不安や困りごととの関わり合いをつくる、表現や場の力|こんなだった、なんだかんだ12 #2

2025年11月に12回目の開催を終えた「なんだかんだ」。多くの出会いが生まれた時間となりましたが、それは画期的で魅力的なアイデアに取り組まれる演者のみなさんの存在があってこそ。気づくことや学ぶことが多く、そうしたアイデアはいかにして生まれ、育まれていったのか——その背景に、何か大きなヒントがあるような気がします。
そこで、なんだかんだクリエイティブディレクターの池田さんとともに、今回初めて参加いただいた就労継続支援B型BaseCampさんを訪問。日頃の活動の場を体験させていただくとともに、これまでの歩みについてお話を伺いました。

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●BaseCampの活動の場へ

BaseCampの拠点は、東京メトロ千川駅から徒歩一分。インターホンを鳴らすと、メンバーのみなさんが総出で「こんにちは〜!」「どうぞ〜」と迎えてくれました。久しぶりに親戚の集まりに参加したような歓迎ぶりで、嬉しい気持ちになります。

中に入ると、まずは円になって自己紹介へ。今日の調子や最近嬉しかったことなどを共有していきます。場がほぐれてきた頃、「次は一緒に踊りましょう!」と声がかかり、一人の男性メンバーが前に出て「僕の動きを見て真似してください」とリード。戸惑う間もなくダンスがスタートし、みなさんのキレのある踊りに誘われるように身体を動かすうちに、自然と心もほぐれていきました。

すっかりBaseCampの空気に馴染んだところで、取り組みを紹介いただきました。メンバーの経験や困りごとを演劇やラップにする取り組みや、長期入院している方への退院支援、出張イベントやグッズ展開など、幅広く接点を持てるような活動を積極的に行っています。

紹介の最後には、「せっかくなので」とラップを披露いただきました。スピーカーからビートが大音量で流れ、メンバーの方々が身体を揺らします。詞は、メンバーの苦労や経験をもとに、BaseCampにたどり着くまでのことが綴られており、そこには明確な答えがあるわけではありません。けれど、ダイレクトな言葉が心地よいリズムとともに飛び込んできて、見ている側の心にじんわりと刻まれていくのでした。

これらのおもてなしを受けて、池田さんはこう振り返ります。

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BaseCampさんを初めて訪ねて、おもてなしとして披露してくださったプログラムの中で、特に僕が注目したのは「ラップ」でした。メンバーの方々が、自らの不安や切実な悩みをビートに乗せてラップし、仲間たちも「よ~♪よ~♪」と盛り上げる。その内容はあまりにもリアルで、少し戸惑いながらも、陽気に歌うメンバーの姿を焼き付けるように見ました。

しばらく考えていると、これは落語に通じるものがあると気がつきました。立川談春さんの著書『赤めだか』の中で、師匠・立川談志が「落語っていうのは、業の肯定なんだよ!」と語る一節があります。つまり落語とは、何かから逃げ出したり失敗してきた人間の物語であり、それをそのまま肯定するものなんだ、と。
BaseCampさんのラップも、自分の欠点や悩みを他者と共有することで「ま、いっか!」と心を軽くさせてくれる、やさしい時間でした。
「これはすごいなぁ~!大発見だよ」と興奮しつつ、いろんな問いを残してくれる、すばらしい体験でした。

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この画期的な取り組みは、どのようにして生まれ、BaseCampの日々を支えているのでしょうか。スタッフである中島裕子さんと木村純一さんにお話を伺いました。

●誰かの「困りごと」を、表現を通じて分かち合う

木村純一さん(左)と中島裕子さん(右)

池田 たっぷりおもてなしいただき、ありがとうございます。本当に感動しました。

中島 いえいえ、お越しいただきありがとうございます。

池田 何年も前からBaseCampさんの活動を拝見していますが、いつも「なんでこんなにシュールで知的なユーモアのある形にできるんだろう」と驚かされます。メンバーが抱える重たいテーマをラップや即興劇にして、安易な答えは出さず「問い」だけ投げかけることで、観客との関わり合いが生まれているような気がします。
そもそも、なぜ演劇をやろうと思ったんですか?

中島 最初から演劇をやろうと狙っていたわけではないんです。元々は、一人ひとりの困りごとをみんなで聞く場を大切にしていました。でも、言葉だけのやり取りだと、途中で話を遮られたり一方的にアドバイスされてしまったりと、難しさを感じることも多くて。そんな時にふと、「その話をみんなで演じてみたらいいんじゃない?」と思いついたんです。

池田 さらっとお話しされてますけど、そこから演劇にしようなんて発想にはなかなかなりませんからね(笑)

中島 (笑) ただ、私も含め誰も演劇経験がなかったので、最初は「演じる」というよりは、シチュエーションを真似してみる程度の感覚でしたね。

池田 「話を聞く」だけでは寄り添いきれなかったことが、「演じる」ことでお互いを理解し合えるようになったんですか?

中島 いやあ…実際はそうでもなくて(笑) 演劇は「退屈せずに話に関わるためのアプローチ」でもあるんです。そのため極端に言えば、話の内容をよく理解できていなくても、一緒に演劇をして楽しめるだけでもとても意味があると思っています。何度も聞いた話でも、劇にするとなれば、役の立場を考えたり演出を加えたりと、楽しみながらその話に関わりやすくなるんです。

木村 話をした本人役や登場人物役だけでなく、「ゆで卵役」「パソコン役」といった人物以外のものや、目に見えない「不安の声役」「圧迫感役」をつくったりもしますよね。

中島 配役は自由で、話を受けて自分で役を考えてくれることもあります。「楽しさ」を起点にすることで、メンバーが自然と他者の話に関わっていけるようになったことは、演劇の大きな力だと思います。もともとは誰か一人の話だったとしても、そこからみんなで関わることで、また別のものが立ち上がってくる感覚もあります。

池田 以前拝見したステージは、しっかり稽古されていて「作品」として高い完成度でした。日々の活動から、外で披露するまでにはどう発展していったんですか?

中島 最初はちょっとした寸劇でしたが、続けていくうちに「せっかくだからイベントで見てもらおう」と、5〜10分程度の短いものをつくるようになりました。当初は「演劇」や「作品」と言うことすら照れくさいと感じていましたが、今は堂々と作品タイトルをつけて、メンバーも自信を持って演じています。

木村 日々の活動と作品づくりは地続きになっていますね。毎朝のミーティングで困りごとをお互いに話し、その場ですぐ劇にしてみるということを普段からやっているんです。

池田 日々の活動を種に、作品として育てているんですね。ただ、そうした発想の転換って、そうできることではないと思うんです。なにより、「当事者自らが自身の困りごとを演じて見せる」という世界観をつくり上げたことが本当にすごい。何気ない思いつきがはじまりだったとしても、確固たる哲学を感じます。

中島 きっかけは思いつきでしたが、私は元々「人が集まらないとできないこと」に関心があって。メンバーがバラバラなまま、それでも一緒に何かできないかとずっと考えていたんです。オープンダイアローグや当事者研究などを参考にしながら、自分たちの場に合う形をずっと試行錯誤してきました。その中で、この「演劇」にたどり着いたんです。

池田 BaseCampさんの演劇には、それぞれの個性がありつつ、一つの集団としての世界観を感じていて。お互いを尊重していることで成り立っているところに感動するんです。

中島 「みんなでつくっていく場」「お互いを大事にできたら」ということは、毎日口にしてますね(笑)

木村 今日のように見学の方が来られた時も、お客さんも取りこぼさずに、みんなで場をつくることを心がけています。一人ひとりがいるからこそこの場が成り立つ、という感覚は常に意識していますね。

池田 確かに、BaseCampさんの説明の時に、僕らには応援用のうちわを渡してくれて、一緒に場に参加している感覚がありました。それと、みなさんが「これは自分の仕事だ」と手を抜かずに取り組んでいる姿が、本当に素晴らしかったです。

●ちょっとだけ無理ができる、安心感のある場

池田 ラップも結構リアルな内容で、正直どう受け止めたらいいか戸惑ってしまったんですが、歌っている本人はすごく生き生きとしているんですよね。その姿を見て、こちら側の偏見や先入観を取り払って、学び直さないといけないと思わされました。

中島 まだ手探りの活動なので、そう言ってもらえると励みになります。

池田 BaseCampさんの演劇は、いわゆる芸術としての演劇とは異なり、「その場にいる人との出会いをどう広げるか」を考えているものだと思うんです。僕らが取り組む「なんだかんだ」も、路上に畳を敷いていろいろな方に集まってもらい、領域を取り払ったところで突然演奏や劇がはじまったりして、知らない世界に出会える場をつくりたいんです。
そういった時に大事なのが、今日最初にやってくれたダンスで。初対面同士で踊るのって恥ずかしいけど、みなさんが受け入れるように踊ってくれたことで、距離がぐっと縮まった感じがしたんですよね。

木村 今日は特にメンバーも張り切っていたと思います(笑)
「どうすればみんなが気持ちよく過ごせるか」というシステムや工夫については、日々自分たちでもしょっちゅう話し合っていて、ダンスにしても演劇にしても、日によって雰囲気や反応が違うこともあるので、少しずつ工夫を重ねてきたことがこう受け入れてもらえているのかもしれません。

池田 「なぜやるか」ではなく「どうやるか」をものすごく考えていますね。困りごとの原因を探るのではなく、どう乗り越えていくかをみんなで考える場になっているというか。
ちなみに、ラップや演劇ってハードルがあると思うんですが、抵抗があるメンバーはいないんですか?

中島 最初はハードルを感じる人もいますが、やってみると「意外とできた」と楽しんでくれることが多いですね。
これは言葉を選びますが、BaseCampでは「ちょっとだけ無理してみる」瞬間があってもいいと思っているんです。無理やり頑張らせたいわけではなくて、不安だけどそのまま飛び込んでみる、というか。

池田 それを中島さんは「いいよ、いいよ」という言葉でまろやかに包んでいますよね。今日訪れてみて、その声かけが「失敗しても大丈夫な場なんだ」という安心感をつくっているんだなと思いました。

●領域を超えてひろがる未来

池田 この先やってみたいことはありますか?

中島 やっぱりさまざまな人が関わることで活動が広がっていくので、新しいメンバーが入ってきてくれたら嬉しいです。あとは、精神科病院に入院中の方との関わりももっと深めていきたいです。入院中の方とも一緒に演劇やラップができたらいいですね。

池田 積極的に活動を広げつつ、実直に積み重ねているところも本当に素晴らしいです。今後の展開で考えていることはありますか?

中島 演劇やラップは「これは発見だ!」と思って取り組んできたんですが、最近はすっかり日常にもなっていて。かと言って、次はどんどん上達を目指すぞ!というのも違うし…これからどうしましょう。

池田 上手くなろうとすると自由がなくなりますからね。もっといろんな人を巻き込んで、異なる場所でやっていくのもいいかもしれません。福祉を超えたり、演劇を超えたり、部屋の外に出たり…何かしらの「領域を超える」ということにヒントがありそうです。

中島 いろんな領域とコラボレーションするのはいいですね。実際にお声がけいただくこともありますし、そこから得られる刺激もまだまだありそうです。

池田 最近ビジネスの文脈で「ケア」が語られることも増えてきて、いよいよメンタルヘルスの時代になってきたなと感じていて。AIが普及する社会だからこそ、身体性を伴う表現や場づくりは新しいカルチャーになっていくと思うんです。
その中で、BaseCampさんの演劇のような画期的なアイデアはとてもヒントになります。ケアの本質とも言える「ちょっと楽にいられる」「大丈夫だと思える」表現や場にずっと取り組まれていて、もっと真似されるべきことだけれど、それをどうやってつくっているのかがみんなわからない。なので、もっと広めていくことをお手伝いしたいなと、改めて思いました。

中島 そう言ってもらえるのは本当に心強いです。これからもぜひよろしくお願いします!

池田 まずはめちゃくちゃかっこいいプロモーションムービーをつくりましょう!

