障がいや病気があっても旅を諦めてほしくない。「ume, yamazoe」から広がる旅の未来|こんなだった、なんだかんだ6

「日常と違う場所に飛び込む」ことは、旅でこそ味わえる楽しみの一つ。
ですが、障がいや病気がある方にとってはそれがハードルにもなり、日常と違うけれど飛び込んでも大丈夫だと思える場所は選択肢が非常に限られてきます。

そうした現状を変えるためには、設備やサービス、制度などさまざまな面のあり方を考える必要がありますが、独自の取り組みをしているのが、奈良県東部の山添村にある宿泊施設「ume, yamazoe」です。障がいや病気がある方とその家族に向けて旅の選択を増やすことを目指した「宿泊招待 HAJIMARI」という名の取り組みは、山奥の小さな宿から少しずつ反響を呼んでいる現在。どのようにして不安をほぐしながら、旅の楽しさを届けているのでしょうか。

今回はume, yamazoeを運営する梅守志歩さんとHAJIMARIのメンバーとしてともに取り組む桂三恵さんをゲストにお招きし、取り組みへの想いや課題、これからについてをお話しいただきました。
題して、「なんだかんだ6 〜ume, yamazoeの取り組みいろいろ聞いてみようか 〜」の開催です。

この日はume, yamazoeがある山添村の山で取れた葉っぱや、お茶を煮出して作ったロウリュ水を用意したスペシャルサウナも実施。奈良名物の飛鳥鍋も特別メニューとして用意し、山添村を肌と舌で感じながらトークの時間へ移ります。

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●障がいや病気がある方の、旅への気持ちをほぐす

ume, yamazoeがあるのは奈良県山添村。コンビニもスーパーもなく、85%が森林、15%が住居といった自然に溢れた集落にあります。築100年以上の建物を使った宿は、段差や坂道が多くて電波が入りづらく、不便で不自由とも言える環境だそうです。しかし、それゆえにこの場所でしか味わえない時間があり、旅の目的地として訪れる方も多い人気の宿となっています。

そんなume, yamazoeでは、2022年から障がいや病気のある方とその家族を無料で招待する「宿泊招待 HAJIMARI」という取り組みをスタートしました。「無料で招待する」という思い切ったこの取り組みはどのように始まったのでしょうか?
「本日のイベント、東京で開催ということで、だいぶドキドキしながら奈良の山奥からやってきました。ただ今サウナに入ってきたのもあって、気持ちがふわっとしてるかもしれないです(笑)」とはにかみながら梅守さんが話してくださいました。

梅守「障がいや病気がある方にとって外食や旅行をすることは、物理的なハードルよりも心理的なハードルがあるんじゃないかなと考えていました。例えば、医療機器をつけているとびっくりされるかもしれないとか、障がいによって急に大きな声を出すかもしれないとか、周りからこう思われるんじゃないかという理由で諦めてしまうことが結構あるんです。
そこで、旅をしたいけどできないと感じている方たちに、施設側から『ここならできますよ!』と迎えることでまずは気持ち的なハードルを下げていきたいと思って取り組みを始めました」

そんな梅守さんの強い想いとともにはじまったHAJIMARI。宿泊招待の他にも、さまざまな施設で同様の取り組みが実施できるよう、宿泊事業者向けに「障がいや病気がある方への接客研修プログラム」も開発・展開しています。

梅守「2年間さまざまな方を招待して、ちょっとした心構え一つで超えられるハードルがたくさんあると気が付いたんです。そこで、私たちが培ってきた心構えや接客ノウハウを、研修プログラムにして広めていくことを始めました。
やっぱり私たちは山の中にある小さな宿なので、ここだけで取り組んでも世界は変わらないと感じていて。でも、研修を通してもっと多くの地域で迎えられる場所が増えれば、障がいや病気がある方がより外出しやすい未来になるんじゃないかと思うんです」

●目の前のできることからはじめていく

実際にHAJIMARIでは、どのようにして「ちょっとした心構え」でお客さんを迎えているのでしょうか。

梅守「訪れる方も招く方もお互いはじめて接するので、どこまでのことならできるか毎回伺いながら、可能な限りトライできるようにしてます。体が不自由な方を担いでサウナに入ってもらったこともありますが、新しいことに挑戦する様子を見てご家族もとても喜んでくださいました。でも、実際そこまで特別なことをしているわけじゃないんです。
車椅子を押すことは技術が必要なのでできないけど、車椅子の周りにいっぱいある荷物を一緒に運ぶことはできるし、食のこだわりが強い場合は、メニューにはなくても作れる範囲で対応する。基本的にできる範囲のことしかしてなくて、ハード面を整えたりお金をかけずとも、いまあるスペックでできることがたくさんあるんです」

専門的な知識はなくても、一歩寄り添って考えるだけでできることは大幅に広がる。そのことに気づくだけでも十分に意味があると話します。
そうした日々の気づきを取り入れた研修プログラムは、現在もブラッシュアップ中なのだそう。HAJIMARIのメンバーとして活動する桂三恵さんは、研修を通しての課題を話してくださいました。

「さまざまな企業の方に研修を行う中で、伝え方がとても難しいと感じていて、一歩間違えると『そうは言っても自分たちにはできない』『何かあったら責任が持てない』と捉えられてしまいます。
自分が知らない障がいがある方への接客は不安もあると思いますし、知るほどにリスクも感じてしまう気持ちはわかるのですが…ただ知らないからと言って遮断するのも違うかもと感じていて…。
障がいに関係なく、お客さんからの要望に対してこれはできる・できないといった判断軸はどんな施設にもあるはずで、それに沿って対応することと同じなんです。病気や障がいがある人には優しくしないといけないという漠然とした固定概念も却って考えを狭めているような気がしていて。そうした考え方や不安を私たちの研修で取り払えると、できることが広がるんじゃないかと思っています」

●旅の楽しさを諦めてほしくない

日々宿を運営しながら、未来を変えるべく取り組み続ける梅守さんたち。そのまっすぐな想いには、ご自身の経験が根幹にあると話します。

梅守「私は四人姉妹の三女で、一番上の姉が後天的な重度の精神疾患があるんです。姉は短大を卒業して働いていましたが、ある日突然精神的に不安定になり、2、3歳ぐらいの知能にまで落ちました。またその2年後には妹が白血病を患い、無菌室の外から見守ることしかできなくなったんです。
そこからレストランに行ったり見たことがない景色を見に行ったり、家族みんなで何か同じ経験をすることは、私たちにとっては今後一度あるかないかという遠いものになりました。…というよりも、それは選択できるはずがなく、選択してもいいということさえ忘れてしまっていたんです。

どこか我慢して気持ちを閉じ込めたまましばらく日々が過ぎていったのですが、ある時自然の中でゆっくり過ごすことがあって、ふとそんな自分の心の状態に気が付いたんですね。自然や旅に出てその場に身を委ねることで、自分の気持ちだったり家族との関係を俯瞰して見直すというタイミングってあるんだなと思って。そこで、同じような気持ちを抱えている人にも心の状態を解消できるきっかけをつくりたいなと思いました」

HAJIMARIの取り組みを始めて2年が経つ現在も、お客さん一人一人とコミュニケーションを重ねながらその人にとっていい旅の時間を考えて提供しています。決まった正解はなく手探りの日々ですが、HAJIMARIを通して宿泊にきたお客さんからのあるメールが、梅守さんの目指すものに繋がっていると話します。

