういう風景もいいんです」

そこで暮らす人の思いを汲み取って、まちに一体感を作ってきた神田祭のポスター。そこには、30年以上関わり続けている具義さんとまちとの長く培われてきた信頼関係が感じられました。


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まだまだ続く具義さんとの散歩。
後編ではお店のデザインについてお話を伺いながら
具義さんがお世話になっているというあのお方に会いに行きます。

後編に続く


Text: Miyuki Takahashi
Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI)

神田いらっしゃい百景|BOOK SHOP 無用之用

神田の街を歩くと次々に目に飛び込んでくるお店たち。色とりどりの看板や貼り紙は、街ゆくすべての人に向けて「いらっしゃい」と声をかけているようで、街の人の気風を感じることができるでしょう。

神田いらっしゃい百景は、街に溢れる「いらっしゃい」な風景をご紹介します。

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BOOK SHOP 無用之用
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-21−2 一和多ビル2F
アクセス:
地下鉄神保町駅A7出口より徒歩2分

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訪問者 林亜華音
オープンカンダ編集スタッフ。
共同店主の美帆ちゃんは学生時代のインターン仲間。
こんなに愛される場所をつくってるなんてしびれる!

フォトグラファー 池ノ谷侑花
オープンカンダ撮影スタッフ。
神保町よしもと漫才劇場から歩いて3秒のところにあるお店。
ライブ終わりはここに決まり

なんだかんだ2って結局なんだった?|
#1 協力と許可と仲間と資金と

2023年11月3日。
神田錦町にて、路上実験イベント「なんだかんだ2」が開催されました。
第一回目を春先に開催してから半年足らず。
前回の手応えと反省を活かして、
パワーアップした第二回目となりました。

路上に畳を敷き詰めて、さまざまなものごとに出会うそのイベントは
どのようにできて、どんな場所を目指していたのでしょうか。
なんだかんだ2って、結局なんだった?
その疑問に、オープンカンダ編集部が迫ります。

INDEX
#1協力と許可と仲間と資金と
#2 盛りだくさんすぎる演目。みんな何やってた?
#3 クリエイティブディレクターに聞く。これからのなんだかんだ

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プロローグ

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#1
協力と許可と仲間と資金と

神田での路上実験イベントとして立ち上がった「なんだかんだ」。前例がなく、規模の大きい取り組みゆえ、実現はまさに修羅の道でした。
その中で必要となったのが、公共の場で新しい取り組みを始めるにあたって不可欠となる「協力」と「許可」、そして取り組みをより良いものにするためにあると嬉しい「仲間」と「資金」です。

なんだかんだもこれらを地道に集めることで開催にまで至ったわけですが、その裏側を知るのは運営メンバーのごく一部だけ。けれど、こうした取り組みをもっと広く参考してもらえれば更なる街の活用につながるかもしれません。
そう思い立って、なんだかんだ2の開催に先駆けて、開催までの過程を事細かに明らかにしてしまう「なんだかんだプロセス展 ~どのようにして実現できたの?〜」を実施しました。
展示の様子とともに、開催までの過程をご紹介します。

前身となる路上活用の取り組みからはじまりつつ、千代田区による実証実験の公募への落選という苦難の背景があったなんだかんだ。

その後、神田プレイスメイキング実行委員会を発足して体制を整え、実現に向けた千代田区とのすり合わせを重ねていきます。道路という公共空間を使用するとなると、千代田区だけでなく警察や町会などの協力も必要になり、各関係機関への許可申請のプロセスまでつまびらかに大公開。
展示には許可申請書の原本まである驚き!