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不安や悩みをすぐに解決することは難しくても、誰かと一緒に受け止めることで、ほぐれるものがある。
BaseCampさんが取り組むラップや演劇には、無理に答えを出そうとするのではなく、「いまを少しでも楽に、安心していられる状況をいかにつくるか」という、切実で温かな眼差しがありました。

こうした「ちょっと楽にいられる場」をつくることは、そう簡単なことではありません。けれど、演劇やラップといった「遊び」のような表現が、時として扉をひらく鍵になる。そんな可能性をBaseCampさんは教えてくれました。
なんだかんだもまた、さまざまな取り組みに学びながら、なんだかんだなりの大丈夫な場をつくっていきたいと思います。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI)

不安や困りごととの関わり合いをつくる、表現や場の力|こんなだった、なんだかんだ12 #1

2023年にはじまり、あっという間に12回目を迎えた「なんだかんだ」。大小さまざまな規模で展開し、路上を大々的に使って開催するのは4回目です。着実に回を重ねつつも、ひとつの型に収まるのではなく都度やり方を探りながら、多様な発見にあふれる場をつくってきました。
▶︎これまでのなんだかんだhttps://opkd.jp/nandakanda/

境界なく演目たちが繰り広げられる畳の上は、私たちをあたらしい世界や体験に出会わせ、誘ってくれるゆるやかな舞台です。演者も参加者も渾然一体となり、どこか居心地がよく、安心できる時間や場をともにする。そんな光景を生み出すことが、なんだかんだを通してずっと取り組んできていることです。
12回目となるなんだかんだも、たくさんの方に協力いただき、目まぐるしくあらゆる光景が生まれていきました。そんな濃密な一日の様子をお届けします。

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なんだかんだ12のスローガンは、「なんだかんだと、よくがんばって生きてきた」。
クリエイティブディレクターの池田晶紀さんは、改めて「なんだかんだ」という場を捉え直し、この場に込める想いをこう綴りました。

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「なんだかんだ」は、障害のある人、福祉施設の方、アーティスト、役者、ミュージシャン、医師、この街を愛する人、こどもや親など、さまざまな立場の人たちが出会い、生き方や表現をたがいに分かち合いながら、「たのしむ意欲」を交換する祭典(場)です。ここで生まれるアイデアや関係性を、「社会の中でどう活用できるか?」を探る、創造と実験の場として位置づけています。
私たちはこの場を、“あたらしい縁日”と呼んでいます。この縁日には、「こんなやり方があったんだ」や「なんだかちょっと楽になった」といった声が、自然と集まってきます。見方や考え方を、少しだけやわらかく変換するようなアイデアが、ここにあります。縁日では、会場となる路上や建物の中に、合計300畳の畳が敷かれています。普段、畳の空間は「内と外のあいだ」を感じさせるものですが、靴を脱いで路上の畳に一歩ふみこめば、そうした境目の感じ方が違うかもしれません。路上の畳からは、ビルの隙間から見える空や、人と人がたのしそうに過ごす様子が広がっている時間が流れています。

出会ったことのない世界、出会ってみて初めて知る体験。体感する心地よさや、出会い方そのものが、この縁日の魅力です。じわじわと共感が生まれ、気づけば「ここ、なんか居心地いいな」と感じてもらえるような時間になったら、うれしいです。

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●演劇・配達・かるた。問いや勇気を与えてくれる、画期的なアイデアたち

たくましく、たのしく生きていくためのアイデアや工夫を分かち合う。そのアイデアを持ち寄るのはさまざまな立場や分野で活動される方々で、特に第一回目から障害のある方や福祉施設の方に多く参加いただいています。
日頃から楽しむことや気持ちをほぐすことを考え、向き合っているからこそ生まれるアイデアや表現はとても画期的で、自然と惹き込まれ、見ている私たちに問いや勇気を与えてくれました。

就労継続支援B型BaseCampによる、
即興お悩み相談パフォーマンス「べーきゃんくりにっく」。
会場の中からお悩みを聞いて、BaseCampのメンバーがその場で演劇に!
「やりたいことがたくさんあって寝る時間がない」という学生さんからの悩みには、
主人公の周囲をいろいろな欲求に扮したメンバーたちが次々に取り巻く劇に。
メンバーの巧みでユーモアなお芝居も相まって、思わずクスッとしてしまうその様子に
劇にすることで切実な悩みも少し軽くするような不思議な力が感じられました。
会場に突如現れた車いすの集団は、佐野夢果さん考案のワークショップ
車いす夢のデリバリー「記憶を届ける 〜宇宙編〜」。
車いすに乗って街へ繰り出し、なくした記憶を集めるというものです。
いざ街へ出ると、記憶をなくして困っている生き物があちこちに。
記憶を思い出す手助けをして、記憶のかけらを集めていきます。
話を聞いて困りごとを助けるたびに、通じ合えていく気がします。
車いすに乗ることと、困っている人を助けることをセットで体験し、
最後は社長から報酬をいただいて、達成感もひとしお。
世田谷の福祉事業所・ハーモニーによる幻聴妄想かるた。
メンバーが実際に体験したことを句と絵にしたかるたを競いながら、
ユニークな絵とメンバーから語られるエピソードを通して、
知らなかった幻聴や妄想の世界に触れていきます。
画材循環プロジェクト「巡り堂」のスペースでは、
なが〜〜〜〜い紙が敷かれ、思う存分画材を使って、思う存分描ける空間に。
廃棄されてしまう画材たちが巡り堂のメンバーの手によってピカピカに磨かれ、
またさまざまな人の手にわたって、その場を鮮やかにしていました。

●お馴染みとはじめましての演目が、混ざり合うように楽しさを生む

他にも畳を埋め尽くすほどさまざまな演目が大集合。お馴染みの演目はこの場をより安心感のあるものにし、はじめましての演目はこの場に新しい光景を生んでくれました。

建築家 藤本信行さんによる茶道教室「露天風炉」。
オープンな空間のせいか、お客さん側のリアクションもどこか開放的。
TOBICHI 東京による「おちつけ書道」もすっかりお馴染み。
書くことに向き合う時間って、実はとっても落ち着く。
元図工教員のひつじ先生のコーナーでは、
ハレパネにさまざまな材料を貼ってゆかいな生物をつくります。
色とりどりな素材にときめくままに、個性豊かな生き物たちが次々に爆誕。
はっとりこうへいさんの色を削るワークショップでは、
木片に好きな色を重ねて塗り、ヤスリで削ると
色の混ざり合いが浮かび上がってくるという新鮮な体験!
手芸用のモールで人形をつくる、共立女子大学 建築・デザイン学科 藤本ゼミの「HEART MEAT」
手軽な材料で簡単につくれるので、
災害避難時の不安やストレスも和らげてくれるというアイデアです。
つくりながら話したり、自然を気持ちを共有できる場になっているのも
この人形たちのかわいさのパワー。
能登半島地震をきっかけにつながった個人の集まり「Futo」のコーナーには
災害を機に廃棄される予定だった着物や古布をレスキューしたものが並びます。
さまざまな変化に向き合わざるを得ない中、変わらず残る美しさに、一層の輝きを感じます。
ひびのこづえさんと奥能登・珠洲の食堂をたのしく飾る「#珠洲をあむプロジェクト」
色とりどりのビニールテープを編むと、質感も相まってなんとも鮮やかかつ華やか!
茨城県日立市にある多機能型就労支援事業所ひまわりの「なんだかんだコーヒー屋さん」
はるばる来てくださったメンバーの方が丁寧に淹れるコーヒーは身に染みます。
お昼時にたくさんの人が集まる畳の上で突如行われたのは、
伊藤千枝子さんの歌とダンスのパフォーマンス。
体ひとつで表現し切る姿は会場全体を惹き込み、ほとばしるパワーはたくましい!
前回のなんだかんだで好評だったパン食い競走
パンを咥えるだけで盛り上がるって、あらためて考えると不思議な文化。
カクシンハンのロミオとジュリエットは、恒例ながら何度見ても名作。
青空ウィスキングは、人目を憚るよりも植物の包み込む力が上回ってみなさん安らぎに没頭。
篠崎芽美さんとダンススル会の子どもたちによるオリジナル作品「ダンススルゴミ」
ゴミをテーマに、子どもたちの鮮やかな感覚で捉えた景色をダンスにしたという
パフォーマンスは息を呑むほど圧巻!
今回はテラススクエアも会場となり、さまざまな演目が展開。
ミニトレインは見ているだけでもかわいい光景。
鉄作家・小沢敦志さんの鉄をぺちゃんこにするワークショップは、
子どもも大人も全員興味津々。
Mobilis Aquariumの「ちいさな東京湾水族館」では、
東京湾に暮らす生き物たちが神田にやってきてくれました。小さくても、水族館ってときめく。

すっかり日が暮れ、クライマックスの時間が近づくと、バンドセットと大きなキャンバス、大量の植物が路上に現れます。なんだかんだに縁のあるメンバーで構成された即興コミックバンドが組まれ、正則学園の花いけ男子部による花いけの生パフォーマンスが展開。そして、大きなキャンバスの前には女優の鈴木杏さんが登場し、ライブペインティングを披露!

これらの3つが同時に繰り広げられるセッションタイムに会場も目が離せず、さまざまなものが領域を越えて混ざり合う、なんだかんだらしい締めくくりとなりました。

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なんだかんだは年に数回の取り組みですが、ここに集まる演者のみなさんはそれぞれの場所で、日々活動を積み重ねています。披露してくださった画期的で魅力的なアイデアからは気づくことや学ぶことが多く、そうしたアイデアがいかにして生まれ、育まれていったのか、その背景にこそ大きなヒントがあるような気がします。

なんだかんだが、あらたな世界との出会いの場としてさらに発展できるよう、そのヒントをつかむべく、今回初参加いただいた方にお話を伺いました。

#2に続く

Photo: Masanori Ikeda(YUKAI), Mariko Hamano

いざという時の心に寄りそう防災のかたち|こんなだった、なんだかんだ11

「備えあれば憂いなし」と言いますが、災害という非常事態においては、どれほど備えがあっても、憂いを完全になくすことは難しいものです。だからこそ、憂いをなくすのではなく、安心や落ち着きをもたらす。そんな備えも必要かもしれません。

今年も9月1日の「防災の日」にあわせて開催したなんだかんだ。今回は、食や道具といった物理的な備えに加えて、災害時には「心の備え」も大切であることに目を向け、不安な気持ちをほぐす工夫やアイデアが集まりました。
さまざまな団体、作家、学生のみなさんと協力しながら、お互いの知恵やアイデアを持ち寄り、安心や心強さが広がっていく場となりました。

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会場はお馴染みの神田ポートビル。路上に畳を敷き、屋内外がゆるやかにつながる空間の中で、来場者は思い思いに立ち止まり、体験し、語り合いました。

●在宅避難時の強い味方!パッククッキング
共立女子大学 食物栄養学科 山田ゼミ

会場入口の調理コーナーでは、共立女子大・食物栄養学科の学生による「パッククッキング」を実演紹介。在宅避難時でも可能な調理方法のアイデアをレクチャーしてくれました。

この日つくられたのはシーフードカレー。使用するのはすべて常温保存が可能な食材で、調理器具は使わず、ビニール袋で材料を混ぜて湯煎するだけですが、あさりや鯖缶を使うことで、避難食のイメージを覆す贅沢な味わいに。

こうした制約の中でも、一工夫すればおいしい食事をつくれることは嬉しい発見です。
栄養が偏ると心の調子も乱れてしまうので、避難時だからこそしっかりした食事を摂るアイデアを備えておくことの大切さを実感しました。

●いざという時に寄り添い、役立つ大事な友達
子どものための防災グッズ わらべぇ

調理コーナーの隣には、ちゃぶ台の上に3色のぬいぐるみが並びます。これは、女子美術大学短期大学部プロダクト研究生の礒邊未彩さんが考案した、子どものための防災グッズ「わらべぇ」です。
普段は一緒に遊べるぬいぐるみですが、お腹を押すと暗い場所で安心できるライトになったり、頭部のポーチに防災グッズやお気に入りの小物を入れられたりと、非常時の機能性も兼ね備えています。
さらに腕に巻きつけることもでき、両手を自由にしたまま持ち歩けるのも心強いポイント。
なによりほんのり微笑むわらべぇの姿がとてもチャーミングで、心細い気持ちにやさしく寄り添ってくれる気がしました。