梅守「自閉症のお子さんとお父さんが宿泊に来てくださって、最初こそ不安そうにしていたのですが、少しずつ話してくれるようになり、最後は本当に楽しかったと言って帰ってくれました。その後お父さんからいただいたメールがとても心に残っていて、少し紹介させてもらいます。

“関わり方とかスタッフさんもよくわからないことがあったと思うんですけど、息子も大絶賛でした。当事者と家族が一番救われるのは、プロのテクニックではなくて、寄り添いやわかろうとしてくれるその気持ちです。同じ病気や障がいでも、人によって必要な配慮とか自分のやりたいことは全然違う。そのため、どんな人にも適用する魔法のテクニックはプロの現場でもありません。お客さんと一緒に手探りで対応策を決めて、楽しい時間を作っていくことと、お互いが無理せずにできることが一番いいんじゃないでしょうか”

私たちの取り組みは『福祉』というカテゴリーに括ることもできるかもしれませんが、福祉のことをやっている感覚はなくて。これこそ、私たちがこういう距離感でやっていけるといいなと目指していることなんです」

「ハード面で便利にしていけることはたくさんあるけど、そこを突き詰めると旅先にしかない魅力や楽しむ要素がどうしても減ってしまいます。お客さんがここに来て新しいことに挑戦したり積極的になれるのは、旅先で起こる発見やワクワクする感覚が損なわれていなかったから起こることだと思うので、『旅の楽しさを提供すること』は諦めずに大事にしていきたいです」

福祉サービスではなく、旅の時間をつくりたい。その想いが、HAJIMARIならではの体験につながっているのかもしれません。

●HAJIMARIが目指す景色

2年間で24組94名を招待し、今年また新たに12組程招く予定です。継続的に続けていく仕組みも検討されており、昨年は活動資金のクラウドファンディングを実施。今後は研修プログラムを広げながら、スポンサーを増やすことも考えているそうです。

梅守「『いつでも来てください!』と繰り返し発信しているうちに普通に予約してくださるようになって、この前は海外の観光客が一組、若いカップルが一組、車椅子の方のご家族が一組という組み合わせで。いろんなものを超えて同じ空間にいる感じがすごくよくって、私が見たかった景色がある!と思いました。
ただ、現状この取り組みが大事だと思っている人がまだまだいません。でも、誰しも何十年か経てば体の変化が起きるはずで、いまのように何も気にせずに旅ができるとは限らない。そう考えると障がいや病気がある方に向けた活動に見えるかもしれないですけど、本当は自分たちの未来を作るためにやってるんじゃないかなと思ってます」

●参加者のみなさんと対話実験

梅守さんと桂さんのお話は多くの気づきを与えてくれるとと同時に、大事な問いを置いていってくれました。ここからは参加者のみなさんと対話という形式で、そんな問いについて話を深めていきます。

「大変な話、難しい話で終わらせないためはどうするか」「障がいや病気でフィルタリングしない関わり方」「障害や病気のある人が身近にいない立場ができること」など、それぞれの経験や考えを通してゆっくりじっくりと言葉を重ねていきました。

さまざまな立場の参加者の言葉を受け取り、また自分の中で新たな言葉が湧き上がり、じんわりと熱を帯びていくその対話の場は、答えに向かっているわけではないけれど、確かな兆しに向かっているように感じられました。
1時間の対話を経て、改めて梅守さんと桂さんから感想をいただきました。

「言葉としては知っているけどわかっていなかったことがたくさんあるなと思っていて、例えば『自閉症』と言っても、感覚過敏の方も大きな声を出してしまう方もどちらも当てはまります。でも梅守さんを手伝うまで身近にいなかったので、漠然としたイメージしか持ってなかったことに気付かされました。

私自身、そこまで当事者意識があるとは言いづらくて苦しく感じることもあるのですが、たどり着いた考えがあって、『俺か、俺以外か』に尽きると思うんですよね。ローランドさんの言葉なんですけど(笑)
多様性ということでもなく、そもそもが違うというか。同じ障がいや病気でも、みんな違うし、嬉しいことも違うんですよね。というか一番身近な家族でさえ、お互いに根っこで考えてることを実は知らなくて、すれ違うこともあるじゃないですか。それくらい人のことは実はわからない。そういうスタンスで目の前の人に向き合って、都度理解していくと、当事者かどうかに関係なくすごくフラットに考えられるので、改めてそこはぶれないように活動していきたいです」

梅守「今日はもっといろんな人に取り組みを知ってもらいたくて、山奥から東京までやってきました。これまで活動してきた中で、人によってはすごく尊い取り組みという印象だけで終わってしまうこともあったのですが、いざみなさんの話を聞くと、自分たちが思っている以上のことを受け取ってくれてすごく感動しました。
先ほども言ったように私たちは福祉のことをやっている感覚はなくて、ただ単純にもっと楽しい未来の方がいいと思っていて。そのために、私たちが考えていることをどう伝えて、受け取ってくれた人がどう変わっていけるといいのかずっと難しく考えていたんです。でも答えは結構シンプルで、今日来てくださった皆さんが身近な人に伝えてくださったり、街で障がいのある人がいたらちょっとおおらかな目で見るとか、それくらいのことでも心の中に芽生えていたとしたら、素晴らしいし嬉しいと思いました」

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悩みながらもがきながら未来に向かうお二人の言葉は参加者にも深く届き、これからも折に触れて思い返すであろう大切な時間になりました。
そして、投げかけられた問いは一筋縄ではいかないものだとしても、自分一人がまずできることとして『俺か、俺以外か』の心持ちがあればいい。それがわかっているだけで未来につながる一歩を踏み出せる気がしました。

この日の話を、温度のある声として受け取ることと、画面上の文字として受け取ることで、言葉の届く深さは異なるかもしれませんが、この記事を通して少しでも多くの方に届き、何かの支えになることを願います。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI)

誰かと一緒に鑑賞するからこそたどり着く何かがある。写真家・白鳥建二さんとの美術鑑賞会|こんなだった、なんだかんだ5

「鑑賞」を辞書でひくと、『芸術作品について、自分の立場からそのよさを味わうこと』といったことが書かれています。「自分の立場から」とあるように、捉え方は一つではなく、自分の感じるままに楽しむことができる。それが作品鑑賞の醍醐味の一つと言えるでしょう。

味わい方はさまざまある中で、「全盲」という立場からアート鑑賞を行っているのが美術鑑賞者/写真家の白鳥建二さん。目を通して作品を見ることはできませんが、独自の鑑賞法を編み出し、日本全国の美術館をめぐっています。

一体どうやって、目が見えない中でアートを鑑賞するのでしょうか?
実際に白鳥さん独自の鑑賞法の体験と、そんな白鳥さんを追ったドキュメンタリー映画の鑑賞、そして参加者のみなさんとの対話を通して、そんな問いに迫りました。題して「なんだかんだ5 〜写真家・白鳥建二さんに会ってみたい!みんなで映画を観たあと、お話聞かせてください。〜」の開催です。

