なんでもアカデミック!|聖地であり、沼。カレーから見る神田の街

「学問の街」と呼ばれる神田。
それは大学や書店が多く集まっていることから来ていますが、学問という言葉が「知の体系」を意味するように、人々の学びへの熱量が絡み合ってきた街、とも言えます。

「なんでもアカデミック」は、そんな学びが深く根づくこの街で、多様な分野で活動する方々とあらゆるものをアカデミックに捉えて掘り下げていく企画です。

第一回目は、神田といえば学問よりもこの印象の方が濃いであろう「カレー」がテーマ。
ゲストには「神田カレーグランプリ」の発起人である中俣拓哉さんを迎え、神田と秋田を拠点に“学びのアップデート”に取り組むナビゲーターの丑田俊輔さんとともに、グルメな視点とは異なる角度で掘り下げていきます。
さあ、聖地であり沼でもあるカレーの街へ繰り出しましょう。

中俣拓哉さん

神田カレー街活性化委員会委員長/株式会社ロハスコミュニケーションズ代表。2006年、東京・神田でサプリメントや化粧品の企画製造販売会社を起業したのをキッカケに、神田の街づくりに関わるようになる。2011年秋に第1回神田カレーグランプリを企画・実施。加えて2014年より神田カレー街食べ歩きスタンプラリーを毎年開催している。今ではカレーの素晴らしさに魅了され、カレーの街としての神田を広めるとともに、日本文化としてのカレーを世界に発信していきたいと考えている。

丑田俊輔さん

神田錦町の公民連携まちづくり拠点「ちよだプラットフォームスクウェア」を運営。日本IBMを経て、新しい学びのクリエイティブ集団「ハバタク」を創業し、国内外を舞台に様々な教育事業を展開。2014年より秋田県五城目町在住。遊休施設を遊び場化する「ただのあそび場」、住民参加型の小学校建設や温泉再生、コミュニティプラットフォーム「Share Village」等を手掛ける。幼少期は頻繁に父に連れられて、神田神保町で書店とカレーを嗜んでいた。

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INDEX

STUDY1 カレーは社会のコモンズ
STUDY2 カレーから見る街の境界線
STUDY3 神田は趣味嗜好を掘り下げる街
余談 神田~飯田橋エリアの「カレー散歩」

●STUDY1 カレーは社会のコモンズ

神田カレーグランプリは2011年からスタートし、参加店舗は125店(※2022年度)にものぼります。IT企業が集積するシリコンバレーのように、神田はもはやカレー文化圏として先端的な場所とも言えるのではないでしょうか。

丑田 僕は神田の他に秋田にも拠点があるんですが、実はそこでまちのカレー好きを集めて古民家で食べる企画をやってるんです。神田の規模とはまったく異なりますが、カレーはおじいちゃん、おばあちゃんから子ども達まで垣根なくつながることができるプラットフォームだなと感じます。
神田カレーグランプリも「カレー」というコンテンツだからこそのパワーが働いていると思うのですが、中俣さんがカレーを中心に企画しようと思ったきっかけには何があったんですか?

中俣 私はもちろんカレーが好きです。けれど、カレーマニアだからイベントを立ち上げようとしたわけではないんですよ。
元々は15、6年前に起業したばかりの頃、たまたま神田の活性化の仕事に関わることになり、B級グルメとカレーを掛け合わせたイベントを企画したんです。ところがお客さんの反応はカレーにばかり集中していて。そんなにみんなカレーが好きなら、いっそカレーだけを集めた企画をしようと思ったんです。

丑田 カレー縛りとはいえ、参加している店舗はかなり幅広いですよね。

中俣 最初の3年くらいは20店舗集めるのもやっとでしたが、いまでは120店以上に増えました。独立店や専門店だけでなく、チェーン店やおそば屋さんもいますね。「美味しいカレーを食べてもらおう」という思いがあれば、どんなジャンルのお店でもOKというスタンスです。

丑田 その寛容さってすごく重要ですよね。思いがあれば何でも誰でもOKという枠の広さによって巻き込まれる人もいるでしょうし、なんだか神田カレーグランプリの求心力が見えた気がします。
あと、神田だけでなく、下北沢・十条・金沢・横須賀など、さまざまな地域でカレーで街を活性化する取り組みが広がっていますよね。

中俣 そうですね。このイベントの良いところは、似たことをしていても競合にならないんですよ。

丑田 おお、なるほど…!

中俣 積極的に真似してくださいと言っているくらいです。下北沢が盛り上がっているからといって、神田が下火になることはないんです。むしろ各地と連携を取れるところがすごくいいなと思いますね。

丑田 いまのお話、カレーとアカデミックというテーマにすごく繋がる気がします。
神田は「学問の街」と言われているように、大学が多くあって、全国から人が集まって、学んで、交流して、また散っていく、というのを繰り返してきたアカデミックな土壌がありますが、神田で育まれた知が広まっていく様子が神田カレーグランプリの動きとすごく似ていますよね。

基本的に教育機関で研究されたことはオープンソースとなって、社会のコモンズとなりますが、カレーグランプリの仕組みもまさにそれだなと。
ベースとなる取り組みをリスペクトしつつ、それぞれ自由に使って盛り上げていこう、というスタンスってとてもアカデミックですよね。
思いがけずテーマに着地できました(笑)

●STUDY2 カレーから見る街の境界線

そんな神田カレーグランプリが展開するスタンプラリーの地図を見ると、まず気になるのはその範囲。店舗の数はさることながら非常に広範囲です。確かに神田は広いけれど、明らかにそれ以上に広いのでは…?