●避難生活の心をほぐす、HEART MEET
共立女子大学 建築・デザイン学科 藤本ゼミ

神田ポート内の畳や壁には、手のひらサイズの小さな人形たちがずらりと並びます。
これらはすべて、手芸用のモールでつくられたもの。ハサミやのりは使わず、モールを折り曲げてビーズなどを刺すだけで、なんとも愛くるしい人形をつくることができます。

つくり方はとてもシンプルですが、モールの色や長さやパーツの配置などちょっとした調整で表情が大きく変わり、自分の好みにこだわることができるのも魅力。

没頭していくうちに、隣の人と見せ合ったり、アイデアを交換したり、自然と会話が生まれていきます。
このHEART MEETは、人形をつくるワークショップであると同時に、「誰かと一緒に人形をつくる」ことを通して、災害発生後の避難生活で生まれる不安やストレスに寄り添い、少しでも心を楽にすることを一緒に考える場でもあります。
人形をつくりながら何気ない会話を交わすその時間そのものが、心をほぐす力を持っているようでした。

●日常から非常時にも役立つ、ひも1本の驚くべきパワー
TOTONOL

外の畳に出ると、何やら身体にひもを巻き付ける人たちの姿が。リストラティブヨガのマイスター・TOTONOLさんによる「ひもトレ」講座では、身近にある丸ひもを身体に巻くだけで起こる変化を体験しました。巻き方次第で、肩や腰の不調が楽になったり、歩きやすくなったり、眠りやすくなったりとその効果はさまざま。
災害時は環境の変化で体調を崩しがちだからこそ、自分を整える術を知っておくことが大切です。

ほかにも、重いリュックを背負う際にひもを巻くことで、荷重が安定し、負担が軽減されるという実践的な知恵も。なにより、「ひもを巻くだけ」という手軽さは、非常時にもすぐ活かせるので備えておく知恵としてぴったり。

●知恵や知識を振り返ることも、大事な防災

昨年に続いて参加してくださった方も多く集まりました。
一度学んだことでも、時間が経てば記憶は薄れてしまうもの。年に一度、振り返る機会を持つことも大事な備えです。

全国各地で救護活動を行う男性看護師集団・Nurse-Menのみなさんによる救命処置体験。
AEDの使い方や心臓マッサージは、何度体験しても無駄になることはありません。
都市で生き残るためのサバイバル術を体験型ワークショップやあそびの中で伝授する
星野諭(かーびー)さんによる「あそぼうさい 〜都市サバイバル編!身近なモノで生き残れ〜」。
遊びながら教えてもらうスタイルのワークショップで、実践が一番大事。
神田消防署が出張防災体験会に出動!
消火器の使い方はわかっていても、使った記憶を新しく持てるとさらに安心できます。
個人向け防災グッズセット「THE SOKO 錦町」は、
厳選されたおいしい保存食を揃えたセットで楽しく備えることも大事。
ほぼ日オリジナルのテント「kohaku」を立てると、たちまち避難所兼遊び場に。
神田警察署の署員の方も防災マインドをやさしく丁寧に警鐘。

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畳に集まってそれぞれの知恵を交わし、試し、話し合う。
「あの人から教えてもらった」という記憶は、その知識をより確かなものにし、いざという時の心強さにつながるように感じられました。

災害は、一人ではどうにもならないことが多いからこそ、周囲と知恵やアイデアを共有し、広げていくことが大切です。備えは自分を守るだけでなく、誰かを支える力にもなり得る。そんな防災の可能性を改めて感じる一日でした。

いらなくなった画材を巡らせながら、誰かの一歩を支え合う。画材循環プロジェクト「巡り堂」|こんなだった、なんだかんだ10

使われなくなった画材を集め、きれいに拭いて、次に使う人へと届ける。
一見すると何気ないリサイクル活動ですが、こうした営みからさまざまな人を支えている場があります。
それが、2022年に京都・亀岡で始まった画材循環プロジェクト「巡り堂」です。社会福祉法人松花苑が運営する「みずのき美術館」、国内で家財整理業を行う「一般社団法人ALL JAPAN TRADING」、アーティストの親谷茂さんの三者によって発足され、これまで活動を続けています。

巡り堂の主な仕組みは、押し入れや倉庫で使われずそのままになっている鉛筆やクレヨン、学校などで使われた絵の具など、いずれ廃棄されてしまう画材をまた新しい人の元へと繋ぎ、巡らせること。一度は役割を終えた画材をさまざまな人の手を介して、次の誰かの「つくること」へと繋げていきます。

この画材循環というアイデアの背景には、廃棄物を減らすことや、創作活動を支えることはもちろん、心の不調や生活に苦労している人が、人や社会と交わるきっかけとなる場をつくりたいという想いも込められています。
画材一つひとつを拭いて届け、利用者一人ひとりに寄り添ってきたこの3年間。画材が巡りゆく日々には、どのような歩みがあったのでしょうか。巡り堂を運営するみずのき美術館の奥山理子さんと奥岡なぎさんを迎え、実際に回収されてきた画材を囲みながらお話を伺いました。

▼巡り堂の立ち上げ経緯は、以下の記事もあわせてご覧ください。
https://opkd.jp/2025/04/30/ndkd9_report02/

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●小さな一歩に寄り添うこと

まず、今回のなんだかんだ10に先立って、神田ポートビルチームが巡り堂をより深く知ろうと、ある企画が実施されました。その名も「亀とヤギ」です。巡り堂の運営スタッフや、画材の清掃作業を行うメンバーの方と一緒にただ歩くというシンプルな試みでしたが、その時間に巡り堂の本質に触れるような体験がありました。

一体どういった時間だったのか、「亀とヤギ」を企画した神田ポートビルのクリエイティブディレクター・池田さんはこう話します。

「亀岡の障害者支援施設みずのきに集合して、隣町の南丹市八木まで、5kmほどの距離を歩きました。神社に寄ったり池を眺めたり、休憩にアイスを食べたり、ヤギが迎えに来てくれたり。途中でいろいろな出来事がありつつも、“みんなでただ歩く”だけの時間を過ごしたんです。
それだけのことでも、“ここを一緒に歩いたね”という思い出ができれば十分で。目的をつくると達成に意識が向きますが、“歩くだけ”にすると、途中で立ち止まったり不安になっても、他に目的や予定がないぶん、気持ちにきちんと向き合える。『あの曲がり角まで歩いてみようか』『車でもいいから一緒に行こうか』と、勇気を少しずつ引き出せるんですね。
そうした小さな一歩は彼らにとってとても大切なものですし、その一歩にそっと寄り添う理子ちゃんとなぎちゃんをはじめとするスタッフが本当に素晴らしく、巡り堂の日々を垣間見た気がして心を打たれました」(池田さん)

「ただ歩く」という提案を最初に聞いたときは、「巡り堂とどう関係があるんだろうと、ポカンとしました(笑)」と振り返る奥山さん。さらに巡り堂のメンバーに声をかけても、新たな試みへの不安から、参加者がなかなか集まらなかったそうです。

「それでも数人が勇気を出して参加してくれて、実際に歩く時間を過ごすうちに、池田さんの言葉が腑に落ちていきました。
何かに取り組むときにはつい意味を求めがちで、『できる・できない』といった軸で測ろうとしてしまいます。でも、巡り堂を続けることは、その判断軸を見直すことでもあると思うんです。今回も全員が最後まで歩けたわけではありませんが、“一緒に歩いた”という時間が共通の思い出として残ったことはとても大切だなと感じました」(奥山さん)

●画材を循環させることの裏側

この「ただ歩く」企画の背景には、池田さんが「巡り堂は画材を循環させるだけのプロジェクトじゃない」と気づいたことがありました。
「画材循環プロジェクト」と掲げている巡り堂ですが、その立ち上げには何があったのでしょうか。

「家財回収業者の方が『画材をもらってくれませんか?』とみずのき美術館を訪ねてきてくれたことがきっかけで、その瞬間“もうやりたくて仕方がない!”と思いました。
というのも、創作現場に画材を届けられる可能性を感じたからなんです。かつて障害者支援施設みずのきで絵画教室を開いていた頃は、画材を揃えることにとても苦労していました。少しだけ描いて納得いかないと捨ててしまうことも多く、すぐに材料が尽きてしまうんです。だから“素材を大切に扱い、最後まで描き切る”ことを教えていたといいます。でも本来は、もっと自由に画材を使い、好きなように描ける環境があっても良いわけで、そんな場が全国のケア施設やコミュニティに広がる光景を思い描き、絶対に届けたいと思いました」(奥山さん)

「それでプロジェクトを始めるにあたって、“メンバーの背中を押すようなとびきりかっこいいビジュアルがほしい”と僕に相談してくれたんですよね。制作当時は、“画材を大切に循環させる活動”が中心だと思っていたんですが、後からそれだけではないと気づいたんです。本当に目指していたのは、巡り堂のメンバーが画材を拭く作業を通して前向きになり、外の世界とつながるきっかけになることなんですよね」(池田さん)

「そうなんです。巡り堂の作業には、心の不調を抱えていたり日々の生活に苦労している人たちが中心に参加しています。家の中にいることが多いので存在が認識されづらいですが、社会との距離を感じていたり、金銭面や心の状態によって思うように社会に参加できなかったり、“引きこもり”という言葉だけで捉えきれないあらゆるケースを抱えた人が地域にたくさんいるんです。そうした人たちが一歩踏み出せる場をつくりたいと考えていた中で、画材をきれいにする作業が彼らの仕事になるんじゃないかと思ったんです。これが巡り堂のもう一つの思いです」(奥山さん)

画材を届けて自由に創作できることと、画材を通して社会への不安をほぐすこと。画材を循環させることには、そこに関わる人たちに二つのよい兆しをもたらしたいという思いが込められています。

「“巡り堂”という名前も、障害者支援施設みずのきの裏にあるお堂を活動拠点にしようという構想があったことから生まれたんですよね。その光景を想像してみるとすごく素敵だなと思って。お堂にみんな集まって、画材を黙々と拭いたり並べたりする作業は禅にも通じて、ものを生まれ変わらせることで自分も整っていく感覚があります。そんな“祈りのような行為”はケアにつながるんじゃないかと気づいて、この画期的なアイデアをもっといろいろな人に広めていくべきだと思ったんです」(池田さん)

●巡り堂の仕組みがもっと広がるために

そうして巡り堂の名刺代わりとして制作されたのが冊子とポスターです。冊子はこれまでの歩みを小説のようにまとめ、ポスターは巡り堂の流れが一目でわかるものを作成しました。しかし、巡り堂の伝え方については少し葛藤があったと言います。

「池田さんはなんだかんだの企画でも、“福祉”という言葉をあまり使わずに伝えていきたいと話していましたが、私も同じ思いがありました。最初からメンバーが丁寧に拭く姿を前面に出すより、まずは“画材を循環させる”という活動を知ってもらう方が、多方面に広がると思ったんです。
でも、これまでの3年にわたるメンバーとの日々は本当にドラマの連続で、悩んだことも嬉しかったことも数えきれないほどあります。特に、メンバーの仕事ぶりは本当に褒めどころばかりなのに、役所の方やご家族にさえ伝わりづらいんですよね。だからこそ、“今日のクレヨンの磨き方がとても素晴らしかったんですよ”と、私たちが伝えることはとても大事だと思っています。
本当に彼らがいなくては成り立たないプロジェクトですし、一つひとつ手を抜かずに拭いてきた日々があるからこそ今の巡り堂があるんだと池田さんからも言っていただいて、これまでの歩みをしっかり伝えようと思うようになりました」(奥山さん)

冊子とポスターの制作にも関わった池田さんは、巡り堂のアイデアにこそ可能性があり、多くの人に参考にしてもらいたいと言います。

「巡り堂の魅力は、使われなくなった画材を“きれいに拭く”というシンプルな構造だと思うんです。お金をかけずに誰でもできる、これ以上の企画はありません。“企画を考える”というより、“タダでできることはないかな”と発想してみると、アイデアが広がる可能性があるなと思って。福祉分野は特に資金面で悩む施設も多いと思いますが、発想のヒントにしてもらえるといいなと思ったんです」(池田さん)