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●白鳥建二さんと、自由な会話で美術鑑賞

初めて美術館を訪れたきっかけは、恋人とのデートだったという白鳥さん。そのときの経験から「目が見えなくてもアートを楽しむことはできるのかもしれない」と思うようになり、あちこちの美術館を訪れていったそうです。そうしていつの間にか「自由な会話を使ったアート鑑賞」という独自の鑑賞法を編み出しました。
この「自由な会話を使ったアート鑑賞」とは一体どういったものなのか。白鳥さんをお招きして、鑑賞会を開いていただきました。

この日の会場である神田ポートビルでは、京都府亀岡市にある「みずのき美術館」の展覧会中ということで、その中からいくつかの作品を選んで鑑賞することに。参加者全員で一緒に作品を見て話し合いながら、じっくりと鑑賞するというのが白鳥さんのスタイルです。
何から話せばいいのだろう…という空気が漂う中、白鳥さんはこう話します。

「まずは作品を見て、色や形などすぐ言葉にできそうなものから話してみてください。慣れてきたら、連想したことや思い出したことなど、作品に関連することであればなんでも大丈夫です。
あと、僕は誰かが喋らないとどんな作品かわからないんですが、あまり僕のことは気にしないでくださいね。僕のための鑑賞会ではなくて、このメンバー全員で鑑賞するという時間にしたいんです。みんなの意見がまとまってもバラバラになってもなんでもOKなので、自由に喋ってもらいたいです」(白鳥さん)

白鳥さんの言葉に場がほぐれ、いざ鑑賞会へ。なんとなく目に留まった絵についてぽつりぽつりと話していきます。

「この作品は黄色いですね。オレンジでもないし、山吹色というのかな」
「とにかく抽象なんだけど、何かに見えなくもない」
「私は焼き魚を食べた後みたいな気がします」
「ああ…!茶色が皮で、白いのがちょっと残った身か」
「皮は食べない派だ」
「実は僕も同じように感じてたんですけど、昨日アジの開きを食べたからそう見えるのかなと思って躊躇してて(笑)」
「あはは!」(一同)
「みんなもそう見えてて安心しました」

「これは今日の絵の中で一番小さい」
「タイトルをつけるとしたら『真夜中の森のえのきだけ』」
(一同笑)
「植物的なものを感じますよね」
「これがワインのラベルだとしたらどんな味?」(ソムリエをされているという参加者に向けて)
「黒っぽいところが丘で…直線に区切られているのは畑ですね。白い塊が石灰石だとすると…そういった土地柄でも育つブドウはミネラル豊富で結構シリアスなワインな気がします。イタリア北東部の」
「なるほど〜すごい!(笑)」
「完全に見え方変わっちゃったよ。味がしてきたね」

1時間半たっぷり使って鑑賞したのは4作品。一つの作品を20分程かけてじっくり鑑賞していきました。そして再び輪になって白鳥さんと鑑賞会の振り返りへ。
参加者からはこんな声が飛び交いました。
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“「見る」ということが体感により近づいた感じがしました”
“絵には正解がなくて無限の可能性があるし、相手のことを想像しつつ自分のことも投影されていく感覚があって面白かったです”
“作品だけでなく、作品について話すその人に対しての関心も出てきました”
“このメンバーで時間をかけて鑑賞しないと得られない体験をした気がします。その場にある絵や人や居心地など、すべての要素が鑑賞に必要なことで、その場だからたどり着く何かがあるんだと感じました”
“専門家じゃなくても絵を見て感じたことを言ってもいいんだという安心感が心地よかったです”
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鑑賞会を経て、みなさんの感想もどこか饒舌に。そんな様子に白鳥さんは「ふふふ」と微笑みながら耳を傾けます。鑑賞中も、みなさんの会話を楽しんでいる様子が印象的でしたが、白鳥さんの頭の中には会話からどのような絵が見えていたのでしょうか。

「僕の場合、みなさんの話を聞いてイメージを頭の中に描くことをゴールにしてないんです。時にはイメージが浮かぶこともありますが、今日だと言葉の方が印象として強く残っています。
鑑賞会時は基本的に音で情報収集してるんですが、それは発せられた言葉だけではなく、参加者が作品とどれくらい距離をもって見ているのか、 作品の周りをどのように移動してるのかなど、足音だったりちょっとした物音も含めて情報として得ています」(白鳥さん)

人と一緒にいるということも含めて絵を見てるという白鳥さん。それは20年以上鑑賞会を続けていく中で見つけた面白さだそうです。

「最近気づいたのは、ゴールや答えを決めないことがこの鑑賞会を続ける中で一番飽きないところかなと思っています。僕は誰かが楽しんでいるのを見るのが好きで、みんなが盛り上がってくると僕も盛り上がってくるので(笑) そんな感じで楽しんでるんです」(白鳥さん)

アート業界には「対話型鑑賞」と呼ばれるメソッドがありますが、白鳥さんの鑑賞会には決まったメソッドがあるわけではなく、その場に集まった人とその場の空気を楽しむことを一番大事にしているそうです。
とにかくその場のあらゆるものを受け入れて楽しむこと。白鳥さんの様子に感化されるように、この日の鑑賞会も得も言われぬ一体感があり、終始あたたかな空気に包まれていました。

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●映画を鑑賞してオープンダイアローグ

美術作品の鑑賞会の後は、ドキュメンタリー映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』の上映会へ。白鳥さんの「全盲の美術鑑賞者」としての20年を振り返りながら、美術鑑賞の様子から、普段の生活、周りの人々との交流を記録したドキュメンタリー映画です。

約100分の映画をじっくり観た後、感想が湧き上がるままに白鳥さんを交えたトークの時間へと移ります。

50人近い参加者同士で映画の感想を共有し合い、白鳥さんに感じたことや疑問を投げかけていきました。

参加者① 私は普段美術を教える立場にいますが、作品の説明を求められても正直わからないことってあるんです。でも、本来美術鑑賞はフラットな関係をつくることができるものなんだと気付かされ、対等になれることが面白さだなと感じました。

白鳥 美術作品って「わかった」と言ってしまえばそれで終わりとすることもできると思うんです。でも、20年以上鑑賞会をやっていると、美術好きの人から慣れてない人までいろんな人の鑑賞があって飽きないんですよね。なので、答えを求めずに話す方がいいんじゃないかという気がします。

参加者② 映画を観て、白鳥さんの生き様というか力強さを感じました。はみ出して生きようみたいな姿勢が生まれたのはいつ頃でしょうか?

白鳥 特に「はみ出そう」とは思ってはいないのですが(笑) 天邪鬼だという自覚はしていて、カテゴライズで決めつけられたくない思いはあります。
そのきっかけというわけでないですが覚えていることだと、子供の頃に祖母から『目が見えないから頑張れ。見える人の何倍も頑張らなきゃいけない』と言われたことがあって。そのときに、『見えないから苦労する』という感覚が理解できなかったんです。幼かったのでまだ経験も知識もないし、言葉の意味はわかるけど『本当に?』って思ったんですよ。そこから「目が見えない=苦労する」と決めつけられるのが嫌で、天邪鬼な感覚になっていったのかもしれません。

参加者③ 映画の中で写真活動をされている様子がありましたが、シャッターを切るタイミングはどのように決めていますか?

白鳥 写真は2005年から撮り始めていて、最初は車のエンジン音とか、人の足音とか、お店から聞こえてくる音楽とか、音がする方にカメラを向けてボタンを押すことをルールとしていました。いまは歩くリズムだったり熱を感じる方だったりとルールが増えていて、もうほとんど意識せずに撮り続けています。ただ、歩きながら撮るということはずっと変わらないですね。あとは気分が乗らないときは撮りません(笑)

参加者④ 白鳥さんは相手に話をさせるのが上手で、もっと来い!と言われてるような感じになります。何かテクニックがあるのでしょうか?