(神田カレー街食べ歩きスタンプラリー MAP)

中俣 エリアについてはよくご指摘を受けます(笑)ただ、イベントの目的は街を盛り上げること。神田で一番を決めることではないんです。なので旧神田エリアを中心に、神田から少し離れたお店も加盟しているんです。

丑田 日本橋や飯田橋まで入ってますもんね。

中俣 実際に参加する人は『神田はここからここまでだ』と細かくエリアを意識しませんし、厳密に線引きをしても誰が得するわけでもありません。それよりも美味しいカレー屋さんを知ることができればwin-winだと考えています。

丑田 確かにそうですね。日本のカレーはいろいろなジャンルがあって、世界一自由なスタイルだと思うんです。さまざまな文化をミックスさせて良い塩梅を探す独自の島国での進化をしていて、ルールもありません。
そういうカレーが持つ自由さや自然発生的に何かが生まれるところが、このイベントのあり方に繋がっている気がしますね。カレーグランプリを通して神田を見ると、自由でいいなあと思います。

●STUDY3 神田は趣味嗜好を掘り下げる街

ここまでカレーの自由さが街を盛り上げる機能として大いに影響していることが見えてきました。ところでなぜ、神田という街にここまでカレー文化が根付いているのでしょうか。

中俣 神田の特性とカレーがマッチしているのだと思いますね。古本・スポーツ・楽器や、秋葉原方面まで足を伸ばすとアニメ・マンガなどの文化も混在するこのエリアは、個人の嗜好を追求して楽しむ街と言えますよね。
カレーもそうで、それぞれ好きなカレーは違います。家庭のカレー、ナンで食べるインドカレー、スパイスの効いたカレーやボンディのような欧風カレーもある。そういった趣味嗜好にこだわりを持つ人との親和性があると思いますね。

丑田 そう聞くと、カレーっていかようにでも探究できる「偏愛のプロダクト」ですよね。
神田にはつくり手からカレーファンも集まっていて、熱烈なコミュニティがカオスに混在しているおもしろさがあります。

中俣 本好きに行きつけの本屋さんがあるように、カレーにもそれぞれの行きつけがありますもんね。

丑田 そこに対して神田カレーグランプリは、スタンプラリーのようにコミュニティをホッピングするような仕掛けもあって、それぞれの文化が溶け合うような感じもします。

中俣 新しいカレーと出会うのって楽しいですからね。スタンプラリーも120店以上ありますが、すべて制覇するマイスターも結構いるんですよ。
参加者の熱も年々高まっていて、追求しがいのある街ですね。

●余談 神田~飯田橋エリアの「カレー散歩」

神田とカレーの話を深めた後は、実際に街に繰り出すことに。
まずは、神田カレーグランプリの聖地とも呼ばれるイベントの会場、小川広場に向かいます。

道すがら見えてきたのは、『神田カレーグランプリ』初回での優勝店「ボンディ・神田小川町店」。笑顔で何かを指さす中俣さん。

よくよく見ると

第一回目の賞状が飾ってあります。
はじめたばかりの頃は参加店を集めるのに苦労したそうですが、回を重ねるごとに重みを増す賞状です。

道中も、スープカレーが美味しいバーや最近できたスパイスカレーのお店など、あちこちの情報を教えてくださいます。
普通に歩いてるだけだと気付けないお店もあり、街にカレーが潜んでいる感じが探究心をそそります。

ビルの間を進んでいくとぽっかりひらけた空間に到着。ここが神田カレーグランプリの会場、小川公園です。
「今年は3年ぶりの開催でどのくらいご来場いただけるのか不安でしたが、入場規制を行いながらも2日で3万人以上の方に集まっていただけました。小さなお子さんからご年配の方までカレーを楽しんでいるたくさんの笑顔をみると、やっぱり食のイベントっていいなってあらためて思いました」と中俣さん。
マイスターやカレー好きのボランティア、近隣の学生の方が手伝ってくれるようで、街全体でイベントをつくっている感覚だそうです。

続いて、激戦区へ。

「スパイスキッチン」「ヒナタ屋」「エチオピア」「鴻」「豚バルピッグテイル」「べっぴん舎」「キッチンカロリー」「MAJI CURRY」と、新旧織り交ぜた有名店が並びます。

「この並びはアツい。古びた店構えも美しいですね…」と、絶景を眺めるような二人。

その後もカレー店を何度も横切っていきます。

神田とカレーの話に花を咲かせながら進んでいくと、どーんと大きな看板が目印の2015年のグランプリでも話題になった「上等カレー」が見えてきます。
ここはもう飯田橋駅のすぐそば。確かに街の境界を意識することなく、たどり着けてしまう距離です。

神保町から飯田橋エリアまでのカレー店を巡る街歩きもこれにて終了です。
時間にして約30分。ほどよい運動になるのでカレーのはしごにもぴったりかもしれません。

「カレー店を見ながらあるくと、街の景色が違って見えますね」と言いながら、最後に写真をパチリ。

神田とカレー。お馴染みの関係になっている2つですが、カレーの奥深いカルチャーと街の歴史が絶妙に絡み合っていることが見えた今回のトーク。
神田が持つ自由でさまざまな文化を包みこむ魅力に惹かれ、それぞれのカレーを追求するお店が集い、街もカレーも愛するファンが通うのは自然なことかもしれません。
集まる人をまるっと受け入れて引き込んでしまう街をカレーと一緒に探究してみませんか。

Text: Satori Fujiko
Photo: Yuka IKENOYA(YUKAI)
Edit: Akane Hayashi(BAUM)

Title Design: Kosuke Sakakibara(BAUM)

神田いらっしゃい百景|カレーハウス ボルツ

神田の街を歩くと次々に目に飛び込んでくるお店たち。色とりどりの看板や貼り紙は、街ゆくすべての人に向けて「いらっしゃい」と声をかけているようで、街の人の気風を感じることができるでしょう。

神田いらっしゃい百景は、街に溢れる「いらっしゃい」な風景をご紹介します。

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カレーハウス ボルツ 神田店
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3丁目17
アクセス:
地下鉄神保町駅より徒歩4分
地下鉄竹橋駅より徒歩4分

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ようこそ発見|この街で過ごす共立女子大生と立ち止まる「じっと見てみると、出会う体験」