そんな巡り堂のアイデアは京都を飛び出し、東京の福祉施設と連携して取り組みが広がっています。

「活動が広がるのは本当に嬉しいです。安心できる場を必要とする人は全国にいるはずなので、もっと増えるといいなと思います。
このアイデアの可能性をもう一つ付け加えると、“拭く”という行為が意外と大事で、場に居続ける理由になるんです。雑談しましょうと言われると緊張してしまう人も、拭く作業があるだけで自然と間が持てる。単調すぎず、ちょうどいい作業なんですよ」(奥山さん)

「回収される画材は本当に多様で、古くて用途が分からなかったり、持ち主の痕跡が残っているものもあります。私たちも画材に詳しいわけではないので、メンバーと一緒に“これはなんだろうね”“どう使ってたんだろう”と考える時間が多いんです。画材という共通のアイテムがあることで、上下関係なく自然にやりとりできることがいいなと思います」(奥岡さん)

その言葉を受けて池田さんが「これは皆さんにも体験してもらいましょう!」とひらめき、会場では実際に画材を拭く体験が始まりました。参加者は作業をしながらペアやグループをつくり、感じたことや日頃考えていることをぽつりぽつりと語り合います。

●拭くという行為が持つ力

参加者には、福祉支援や創作活動に関わる方も多く、日々の悩みを共有し合う場面も。対話が深まるほど手つきも洗練され、画材がみるみる磨かれていきました。

作業をしながら対話を重ねて気づけば一時間。初対面同士とは思えないほど穏やかな空気を感じつつ、奥山さんはこう振り返りました。

「まさに私たちの普段の作業時間そのもので、皆さんと共有できて嬉しかったです。アートやものづくりって、好きな人以外にとっては少し距離のあるものじゃないですか。実は私もそうで、みずのきの絵画教室も遡ると絵を描いていたのは入所者の一割ほどで、全員が共有できる時間ではなかったんです。つくる主体にならずとも、”つくること”に参加できる可能性はないだろうかと考えてきた中で、巡り堂はまさに最後のピースがはまった感覚でした。拭くという行為には、誰かの創作を支える力があり、初対面でも一緒に時間を過ごせる力があります。私がずっと求めていたのはこうした時間だったんだなと改めて感じました」(奥山さん)

巡り堂は立ち上げから3年が経ち、これからも小さいながらも確かな歩みを重ねていこうとしています。一方で、現状は一部行政の補助金などはあっても、大部分は自己負担で活動が行われており、来年度以降は確証されていません。そこで、少しでも自走できるよう、寄付の仕組みが新たに設けられました。寄付金は運営費やメンバーの作業工賃に充てられます。
https://megurido.com/#osaisen

「巡り堂では、メンバーが月に8〜10回、1日2時間ほど作業を行い、工賃をお渡ししています。少ない額ですが、時給制にしてノルマを感じてしまうよりも、無理ない範囲で働いて自分でお金を得る機会となるようにしています。少額でも私たちにとっては大きな支えなので、もしよかったらご支援いただけたら嬉しいです」(奥岡さん)

立ち上げ当初から巡り堂を見守ってきた池田さんもこう語ります。

「メンバーを応援するのはもちろん、日々寄り添って支える人たちも含めて応援したいんです。募金も、画材の寄付も、この活動を広めることも、巡り堂の応援になります。どんなかたちでも協力してもらえたら嬉しいなと思います」(池田さん)

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創作活動をしたい人、社会に一歩踏み出す勇気がほしい人、それらを応援したい人。
画材循環プロジェクトは、さまざまな人がさまざまなかたちで関わることができる器のような取り組みです。全員が直接顔を合わせることはほとんどないけれど、“画材が巡る時間”を共有する小さな共同社会のようでもあります。画材を介して、誰かを支え、誰かに支えられながら、一つのプロジェクトとして循環していく。たとえ小さな関わり方でも、画材が巡っていく確かな実感が、活動の兆しになっているように感じました。

なんだかんだも、さまざまなものや人が同じ場に混ざり合いながら出会う場です。巡り堂を応援し、その姿に学びながら、なんだかんだなりの歩みを重ねていきたいと思います。

Edit/Text: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI)

たくましさを与えてくれる、いい出会いの場を目指して。|こんなだった、なんだかんだ9 #3

「問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫だと思える場をみんなでつくる」
そう掲げているなんだかんだには、出演者みなさんの力が欠かせません。むしろ、なんだかんだが目指そうとしている場をすでに実践されているみなさんをもっと知ってもらいたい、という気持ちも込めて集まっていただいています。

改めて、「大丈夫だと思える場所をつくる」ということはどういうことでしょうか。
そうした場に日々向き合い、なんだかんだがお手本にもしているお二組にお話しを伺いました。

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次にご紹介するのは、「幻聴妄想かるた」を使った出張かるた大会を実施してくださった世田谷の福祉事業所「ハーモニー」。
幻聴妄想かるたとは、ハーモニーのメンバーが実際に体験したことを句と絵にしたかるたです。なんだかんだでは、お客さんたちがかるたを競いながら、一枚取るごとに句のエピソードをメンバー自らお話ししてくださいました。

「トゥルルルルと幻聴で電話 ケンタッキーに行くとおさまります」
「コンビニに入るとみんな友達だった」
「弟を犬にしてしまった」
など、読み上げられるたびに内容が気になって仕方がないかるたたち。ユニークな絵とメンバーから語られるエピソードを通して、知らなかった幻聴や妄想の世界に触れていきます。

当事者からなかなか語られる機会のない幻聴や妄想と、かるた大会というなんともくだけた場で出会わせてくれる幻聴妄想かるた。そんなすごいパワーを持ったかるたを手がけたハーモニーの施設長・新澤克憲さんに、アイデアのきっかけや場のつくり方などお話を伺いました。今回の聞き手も、なんだかんだのクリエイティブディレクター・池田さんです。

ハーモニーさんの事務所にて。
施設長の新澤克憲さん(中央)と、なんだかんだにも参加してくださったメンバーの益山さん(左)。

●幻聴妄想かるたがもたらすこと

池田 先日はなんだかんだに参加いただきありがとうございました。改めてハーモニーさんのことをもっと知ってもらいたいなと思って、新澤さんとお話ししたく世田谷の事務所にお邪魔しています。

新澤 久しぶりですね。よろしくお願いします。

池田 まずは、幻聴妄想かるたが誕生したきっかけから教えていただけますか?

新澤 はい。幻聴妄想かるたというのは、ここハーモニーで定期的に実施しているメンバーミーティングから生まれたものです。ミーティングではメンバーの困り事や悩みをそれぞれ話して、みんなでアドバイスし合うということをしているんですが、ある時それを絵に表現してみようと思いついて。

池田 その発想が素晴らしいです。

新澤 それで実際にやってみると、すごくおもしろかったんです。そもそも幻聴って、聞こえはするけど本人にも見えてないことじゃないですか。でも、他の人たちが話を聞いて絵にすることで、途端に幻聴の主が視覚化される。そうすると、本人が一人で抱えてたものをみんなでシェアできるようになるんです。
「幻聴妄想かるた」のことを精神障害の具体的な症状をわかってもらうためのものと取り上げられることもありますが、実はそうではなくて、ここに集まった人たちが一人のことを心配してみんなで絵を描いたという記録なんです。

写真提供:ハーモニー

池田 本当に画期的だと思います。一人で抱えていたものをみんなでシェアできるようになったことで、メンバーの中で変化はありましたか? 

新澤 それまでは幻聴の悩みというのは他の人には言えないことで、スタッフと一対一で話して個別で対応していました。でも、「みんなに自分の話をする」ということが案外おもしろいことだとわかったみたいです。

池田 素晴らしい、大発見ですね。

新澤 自分の話を誰かに聞いてもらえて、「俺もそういうことあったよ」と言われるとわかってもらえた気がするじゃないですか。スタッフとの一対一の関係ではなくて、その場にいる人たちと横の関係ができたということが大きかったと思います。彼らの間で関係性ができることで、お互いが怖くなくなったんです。

●敬意をもって世界を開いていく

池田 やっぱりそれは、新澤さんがみんなに尊敬の目を向けて話を聞いているということが、お手本のように影響しているんじゃないかなと思うんです。
以前ミーティングに参加させてもらいましたが、みなさんが話している間にもかなりの沈黙があるんですよね。でも、それを急かしたり沈黙を埋めるように誰かが話し始めることもなく、その人が自分と向き合う時間としてちゃんと受け止めているんだなと思って。そこにすごく感動したんですよ。その人がそのままで居られることって大事だなと。

新澤 単純にメンバーのみなさんがいい人たちばかりというのもありますけどね(笑)

池田 これって障害の有無は関係ないことですよね。学校にしても会社にしても、どこでも揉め事が起きてるわけで、それは「敬意を持って接する」ということができないからだと思うんです。
ただ、大事なことだとわかってはいても、どんな相手でも尊敬することと、そうした姿勢を教えることって本当に難しいと思います。

新澤 そうですね。例えばたまに事務所にセールスの人が来ることがありますが、そういう外部から来たものに対して丁寧に応答するというのは大事だと思っていて。人をあしらう姿を彼らに見せたくない、という気持ちはありますね。

池田 すごい、なかなか全部そういうわけにはいかないですよ。

新澤 外部から来たものに丁寧に答えるというのは、この場所を閉じた場所にしてはいけないと思っているところもありますね。
やっぱり僕らの人生は偶然で回っていて、たまたま知り合いになったから何かが起きると思うんです。入学式で隣に座ったから友達になったりみたいな。本来そうやって人生は回っていくはずなのに、彼らを取り巻く人間関係はほぼ必然で回っていくしかないんです。例えば、施設に行っても周りには医療関係者とか福祉支援の人とか、彼らに「良いこと」をする人たちだけが集まってくる。
そうした限られた関係の中に閉じ込められて、偶然性を奪われることが嫌なんです。だからハーモニーではいろんな人を受け入れて、突然何かやっても平気なようにしてます。

●やっと行き着いた場で学び直す

池田 いや〜本当に素晴らしいです。場のつくり方っていろんな人が考えていることだと思うんですが、ハーモニーさんから学ぶことってすごくあると思うんです。

新澤 先程池田さんが「その人がそのままで居られることって大事」と言ってくれましたが、今それが脅かされていると思うんです。一般社会からこぼれ落ちてしまった人に対して、「治す」「改善する」ことをしないと社会で生きていけないという構造に危機を感じます。

池田 ハーモニーには、治すということではなく「学び直す」みたいなことがあると思うんです。

新澤 学び直す、そうですね。特に統合失調症の人は20代前後で発症することが多く、そこから長い期間の入院によって社会から遠ざけられ、40代になって帰ってくる、といったことがよくあります。
ただ、そこから何か始めようとしても感覚は10代のままなんですよね。なので、まずは友人とのトラブルをどう解決するかとか、10代みたいな悩みから一つひとつ向き合う必要がある。そういう意味でも、学び直すというのはその通りだと思います。
ただ学び直すにあたっては、彼らが10代だった高度経済成長期の価値観に戻るんじゃなくて、詩を書いたりギター弾いたり、病気とのつき合いのなかで、やりたかったけれどできなかった好きなことからはじめていけばいい。それで本を売ったりライブをしたり、それぞれができることから丁寧に進んでいけるといいんじゃないかと思っています。

池田 幻聴妄想かるたのアイデアも、メンバーの物語やつくったものを商品にすることで、他の福祉施設で行うような作業が難しい人に工賃を支払えるようにする仕組みになっていますもんね。

新澤 そうなんです。一般社会とされる環境においては、決まった時間で正確に多くの仕事をした人が評価される、という価値観がありますよね。でも、そこからこぼれてしまった人が集まる福祉施設で、同じ価値観を掲げても彼らが自信をもって日々過ごしていくことにはつながらないんです。なので、ハーモニーではその価値観を捨てようと思いました。
もちろん社会での自立に向けた支援施設はとても重要なので、ハーモニーが正しいということではなく、そうした施設をいくつか巡ったけどうまく馴染めなかった人が、最終的に辿り着けるような場にできるといいなと思っています。

池田 ハーモニーさん自分たちのことを「片隅」といった言い方をされていたことが印象に残っていて。やっと行き着いた場所だからこその心地よさがある気がしますね。

●話せることを話すだけで大丈夫

池田 なんだかんだでは、お客さんたちとかるた大会をしながら、読まれたかるたのエピソードをメンバーの方に話していただきました。
これがとっても貴重な機会だったんですが、ハーモニーで普段やられているように、お客さんたちも一緒にメンバーの話を聞いて絵を描くということもできそうですか?

