#2「食+デザイン」|アートディレクターの秋山具義さんと、地元・秋葉原をめぐり直す。前編

カレーの街として名高い、神田。学生が本を片手に、スプーン1本で簡単に食べられるということから、カレーの需要が高まったという。読書のおともにカレー、新幹線旅行のおともに駅弁、ドライブのおともに音楽。おともがあると、楽しみもぐっと増す気がします。この企画では「〇〇のおともに」をテーマに、あるものとあるものをたし算することで広がる神田のたのしみ方を、その道のプロフェッショナルをお迎えして紹介します。

第二回のゲストは、アートディレクターの秋山具義さん。広告、パッケージ、ロゴ、キャラクターデザインなど幅広い分野でアートディレクションを行うかたわら、広告界きっての美味しいもの好きとしても有名な具義さんですが、実は神田佐久間町のご出身。秋葉原周辺で漫画やゲームに囲まれた幼少期を送ってきたそうです。

今回は、そんな具義さん縁の場所や最近気になるスポットを巡りながら、今と昔の神田の話を聞いていきましょう。
あらゆる食とデザインに触れてきた具義さんだからこそ見える神田のまちやお店のおもしろみとは? 多忙なはずなのにとにかく情報収集力がものすごい具義さんと歩いてみると、ちょっとした散歩でも思わぬ発見にあふれたひとときになりました。

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●ホームタウン・神田佐久間町。
電気街のそばで過ごした幼少期を振り返る。

本日のスタート地点は、秋葉原駅の昭和通り改札前。電器屋がぐるりと囲む秋葉原のど真ん中ですが、ここは具義さんのホームタウンです。
全員集合していざ出発と歩き始めて10秒、さっそく第一思い出スポット発見! 駅前の「秋葉原公園」で足を止めました。

「昔はここらへんに大きいロケット型の遊具があってさ」と具義さん。
今はベンチとちょっとした緑がある広場ですが、かつては遊具もあり子どもたちの間で「ロケット公園」と呼ばれて親しまれていたそうです。

「この辺りは公園が結構あって、よく行っていたのは佐久間公園。ラジオ体操しに夏休みは毎日通ってたね。しかも近くに美味しいパン屋があって、帰りに必ずあんぱん買ってたんだよ。小学校から帰ってきて公園に行く前に立ち食いそば屋でコロッケそば食べるのにハマってた時期もあったなぁ」
とおもむろに歩き始め、佐久間公園に向かいます。

道中、この辺りには
漫画『月下の棋士』の舞台となった将棋倶楽部や
メロンソーダ飲み放題のゲームセンターがあったことなど、
知る人ぞ知るディープな情報が次々飛び出します。
佐久間公園近くの「青島食堂」は
具義さん行きつけの人気ラーメン店。
新潟5大ラーメンの、長岡生姜醤油ラーメンが食べられる。
昨年末には1時間半並んで食べたほどお気に入りだそう。

駅から300メートルほどの距離を濃密に歩いたところで佐久間公園に到着。カラフルな新しい遊具のある公園ですが、歴史は古く、片隅にお稲荷さんが祀られているのが特徴的です。

「当時はブランコに乗りながら時計塔を狙って靴飛ばししてたなぁ」
と具義さんが振り返りながら公園を見渡すと、なにやら立派な石碑が。なんの気なしに覗いてみるとびっくり。

ここ佐久間公園はなんと、ラジオ体操会発祥の地!
1928年に国民の健康増進のためにテレビ放送を通して広まったラジオ体操ですが、朝に集まって体操を行う「早起きラジオ体操会」を全国に先駆けて始めたのがここ佐久間公園というわけ。
具義さん、すごい由緒正しき公園でラジオ体操していたんですね。

そんな秋葉原のど真ん中で育った具義さん。このまちでいったいどのように過ごしてきたのでしょうか?

「小学生の頃は、ジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオン、キングあたりの少年漫画雑誌はほとんど読んでたよ。アニメージュやジ・アニメっていうアニメ雑誌も愛読していて、漫画・アニメ好きだったな。中学に入るとアイドルも追いかけるようになって、伊藤つかさ、石川秀美、林紀恵と、ファンクラブに三つ入ってた。
あとは電気街が近所だったからゲームセンターによく通ってて、インベーダーゲームなんか40分くらいゲームオーバーなしでプレイし続けたこともあったな。ヘッドオンっていうゲームが好きで、すごく音がいいからいまでもたまに聞きたくなるね」

まさにあらゆるカルチャーを網羅していた具義さん。秋葉原がゲームやアイドルのまちとして知られるようになる前の時代なので、アキバ系のはしりと言えます。
作品やコンテンツをキャッチする量の膨大さがいまの具義さんの活動につながっているように思えますが、その類稀なるスキルはこのまちで育ったことで培われてきたものなのかもしれません。