白鳥 元々自分から喋るのが苦手で、相手の話に乗った方が面白いんですよね。だからどんなことに興味があるか、何が好きなのかを質問して、それをいかにもわかってる感じで聞いていくんです。全然知らないことでも。そうするとどんどん喜んで話してくれる。鑑賞会もそういったところがあって病みつきになってます(笑)

そんな白鳥さんにすっかり乗せられてしまった参加者のみなさんからは時間ギリギリまで質問が飛び交い、トークが尽きることはありませんでした。
アフタートークの後のフリータイムには、ナチュールワインを楽しめる「響くワイン」も開催され、お酒好きの白鳥さんとワインを飲み交わしながら残りの時間までたっぷりと楽しみました。

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この作品は何たるものか、お互いが何を考えているのか、いろいろなことを探りつつも、ゴールを決めずに漂うように言葉を投げかけてみる。
白鳥さんとの鑑賞は、作品を見れば見るほど、話せば話すほど、新しい視点や感情が開かれていくようなひと時でした。

考え抜かれた発言も、脱線するようなジョークも、「ふふふ」という微笑みも、すべてが居心地に繋がっていることに気づくと、その場が途端に大事なものに思えてきます。白鳥さんとの鑑賞会にはまさにそうした感覚があり、なんだかんだが目指すべき心地よさがありました。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI)

車いすの高校生・佐野夢果さんが繰り広げるアイデアの裏側|こんなだった、なんだかんだ4 【後編】

『もっと日常的に、障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所がなくてはならない』
静岡県掛川市にある駄菓子屋「横さんち」は、そうした思いから生まれた場所。さまざまな障がいを持つスタッフたちで日々お店を運営しています。

神田から遠く離れたところにありますが、これまでの路上実験イベント「なんだかんだ」にもはるばる参加してくださっている横さんち。
改めてその取り組みをじっくり聞き、そして多くの人に知ってもらいたい!ということで、運営サポートをしている池島麻三子さんとボランティアスタッフとして通う高校生の佐野夢果さんをゲストにお招きし、たっぷりとお話を伺いました。

前編はこちら

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●神田と夢果ちゃんの出会いと、車いす夢のデリバリー

続いて二人目のゲストは佐野夢果さん(以下、夢果ちゃん)。幼少期から車いす生活を送っており、横さんちにはボランティアスタッフとして参加している高校3年生です。高校に通う傍ら、障がい当事者の立場からイベント企画や執筆などさまざまな活動を行っており、ここ神田でも夢果ちゃんのアイデアによる車いす体験スタンプラリー「車いす夢のデリバリー 〜困っている人を助けよう!〜」を開催しました。

ここで「車いす夢のデリバリー」のあらすじを簡単にご紹介。
参加者はZKNEats(ズキン・イーツ)の新人配達員となって、車いすに乗って配達物の調達から届けるまでのミッションに取り組みます。しかし、ミッションを遂行すべくいざ街に繰り出すと、お腹を空かせた河童、寒さに耐えるストリートミュージシャンなど、困っている人たちがそこかしこに。少し変わった困りごとですが、何に困っているんだろう?助けが必要?自分にできることはある?など様子を伺いながら、自分なりの方法で人助けをしながらデリバリーをしていく、という二重の構想になっています。
困りごとを抱える人たちはプロの役者の方に演じてもらい、車いすは千代田区や近くの学校から借りるなど、さまざまな協力を得てこの壮大な企画は実現しました。

「この企画では、街中で車いすに乗るという体験とともに、困っている人と出会って、少し立ち止まって考えるという機会を作りたかったんです。あえてテーマを一つに限定しないことで、思いがけない発見や気づきが生まれる空間にしたいと思ってこの企画を考えました。

イベントが始まる前も、こちらからは深く説明せずにフラットに参加してもらったのですが、終わってから参加者の方がたくさんの気づきを教えてくれてました。いろいろな視点の感想をもらえて嬉しかったですし、それを多くの人の前で安心して伝えられる環境にできたこともひっくるめてとても素敵な場になったなと思いました」(夢果ちゃん)

車いすに乗って当事者の立場を知ることも大事な体験ですが、困っている人に対してどう振る舞えば良いか知ることはその後の生活に持ち帰って活かせる体験です。得られた気づきをイベント限りのものにせず、私たちがこれから生きていく中で大事なまなざしや気遣いを教えてくれました。

●考えていることを楽しく伝える、アイデアの源泉

何段階もの発見があるスタンプラリー企画は大盛況。高校生ながらにこの複雑な企画を生み出した夢果ちゃんは普段何を考えて、活動につなげているのでしょうか。

「社会で生きている中で日々感じたことが源泉にあると思います。特に一人で出かけると多くのことを感じるんです。自販機のボタンが届かなかったり、届いたとしても買ったものを出せなかったり、 エレベーターのは乗るときはボタンを押せても、乗ったら階数のボタンが押せなくて閉じ込められたり。私の生きてる世界は、マリオみたいに何回もゲームオーバーになるんですよ。
そんなサバイバルな世界で過ごしているので大変と言えば大変なんですけど、「つらいね」「かわいそうだね」ということではなく、そうした現状を楽しい方法で伝えていきたいんです。

おにぎりもチョコレートとかちょっとユーモアを混ぜて出せば、より印象深くなるというか。ストレートにぶつけても一定のところまでしか届かないけど、少し変化球で投げかけてみると受け手の印象とか社会への浸透度が変わってくると思うんです。そういった意味で、どう伝えようか、どう楽しい形に変換していこうかなっていうことは常に考えてることだったりしますね」(夢果ちゃん)

スタンプラリー企画も、デリバリーというキャッチーな設定や、困りごとを抱える人たちも個性的なキャラクターばかりで参加者が純粋に楽しむ様子が印象的でした。
そしてさらりと話してくれましたが、それをしっかり楽しませる形にできるのは夢果ちゃんの表現力があってこそ。そんなアイデアあふれる夢果ちゃんの今後の夢について伺ってみました。

「ちょっと語弊があるかもしれませんが、私は特段『頑張りたい』とは思ってなくて。私が頑張らずにいることにも価値があるんじゃないかな、なんて思ったりするんです。
だから、普段感じてることも、さっき言ったようになるべく楽しい方法で伝えていきたいんです。 その手段や方法、一緒に作る人の選択肢はいろいろあると思うので、これから大学で学びながら自分の視野をもっと広げたいですね。楽しいことはこれからも続けつつ、社会にさまざまな変革を起こすような空間をつくれる人になりたいななんて思ったり…思ってなかったりしています(笑)」(夢果ちゃん)

●オープンダイアローグ
わき上がる自分の言葉に耳を傾ける

池島さんと夢果ちゃんのお話をじっくり聞いた後は、参加者のみなさんとの対話の時間へ。
お二人から受け取った言葉を振り返りながら、参加者同士で対話を行い、自分の中に湧き上がってくる気づきや思いにじっと耳を傾けます。