新澤 幻聴妄想かるたは、メンバーのハーモニーという場に対する信頼から生まれたものなので、自分の物語を知らない人に委ねて絵を描かれることに抵抗がある人もいると思うんです。ただ、場によっていろいろなやり方の可能性はありそうですね。知らない者同士だから語れることもあるかもしれませんし。

池田 場によって引き出されるものって違いますもんね。

新澤 「なんだかんだ」の場合は、オープンさ加減が並大抵のものじゃないですか(笑)
いろんな人がいていろんなことが起きているので、じっくり話を聞くことはやりにくい環境だと思うけど、その開放感がおもしろくなりそうな場ですよね。幻聴や妄想といったことに絞らずに、それぞれが話せることをシェアして、みんなで絵を描いて、それで遊んでみるだけでもいい体験になる気がします。

池田 多くの人があまり自分と向き合う時間を持てていないと思うので、すごくいい時間になると思います。「話せることを話す」ってとても大事ですよね。それがわかるだけで大丈夫でいられる気がします。

新澤 そうなんです、人それぞれが自他境界を持って、ここまでは明け渡して大丈夫ということを話せばよくて、必ずしも本当のことを言わなくたっていいんです。言ってしまえば、幻聴や妄想も本当かどうか第三者にはわからないわけですし。そういった許容範囲のあり方含めて、どう場をつくるか次第かなと思いますね。

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巡り堂とハーモニーのお二方のお話を通して、「大丈夫だと思える場所をつくる」ことのヒントをたくさんいただきました。
それぞれに共通していたのは、「その人がそのままで居られる」という状態を大事にしていることです。多くの人が意識的にも無意識的にも社会に順応して生きている中で、「そのままで居ること」を肯定し、それを可能にするような場をつくる。それはもちろん簡単なことではありませんが、「画材循環プロジェクト」や「幻聴妄想かるた」といった鮮やかなアイデアで取り組んでいることがなにより希望を与えてくれました。

さまざまな人が暮らしをともにする街において「その人がそのままで居られる」ことを目指すのは、より良い街をつくる上で向き合うべき命題と言っても過言ではありません。
神田の街にもこうしたアイデアが芽吹いていけるよう、なんだかんだを通して考えていきたいと思います。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI), Mariko Hamano,
Joki Hirooka

たくましさを与えてくれる、いい出会いの場を目指して。|こんなだった、なんだかんだ9 #2

「問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫だと思える場をみんなでつくる」
そう掲げているなんだかんだには、出演者みなさんの力が欠かせません。むしろ、なんだかんだが目指そうとしている場をすでに実践されているみなさんをもっと知ってもらいたい、という気持ちも込めて集まっていただいています。

改めて、「大丈夫だと思える場所をつくる」ということはどういうことでしょうか。
そうした場に日々向き合い、なんだかんだがお手本にもしているお二組にお話しを伺いました。

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最初にご紹介するのは、京都・亀岡市を拠点に展開する画材循環プロジェクト「巡り堂」。
家の押し入れや会社の倉庫で眠っている鉛筆やクレヨン、絵の具など、いずれ廃棄されてしまう画材を次の人の元へと繋いで、巡らせていくプロジェクトです。なんだかんだでは、回収した画材のクリーニング作業の体験や画材を使って自由に創作を楽しめる場を展開してくださいました。
色とりどりの画材が大量に並び、見ているだけでわくわくする巡り堂のエリアはいつも大盛況。なんだかんだに楽しい彩りを添えてくれています。

そんな巡り堂を立ち上げたのは、みずのき美術館キュレーターの奥山理子さん。発足のきっかけからさまざまな展開、現在の悩みなどをお話しいただきました。聞き手はなんだかんだのクリエイティブディレクター・池田さんです。

巡り堂のスタッフみなさん。真ん中にいらっしゃるのが奥山理子さん

●巡り堂のはじまり

池田 いつも京都・亀岡から神田まで来ていただいていますが、今日はぼくらが巡り堂の拠点・みずのき美術館にお邪魔しています。壁に展示されているのは美術館の収蔵作品ですね。

奥山 遠いところありがとうございます。
作品はそうですね。みずのき美術館は、障害者支援施設「みずのき」で実施していた絵画教室が発端にあって、そこから生まれた作品の所蔵と展示をおこなっているんです。

池田 神田ポートでも作品の展示をやらせてもらっているんですが、素晴らしい作品がものすごい量あって選ぶのが本当に大変。

奥山 作品の数は約2万点ありますからね(笑) みずのきの絵画教室が始まった1964年当初からのものを収蔵しているのでそれはもう膨大です。

池田 絵画教室はどういった経緯ではじまったんですか?

奥山 当時の入所者を対象にした余暇活動として始まり、そこから才能を見出され、選抜された人向けに専門的な活動へと展開していったんです。アール・ブリュットの草分け的な存在として展開を広げていきましたが、指導をしていた先生が亡くなられたことを機に活動は途絶え、作品だけが残る状態がしばらく続いていたんです。
そこから10年ほど経った頃、もう一度作品やみずのきの歴史をしっかりアーカイブしていくとともに、これからに向けて作品を外に開いていく場所をつくろうと、ここ『みずのき美術館』を2012年に立ち上げました。

障害者支援施設「みずのき」のアトリエ

池田 一度は活動が途絶えながらも、これだけの作品がしっかり残っているのはすごいことです。

奥山 ただ、作品を展示するだけではみずのき美術館とさまざまな人が交流することには十分に繋がらないと思っていて。なので、開館当初からアートプロジェクトやワークショップを企画してきました。それでもアートが好きな人は集まってくれるものの、そこからもう一歩広げることがなかなかできないジレンマがあったんです。作品をつくる人とそうでない人を分けてしまっているような感覚というか…。

池田 アートによって外に開いていけるかもしれないけど、“アート”というカテゴリーに閉じてしまうこともありますからね。

奥山 そうなんです。それに加えて地域で暮らす軽度の障害者やひきこもり当事者の就労の課題にも関心がありました。というのも、自立に向けて思い切って就労研修を受けたものの、途中で心が折れてしまった人の話をよく聞いていて。そもそも社会資源がとても少ないので、そんな人たちも受け入れられる場がほしいなと思っていたんです。挑戦してみてしんどくなったら戻れる場所というか。

池田 そこから思い付いたのが「巡り堂」なんですよね。はじめて話を聞いた時、よくこんな素晴らしいアイデアが思いつくなあと、すごく感動したんです。

奥山 本当に偶然の出来事でした。前々からテレビなどで家財回収や遺品整理が紹介されているのを見るたびに、これはいつか絶対に仕事になりそうだと思っていたんです。「誰かの家を片付けに行く」ということは必ず需要がありますし、心の不調を抱えていたり日々の生活に苦労している人たちも仕事として関われる余地があるんじゃないかと感じて。
そんなことを漠然と考えていたところに、家財回収の業者さんが訪ねてきてくれたんです。よかったら画材をもらえませんか?と。

池田 へ〜! そんなことあるの、すごい。

奥山 最初は廃棄される家財や日用品を使ってアップサイクルしてもらえないかという相談でしたが、そこに含まれていた画材を実際に見せてもらうとそのまま使えそうな状態のものが多くて。これをもう一度使えるようにきれいにすることがひとつの仕事になるんじゃないかと思い付いたら、ずっと考えていたことが全部一気に繋がったんです。

池田 ものすごい出会いだな〜。

奥山 そこからすぐに画材を送ってもらい、まずはスタッフで数ヶ月ひたすら拭く作業をしていきましたが、「先が見えない…」「しんどいです」という想像と真逆の感想だったんです。クリエイティブな作業のはずなのになんでだろう…と思いながら、拭きやすいものからやってみたり、日の当たるところで作業するようにしたり少しずつやり方を変えて、うまく回るようになっていきました。

池田 シンプルな作業だからこそ、やり方や環境で大きく変わりますからね。今日巡り堂の作業場も見せていただいて、収納がすごくきれいでいいなと思っていたんですが、そういう些細なこともうまく場をつくっているなと思います。

奥山 しばらく無料でもらった紙箱を使っていたんですが、使いやすさに慣れるとだんだん所帯じみた作業になっていく気がしていて。やっぱりここは美術館なので、外から見ても気持ちいい見栄えのものにしたいと思ったんです。かなりの時間かけて探してやっと見つけた収納方法なのでそう言ってもらえて嬉しいです(笑)

池田 巡り堂は運がいいというか、なんか神様が宿ってる感じがしますね。

奥山 そういえば、巡り堂をお披露目する日も二重に虹がきれいにかかっていたんですよ。家財回収業者さんが突然訪ねてきてくださったのもそうですし、そういうミラクルが多いかもしれません。

●最初の一歩となるような場として

池田 お話を聞いていて、改めてすごく考えてこの場がつくられているんだなと思います。活動を始めて3年が経ち、メンバーの入れ替わりもあるようですが、最近の悩みはありますか?

奥山 そうですね…。巡り堂はイベントなど展開できる可能性がたくさんあって、スタッフの中ではさまざまなアイデアが膨らんでいます。ただ、普段画材の仕分けや清掃作業をしてくれているメンバーからは、淡々と静かに画材を拭いていたいという声もあるんです。

池田 ここは居心地がいいですもんね。

奥山 私たちとしてはいろんな可能性を広げたいけど、「このままでいたい」という声もちゃんとサポートしたいんですよね。拭く作業が丁寧だったとか、少し会話が増えたとか、はじめて自分一人で行き帰りできたとか、ささやかな変化に喜び合うことも素敵なことですし。そういうメンバーを見守りながら少しずつ外に出ていく機会を考えています。

池田 「見守ること」ってとても必要だなと最近思うんです。人が社会に出ていくための支援をする中で、実は「誰かが見守っている」ということがまずは大事で、誰かと交流することはもっと後に考えてもいいぐらい。

奥山 本当にそう! そうなんですよ。

池田 巡り堂さんは見守りつつも、なんだかんだのときにははるばる神田まで来てくれましたよね。

奥山 メンバー7人連れて行きましたね。はじめて新幹線に乗る子もいましたがとても喜んでいました。お土産買ったりしっかり東京を満喫して。自分がきれいにしたものを直接渡せて嬉しいとも言ってくれましたね。

池田 本当にすごいことですよね。家の外に出るのも大変だったのに、新幹線に乗って東京まできてくれるなんて。変化って、大きくなればなるほど怖いものじゃないですか。

奥山 そうなんですよね。ただ一方で、なんだかんだに参加したメンバーの中には、その後で環境が変わってまた家から出にくくなって巡り堂にすら来れなくなってしまった子もいるんです。巡り堂にだけでもおいでよと家庭訪問した方がいいかもしれないけど、あくまで美術館という立場なのでそこまですることは踏み込み過ぎているとも思っていて。
でも、私たちスタッフとしては外に出ることを諦めたくはないんです。見守りながらも、また一歩外に出れた時に安心して通える場所としてありたいですね。

池田 とにかく活動を続けるということが大事ですよね。すべてに全力を注いでもどこかで体を壊してしまうし、無理のない範囲でやっていくしかないと思うな。

●拭くことの大きな意味

奥山 悩みは尽きませんが、こうやって関心を向けていただける方がいることって嬉しいんです。とても励みになるので。

池田 なんだかんだに参加してもらってるのも、結局は巡り堂のことをたくさんの人に知ってもらいたいからなんです。アイデアが素晴らしくて、活動について知ることで、いろんなことを学び、考えることができますよね。
巡り堂にとって外に出ていくことも重要だけど、こちらが巡り堂と出会うこともとても大事なことなんです。

奥山 嬉しいです。そうですね、お互いにとっていい機会になることが大切ですね。

池田 やっぱり社会全体ですごく孤立が進んでる気がしていて、もっといろんな形で見守る仕組みができないかなと考えてるんです。それで巡り堂の話を聞いて思ったのは、 画材をきれいにする行為って案外快感があるんじゃないかと。写経もそうだけど、集中する時間っていうのは結構気持ちがいいと思うんですよ。ある一定のリズムで何かをするという行為は、もうそれだけで十分ケアになるというか。