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何百年も前から続くものと、新たな風を吹き込むものが入り混じる街、東京・神田。立ち並ぶビルの隙間に入り込めば入り込むほど、さまざまな出会いが待っています。
そんないくつもの楽しみが潜む街を、さまざまな視点で探るべく立ち上がった企画「ようこそ発見」。学生が主役となって街のあらゆる一面を発見するワークショップを行い、フレッシュな見方をお届けしていきます。

「わたしの好きな場所」をテーマに、カメラ片手に街に繰り出した昨年に続き、共立女子大学の建築学科の学生のみなさんとこの街の観察をするワークショップを行い、8月6日から31日までの間、神田ポートビルにて作品を展示しています。


今年のテーマは「じっと見てみると、出会う体験」です。これは、どこか自分が気になった場所で、わざわざ出来るだけ長くその場所から離れずそこに居ることから始まります。そして写真を撮ってみたり、スケッチしてみたり、「じっとその場をよく観察するように見て来てください。」というお題を元に、彼女たちが立ち止まって感じた光景を思ったり考えたりした、ことば達の発表です。

観察するようになにかをじっと見ることは、どこか忍耐のいる体験とも言えます。ただそこで、時に私たちは「モノを見ているようで、(本当は)見てはいない」ことに気づいてもらえたら、そこがあらたな出会いの場となることを期待したいと考えました。

いつもの日常を違った見方で見てみる。そんな出会いであったり、発見のための時間体験をおたのしみください。

神田ポートクリエイティブディレクター/写真家・池田晶紀


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この街で過ごす学生のみなさんが「街の観察」をテーマに制作した、写真とスケッチと言葉による作品たち。「じっと見てみる」ことで出会う気づきや感情の先には、彼女たちが学生生活を送る上でのこの街との独特の触れ合い方が垣間見えます。学生と神田に潜む魅力とそれを掘り起こす手法を探る「ようこそ発見」。次回もおたのしみに。

<展示概要>


#1 「地図+サウナ」|清水みさとさんと歩く、入谷から神保町まで1万歩コース

カレーの街として名高い、神田。学生が本を片手に、スプーン1本で簡単に食べられるということから、カレーの需要が高まったという。読書のおともにカレー、新幹線旅行のおともに駅弁、ドライブのおともに音楽。おともがあると、楽しみもぐっと増す気がします。この企画では「〇〇のおともに」をテーマに、あるものとあるものをたし算することで広がる神田のたのしみ方を、その道のプロフェッショナルをお迎えして紹介します。

第一回目にご登場いただくのは、屈指のサウナ好きとして知られる女優の清水みさとさん。実は彼女、意識的に1日2万歩歩くという”さんぽのプロフェッショナル”でもあります。後に入るサウナをより気持ちよく味わうために、Googlemapを片手に歩きまくる━。脚ががクタクタになるまで歩いたのちに到達する最高の”ととのい”とは。サウナセンターから神田ポートまで、さんぽの達人が地図を片手に行く、大さんぽの始まりです。

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地図は”くすぐられる!”の記録と、”だいたい”の目印

「せっかくだからサウナを横断するルートで!」とみさとさんのご提案もあり、今回は外から神田に踏み入れるかたちで入谷からの出発。

いってらっしゃい〜!と手を振る吉田さん。

お見送りに来てくれたのは、都内サウナーの聖地「サウナセンター」の吉田秀雄さん。「ここから神田ポートまで歩くの!?」と驚かれつつ、元気よく送り出していただきました。

早速スマホを取り出すみさとさん。と、ここで驚きのひと言。「実は今日の朝で1万歩歩いていて!新宿から次の仕事がある渋谷までなら歩けるなって」

どこかに行く時は最寄り駅ではなく目的地まで徒歩30分圏内の駅で降りることを習慣にしていたり、1時間半以内で歩ける範囲を自分の”だいたい歩ける円”として地図上で把握していると言います。忙しい合間をぬって歩くことはもちろん、早起きをして1日のスタートを早めにきることで意識的に歩く時間を確保しているんだとか。

次に地図アプリを開き、大まかな道順を考えます。

現在地から神田ポートまでを調べると57分。「1万歩歩くには大体1時間40分」とさらりと教えてくれて、寄り道をしながら歩くことに。

地図には、みさとさんが普段のさんぽで気になったお店や、知人からのおすすめされた場所が「お気に入りスポット」としてピンで登録されています。その数なんと、700個以上!今回はその中から、入谷から”だいたい”南下したところにあるかっぱ橋道具街(以下、かっぱ橋)に惹かれ、歩き出します。

荷物はトートバッグに、貴重品は斜めがけのサコッシュに入れて持ち歩くと両手が空いて、スマホも取り出しやすい
「道を間違えても全然気にしないですね。だいたいの方向に進んでいって、時には道順にはない歩道橋に上がって眺めを楽しんだりして。”だいたい”だから土地勘も育つんだと思います」
●広く見て、ときには足を止める

みさとさんの穏やかなおしゃべりと軽やかな足取りに誘われるままあっという間にかっぱ橋の入り口に到着。

包材、家具、電子器具、キッチン用品。業務用の大型製品から小さな雑貨までが揃い、食品のプロから長年にわたり愛され続ける問屋街です。

かっぱがモチーフの「かっぱ橋」
到着〜!
店頭に並べられた不揃いな小瓶。なんだか見覚えのある模様も

目を引く品々が並んでいるとついついお店に注目してしまいますが、実はこの通り、道路の向こう側の景観にもレアな面白さが。窓側にとんでもない数でマネキンがずらりと並べられたショーウィンドウや、巨大なカブトムシが外壁を這うマンション…。どうやらみさとさんも気づいたご様子。

左右上下、360度見渡しながら、時には歩みを止めながら街に目を向けると、小さな驚きやたのしみに出会えるのかもしれません。「信号で止まるときも何かあるかなとついついキョロキョロしてしまいます」とみさとさんも言います。

“偶然”に会いに行く、余白の時間

かっぱ橋を過ぎ、浅草を超え、田原町駅にあたったところで、そろそろ神田を目指して東に方向転換。日も強まり、だいぶ温まってきました。

そもそもみさとさんはいつからそんなに歩くようになったのでしょうか?女優というお仕事柄、体型維持という理由も予想がつきますが、彼女にとって歩くことは今の忙しいシティライフを送るなかで自然と習慣づいたと言います。