静かにトークを聞いていた参加者も、ぽつりぽつりと話していくうちに言葉が溢れ、トークが止まりません。
なんだかんだのクリエイティブディレクターであり、この日のモデレーターの池田さんはみなさんの対話の様子を受けてこう話しました。

「今日お二人のお話を聞いて、これからの福祉をどう考えようとか、障がいという言い方はちょっと違うよなとか、みなさんいろんなこと考えてると思うんです。そうしたことを安心して共有し合える場が必要だと思って、最後に対話の時間を設けてみました。戸惑いもあったかもしれませんが、いろんなことに気づけてちょっと楽になりますよね。この『楽になる』という時間をこれからもつくっていきたいと思います」(池田さん)

対話に参加した池島さんと夢果ちゃんも、みなさんとの対話を通じて感想をくださいました。

「一回立ち止まって誰かと話す場ってすごく少ないと思うんですよ。今日のように留まって考えることができたり、ゆっくり話していいんだよって受け入れてくれる場がもっとあれば、生きづらさなんかももうちょっと軽減するのかなって思いました」(夢果ちゃん)

「みなさんが話してくださったように、夢果ちゃんの考えや視点ってすごいなという感覚は自分にもあるんですけど、夢果ちゃんとは素直に一緒に過ごす時間が楽しいんです。だから活動をともにする中で大変なことに直面していっぱい考えることもあるんですけど、一緒に楽しむということを第一にしていきたいですね」(池島さん)

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それぞれの立場から、生活する中での疑問や問題への向き合い方のヒントを投げかけてくれたお二人。
さまざまなことに直面しながらも、楽しさを大事にして取り組む姿勢がとても印象的で、参加されているみなさんもお二人の様子に刺激をもらっているようでした。

この日の気づきや感想はそれぞれ持ち帰って、考えを深めたり誰かと話したりしながら、少しずつ考えの輪が広がっていくことを願います。そしてなんだかんだも、こうした寄り添い合える場になるように、引き続きいろいろな方と活動を広げていきます。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI)

障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所。「駄菓子屋 横さんち」の話|こんなだった、なんだかんだ4 【前編】

『もっと日常的に、障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所がなくてはならない』
静岡県掛川市にある駄菓子屋「横さんち」は、そうした思いから生まれた場所。さまざまな障がいを持つスタッフたちで日々お店を運営しています。

神田から遠く離れたところにありますが、これまでの路上実験イベント「なんだかんだ」にもはるばる参加してくださっている横さんち。
改めてその取り組みをじっくり聞き、そして多くの人に知ってもらいたい!ということで、運営サポートをしている池島麻三子さんとボランティアスタッフとして通う高校生の佐野夢果さんをゲストにお招きし、たっぷりとお話を伺いました。
題して、「なんだかんだ4 〜駄菓子屋横さんちの取り組みとそこに通う夢果ちゃんの願いとかいろいろ聞いてみようか〜」の開催です。

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春の訪れを感じる暖かな陽気の3月16日。畳を敷き詰めた神田ポートビルの会場に30名近くのお客さんが集まり、ゆるやかにスタートしました。

●駄菓子屋 横さんちのきっかけとは?

はじめに、駄菓子屋「横さんち」の運営サポートをしている池島麻三子さんから、取り組みを紹介いただきました。
店長である横山さんの愛称が店名の由来である横さんち。元々は企業に勤めていた横山さんですが、ある経験がお店をつくるきっかけとなったそうです。

「幼少期から車いす生活を送っている横山さんですが、釣りやスキー、飲み会などどこへでも出かけるパワフルな人なんです。そんな横山さんは、企業に勤める傍ら、障がいへの理解を深めるために学校で講演をしたり、車いす体験会を開いたりと福祉教育の活動をされていました。しかし、そうした機会はせいぜい年に一度、人によっては一生に一度しかないようなもので、それだけでは伝え切ることができません。そこから『もっと日常的に、障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所がなくてはいけない』と考えるようになり、駄菓子屋『横さんち』の誕生につながっていったんです」(池島さん)

運営サポートをしている池島麻三子さん

そんな横さんちの店舗は、車いすユーザー向けに空間設計がなされており、スタッフはさまざまな障がいのある方、後期高齢者の方、障がいはないものの生きづらさを抱える方などがそれぞれできることを発揮して働いています。

「例えば、キラキラなビーズが好きなスタッフの服部くんは、アクセサリーを作るワークショップを毎週開いています。参加するのは小学校高学年の悩み多き年頃の子たちなんですけど、服部くんは受け止め上手なのでアクセサリーを作りながらお悩み相談をしていて信頼が厚いんです。

横さんちで働く人には、なるべく個々の得意なことに合わせたお仕事をお願いしたいと思っていますが、それを見つけるのもそう簡単にはいかなくて。服部くんもいろいろな仕事をしてもらいつつも、長い間お互いにこれだ!と思えるものが見つけられなかったんです。
横さんちのコンセプトは『障がいのある人がいきいきと働く』なので、社内会議でもその仕事はその人がいきいきしているかどうかということが論点に必ず挙がってくるんですが、ビーズのワークショップを始めてから、服部くんは楽しそうで私たちも嬉しいんです」(池島さん)

●働く人も訪れる人も補い合うことは当たり前

それぞれの得意を仕事として活かすことができる横さんちですが、得意ではないことは補い合いながら働いています。補うのはスタッフ同士だけではないそうです。

「レジに時間がかかってよく行列ができるんですが、お客さんが商品のスキャンや袋詰めを自然と手伝ってくれるんです。ここを利用するお客さんの間には、補い合うことは当たり前という感覚があっていいなと思っています。手伝ってくれるのは子どもたちが本当に多くて、手伝ううちに違う学校の子同士で仲良くなったりと交流の場にもなっていますね」(池島さん)

働く人も訪れる人も自然に関わり合うことができ、街に開かれた場所として親しまれている横さんち。
肩肘張らない「駄菓子屋」という場の力も絶妙に関係しているように感じますが、いまの時代にはなかなかめずらしい形態です。実は、運営会社による一事業という側面もあります。

「『横さんち』の形態は、ITエンジニアの人材派遣会社が運営会社となっていて、そこの一事業として取り組んでいます。そのため、ここで働いているスタッフは“社員”という扱いで、いわゆる一般就労になります。
きっかけとしては運営会社の規模拡大に応じて障がい者雇用をすることになったものの、エンジニア向けの会社なので新たな仕事やポジションを考える必要があったんです。ただ、当初から見えないところで単純作業をするだけではなく、いきいきと働ける職場をつくろうという思いがありました。そこを出発点に生まれたのが、駄菓子屋というアイデアなんです。
いまの時代、駄菓子屋という形態のみで利益を出すことは難しいですが、その代わりに地域に開いた福祉や教育の場になったり、子どもたちの居場所となるように取り組むことが事業の役割になっています。地域に貢献するお仕事としてみなさん働いていますね」(池島さん)

この日は「駄菓子屋 横さんち」が神田ポートに出張出店してくださり、
お子さんはもちろん大人も「懐かしい!」と目を輝かせていました。

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横さんちの様子を思い浮かべながらじっくりお話を聞いていると
すっかりお店のみなさんに会いにいきたい気持ちに。
この日も出張で駄菓子屋さんを開いてくれましたが
駄菓子を囲むとあっという間に距離が縮まるようでした。