奥山 確かに、人それぞれのやり方や工夫もできますしね。巡り堂でも特にノルマはなく、メンバーが得意な作業をやってもらうようにしています。

池田 そういう作業が、成果として巡り堂に貢献できているということもとても重要だと思うんです。自分の手元でやっていたことが、社会につながっていく感覚を得るというか。このままでいいんだと思えることって大事なので。
なんだかんだに参加することも一見大きなチャレンジかもしれないけど、環境は違っても普段やり慣れている作業をしていると、意外と大丈夫なんだと気付ける機会になるのかなと思いました。

奥山 たまにぐっと背中を押してみると、思いがけずジャンプできたりしますしね。

池田 本当に毎回ジャンプしてくれてありがとうございます。まだまだ巡り堂さんのことを知ってもらいたいので、引き続きよろしくお願いしますね。

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#3に続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI), Yuka Ikenoya(YUKAI)

たくましさを与えてくれる、いい出会いの場を目指して。|こんなだった、なんだかんだ9 #1

2023年3月に第1回を開催し、2024年11月には9回目の開催となった路上実験イベント「なんだかんだ」。1年半の間で、大小さまざまな規模で居心地のよい出会いの場を多くの方とつくってきました。
特に2024年は、路上実験イベントからスピンオフし、レディースデー、福祉、ケア、カルチャー、防災といったひとつのテーマに絞って多数展開。さまざまなテーマを通して、これからの生活に役立つものごとに、出会い、触れ、考える場を積み重ねてきました。

<これまでのなんだかんだ>
なんだかんだ3
ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみました
なんだがかんだ4
障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所。「駄菓子屋 横さんち」の話
なんだかんだ5
誰かと一緒に鑑賞するからこそたどり着く何かがある。写真家・白鳥建二さんとの美術鑑賞会
なんだかんだ6
障がいや病気があっても旅を諦めてほしくない。「ume, yamazoe」から広がる旅の未来
なんだかんだ7
歴史が根付く場で生まれる、ドラマチックないい時間
なんだかんだ8
より安全で、より快適な、あたらしい防災を考える

そして、文化の日である11月3日に開催した「なんだかんだ9」では再び路上を舞台とし、畳を敷き詰めてこれまでのテーマが一堂に介す場に。

今回のスローガンは、「なんだかんだと、たくましい」。
あたらしい、やさしい、に続いて掲げられた「たくましい」とは一体どういうことでしょうか? 当日の様子を振り返りつつ、第1回目から一緒に場をつくってくださっている出演者の方にもお話を伺い、「なんだかんだ」が考えるたくましさに迫りたいと思います。

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開催にあたって、クリエイティブディレクターの池田晶紀さんは以下のようにコメントを寄せました。

これまで重ねてきた経験を活かしたカタチでさまざまな課題に取り組んでいこうと計画しています。
わたしたちの考える場は、その問いや問題に対して、不確実なことでも、受け入れて居れることを目指しています。
つまり、問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫な場をみんなで作り、「対話し触れること」。この時間を出会いの場と捉えて、楽になれたり、楽しくなったりできたらと思っています。

畳の上には、はじめて触れるものや一見何だかわからない不思議な出来事が盛りだくさん。知らないものに触れることは勇気がいるものですが、なんだかんだではどこか踏み込んでみたくなる安心感や解放感がある場となるようにつくられています。
書道の横で心臓マッサージを体験したり、熱々のピザを食べつつ熱々の鉄を叩いたりと…渾然一体としていた当日。緊張と緩和がほどよく混ざり合った全体の様子を、たっぷりの写真とともに振り返っていきましょう。

●ここだけのなんだか不思議な出会いたち

路上に畳が敷き詰められている。それだけでも普段と違う過ごし方がありますが、さらにそのまわりには普段はなかなか出会えない体験が散りばめられました。畳でくつろいでいるだけだったはずなのに、否応なしにいろいろなことに巻き込まれていくのも、もはやなんだかんだのお馴染みの風景です。

鉄作家・小沢敦志さんによる「鉄をぺちゃんこにするワークショップ」
熱して真っ赤になった鉄を思い切り叩く、叩く、叩く!
熱した鉄の感触や、狙いを定める難しさ。叩くだけでもはじめて知ることがたくさん。
ダンサー・伊藤千枝子さん(a.k.a.珍しいキノコ舞踊団)と声の魔術師・中ムラサトコさんの
即興パフォーマンスは、お客さんとの会話からその場で歌と踊りを捧げていくスタイル。
仕事明けで来た、娘に痛風を心配されているなど、
どんなワードも最高のパフォーマンスにしてしまうので話を聞いてほしい人が続出!
編み物ワークショップ「あおいちゃん、がおがお」
畳に寝転がるあおいちゃんが着るニットに、みんなで編み物を繋いでいきます。
はじめましての人に直接編み物するってスリリングで楽しい。
アウフグースマスター・HIKARIさんの風を受けながら、
インスピレーションの赴くままに作品を描いていく「サウナマットアートコンテスト」。
参加者のみなさんは突然開催されたコンテストに半ば巻き込まれるように描き始めていきますが、
そんな戸惑いがかえって感性を解き放ち、名作が爆誕していきました。

●心強さを与えてくれる出会いたち

賑やかな演目の傍らでは、ちょっと真剣な空気が流れるエリアも。防災をテーマに開催したなんだかんだ8に参加してくださった方々もこの日集まっていただき、災害や備えについて考える場をつくりました。
「いざという時」に役立つ知識は、誰にとっても必要なことだけれどなかなか得る機会がないもの。それだけに、ほんの数分の体験でも大きな心強さを与えてくれました。

男性看護師による救命処置体験『大切な人の命を救えるのはあなたしかいない!』
畳でくつろいでいる時でも何が起きるかわかりません。
現場で活躍する看護師の方から本気のレクチャーを受けると
少したくましくなれた気がしてきます。
災害時に都市で生き残るためのサバイバル術を教えてくれる
「かーびーの防災ワークショップ 都市サバイバル編!身近なモノで生き残れ!!」。
知識はいつでもどこでも持ち運べる大事な備え!
神田ポートでは、個人向け防災グッズセット「THE SOKO 錦町」を販売。
非常食ってこんなに豊富で、こんなに美味しいあらたな発見。
さらにご近所の神田消防署からはポンプ車の展示も。
消防署員の方からポンプ車の装備や消火器の使い方を教えてもらいたい子供たちが大集合。

●大丈夫な場から生まれる出会いたち

クリエイティブディレクターの池田さんのステートメントにもあったように、「問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫な場をみんなで作り、対話し触れること」を目指していた今回のなんだかんだ。
「大丈夫な場」とは、安心できたり、受け入れられたり、居心地を感じたり、靴を脱いで畳に上がることと同じように、どこか心がほぐれるような場とも言えるかもしれません。そんな場を、みなさんの力をお借りしながらつくっていきました。

福祉事業所〈ハーモニー〉の幻聴妄想かるた大会。
ハーモニーのメンバーが実際に体験した幻聴や妄想などを句と絵にしたかるたで、
「トゥルルルルと幻聴で電話 ケンタッキーに行くとおさまります」
「弟を犬にしてしまった」
など、勝敗よりもかるたの内容が気になって仕方がない。
篠崎芽美さんのダンススル会では
今回は朝に集合して練習してから、お客さんの前でダンスの発表へ!
教えてもらった振り付け通りでなくても飛び入り参加でも大丈夫。
身を任せて思いのまま踊ると気持ちいい。
京都を拠点に展開する画材循環プロジェクト「巡り堂」。
家で使われなくなった画材たちが畳にずらりと並び
膨大な画材に囲まれると、創作欲も爆上がり。!
眠っていた画材も息を吹き返したように大いに彩りを放ちます。
ウィスキングマイスター・千葉有莉さんの青空ウィスキング。
無防備すぎる後継だけど、周りの気配を感じるからこそ
リラクゼーションの世界により集中して没入できる。
茶道裏千家の専任講師・石澤宗彰さんの茶道教室「露天風炉3」。
普段はなかなか見ることができない茶道の様子が大公開されていて
道ゆく人たちも興味津々。
旧ホテル跡地では劇団カクシンハンによる
プロアマ混合のシェイクスピア「十二夜」を上演。
演者と観客の境もほぼなく、プロアマが混ざり合った空間は臨場感が一層あり、
あっという間にシェイクスピアの世界へ引き込まれていく!

●一緒に場をつくる心強い仲間たち

かなりの演目をご紹介してきましたが、なんだかんだをともにつくってくださった仲間はまだまだたくさん。入れ替わり立ち替わり、いろいろな方がとっておきのひとときを楽しませてくれました。

オープニングアクトに登場した正則学園ビッグバンド部。
路上に力強い演奏がよく響く!
路上に遊びの空間が広がる「移動式あそび場」
子どもたちがのびのび遊んでいると、周りの大人も嬉しくなる。
税務署の駐車場が会場の一つということもあり、
税金について遊びつつ学べるワークショップも。
楽しく知るって、とっても大事。
会場の所々に設置されている標識は、
東京都市大学都市空間生成研究室企画の妄想標識スタンプラリー。
標識の意味を考えてみると、この場の楽しみ方ももっとわかる。
TOBICHI東京の「おちつけ書道会」
「おちつけ」の文字に、その人の落ち着き具合が見えてくる気がする。
茨城県日立市にある就労支援事業所ひまわりの「なんだかんだコーヒー屋さん」
茨城県さんの立派なさつまいもを大量に持ってきてくれました!
大きい農作物ってなんだか嬉しい。
誰でも楽しめる「ロウリュ投げ大会」はギャラリーを囲んで大盛り上がり。
神田錦町にお店を構える炭をテーマにしたカフェダイニング「廣瀬與兵衛商店」も出店。
炭焼きソーセージの香ばしさは絶品!
神田ポートのご近所にある名店・カレーハウス「ボルツ」の特製ポップコーン。
ポップコーンの箱の心踊るデザインって改めて秀逸!
神田ポート内ではほぼ日が紹介する能登のとっておきワインを販売。
楽しい気分になるといいお酒もほしくなる。
ストリート写真館で、この日を思い出の1ページにパシャリ。
日が暮れたら寝たままできるリストラティブヨガ体験も。
皆さんすっかりこの場に慣れきって、畳で寝ていても誰も気にしない様子がまたいい光景。
最後お馴染みの木遣りで締め!
楽しい時間を一瞬で切り替えてくれる潔さがあります。

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なんだかんだは9回を迎え、お客さんも出演者の方も程よく分け隔てなく、のびのびと楽しむ様子が見られました。今回目指していた「問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫だと思える場をみんなでつくる」ことが実際に現れていたように思えます。

それにしても、「大丈夫だと思える場所をつくる」ということはどういうことでしょうか。
次の記事では、そうした場に日々向き合い、なんだかんだがお手本にもしているお二組にお話しを伺いました。

#2に続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI), Mariko Hamano

より安全で、より快適な、あたらしい防災を考える|こんなだった、なんだかんだ8

防災とは、災害に備えること。それは、災害自体を「未然」に防ぐものから、被害の「拡大」を防ぐもの、被災からの「復旧」まで含めることがあります。
私たちは日々さまざまな災害と隣り合わせで生活していますが、じっくりと防災について考える機会はあまりないもの。そこで、9月1日を「防災の日」とし、そんな災害や備えについて理解を深める防災啓発デーに定められています。

いい時間といい出会いの場をつくることに取り組んできた「なんだかんだ」でも、9月1日に合わせてあたらしい防災アプローチを探求する場を企画しました。
テーマは、「快適な避難所」。必要な備えの中に、苦しい状況でも少しの快適さを得られるような知識やアイテムが神田ポートに集まりました。

当日は台風接近により、規模を縮小して安全を確保しての開催となりましたが、それもまた災害時の対応の一つ。あらゆる状況に応じて、備えておくべきこととは何か。いざという時に向けた、防災への心構えと準備の練習となりました。