 ●地元に誕生した注目グルメ。行列必至のつけ麺をいただく

公園をぐるりと回ったところでお昼の時間に。具義さんがいま一番気になっているという佐久間町の「Tokyo Style Noodle ほたて日和」へ向かいます。

「ほたて日和」は2022年12月にオープンしたばかりですが、有名ラーメン情報サイトのランキングで1位を獲得したこともあり、テレビでも度々取り上げられる超人気店。この日は編集部が朝8時に並んで記帳しておいたためランチタイムぴったりにお店へ入れましたが、事前予約必須の代物。具義さんも嬉しそうです。

この日注文したのは「特製 帆立の昆布水つけ麺 黒【醤油】」。
割烹かと思うほど盛り付けが美しく、昆布水に浸った麺が光輝いて見えて期待が高まります。
お店の方が美味しい食べ方を丁寧にレクチャーしてくださり、言われた通りの方法でいただきます。

はやる気持ちを抑えて、
いただく前にスマホでぱしゃり。
真俯瞰で構えるのがおいしく撮るポイント。

最初は、店名にもなっている北海道産帆立のカルパッチョを一口いただいてから(当然美味!)、次にぬるぬるの昆布水に絡んだ三河屋製麺の麺をそのままいただきます。

昆布水の旨味とぬめり、こしのある麺の食感が合わさって、何もつけてないのに抜群の美味しさ。ここに鰹塩やわさび、ディル(さわやかな香りとほろ苦さを持つセリ科のハーブ)などで味変しながら麺とトッピングを楽しみます。

美味しすぎてどんどん食べ進めてしまいますが、つけダレで食すのも忘れずに。マイルドなつけダレでいただく麺も当たり前ながら最高です。さらに、味変効果の高いトリュフオイルを絡めて麺だけを楽しみ、最後はスープ割りを堪能しました。

店主の及川さんと。ごちそうさまでした!

味の変化を感じながらいろんな食べ方を楽しんだからか、コース料理を食べ終えたかのような満足感!
「めちゃくちゃ美味しいし食べ方も楽しいし、すごかった!」と具義さん。気さくな店主とのおしゃべりも弾み、充実度たっぷりのひとときになりました。

味はもちろん、食べるまでのプロセスや作る人の背景など、「美味しい」という気持ちに少し立ち止まってそのまわりを眺めてみる。そんな具義さんの眼差しに、広く深く食を楽しむヒントを感じられました。



●“中の人”として続けてきた神田祭の町会ポスター制作

昼食後は秋葉原を抜けて、
旧3331 Arts Chiyoda(現ちよだアートスクエア)へ。
旧練成中学校の校舎を改修してできた建物ですが、
なんとここが具義さんの母校。

佐久間公園やほたて日和のある神田佐久間町は、まさに具義さんが生まれ育ったまち。通っていた小・中学校へをめぐりながら、30年近くボランティアで作り続けている神田祭の佐久間3丁目ポスターについて聞いてみました。

「ポスターは1991年くらいからやってるかな。まだ広告代理店に勤めていた頃に近所の知り合いにお願いされて引き受けたんだよ。会社の仕事とは違うところで、自分で自由にデザインしたいと思っていた時期でもあったし。
あと、自分の地元に関わるデザインをしている人はたくさんいるけど、町会という規模でやってる人はなかなかいないでしょ? 町会くらいの距離感になると本当に中にいる人じゃないとできないことだし、そこに取り組むのはおもしろいと思ったんだよね」

江戸時代から続くこのまちの一大イベント・神田祭。具義さんもポスター制作だけでなく、神輿担ぎや子供神輿のサポートなど、町会の一員として担当したこともあります。

「デザインは毎回3〜4案出してるけど、30年以上デザインを続けているともうネタが尽きて大変なんだよ(笑)。だから、ポスターに入れる要素と、赤と黒の2色刷りというルールは決めておいて、その時代に合わせた内容でデザインを考えるようにしてる」

例えば令和5年度版では、コロナ禍を経て久しぶりの開催だったため、「かつげるって、しあわせ。」のコピーと涙を流すイラストがデザインされました。

「あと、普段の広告の仕事だと看板にきれいに掲示されるけど、町会のポスターはまちの人たちが自分の家や店先とかフェンスとかにベタベタと貼っていて、そういう風景もいいんです」

そこで暮らす人の思いを汲み取って、まちに一体感を作ってきた神田祭のポスター。そこには、30年以上関わり続けている具義さんとまちとの長く培われてきた信頼関係が感じられました。


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まだまだ続く具義さんとの散歩。
後編ではお店のデザインについてお話を伺いながら
具義さんがお世話になっているというあのお方に会いに行きます。

後編に続く


Text: Miyuki Takahashi
Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI)

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