続いては、そんな横さんちに通いながら自らさまざまな活動を行う
高校生の佐野夢果さんにお話を伺っていきます。

後編へ続く

ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみました|こんなだった、なんだかんだ3 【#3】

3月3日のひな祭り。ひな祭りといえば、女の子の健やかな成長を祈るイメージがありますが、実は年齢に限りはないそうです。
あらゆる女性が主役となるそんな一日を、なんだかんだ3では“レディースデー”として広くとらえて、神田ポートビルに関わるさまざまなメンバーと考えたイベントを開催しました。

題して、「なんだかんだ3 〜ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみます!〜」。
踊ったり、語ったり、ととのい尽くしたり。さまざまな身体や心に嬉しいことが集まって、生まれてまもないレディーから人生経験豊富なレディーまで、のびのびと過ごす一日となりました。

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●あこがれの先輩たちの“あのころ”とは
トークイベント「あのころのわたしへ」

神田ポートビル2階のほぼ日の學校では、在京テレビ局が学生を応援するトークイベント「あのころのわたしへ」を開催。アナウンサーや記者7名が一堂に介しました。
会場には進学や就職など人生の岐路に立つ学生の参加者が集まり、さまざまなバックグラウンドを持つみなさんが“あのころ”を振り返りながら学生の悩みに答えました。

==出演=====================
・伊東 敏恵(NHKアナウンサー 1996年入局)
・鈴江 奈々(日本テレビ アナウンサー 2003年入社)
・森川 夕貴(テレビ朝日アナウンサー 2016年入社)
・久保田 智子(TBS記者 2000年入社)
・佐々木 明子(テレビ東京アナウンサー 1992年入社)
・佐々木 恭子(フジテレビ アナウンサー 1996年入社)
・森田 美礼(TOKYO MX記者 2016年入社)
=========================

学生から寄せられた悩みは、就活への不安や、働き始めた後のライフプランについて。登壇されたみなさんは同じ業界でありつつも、それぞれの苦労や葛藤のエピソードが飛び出します。「人生は想定外の連続」と振り返りながらも、想定外を受け入れて楽しみ、何事も全力で取り組む姿勢の大事さについて話しました。
中でも質問が多かったのは、仕事と家庭の両立についてです。結婚や出産を経て仕事での活躍の場を広げているみなさんも、かつては同じような悩みにぶつかっていたと振り返ります。

くじけることは相当あったけれど、“できない”ではなく、“どうすればできるか”を考えていた
人に頼ることが大事。仕事にも家族にも罪悪感をもっていたが、力になってくれる人のおかげで罪悪感を手放すことができた
あらゆる選択も、自分が納得するまで向き合うことが大事

実体験を踏まえながら投げかけられる言葉は一つ一つ説得力があり、道を切り拓いてきた先輩からのアドバイスはとても重みがありました。
最後は、就活生だった“あのころのわたし”へ、そしていま人生の岐路に立つ学生へ向けてメッセージを送りました。

何をしたいか問いかけ続けることが、自分を大事にすることに繋がる
やろうと思ったことは腹を決める
なりたいロールモデルに自分がなろう

どれもこれからさまざまな道に向かう学生にとって、今後の支えになるような心強い言葉です。
笑いも交えつつ終始やわらかな雰囲気でしたが、勇気づけられる言葉が多く飛び交い、前向きな気持ちに溢れた一時間でした。

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● TOBICH厳選のレディーにおすすめなアイテムが展開
TOBICHI「ひな祭りコーナー!」

ご近所のTOBICHIでも、なんだかんだ3に合わせて「ひな祭りコーナー」が展開。
常設コーナーでは、床屋かなぶんさんによるフェルトのマスコット「つなぐり」のおひなさま仕様が販売。さらにほぼ日オリジナルブランドの下着やビューティーアイテムの展示やサンプル配布がされ、ひな祭り気分になっていました。

また、この日限定で登場した、ほぼ日のオリジナルジャムを使ったジャムパンは、ご近所に店舗を構え る人気店ポワン・エ・リーニュさんが特別に作ってくださったというスペシャルな一品。
やわらかいパンに大きめの果肉がとろとろと詰まっていて、一口で甘さと香りがすっと広がるおいしさがたまりませんでした…!

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あらゆる角度でレディースデーを考えてみた、なんだかんだ3。
さまざまな女性が主役となって、一緒に楽しい時間を共有したり、新しいことを教えてもらったり、励まされたり、豊かな気持ちになれる時間が流れていました。

『「なんだかんだ」というのは、あたらしく生きる道しるべになれるようなモノであってほしいんです』(なんだかんだ2インタビューより)
とクリエイティブディレクターの池田さんがお話ししていたように、この日出会った体験や感覚や言葉は、これから生きていく中でにちょっとした支えになる気がします。

今回は路上実験イベントとは異なり神田ポートビル全体を使っての開催でしたが、なんだかんだらしい空間が広がっていた今回。この手応えを胸に、2週間後のなんだかんだ4へと続きます。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Mariko Hamano

ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみました|こんなだった、なんだかんだ3【#2】

3月3日のひな祭り。ひな祭りといえば、女の子の健やかな成長を祈るイメージがありますが、実は年齢に限りはないそうです。
あらゆる女性が主役となるそんな一日を、なんだかんだ3では“レディースデー”として広くとらえて、神田ポートビルに関わるさまざまなメンバーと考えたイベントを開催しました。

題して、「なんだかんだ3 〜ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみます!〜」。
踊ったり、語ったり、ととのい尽くしたり。さまざまな身体や心に嬉しいことが集まって、生まれてまもないレディーから人生経験豊富なレディーまで、のびのびと過ごす一日となりました。

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●ハギレからいろんな生きものたちがこんにちは
ひびのこづえ「ちいさな生きもの研究所」ワークショップ

ほぼ日の學校スペースでは、コスチュームアーティストである、ひびのこづえさんが所長を務める「ちいさな生きもの研究所」のワークショップを実施。
ひびのさんが舞台やテレビの仕事で衣装を作る際に出てきたきれいなハギレを使って、ちいさな生きもののブローチを作ります。

ワークショップは、デザイン画の作成からスタート。形を考えるだけでなく色もしっかり塗って、イメージを固めていきます。
「絵を描くコツは消しゴムをあまり使わないこと。一度描いた線がすてきなヒントになりますからね」とひびのさん。
筆を走らせながらイメージを作ったり、画像を検索しながら絵を描いたり、思い思いにイメージを膨らませていきます。

デザイン画を描いたらひびのさんのもとへ。
皆さんの個性が光るデザインにひびのさんも驚きの様子です。

次にデザインができたら、ハギレを選びます。

ひびのさんのお仕事の中であまったという貴重なハギレたちの種類は膨大!
見ているだけでわくわくするラインナップで
絨毯やメッシュや撥水加工された素材など変わったものもあり、
創造が掻き立てられます。

デザインとハギレが揃ったら、ひたすら縫っていきます。
ここから静寂の集中タイムへ。

縫い終わったら、ピンをつけてブローチの出来上がり!