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●現場のプロから、救命処置を改めて学ぶ
男性看護師集団・Nurse-Menの救命処置体験

会場の神田ポートには、横たわるマネキンが二体。もしこれがマネキンではなく、自分の目の前で突如倒れた人だとしたら…。人命救助の場面は、いつどこで起きるか当然わかりません。実際にその場に出くわした時、対応を調べているちょっとした間にも命の危険性が高まってしまいます。

ずいぶん前に講習を受けたきりで記憶が曖昧だったり、情報がアップデートされていなかったりという方も多いはず。そこで、全国各地で救護活動を行う男性看護師集団・Nurse-Menの皆さんによる救命処置体験が行われました。

まず、倒れている人がいたらどうするか。一刻一秒を争う救命処置ですが、まずは意識の確認、119番へ電話、AEDの確保…と迅速に対応しなければなりません。そのため、周囲に人がいる状況であれば、助けを呼ぶことがとても重要です。その時に「誰か」とお願いするのではなく、相手の目を見て「青いジャケットを着ている男性のあなた」「白いトートバックを持っている女性のあなた」と、自分だと認識してもらうこと、緊急時だからこそ丁寧に正確に声をかけることが大事になります。

ひと通りのレクチャーを受けた後は、いざ心臓マッサージとAEDの操作を実践。救急車が到着するまでの数十分間、かなりの力で押し続けなければなりません。骨が折れてしまうのでは…と初めは躊躇気味だった参加者も、「骨は折れても治るけれど、命が失われてしまってはどうにもならないので躊躇なく!」とNurse-Menの方の言葉でハッとしたように力が入ります。

AEDも日常生活でほとんど意識することがないので、どこにあるのか、どう使うのかわからないもの。ですが、いまのAEDは蓋を開けると手順をアナウンスしてくれるのでそれに従うことで初めてでも使うことができます。
使い方がわからずとも、「使い方はアナウンスしてくれる」ということを知っているだけで、焦りが一つ解消される。こうした些細なことでも知識として持っておくことで一秒でも早い対応につながると感じられました。

なにより、さまざまな現場を見てきたNurse-Menの方々の頼もしさが身に沁みるばかり。ほんの数分のレクチャーでいざという時に教えてもらった通りに動けるかというと不安ではありますが、ここで得た心強さを保ち続けられるよう折に触れておさらいしたいと思います。

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●備えがなくても、知恵を駆使してサバイバル!
防災ワークショップ 都市サバイバル編!身近なモノで生き残れ!!

救命処置の体験の隣では、被災地での移動式遊び場の展開や、防災教育などを手掛けるかーびーさんによる防災ワークショップ。災害時の都市で生き残るためのサバイバル術を体験型ワークショップにして伝授してもらいました。

地震が起きたらどう身を守るか、怪我人をどう運ぶか、避難所で食器がなかったり寒い時にどう工夫するか。あらゆるシチュエーションで、備えがないという時にも対応できる知識を教えてくださいました。

頭で理解した後は、身体に覚えさせることが何より大事。ということで、ワークショップ形式で実践へ!大人も子供も参加できるゲーム形式で、身体を動かしていきます。

例えば寒い時には紙を丸めて服の中に入れたり首に巻くと、それだけで防寒に。実際に服に入れてみると空気が閉じ込められる感覚がわかります。
ものの備えももちろん大切ですが、いつでも手を離れることのない知識を持つことの大事さも感じました。

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●いざという時に食べられるものではなく、いざという時に“おいしい”ものを
防災グッズ「ソナエテ」/「THE SOKO」販売

一階のスペースでは、防災グッズの販売が行われました。
一つ目のブースは、防災セットの「ソナエテ」とおいしさを重視した長期保存食「イザメシ」。
イザメシは、賞味期限が3年のものが多く、他社の保存食と比べると短めですが、これは味を重視してさまざまな食材を使用しているから。賞味期限が3年を越えると途端に使用できる食材が限られ、味のバリエーションもクオリティも狭まってしまうそうです。
さらに、栄養バランスが偏りがちな保存食の中で、イザメシは野菜たっぷりのメニューや台湾料理などバリエーションが豊か。純粋に食べてみたいものばかりで、保存食選びが楽しくなるラインナップでした。

防災袋セットの「ソナエテ」は、クリエイティブグループ・Bob Foundation監修によるインテリアとしても映えるデザインが魅力。袋はリュックとキットとポーチの3パターンがあり、中には本当に必要なものだけが揃っており、そこに自分なりに追加する余裕もあるそうです。なぜそれが入っているのか、なぜそれを選んだのか。理由を聞いていくうちに、自分にはどんな防災セットが必要なのかイメージが膨らんでいきました。

もう一つ目のブースは、神田錦町のオフィス向けの防災備蓄品ワンストップアウトソーシングサービス「THE SOKO 錦町」。安田不動産株式会社が株式会社Laspyとともに展開するオフィステナント向けの備蓄セットを、個人向けパックとして販売されました。
備蓄品のラインナップは、プロジェクトメンバーが実際に食べ比べて選んだおいしい保存食を揃えたセット。避難時は食事が限られるからこそ、味を楽しめることは気持ちをほぐす役割として非常に大事だと言います。クマのロゴマークもチャーミングで、目が合うとなんだかほっとしそうです。

防災グッズはいまやかなりの種類が展開されています。何を選べばいいか悩ましいかもないけれど、とにかく長く保存できるものだけでなく、長く保つものと、味が好みなものをそれぞれ備えておくという選択も大事だと感じました。そんな小さな判断の一つが、不安な心を支えるかもしれません。
そして、どちらのデザインも部屋の目立つところに置いてもおしゃれで映えるというのもポイント。いざという時にクローゼットの奥から取り出すのではなく、すぐ手の届くところに置いておきたくなることで、日々の安心感にもつながりそうです。

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●地域の方と防災でつながる
炊き出し/備蓄品の無償提供/テント「konoha」体験

他にも、災害・防災にまつわる体験やアイテムを展開しました。

会場に漂ういい香りは、神田錦町の地域の方に協力いただいた「炊き出し」。じゃがいもを蒸したり、揚げたり、チップスにしたり、さまざまな味でいただきました。お腹に溜まるとともに、地域の方につくってもらった温かみを感じます。
東日本大震災の時も町会のみなさんが協力し合い、おにぎりなどの炊き出しをしていたそう。防災というテーマを通して、神田錦町の人たちとの交流する機会となりました。

炊き出しの他にも、千代田区が備蓄している防災食や携帯トイレを来場者の方々になんと無償で提供。ハザードマップは頭に入れておきたいところです。

さらに、ほぼ日オリジナルのテント「kohaku」が登場し、テントの中でも楽しめる遊びを展開しました。テントがあるだけでわくわくするとともに、空間が仕切られている安心感もあります。遊びや息抜きも生活に欠かすことができない要素の一つ。避難所のテントを遊びの空間のために使うということも、とても大事な選択だと感じました。

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防災についてじっくりと考える機会となったなんだかんだ8。
何かを教えてもらうたびに心強さを感じ、知識はそれだけで大きな備えになると実感しました。また、災害時はさまざまな苦難が起きますが、苦難を取り除くことは難しくても、苦難をやわらげる術を持つことも非常に大事です。
もちろんこうした知識が活用されずにいることが望ましいですが、いつ何が起きるかはわかりません。だからといって後ろ向きにならず、今だからこそ備えられることにしっかり目を向けることが、被害や苦難を少しでもやわらげることにつながると感じました。
そんなことに気づかされながら、防災に取り組む方々の力強さに触れて、たくましさを分けてもらったなんだかんだ8でした。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI),
Mariko Hamano

歴史が根付く場で生まれる、ドラマチックないい時間|こんなだった、なんだかんだ7【後編】

2024年7月19日から21日の三日間、「なんだかんだ7 〜ロードショー〜」を開催しました。
2023年から神田錦町を中心にスタートし、路上に畳を敷いて、いい時間といい出会いの場をつくってきた「なんだかんだ」。第7回目は、神保町での文化拠点の一つである岩波神保町ビルと、2025年1月で休館となる学士会館を会場に実施しました。

数々の物語を生み、多くの人の思い出が詰まった場所を舞台に行われる今回のスローガンは「なんだかんだと、街がドラマになる」。この地に根付く歴史と文化に触れながら、そこから生み出されるドラマチックな出会いや体験を楽しむ時間をお届けしました。
例によって、何が起きるかは当日集まる人たち次第。会場のあちこちで起きていくドラマを追いかけました。

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●笑う時間も、笑いを考える時間も心地いい
楽亭じゅげむ「落語から学ぶ、気持ちの良い笑いとは?落語表現ワークショップ!」

3日目は落語教育家の楽亭じゅげむさんによる落語表現ワークショップからスタート。
元々は小学校の教員だったというじゅげむさん。教員として働く中で、子供たちが誰かをいじったり貶すことで笑い合う場面を多く目にし、学校では笑いを学ぶ機会がないことに気づいたのだそう。そこから心温まる笑いを教える活動に取り組んでいます。

まずは落語のさまざまな表現を披露してもらい、お客さんも一人一人芸名をつけて高座に上がって挑戦。
そばの食べ方やオチの付け方などレクチャーしてもらったことを活かして、おなじみの演目を自由にアレンジしていきます。

緊張しながらも落語を披露して、ええやん!と笑ってもらえるとやっぱり気持ちいい。笑ってもらえることはもちろん、どうしたら笑ってもらえるかと考える時間も心が満たされることに気づいていきます。
最後はじゅげむさんの落語を一本丸ごと披露してもらい、臨場感のある表現力に感動と笑いで包まれました。

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●孤高の書体、精興社書体の魅力がほとばしる
葛西薫、正木香子「精興社活字の魅力について大いに語る」

続いて、精興社書体の魅力について大いに語る会へ。精興社書体とは、神田創業の印刷会社「精興社」が生み出したオリジナル書体で、岩波書店をはじめとする出版社の書籍に使われ、多くの作家や読者に愛されています。

そんな神田に縁の深い書体について、アートディレクターとして精興社書体と深く関わりのある葛西薫さんと、精興社書体についての著書のある正木香子さんをお招きし、お二人が感じる書体との魅力や書体の歴史、デザインについての謎など貴重な資料をもとに対談いただきました。

精興社書体は優れたアナウンサーと似ていて、聞きやすいけど堅苦しくないというか、個性と無個性の間をちょうどよく表現されている
本にはスラスラ読める気持ち良さもあるけれど、精興社書体にはとどまったり噛み締めながら読ませる感覚がある
文字にも音楽みたいに良い抑揚があるように、こぶしを効かせすぎなくてちょうどいい爽やかさが残っているのが精興社書体

数ある書体の中でも精興社書体が好きであり、文字に長く向き合っているお二人だからこその言葉に触れていくうちに、書体の魅力がほとばしります。

同じ言葉でも、受け取る印象を大きく変える書体。生活のあらゆる場面に応じて多くの書体が存在する中で、名著とともに親しまれてきた精興社書体には、そうした文章に見合うような書体そのものの魅力が詰まっているのだと気付かされました。

会場の外には実際に精興社書体で印刷された書籍がずらり。トークを聞いた後の来場者の皆さん、食い入るように実物を眺めてはうっとりとしていました。

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●壁にひそむ文字たちと出会う
大日本タイポ組合「壁にシミあり なぞれば字あり」

DJやダンスが終わった後の地下空間では、大日本タイポ組合さんによる壁に潜む文字を探索するワークショップを実施。一見何もない壁でも、塗装跡やヒビをじっくり眺めていると、不思議と文字が浮かび上がってきます。

机の木目が顔に見えた幼少期を思い出して懐かしさを覚えつつ、視点が研ぎ澄まされていくのを感じていきます。

見つけた文字はトレーシングペーパーでなぞって採集完了!複雑な文字を発見したときの喜びはひとしおです。隠れていた文字が自分にだけ姿を見せてくれたような感覚もあり、見つけた文字は一層愛おしく思えました。

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●学士会館で、お点前頂戴する
小堀宗翔(遠州茶道宗家13世家元次女)「学士会館茶屋」