「サウナもさんぽも言わば無駄な時間。だから目的がないことを避けたり、常になにかしなきゃ!と日々考えている人からすると、すこし怖い時間だと思うんです。でもその余白の時間を自ら確保しにいくことで、予想外の景色に出会ったり、たまたまその場に居合わせたひとたちの交流が生まれる。偶然が生んだ産物がそこらじゅうにあって、その体験にくすぐられるんですよね。くすぐられたいからさんぽを選ぶ、という方が的確かもしれません」

田舎の広さや穏やかさはないかもしれませんが、一歩踏み出せば何かしらが待っている、疲れたら電車にもすぐ乗れる「都会」だからこそ、歩くことがルーティンになり得るようです。

後ろには中央線の電車。「田舎ほど歩けないんですよ、不思議なもんで!」
神田に突入。秋葉原駅を超え、万世橋でひと休み。ビル群の間からのぞく夕日が美しいスポットです
●歩いて自家発電! 摂取と発散は同時にする

神田エリアにようやく踏み入れ、そろそろ小腹もすいてきた頃。甘味好きのみさとさんもしっかり地図上にピンを落としていた、あの有名店に入店。

神田淡路町の「近江屋洋菓子店」。昔ながらの洋菓子・ケーキ・デザートはシンプルでありながらとても可愛らしい。季節毎に販売されるケーキに使用されるフルーツは毎朝青果市場で仕入れているという
食べる場所に迷っていると、すぐ側にちょうどよさそうな広場を発見
「ワテラス(WATERRAS)」
選んだのは「白苺のタルト」。箱から取り出しただけで甘酸っぱいフレッシュな香りが漂います
木漏れ日の下、ケーキを食す。幸せ

気づけばゴールまであと少し。エネルギーも補給したところでまた軽やかに歩き出します。

自分の体で自分をあたため続ける、さんぽ。「じわじわ暑い、蒸されている」という感覚はサウナを思わせるほどです。ただ違うのは、自分自身が熱源となり、摂取と消費を繰り返すことで身体の循環を生み出しているということ。

歩くことで身体と心が軽くなることを日々実感するというみさとさん。その偉大さにあまりにも感銘したのか、思わず「歩く(スペース)すごい」でネット検索をしたこともあると話します。

「『偉人はだいたい歩いている』という記事が出てきたときはすんなり納得しました。フィンランドでビジネスミーティングをサウナの中で開く文化に見られるように、何かを取り入れるときに同時に発散もできていれば、受け皿に常にスペースがある状態でインプットを迎え入れられるんだと思います。さんぽも似てますよね」

さんぽ旅も終盤へ。西日が差す、神保町の「神田すずらん通り」
お昼どきの賑やかさも落ち着いて、とても歩きやすい
言わずと知れた本の街、神田。長い年月をかけすっかり街に馴染んだ老舗古書店に立ち寄り、本の手触りを楽しみます

すずらん通りを抜け、神田ポートを目指す間のオフィス街に突如現れた緑のトンネル。新緑に囲まれ、季節を感じながら外でのひとり時間を確保することができるのもさんぽの醍醐味です。

よい”気”を感じる場所では一足を止め、頭を休める時間をとります
オフィス街でも自然と触れ合えるよう、神田には多くの植栽が。日陰がありがたい
この道は見覚えがある…ということは…?

そして「ゴ〜〜〜ル!」神田ポートに到着しました!玄関先のベンチに腰を降ろすと、心地よい脚の重みを感じます。万歩計アプリを確認すると、しっかり1万歩歩いてる…!達成感に満たされる編集部ですが、よく考えればみさとさんはこの倍歩いているのか〜、と感心を隠せません。

神田ポート前で記念写真。まだまだ歩けそうなみさとさん
今日もたくさん歩きました
ここからも楽しみどころ。体がまわっているままサウナに直行します
●”ととのう”とは自分にとって”ちょうどいい”状態

さんぽを終えたその足でサウナへ直行したみさとさんに今日の感想を伺います。

「たくさん歩いた状態でサウナに入ると、ととのった状態に達するのがいつもより早いんです。ゆっくり運動をしたことで体はすでに循環しているし、頭の中も整理できている。いつもはまずは体を温めることやあちらこちらに向いている気を落ち着かせることから始まりますが、直前まで歩いていると、その工程をある程度スキップしてサウナに入れるんですよね」

ととのった状態までなかなかいかず、サウナは暑くて苦手だと感じるひとにも、歩くことでまた違った体感があるのかもしれません。そもそも”ととのう”とはどういうことなのでしょうか。みさとさんいわく、それはあくまでも「自分にとってのちょうどいい状態」だと言います。

「それぞれの感じ方があって当たり前。暑い興奮状態から急に冷却されたときに起こる身体の急転で飽和状態になることを『ととのう』というひとも多いと思います。ただ私にとってそれは体の嫌な熱が放熱されて、自分にとってちょうどいいバランスが取れている状態。サウナに入って水風呂から上がったときの均衡感覚を日常にもいかしたいと思っています。最終的には自分が気持ちよければよい気がしますけど!サウナもさんぽもそういうことじゃないですかね」

SaunaLab Kandaの休憩スペース。まるで湖のほとりで森林浴してるような心地よさ
湯上がりにはお土産で買った、近江屋洋菓子店の名物「フルーツポンチ」をいただきます
大ぶりの果物にすっきりとした甘さのシロップが絡む絶品

入谷から神田まで、地図を片手に1万歩。あえてスタート地点を遠くしたり、”だいたい”の方向を把握したり、気になる場所を記録したり、さんぽをたのしむ上での地図の使い道はまだまだありそうな予感がしました。普段は電車で通り過ぎるためにまだ知らないあの場所や、忙しさのあまり後回しにしてしまう自分と向き合う時間は、案外”歩く”というシンプルな選択を通して、毎日のなかに取り入れられるのかもしれません。