フラミンゴ、キツネザル、かえるのお姫様、金魚、カブトムシや、寿司ゴキブリや頭が5つある蛇といった独創的なものが誕生しました。
完成するとひびのさんが一人ひとりの作品にコメントをしてる場面も。ひびのさんに褒められて嬉しそうなみなさんとともに、胸に光るちいさな生きものたちも愛おしく見えました。

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●レディーたちがととのい尽くす
「サんがつみっかはレディースデー」

神田ポートビルの地下にあるサウナラボは、ふだんは男女に分けて運営していますがこの日は特別に館内まるっと女性貸し切り。IKEサウナ、OKEサウナどちらもたっぷり楽しめるスペシャルデーになりました。

さらにこの日は特別に、ウィスキングマイスターと楽しむスクラブバイキングも展開。
フルーツやハーブが用意され、自分の好みや状態に合わせたスクラブを作ることができます。

作り方は、効能が異なるフルーツ+塩 or 砂糖+ハーブの三つをバイキングのように選んで、フルーツをくだき、ハーブをかき混ぜていくだけ。よく身体に染み込みますようにと念入りにかき混ぜれば、いっそ食べられそうなほどのいい匂いがしてきます。

普段はサウナ室内でのパックはできませんが、スペシャルデーということで完成したらそのままサウナに持っていってパックしてOK。
休憩スペースはできたてほやほやのスクラブを体験した女性陣のツヤが光り輝いていました。

#3へ続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Mariko Hamano

ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみました|こんなだった、なんだかんだ3 【#1】

3月3日のひな祭り。ひな祭りといえば、女の子の健やかな成長を祈るイメージがありますが、実は年齢に限りはないそうです。
あらゆる女性が主役となるそんな一日を、なんだかんだ3では“レディースデー”として広くとらえて、神田ポートビルに関わるさまざまなメンバーと考えたイベントを開催しました。

題して、「なんだかんだ3 〜ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみます!〜」。
踊ったり、語ったり、ととのい尽くしたり。さまざまな身体や心に嬉しいことが集まって、生まれてまもないレディーから人生経験豊富なレディーまで、のびのびと過ごす一日となりました。

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●身体と創造力をとことん解き放てば、どこまでも踊れる
伊藤千枝子・篠崎芽美ワークショップ「なんだか不思議な体感」

神田ポートビル一階では、ダンサー・振付家の伊藤千枝さんと篠崎芽美さんによる、ダンスのワークショップ。心のそこから、身体のそこから、自由に、思いついたままに、感じたままに、あれやこれやと一緒になってダンスをしていきます。

ワークショップはたっぷりコースの1時間半。会場に集まったみなさんに一体何が起きるのか若干の緊張感がただよう中、「まずは体を洗っていきましょう!」という伊藤さんの明るい一言で、体をごしごしと洗うところからスタートしていきます。

自分の体中をさすったあとは、近くの人と背中、脇、お腹、お尻同士をごしごし。
不思議なポーズで体を寄せ合っていると、だんだんと笑いがこぼれていきます。

今度は床に寝転がって、誰かと出会ったらその人にごろんと乗っかってみます。
子どもも大人も一緒に乗っかりあって大はしゃぎ!

乗っかった後は、トンネルくぐったり自分がトンネルになったり。
みんなで大きなジャングルジムをつくってくぐっていきます。

一人をくぐる。

二人の間をくぐる。

複雑にくぐる。

とにかくくぐる!

くぐり、くぐられ数十分。
「くぐる」という一つの動きに対しても、
全身を使うとかなりのレパートリーができて新たな発見の連続です。

その後は、いろいろな足の数で歩いてみたり(0本や20本という難題も!)、
馬や象になってみたり。

どんどん創造性が広がっていき、みんなで作った大きなタワーは芸術的な仕上がりに。

最後は記念撮影をパシャリ!

伊藤さんと篠崎さんに誘われるまま、身体と創造力を解き放って踊った一時間半。
ほぼ初対面のみなさんでしたがえも言われぬ一体感が生まれていて、なんだか不思議な体感にたどり着いたような光景が見られました。

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● 意外と身近にある薬草の味に出会う
新田理恵(tabel)「薬草のちから」

ダンスワークショップの隣では、伝統茶「tabel」の薬草調合師・新田理恵さんによる薬草茶shopがオープン。
独自のアプローチで薬草茶の味わい方や薬草のある暮らしを提案する新田さんが、一人ひとりに合わせてブレンドティを淹れてくださり、日本の薬草茶の世界を味わえます。

はじめて薬草茶を飲む人向けに用意してくださったのは、月桃、よもぎ、はす、黒文字と生姜、葛、紅花、金木犀の中からそれぞれ一種類の薬草を選びます。
効能で選ぶのはもちろん、どれも身体にいいので香りで選ぶもよし。

日本中をリサーチし回って選んだという、厳選された薬草でいただく一杯はよく染みる。45都道府県までコンプリートしていて残るは埼玉と宮城のみなのだとか。

「金木犀や紅花などはじめて薬草茶を飲む方にも馴染みのあるものをご用意しましたが、道を歩いていても薬草って意外とたくさんあるんです。これまで機会がなかった方も、身近なものとして楽しんでほしいですね」と新田さん。
聞き慣れた草木でも、味や効能を知るだけで風景の見え方がぐっと広がりそうです。お客さんも新田さんの解説に聞き入って薬草の世界に引き込まれていました。

#2へ続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: TADA(YUKAI), Mariko Hamano

なんだかんだ2って結局なんだった?|
#3 クリエイティブディレクターに聞く。これからのなんだかんだ

2023年11月3日。
神田錦町にて、路上実験イベント「なんだかんだ2」が開催されました。
第一回目を春先に開催してから半年足らず。
前回の手応えと反省を活かして、
パワーアップした第二回目となりました。

路上に畳を敷き詰めて、
さまざまなものごとに出会うそのイベントは
どのようにできて、どんな場所を
目指していたのでしょうか。
なんだかんだ2って、結局なんだった?
その疑問に、オープンカンダ編集部が迫ります。

INDEX
#1協力と許可と仲間と資金と
#2 盛りだくさんすぎる演目。みんな何やってた?
#3 クリエイティブディレクターに聞く。これからのなんだかんだ

#1はこちら
#2-1はこちら
#2-2はこちら

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#3
クリエイティブディレクターに聞く。
これからのなんだかんだ

大盛況で一日限りの幕を閉じたなんだかんだ2。たくさんの方が楽しむ様子が見られましたが、立ち上げた方々はどういった想いでこの日に臨み、何を感じたのでしょうか。クリエイティブディレクターの池田晶紀さんに、開催を終えてのお話を伺ってみました。

——ここまでレポートしてきましたが、なんだかんだとは何なのか、わかったようで掴みきれていない気がしています…。この企画にはどういった想いがあるのでしょうか?