学士会館では遠州茶道宗家13世家元次女・小堀宗翔先生によるお茶会が開催。学士会館の一室が茶室になり、参加者の皆さんをもてなします。

元々からあったと思うくらい馴染む茶室でのひとときはとても本格的で、目の前で点ててもらうと神聖な空気が流れます。お茶席は初めてという方も多く、緊張感がありつつも点てたばかりのお茶をいただくとほっと一息。
お茶のやりとり一つで、特別で贅沢な時間を味わえる茶道の力を感じました。

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●57577だけでこんなにも豊かなんだと知りました
鈴木ジェロニモ、トンツカタン お抹茶、さすらいラビー 宇野、谷口つばさ、破壊ありがとう 森もり、バローズ 徳永「なんだかんだジェロニモ短歌賞」

芸人歌人の鈴木ジェロニモさんが開催している短歌ライブ「ジェロニモ短歌賞」をなんだかんだで特別に開催!5名の芸人の方々がこの日のために短歌を考え、それをジェロニモさんが選考するというもの。

はじめに短歌について、「短歌の定型である57577は、漫才でいうセンターマイクと同じ。その中心からどれほど距離を取れるか適切に見極めていく技術が必要」と説明するジェロニモさん。限られたルールの中で、言葉だけでいかに豊かな表現を生み出せるかが短歌の魅力です。

今回の短歌のテーマは「海」。それぞれの着眼点や表現が光る5つの短歌を順位とともに講評しながら、ジェロニモさんだったらこう書くという代案も用意され、なるほど&おもしろい!
短歌の楽しさに触れながら、大いに笑いに包まれてなんだかんだ7の幕は閉じました。

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これまで畳を敷くことで、何気なく通り過ぎている路上にいい時間やいい出会いの場を生む実験をしてきたなんだかんだ。今回は、多くの物語が宿る建物の力に後押しされるように、自由で豊かな時間が次々と生まれていったような気がします。そしてこの街が紡いできたものの偉大さを改めて感じつつ、これからに向けてどう発展させていけるとよいかも考えさせられました。

圧倒的な風格がありながら、懐が深い岩波神保町ビルと学士会館。そんな場所だからこそ生まれた時間や出会いを大切にしながら、なんだかんだの取り組みはこれからも続いていきます。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI),
Satomi Ebine, Akiko Sugiyama,
Miyu Takaki, Mariko Hamano

歴史が根付く場で生まれる、ドラマチックないい時間|こんなだった、なんだかんだ7【前編】

2024年7月19日から21日の三日間、「なんだかんだ7 〜ロードショー〜」を開催しました。
2023年から神田錦町を中心にスタートし、路上に畳を敷いて、いい時間といい出会いの場をつくってきた「なんだかんだ」。第7回目は、神保町での文化拠点の一つである岩波神保町ビルと、2025年1月で休館となる学士会館を会場に実施しました。

数々の物語を生み、多くの人の思い出が詰まった場所を舞台に行われる今回のスローガンは「なんだかんだと、街がドラマになる」。この地に根付く歴史と文化に触れながら、そこから生み出されるドラマチックな出会いや体験を楽しむ時間をお届けしました。
例によって、何が起きるかは当日集まる人たち次第。会場のあちこちで起きていくドラマを追いかけました。

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ドキュメントムービーはこちら▼
(YouTubeにリンクします)

クリエイティブディレクション:池田晶紀
監督・撮影・編集:菊池謙太郎

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●なんだかんだ7は、特別なあの場所が舞台

今回の舞台は、路上ではなく岩波神保町ビルと学士会館。歴史ある場で一体何が起きるのでしょうか。期待を膨らませながらいざ現地に立つと、その場の雰囲気にどこか背筋が伸びます。

1967年に建設された岩波神保町ビル。10階には文化活動のためにつくられたホールがあり、映画の上映を中心に多くの方に親しまれていました。ホールは2022年をもって閉館となっていますが、この日は特別に使用できることに。

再開発のため2025年1月から一時休館となる学士会館。国の有形文化財に登録される建物は圧巻ですが、「なんだかんだ」の装飾も意外と馴染みます。

長くこの地で親しまれ、神田の大先輩である二つの建物。そんな場所で新たな取り組みが開催できるありがたみを感じつつ、ものすごく特別な日になりそうな予感がしてきます。
そして、まだ日は沈みそうにない夕暮れ時。交差点に面したステージにて、神田錦町にある正則学園高校ビッグバンド部の生演奏とともに、なんだかんだ7の開会式がスタート!

交差点に音色が響き渡り、道ゆく人も「かっこいいねぇ」と惚れ惚れ。区長や町会長からの挨拶も行われ、なんだかんだ7は華やかに開幕しました。

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●無骨な地下は、爆音と陽気さがよく行き届く
やついいちろう、清水みさと「地下だけど、なんだかんだ盆踊り」

岩波神保町ビルの会場は、イベントホールの他に地下にもあります。地下にはかつて二つの飲食店がありましたが、現在は跡地となっていてインダストリアルな空間に。そんな場所を使ってまず行われるのは、なんだかんだで恒例になりつつある、芸人のやついいちろうさんによるDJタイムです。

コンクリートに囲まれて静けさと物々しさのあった空間も、爆音が響けばダンスフロアに早変わり。女優の清水みさとさんもゲストに加わり、弾き語りや合いの手で湧かせてくれて異常な盛り上がりに!気持ちいい音楽と笑いで埋め尽くされていきます。

この飲食店跡地は神保町駅の地下通路に直結しているということもあり、愉快な雰囲気はじわじわと外へ。足早に帰路に向かう仕事帰りの方々にも爆音を届けていきます。
一時間たっぷり踊り、皆汗だくになったDJタイム。地下だけどふしぎと開放的で、爽快なひとときでした。

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●学士会館の凄さをあらゆる角度で浴びまくる
共立女子大学 建築・デザイン学科 藤本ゼミ、東京都市大学 都市生活学科 中島ゼミ、錦城学園写真部「学士会館って、だから凄いのか!」展

DJタイムが行われている隣では、学士会館の凄さに迫った展示の空間に。
1928年に建設され、100年近くの歴史を紡いできた学士会館。一目見ただけで圧倒されてしまう場所ですが、なぜこんなにも惹き込まれ、愛されているのでしょうか?そんな問いに対し、学生がさまざまな観点から研究しました。

研究に参加したのは、共立女子大学 建築・デザイン学科の藤本ゼミ、東京都市大学 都市生活学科の中島ゼミ、錦城学園の写真部の皆さん。共立女子大の学生は、建物の中で目に留まったものを観察してスケッチと言葉にし、東京都市大の学生は、学士会館に通う方々にインタビューを行い、人それぞれのエピソードをまとめました。錦城学園写真部は部員全員で撮影会を行い、数百枚にも及ぶ写真に収めました。

怒涛の写真とスケッチとテキストによって、学士会館の魅力を深いところまで味わえる展示は見応えたっぷり。展示を見ながらお客さんの感想も聞こえてきて、さらに魅力が溢れていきます。
どんな角度から見ても、学士会館って凄い!と再確認するとともに、岩波神保町ビルとの調和も楽しめる貴重な展示でした。

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●みんなで踊るって、なんでもできてこんなに気持ちいい!
篠崎芽美+青山健一+関根真理「ダンスワークショップ “chika〜chijou”」

2日目にはなんだかんだ常連のダンサー・振付師の篠崎芽美さんチームが地下空間に登場。
がらんとした飲食店跡地を広々と使って舞い踊ります。音楽家の関根真理さんのライブ感溢れる演奏も相まって、お客さんも次第に巻き込まれていき、大所帯の宴へ…。

皆さんの動きがしなやかになってきたところで、あたりは真っ暗に。ダンサーたちがライトを灯し、壁に大きな影が映し出されると、ペインター・映像作家の青山健一さんがゆらゆら動く影絵に呼応するようにダイナミックにペインティング!子供たちも加わり、絵は縦横無尽に広がっていきます。

気の向くままに何人もの人が一緒に筆を走らせると、次第に一体感に包まれていきます。たっぷり描き込んだところで地下でのパフォーマンスは終了!そして会場は地下を飛び出し、地上10階のイベントホールへと移ります。

ホールをぐるぐるダンスしながら練り歩き、大人も子供もステージへ。芽美さんから「明日やりたいことは何?」と問いかけられ、「ポケモンカード!」「アイスを食べる!」「模型を作る!」など答えが飛び交うと、なんとそこから踊りをつくり出していきます。
思わぬ展開に見ている側も釘付け。いつもあの手この手で自由で楽しい時間を作り出してくれる篠崎芽美さんのダンスに、音楽とドローイングが加わって、さらに感動的で唯一無二の体験となりました。

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●猛暑でも絶やさないホスピタリティを浴びる
「飲食とサウナと、あそび場と」

岩波神保町ビルの外では、隣接する駐車場に食べたり遊んだりととのったり、さまざまな体験が集まりました。
次々に人が吸い込まれていく大型トラックは、モバイルサウナの「サウナフリーザー」です。サウナ室とアイスルームが併設されていて本格的。猛暑によって火照り切った体もアイスルームが爆速で冷やしてくれます。

サウナラボのマイスターがゲリラでウィスキングまでしてくれるという贅沢なおまけも。富良野の白樺の香りが漂います。

さらにサウナフリーザーの隣には、移動式あそび場や、神田ポートのご近所にある喫茶プペさんや廣瀬與兵衛商店さんの屋台も出店!容赦のない暑さでしたが、皆さん笑顔を絶やさずお客さんたちをもてなす様子に心あたたかな空気に溢れた空間でした。

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●絵本の世界を“体感”する
廣瀬弘子/サンプルパパ+竹下花音「食育講演会〜音楽と絵本の朗読会」

再びホールでは、食育インストラクター・廣瀬弘子さんによる食育講演会がスタート。心と体、そして人間性を育てていくことが目的である「食育」。健康だけでなくさまざまな面に影響があることを学んで、大人も日頃の食事を改めて見直したくなりました。

講演の最後は、絵本ソムリエのサンプルパパさんとチェリストの竹下花音さんも加わり、廣瀬さん作の絵本の読み聞かせ。臨場感のある朗読と美しいチェロの音色が絵本の世界へと誘います。

続く音楽と絵本の朗読会では、さらにいろいろな絵本を朗読してくれました。

文と絵に、耳からの情報も加わることで、一人で読むときには決して味わうことができない贅沢な体験に。絵本を読むというより、絵本の世界を体感するようなひとときでした。

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●自由であたらしい、ここだけのシェイクスピアの世界へ
カクシンハン「納涼!みんなでおどろう、みんなでうたおう、シェイクスピア夏祭り」

一日の締めくくりとなる演目は、劇団カクシンハンによるシェイクスピアを題材にした移動式演劇。屋外ステージ、ホール、地下空間に神出鬼没に現れては、その場を作品の世界へとあっという間に変えていきます。

作品の世界に入り込んだかのような近すぎる距離感に戸惑う間もなく、たまたま居合わせた大人も演劇に加わろうとする子供たちも自然に巻き込んでいきます。

クライマックスは学士会館へ移動して、ロミオとジュリエットを披露!ジュリエットの人数が多い気もしますが、お客さんも一緒に名台詞を叫んで最後は大団円。
歴史ある建物で名場面が観ることができ、ものすごい瞬間に立ち会ってしまったような忘れられないパフォーマンスでした!

後編へ続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI),
Satomi Ebine, Akiko Sugiyama,
Miyu Takaki, Mariko Hamano

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当サイトは、お客様本人から、個人情報が、利用目的の範囲を超えて取り扱われているという理由、または不正の手段により取得されたものであるという理由により、その利用の停止または消去(以下、「利用停止等」といいます。)を求められた場合には、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、個人情報の利用停止等を行い、その旨本人に通知します。ただし、個人情報の利用停止等に多額の費用を有する場合その他利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するために必要なこれに代わるべき措置をとれる場合は、この代替策を講じます。

第8条(プライバシーポリシーの変更)
本プライバシーポリシーを変更する場合には告知致します。 プライバシーポリシーは定期的にご確認下さいますようお願い申し上げます。
本プライバシーポリシーの変更は告知が掲載された時点で効力を有するものとし、掲載後、本サイトをご利用頂いた場合には、変更へ同意頂いたものとさせて頂きます。

第9条(お問い合わせ窓口)
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