自分にとっての”ちょうどいい”心地よさを求めた先に、サウナと歩くことで毎日の循環をつくりだしているみさとさん。「地図のおともにサウナ」。聞き慣れない響きですが、その相性はかなり良さそうです。

さて、次は神田でどんな〇〇+〇〇をたのしみましょうか。

第2回「皇居でととのう時代 〜末期〜」

休憩のその先にある「大休憩」。
このコラムでは、写真家・池田晶紀が神田の街で出会った大休憩へと誘うあれこれをご紹介します。

●前回の記事はこちら
「皇居でととのう時代 〜前期〜」
「皇居でととのう時代 〜中期〜」
「皇居でととのう時代 〜後期〜」

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しかしながら、こうして季節の移ろいをたのしむなんていうのは、
子供のころには全くなくて、

じ~~~と、こう、ひかりを見ているなんてことも、随分とひさしぶりだし。

暇じゃなきゃ出来ないのであれば、暇という名の休憩をつくることが、
おもしろい発見なんだなあ〜と。。。(じわじわ〜と、ととのってキマシタ!)

決めました!導かれるように本日の大休憩のととのイスはこちらで。
(失礼します。。。もうフラフラなの)

な〜んか、西日とセットで意思も別世界になってきたところで、
さっき通ってきた城跡の石組が、遠く昔の記憶のようで、
頭の中で、この石碑にもう、いっぱいおかわりロウリュを〜〜〜!

この神様がくれた時間が、大休憩です。
やりすぎにご注意を!(冷えます)

(おしまい)

池田晶紀(いけだ・まさのり)
写真家。写真とデザインの会社「ゆかい」主宰。神田ポートビルクリエイティブディレクター。フィンランドサウナクラブ会員、サウナ・スパプロフェッショナル管理士、シェアリングネイチャー指導員、水草レイアウター。

タイトルロゴ:よシまるシン

第2回「皇居でととのう時代 〜後期〜」

休憩のその先にある「大休憩」。
このコラムでは、写真家・池田晶紀が神田の街で出会った大休憩へと誘うあれこれをご紹介します。

●前回の記事はこちら
「皇居でととのう時代 〜前期〜」
「皇居でととのう時代 〜中期〜」

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カメラ持ってきてよかった〜
写真の撮り歩きがすっごく楽しめたりもできる。。。

構造物すご!

都市とデザインされた植物の対比すご!

それにしても、植物の居場所というは、なかなかなのよね〜
こんな立派な石組の隙間から

さらにそれにしても、
人の居場所というのも、大したもんだな〜
心地良いをところにちゃんといるもんな〜

(つづく)

池田晶紀(いけだ・まさのり)
写真家。写真とデザインの会社「ゆかい」主宰。神田ポートビルクリエイティブディレクター。フィンランドサウナクラブ会員、サウナ・スパプロフェッショナル管理士、シェアリングネイチャー指導員、水草レイアウター。

タイトルロゴ:よシまるシン

第2回「皇居でととのう時代 〜中期〜」

休憩のその先にある「大休憩」。
このコラムでは、写真家・池田晶紀が神田の街で出会った大休憩へと誘うあれこれをご紹介します。

●前回の記事はこちら
「皇居でととのう時代 〜前期〜」

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ふわぁ〜、もういきなり別世界というか、
気づけば自分の歩幅も
歩く速さまで、ゆったりとした贅沢な空気に移り変わっていきます。。。

すごい。。。

ひゃ〜〜〜っ、木々がこんなにのびのびとしていて、
しかも、上品で美しい。。。
光までデザインされているようだ。

そうか〜、日本を代表するような植物がたくさんここでは管理されていて、
四季折々を楽しむデザインを歴史とセットで味わえる。

奥深いぞ〜〜〜〜!これは。
どなたか先生はいませんか?

(つづく)

池田晶紀(いけだ・まさのり)
写真家。写真とデザインの会社「ゆかい」主宰。神田ポートビルクリエイティブディレクター。フィンランドサウナクラブ会員、サウナ・スパプロフェッショナル管理士、シェアリングネイチャー指導員、水草レイアウター。

タイトルロゴ:よシまるシン

神田未来妄想談義 at ちよだプラットフォームスクウェア

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さまざまなオフィスビルが立ち並ぶ神田の街に、日本におけるコワーキング文化の先駆けとなるシェアオフィスがあります。
その名も「ちよだプラットフォームスクウェア」。「シェア」という言葉がまだ新鮮味を帯びていた2004年、神田錦町3丁目に誕生しました。以来、新たなビジネスや文化を生み出していくための拠点として、多様な人や地域と混ざり合う場所となっています。

そんなちよだプラットフォームスクウェアは今年で創立17周年。シェアオフィスとしてはベテランですが、人間でいうとまだまだフレッシュな年頃。新型コロナウイルス感染拡大が様々な影響を及ぼす中、シェアオフィスとして街の一拠点として今後どうあるべきか、ひいてはこれからの神田の街や都市のあり方、一人ひとりの働き方がどう変化していくのか、重要な岐路に立たされているとも言えます。
そうした未来について、シェアオフィスらしくさまざまな人とオープンに模索するべく、神田にゆかりのある方々が集まって鼎談会が開催されました。

ゲストとして登壇されたのは、元東京都副知事であり、都市政策を研究する青山佾さん(明治大学名誉教授)、2020年秋に神田錦町にオフィスを移転された糸井重里さん(株式会社ほぼ日 代表取締役社長)、神田淡路町や錦町のまちづくりに取り組む須川和也さん(安田不動産株式会社 常務執行役員)。
そしてちよだプラットフォームスクウェアを運営する丑田俊輔さん(プラットフォームサービス株式会社 代表取締役社長)をモデレーターに、まだまだ試行錯誤の途中にあるこれからのオフィスや街について、その答えに近づく一歩として、さまざまな立場や視点から考えを深める場となりました。