さらにクラウドファンディングの実施や開催後の来場者アンケート、今後の運営体制など、継続的に続けるための仕組みも明らかにしました。

この街の課題は何か、これをやると誰が嬉しいのか、道路占有よる問題はないか。ひとつひとつ向き合って資料にまとめて各所に説明し、課題点をクリアにしていく。
地道なことですが、膨大な資料はそれらに費やされた時間や労力、さまざまな協力があったことを雄弁に物語っていました。こうしたプロセスを明らかにする展示は今後も路上実験イベントに合わせて継続していく予定です。

そんな流れを経て開催することとなったなんだかんだ2。実際にどんな空間になったのでしょうか。

#2に続く

Text/Edit/Manga: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI)

ご縁がつながるきっかけは「さしすせそ」
神田錦町 みんなのご縁日

夏の余韻がようやく落ち着きを見せ、過ごしやすくなった夕暮れ。10月13日(金)に「神田錦町 ご縁日」が開催されました。

「神田錦町 ご縁日」とは、神田錦町周辺でで働く人、住む人、学ぶ人たちが集まり、ご縁を深めるきっかけを作るイベントで、開催は今年で4回目。
ビルが多く、縁日ができるほどひらけた場所なんてあるのだろうか…
という神田の街ですが、ちよだプラットフォームスクウェアの広場と、隣接する道路と駐車場を大胆に封鎖して行われました。
普段は近隣で働く人々が行き交う場所も、屋台が並ぶとすっかりお祭り空間に。まだ新しい取り組みながらも、昔からの恒例行事かのような盛況ぶりで、遊んで食べて体を動かしながら交流が生まれていきました。

しかし、「交流」と一口に言ってもさまざまなかたちがあります。今回のご縁日に参加して見つけたご縁がつながるヒントを、料理や褒め言葉の基本でお馴染みの「さしすせそ」に乗せてお届けします。

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[さ]あ、よってらっしゃい見てらっしゃい!
おいしい・楽しいが大集合。神田錦町の屋台村

道路や駐車場の屋台では、神田錦町に構えるお店や会社によるおいしいもの、楽しいものが大集合。普段はなかなか触れる機会のない会社の出し物も、「さあ!」と両手を広げて屋台に立つと、たくさんの人がどれどれと吸い込まれていきます。

屋台の中で真っ先に目に飛び込んできたのは、メガネをかけまくる子ども達。今年2023年に移転してきたばかりのJINSによる、制限時間内でいかにメガネをかけられるかを競うゲーム「メガ盛り」です。

その隣には昨年も大人気だったほぼ日の「われてもさみしくないヨーヨー」や神田警察署からはなんと白バイの展示があり(しかも跨いで写真撮影可)、それぞれの個性が溢れたコンテンツが並びます。

また、地元の飲食店も多く出店し、今年オープンしたばかりの「廣瀬與兵衛商店」から神田錦町で50年以上営業を続ける「喫茶プペ」など、古くからあるお店と新しいお店が混ざり合いながら自慢の味をふるいました。

本WEBメディア「オープンカンダ」のクリエイティブディレクションや撮影を担当しているゆかいは、ご近所のボルツと一緒にわたあめ屋台を出店。一度も列が途切れず、3時間で112個売れました。

他の屋台にもひっきりなしに人がやってきて皆さん大忙し。ですが、会社やお店を飛び出して街の人たちと顔を合わせるこの機会を楽しんでいるようでした。

[し]ってた?ご近所の〇〇さん、おめでたいんですって!
神田錦町のおめでたい老若男女をみんなでお祝い

駐車場エリアにはステージが設けられ、壇上にはなにやら緊張の面持ちで座る人たちが。はじまったのは「みんなでお祝いコーナー」。
今年お店をオープンした・成人を迎えたというおめでたい節目を迎えた方や、部活やバリスタの大会での功績など、街を飛び出しての活躍を街の皆さんとともに讃えました。

世界大会で優勝したという方も現れ、えっ!こんなすごいことしてたの!? とざわつく場面も。
こうした場を通して祝い合うことは、身近に頑張っている人がいると感じられて、祝う方も活力をもらえる気がしてきました。