神田の知られざる魅力やポテンシャルの話に始まり、これからの暮らしや街のあり方にまで幅広く展開されたこの談義。いくつかのトピックとともに今後のヒントとなるお話をご紹介します。    

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●意外と知られていない神田のあれこれ

まずは、ゲストの方それぞれ研究者、クリエイター、デベロッパーという全く異なる立場で神田と関わっているということもあり、各々から見た神田の良さについて語りました。

1.街自体が人懐っこい

2020年秋にオフィスを移転したばかりの糸井さん。神田に来てまだ日は浅いですが、街を歩いていると気さくに話しかけてくれる人が多いようで、この日もご近所の方がたくさんいらしていました。

「そういう身近なやり取りがあることで地域を感じるというか、街自体が人懐っこいですよね。自分はこの場所の人間なんだと思える理由がたくさんあるなと思います。
それに、神田は人が暮らしている匂いがちゃんとする。移転を考えたのも、人の日常や生活がある街に会社を構えたかったからなんです。だから思っていた通りで、毎日やってくるのが楽しみなんです」(糸井さん)

2. 意外と近くて、意外と広い

続いて都市計画に関わる須川さんと青山さんは、神田には地理的なおもしろさがあると言います。

「神田という言葉から思い出すのは、JR神田駅周辺が多いと思います。でも実際に来てみると、神保町や錦町、それから駿河台も秋葉原も全部神田です。かなり広いし、場所によって性格も異なっていて、そのあたりは何度訪れてもおもしろいと感じます」(須川さん)

「向かう方角によって景色が異なりますが、まさにそこが神田の良さですよね。大手町も東京駅も歩いていけますし、秋葉原や御茶ノ水も意外と近い。他のメジャーな街でも、駅から5分歩くともう商店街が途切れしまうといったことがありますが、神田はさまざまな街につながっている。この実力を生かしてくことが、さらに神田の魅力を高めると思いますね」(青山さん)

「神田には長い歴史があって、広い地域の中にいろんな要素がたくさん残っている。神田に含まれるそれぞれの地域の人たちが連合国のように自分は神田の人間だと思っていると逆にポテンシャルとなるんじゃないかなと思いますね」(糸井さん)

●まだまだある、神田ののびしろ

人々の生活が根付いているからこそ、各地域の個性が立っている神田。一方で、まだまだ活かしきれていないポテンシャルがあるようです。

1.23区内でも圧倒的に広い道路

青山さんは、都市計画の視点で東京の他のエリアにはない神田のポテンシャルを指摘します。

「神田に長く関わる中で、いろいろいじった方がいいと思うことの一つが道路。まず神田地域は道路面積率がとても高いんです。東京の23区に占める道路面積の割合は16%ですが、千代田区は圧倒的に高くて28%ぐらい。そういった状況なので、私が参加している神田駿河台まちづくり協議会では、15cmずつ歩道を広くしてきました。やはり人が歩きやすい街になると神田のこの一体性がさらに増すので、そういったことを考えていかなくてはいけないと思いますね」(青山さん)

2.鮭理論と学生寮

神田淡路町のエリアマネジメントにも関わる須川さんは、ワテラスという施設での取り組みを通して期待されていることがあるようです。

「2003年問題が騒がれていた頃、神田の中小ビルからもテナントがいなくなってしまうのではないかという話があり、そうした中小ビルをコンバージョンして学生マンションに転用しようということを考えていた地元の方がいらっしゃいました。その考えを基にワテラスに学生マンションを導入しました。このあたりは大学が多いので需要も見越していましたが、主な狙いとしてあったのは10年20年と長期的なタームで考えて、街にゆかりを持った学生を増やすこと。鮭理論と呼んでいましたが、鮭が生まれ育ったところにまた戻ってくることと同じ発想です。

学生が関われば、神田の賑わいにも資するんではないかと考えて、ここに住む学生は街の取り組みに参加してもらうようにし、自主イベントも盛んになっています。OBOGも増えてきて今後何らかの付き合いができることが楽しみです。息の長い話ではありますが、こうした取り組みは大事だなと感じていますね」(須川さん)

3.観光地としての要素

糸井さんは、外からの目線で、神田の見え方、魅力の伝え方をお話くださいました。

「引っ越してきてから遊びに来てくれる友達みんな、来てみたらいい街だねって言ってくれるんです。特別な場所に行ったわけじゃないけど、ぶらぶらしてるだけでこの街ならではの雰囲気を感じられるというか。観光地的な側面を神田が持っているんじゃないかと思います。
その理由のひとつとして考えているのは、家賃を払わなくていい人が多いので、利益にそこまでガツガツしなくていいところがある。そういう人たちが混じっていることでできている雰囲気なんじゃないかって思うんです。

一方で、利益を出そうとすることで、外の人の行き来がたくさん増えていいんじゃないかとも思いますね。ポツポツとでも人が集まる観光地が混ざらないと、やっぱり街として伸びない。それはどの場所も同じで、ちょっと神田にいってみようかという観光の要素がこれから大事かなと思っています」(糸井さん)

オフィス街としてのこれから

オフィスビルが集積する神田の街。住む人よりも働きに来る人が多い中で、働く場としてどうあるべきか。登壇者の皆さんが仕事の場として何を感じているのかお聞きしました。

1.質的に異なるオフィスのニーズが増える

そもそもオフィス全般の話として、実際のところどういった状況になっているのか。須川さんと青山さんから意外なお話が繰り出されます。

「コロナウイルスの影響でオフィスが今後どうなっていくのか、まだ何とも言えません。現状としてはオフィスを退去したとしても、同じエリアの別の場所に移転したり、増床するケースもあります。
リモートワークの便利さを受け入れつつ、コミュニケーションの質が見直されているように思います。やはり仕事においては他の人がどういった顔をして話を聞いているかだったり、なかなか言葉で説明できないようなノウハウが大事なので、オフィスがまだ減っていない状況につながっていると思います」(須川さん)

「リモートワークの浸透でオフィスの需要は増える要素の方がちょっと多いんです。なぜかというと、再びオフィスに人が集まるというときに、換気対策をきちんと取る必要が出てきます。天井を高くして、部屋の空気のボリュームを増やし、換気を良くする、といったことが求められるので、より床面積のあるオフィスビルを建てなければいけなくなりますよね。リモートワークが進み、地方移住する人もいますが、東京都心のニーズが減るわけではなくて、むしろ質的に違うニーズが求められているんです。なので、これまでとは異なるビル、あるいはマンションを提供していくことが必要になる。常に時代に合わせて、質的な変化に対応していくまちづくりが必要だということを強調しておきたいと思います」(青山さん)

2.コロナに問わず感受性を引き出す環境をつくる

そうしたオフィスの現状を受けつつ、糸井さんはぶれずに考えていることがあるとお話しします。

「コロナはあまりにも大きいニュースだったわけですが、だからこそ足をすくわれないようにしようと考えてましたね。どんな時代でもやりたいことは変わらないと思って、人が元々持っている力や感受性をどう引き出せるかということばかり考えていた気がします。
いまのオフィスはフリーアドレス制になっていますが、コロナは関係なくやろうと思ってました。交じり合うことがすごく大事だと思っていたので。ただ、人って自分の場所というのを確保しないと嫌なので、ロッカーだけは個別に持てるようにして、プロ野球にあるようなロッカールームをつくりました。
結果としてコロナの時代に合っていたかもしれないんですけど、人の快適さをどんな時期でも考えようと思っていたのがよかったような気がしますね」(糸井さん)

〜〜〜〜〜〜〜

2時間の談義は、縦横無尽にお話が繰り広げられて、あっという間に終了時刻に。
最後は参加者の皆さんへ、同じ神田に関わる立場として問いかけしていただき締めとなりました。

「神田はこうした都心で、元々住んでいる人がいまでも多く商店や事業を営んでる一方で、大学や企業が立地してるというとても珍しい地域。まずそういう良さをこれからに生かしていくということが大切だと思います。すでに神田地域の勉強会なんかは、街場の人が積極的に発言できる場として機能しています。必ずしも既存の法律や都市計画の手法ではない、民主的なまちづくりがもっとできるように、神田から発信していきたいと思っています」(青山さん)

「この神田のエリアでまちづくりは、基本的に地元の方々が集まって膝をつき合わせながら話をします。ただ、この街には住む人の他に働く人が非常に多く、街に関わる存在ですので、企業にも意思表示をするような機会があるといいのでは思っています」(須川さん)

「神田の街にはまだ足りていない部分もあるけれど、そうした要素も前に出していくことで応援したい人が増えていくんじゃないかと思いますね。何かのモデル地域になるというか、神田ができたんだから自分たちもできると思ってもらえるような可能性を持ちたいですね。神田から世界に問いかけることは、僕らいくらでもできるような気がします」(糸井さん)

神田の良いところも悪いところも赤裸々に語られた今回の談義。歴史が深く、確立されているようにも思える神田ですが、お三方それぞれの視点でこの街の可能性が語られました。

この日の談義は街の歴史にとっては束の間の出来事かもしれませんが、さまざまな視点からオープンに語られ、それをさまざまな人と共有できたひとときは、新しい神田につながる瞬間に立ち会えた気がしました。そしてこの話の続きは、これから街で体感できるのかもしれません。

オープンカンダでは、これからも街の会話に耳をすまして、神田に眠るさまざまな発見をお届けしていきます。

Text: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI)

第2回「皇居でととのう時代 〜前期〜」

休憩のその先にある「大休憩」。
このコラムでは、写真家・池田晶紀が神田の街で出会った大休憩へと誘うあれこれをご紹介します。

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さてと、
今日もサウナラボ神田でサウナに入り、じわぁ〜とあたたまって、
ぽかぽかの身体で「大休憩」を求めて街歩き。
どちらに行こうかしら?

そ〜いえば皇居の方ってあんまり歩いたことがない。
あんまりどころか一度もない!
よし、今日は、そっちだ!どっかいい外気浴できるところがあるかもしれない。

錦町という街の錦橋!
そこを渡れば皇居が見える。神田ポートビルから徒歩3分とかからない距離だ。

良さそうな椅子がありますね。でも、もっと先にいいのがある気がするぞ!

ほら!あった。今日はここで大休憩ということになりそうです。

いいラインのカーブで、見上げると木々のこもれびが。さすが皇居ですね。

ん!?ちょっと待って、ここ入れるの?

わっ!知らなかったわ〜入れるのね〜〜〜
では、せっかくなのでお邪魔します。
と、いきなり
門でかーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

(つづく)

池田晶紀(いけだ・まさのり)
写真家。写真とデザインの会社「ゆかい」主宰。神田ポートビルクリエイティブディレクター。フィンランドサウナクラブ会員、サウナ・スパプロフェッショナル管理士、シェアリングネイチャー指導員、水草レイアウター。

タイトルロゴ:よシまるシン

アートがそこにある理由|
サウナラボ神田に浮かぶ、小さなランドマークの話

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神田ポートビルに足を踏み入れると、さまざまなアートピースが設置されていることに気がつきます。空間を絶妙な存在感で彩り、それぞれ独立した作品でありながら、互いに心地よく調和しているのが印象的です。

中でも、地下一階のサウナラボ神田の休憩スペースでふと目に留まるのは、柱に設置された2つの不思議な形の作品。丸みがあってあたたかな印象を受けますが、周囲にはそこはかとなく緊張感も漂っています。
手がけたのは、アーティストの小木曽瑞枝さん。自然や日常の風景から作品を生み出してきた小木曽さんですが、こちらの作品はどのように生まれたのでしょうか。写真家であり、神田ポートビルのクリエイティブディレクターを務める池田さん、サウナラボのスタッフである岡さん、ジュンコさんとともにお話を伺いました。

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小木曽瑞枝(おぎそ・みずえ)
東京都生まれ。96年東京芸術大学大学院修了。平成19年度ポーラ美術振興財団在外研修員としてスウェーデンに滞在。風景の観察を通じ、未知と既知の狭間にある世界観を平面や立体、インスタレーション作品として発表。パブリックアート・コミッションワーク多数。https://mizueogiso.com/