[ず]っと途切れない元気が場をつなぐ。若いパワーたちも炸裂

ご縁日には子ども達や近くの学生も多く集まりました。大人たちのお酒が進んで陽気に出来上がるよりも先に、とにかくずっと元気な若いパワーがこの場の空気を作っていたといっても過言ではありません。

お神輿を引いてパレードしたり、渾身のダンスを披露したり、運営スタッフとして活躍してくれたり。一方で、取材のカメラに何度も映り込もうとしたり、何時間もインターバルなしで鬼ごっこをしていたりと、楽しむプロっぷりを見せつけてくれました。

[せ]いせいどうどう戦えばもはや友。
路上で繰り広げるチーム対抗・綱引き大会

すっかり場があたたまってきたところで、おまちかねの綱引き大会へ。
実はこのご縁日に先駆けて、一ヶ月前に日本綱引き連盟の方から直々にレクチャーしてもらう綱引き講座を開催していました。講座には本戦に挑むチームの8割以上が参加。各々積んできた練習の成果が発揮される場ともあって、異様な緊張感に包まれていました。

前回王者はほぼ日ヒッパレーズ。ほぼ日チームは昨年初参加だったにも関わらず圧倒的な強さで勝利を納め、今年は「打倒ほぼ日」に闘志を燃やすチームが20組エントリーしました。

路上で試合が始まると、大勢の人が集まってきて熱い戦いを見守ります。
綱引きは短期戦ながらも選手も応援陣も一体感がぐっと生まれ、勝っても負けても楽しそうに讃え合う様子が微笑ましくもあります。

トーナメント一巡目の最後には、ついに前回王者・ほぼ日ヒッパレーズが登場です。
いざ試合が始まると、完成度の高いフォームを披露(写真で振り返ってもきれいすぎる)。強さも圧倒的でギャラリーからは「なんか息が揃いすぎててぞくぞくする…!」との声も聞こえてきました。

決勝戦は、パワー系のメンバーが集まる安田不動産チームと、年齢の幅が広いほぼ日チームの戦いに。ギャラリーが一層増え、勝負の行方に注目が集まります。

3本勝負の末、優勝はほぼ日に!決勝まで油断も隙も与えない強さを見せ、会場を大いに盛り上げてくれました。この高い壁を破ることはできるのか…来年の大会もいまから期待されます。

[そ]れちょうだい!街のみんなで運を競って大盛り上がり。

白熱した綱引き大会の後は、最後の催しのお餅配り。400個用意のあったお餅たちが、みるみるうちに街の皆さんの手に渡っていきます。

しかしこのお餅、ただのお餅ではありません。袋に意味深な番号が書かれた紙が入っている…と思ったらくじ引き大会がスタート。

町会長が番号を引き、当たった人が景品をもらえるということで会場が息を呑んで番号を見守ります。景品は、今年神田錦町にオープンしたThink CoffeeのコーヒーチケットやJINSが手掛けるONCA COFFEEの詰め合わせ、神田ポートのお土産セットなど神田錦町にまつわるものでどれもほしい…。

会場の皆さん前のめりになりつつ、外れたとしてもちゃんと讃えて暖かな雰囲気に。一番最後の目玉景品・お掃除ロボットは女の子の手に渡り、微笑ましくくじ引きは終了。

最後は木遣りと神田一本締めで場がきれいに収まり、潔くお開きとなりました。

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振り返るとわずかな時間のご縁日でしたが、たくさんの人が次々に訪れ、ちょっとよそよそしく声をかけたり、初対面同士で笑い合ったりと、交流が生まれる場面をたくさん見ることができました。
「これも何かのご縁」とは言ったものですが、縁のはじまりはきっとこれくらい些細なことかもしれません。

道路や駐車場を封鎖したり、おめでたい人をみんなでお祝いしたり、この街らしさが溢れた「神田錦町 ご縁日」。ここで得たご縁を通して、この街の一員であることを改めて感じるとともに、神田錦町の今後がぐっと楽しみにもなるひとときでした。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Mariko Hamano

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