●「ここ」を規定するために、小さなランドマークを置いてみる

――小木曽さんには神田ポートビルの屋上と、地下のサウナラボに向かう階段の部分にも平面の作品を制作いただいていますが、この「タテヤマ」と「ヨコヤマ」の2点は立体作品です。いろいろな形が組み合わさった、とても不思議な形をしていますよね。

サウナラボに向かう階段部分と神田ポートビルの屋上にある作品「山とその間」
サウナラボ神田の柱に設置された作品。右がヨコヤマ、左がタテヤマ

小木曽:これは山の形がテーマになっています。一昨年まで新潟県長岡市に6年暮らしていたんですが、長岡の景色の中には豊かな山があるんです。あるとき、自分が見ている山の裏側にも山があることをふと思い出して。当然ではあるけれど、見えていない側が、見えている側の裏にあるんだなと。そこから、表と裏がある、こちら側とあちら側でイメージの異なる作品をつくってきました。

神田ポートビルで作品をつくるとなって、ここの屋上から神田の街並みを見たとき「やっぱり山はないな」とは思ったんですけど(笑)。でも、神田ポートビルって「此処に居て果てを想う」場所だなというイメージがあって。

――「此処に居て果てを想う」……!

小木曽:サウナーの皆さんならわかっていただけると思うんですけど、いきなりそんな抽象的なこと言っても難しいですよね。そのイメージを皆さんにも共有しようと思って、今日は吉田篤弘さんの『つむじ風食堂の夜』という本を持ってきました。みなさんに朗読していただこうかなと。

同席したメンバーはそれぞれ本を手にとって、順番に朗読をすることに。作中では、登場する物書きの先生である「私」と、「果物屋の彼」との印象的な会話が繰り広げられています。





「つまりですね、果てを考えるということは、すなわち、ここを規定することになるんです。ここがどこまで続いているのかを示すことが出来れば、その先が果てですから」
「じゃあ、規定すればいいわけだね」
「いや、だから先生、さっき訊いたじゃないですか。ここってどこのことですか?って」
「ああ、そうか」
「でも、先生も僕も答えられませんでした」
「どうしてなんだっけ?」
「たぶん、こんなふうに考えれば考えるほど、ここがどこまでも拡大されてしまうからなんです。宇宙というのは、人が考えるぶんだけ拡がってゆくもので、それが怖いところなんです。だから仕方なく『果てはない』という結論を出してごまかすんですが、そうなると今度はここが消滅してしまいます。果てがないとなると、ここだってないわけですから」

吉田篤弘(2005)『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫、pp.166-167)



小木曽:いま自分が存在している「ここ」という場所を規定しないと果てがなくなるという捉え方が、さっきお伝えしたことをとても説明しやすくって。

岡:分かるかもしれません。サウナに入ると、自分がここにいるのを実感するというか……。

池田:絵を描く人って、見えないものを想像しているわけじゃないですか。それって、サウナに入って自分の内側を想像する、感じることにもつながっているのかもしれないですね。

小木曽:確かにそうかもしれません。でも、自分が「いまここにいるんだ」と実感することって、滅多にないですよね。ここにいるけど、頭は全然違うことを考えちゃうというか。だから、「ここ」を規定するためのランドマークを置きたいなと思ったんです。ランドマークといっても、東京タワーのように大きく目立つものではなく、小さな目印のようなもの。

小木曽: 作品は5つの石、エレメントから構成されています。原初的な要素を組み合わせてできた小さな山を、「事のはじまり」の山として、地下に埋めてみるのはどうだろうと。

――この丸みにも、意味があるんでしょうか。

小木曽:水によって薄く削られた浜辺の石とか、枯れてヨレヨレになった葉っぱとか、有機的な形に興味があるので、自然と丸みがある形になっているかもしれません。

ジュンコ:作品を初めて見たとき、頭の中で勝手に意味付けしちゃってました。温浴施設なので、男性・女性を意味しているのかな?とか(笑)。

小木曽:面白い!そうやって想像してもらっているのはすごく嬉しいです。

――側面の色は、どのように決められたのでしょうか。

小木曽:色は温度をもったものだと思っています。とても暖かく、とても冷たく、とても暗く、とても明るい色をつくりたくて。試行錯誤しながら最終的にこの色になりました。

小木曽:作品は、表面と裏面が両方見えるように、壁に突き出す形で設置することにしたので、側面に色を集中させています。板面のところは色は塗らずに、側面の間だけで見せる作品にしようと思って。

●取るに足らない、ひそやかな存在に惹かれて

小木曽:長岡にいた時よく行っていた温泉に、キジの剥製があるんです。あと、オルゴール調のJ-POPがBGMとして流れてる(笑)。それが自然、且つ主張する感じに目と耳に飛び込んでくる、その小さな断片がとても良いんですよね。取るに足らないものだけど、ないと味気ないものになってしまう。それがあるからちょうどいい、みたいな……。

――なんだかわかる気がします。動物の置物とかお花とか、普段そこまで意識しないけれど、ないと違和感があるようなもの。

小木曽:この作品もキジの剥製的ではあるんですけど、それで大丈夫だなと思って。自分が惹かれているのはこういうものなんだ、と。

池田:この影がいいですよね。今おっしゃっていたことも、影の存在が際立たせているように思います。

小木曽:影がないと、実態として形をなしていないことになりますから。すごくリアリティが出ましたよね。

池田:でも、「キジの剥製」って、わかりやすいですね。ほとんどの人は見逃しているかもしれないけど、気がついたらいるよねってもの。

小木曽:そうそう。何を置くかって、場や土地の特徴が色々と出るから面白いですよね。キジの剥製だって、もともとはその場所に生息しているキジだったり。今度温泉にいったら、ぜひ調度品とBGMを気にしてみてください(笑)。

Text: Mizuki Matsuzawa
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI)

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