池田 2023年の3月にあたらしい街の縁日として「なんだかんだ」をはじめて開催して、自分たちが何をやっていきたいか、何をしてくべきかうっすらと見えてきたんです。
毎回テーマを設けているんですが、一回目は「なんだかんだと、かんだはあたらしい」で、二回目は「なんだかんだと、かんだはやさしい」としました。ここで言う「やさしい」をもっとわかりやすく置き換えると、「日常や生活の中に役に立ったり、楽になったりする」みたいなことなんですね。

——ステートメントでも、『「これ、すごくいいからためしてほしいな」と、オススメ心でいっぱいの人 が集いました。』と書かれていますが、「すごくいいからためしてほしい」ことが「日常や生活のどこかに役に立つ」ことだったんですね。

池田 そうだね。「日常や生活のどこかに役に立つ」ということを例えにすると、お腹を壊した時に、通常は下痢止めをすぐ薬に飲むけど、腹巻きがいいよと勧められてなんとなく温め続けてたら調子が良くなっていくみたいな、じわじわ効いてくることもありますよね。 
そういう不確実的だけどいいものを受け入れていこうというのが、なんだかんだなんです。

——なるほど。

池田 これはジャンルやカテゴリー的なことでもないし、言葉もないことに取り組んでるんです。例えば音楽の世界でも、ジャズだのロックだのパンクだのというジャンルは後で言葉をつくったわけで、でもそれ自体は言葉になる前から存在していて、みんなが励まされたりしてきたカルチャーですよね。なんだかんだも、なんて言ったらいいのかまだわからないジャンルで、まずはあだ名程度のネーミングとして捉えて「なんだかんだと、効いてきた!」という感覚が共感になっていければと考えているんです。

——なんだかんだは、不確実だったり端的に言葉にできなかったり、一見ではわからないことがポイントになるんですね。

池田 ポイントは、なんだかわからないことに気づくこと。もしかしたら、そこが一番重要なのかもしれませんね。なので、その問いのようなモノが出てきて、場に置いていく時間。だから、まずは解決することが目的ではく、じわじわと効いてくることができればいいんです。「これってなんなのか?を一緒になって考えてみよう!」というのがやりたいこと。結果それが、カルチャーイベントやアートフェスでも、地域交流のための街の縁日でも、福祉や防災の課題について取り組んだ実験でもどんなカタチであれ、その問いであり、ふわっと浮かんだ何かに気がつくことが大事なんだと思います。

——確かに演目をひとつひとつ見ていくとさまざまですもんね。第一・二回とも福祉施設や団体の出店が特に多くいらっしゃいましたが、その点も何か想いがあったのでしょうか?

池田 福祉というと、言葉の印象として制度や機関のことをイメージされることが多いのですが、本来の福祉の役割は「助けを求めている人の手助けをする」ということだと思うんですよね。だからそういった本来の役割に気づける出会いの場をみんなでつくりたかったんです。つまり、ここでやっていく「なんだかんだ」というのは、あたらしく生きる道しるべになれるようなモノであってほしいんです。そこで、うなずいてくれたり、「いいんですよ〜、どうぞどうぞ〜」といいながら、声を出して一緒に考えたりして、その場を動かしながらつくるやり方で、いろんな人が居られる場の力を定着させたいなと思います。

——二回目の開催でもリピートでいらしてくださった方がいましたね。

池田 嬉しいですよね。でも年一回だと広くは定着していかないから、いっぱいやらないとダメだなってわかったんですよ。なので、2024年はなんだかんだをたくさんやることにしました。路上実験イベントは引き続き年に数回として、もう少しコンパクトにテーマを絞ってやろうと思っていて、もうすでに10個ぐらい企画を考えてますよ。

——多! 年一度の路上実験イベントから急展開ですね、楽しみです。

池田 まずは3月に4つの企画を開催予定です。2024年から、「なんだかんだはたくさんやります!」いい時間といい出会いの場に、お越しいただけるようお待ちしています。

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あたらしい神田の縁日を目指す「なんだかんだ」はまだまだ立ち上がったばかり。実際の場を見て、池田さんのお話も伺い、これからもさまざまな形を模索しながら進化していく予感がしました。
この記事を読んでなんだかんだを体験してみると、何だったか?がよりわかってくるかもしれません。
2024年はたくさんの機会をもって突き進んでいく「なんだかんだ」。今後の展開も追っていきたいと思います。

Text/Edit/Illustration: Akane Hayashi

なんだかんだ2って結局なんだった?|
#2 盛りだくさんすぎる演目。みんな何やってた?❷

2023年11月3日。
神田錦町にて、路上実験イベント「なんだかんだ2」が開催されました。
第一回目を春先に開催してから半年足らず。
前回の手応えと反省を活かして、
パワーアップした第二回目となりました。

路上に畳を敷き詰めて、
さまざまなものごとに出会うそのイベントは
どのようにできて、どんな場所を
目指していたのでしょうか。
なんだかんだ2って、結局なんだった?
その疑問に、オープンカンダ編集部が迫ります。

INDEX
#1協力と許可と仲間と資金と
#2 盛りだくさんすぎる演目。みんな何やってた?
#3 クリエイティブディレクターに聞く。これからのなんだかんだ

#1はこちら
#2-1はこちら

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#2
盛りだくさんすぎる演目。みんな何やってた?

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●ドローイングに麻雀、書道に茶道。
好きに過ごせるあれやこれ

他にも畳の上には一風変わったワークショップが大集合。
建物の壁や道のでこぼこなどのテクスチャーを採集し、神田の街からできた自分だけの平面作品を制作する「へいめん探索隊」や、いずれ廃棄されてしまう画材がずらりと並び、画材を物色したり自由に創作を楽しむ「巡り堂」など、つい没頭してしまうような時間が流れます。

へいめん探索隊 with シブヤフォント
写真中央の方がワークショプを手がける、
シブヤフォントのライラ・カセムさん
画材循環プロジェクト「巡り堂」
色とりどりの画材を囲んで、
おしゃべりに華が咲いていました。

その他には、ひらがなが印字された麻雀牌で新しい言葉を考えたり、文章を作って遊ぶ「あそことば」、畳の上で「おちつけ」と筆で書くだけなのに不思議と心安らぐ「おちつけ書道会」、本格的な茶の湯の世界を体験できる「露天風炉2」、脳と身体の可能性を広げる「パフォーマンス医学」など、あらゆるものが展開されます。

一見なんだろうこれ?というような一癖あるものばかりですが、気になってやってみるとそれぞれの世界に引き込まれていく人たちが続出。新しい出会いにあふれた空間になっていました。

ひらがなが印字された麻雀牌で
言葉と戯れる岩沢兄弟の「あそことば」
ルールはなく、誰でも自由に
一緒に楽しめるふしぎなマシーン!
前回も大人気だったTOBICHI東京「おちつけ書道会」
おちつけに向き合う時間ってきっと大事。
TOBICHI東京は他にも、
「われてもさみしくないヨーヨー」を出店。
うっかり割ってしまったりしぼんでしまっても、
中からちいさなくまのチャームがこんにちは。
茶道教室「露天風炉2」
茶道裏千家の専任講師・石澤宗彰さんが抹茶をふるまい
畳2枚のスペースがすっかり茶室に見えてきます。
Dr.二重作拓也さんの「パフォーマンス医学」
自分をアップデートする
脳と身体の使い方を教えてもらうと、
あっという間に参加者たちの
新たなパワーが引き出されていく…!

●いろんなこだわりに触れるお店たち

少し変わった新しい体験にあふれる中、お店たちも多種多様です。
ピザ、コッペパン、ビール、コーヒー、駄菓子など大人も子どもも嬉しいラインナップが集まります。製造や味に手間や時間がかかっていたりと、それぞれのこだわりが光り、どれも大人気でした。

ご近所の神田錦町1丁目にある
「ソーシャルグッドロースターズ」は、
障がいのあるバリスタや焙煎士が活躍する
ロースタリーカフェ併設の福祉施設。
手間と時間をかけて丁寧に作られたコーヒーは絶品!
中野区方南町を拠点に、障がいのある醸造士が活躍する
クラフトビール醸造所の
「方南ローカルグッドブリュワーズ」
この日は11月にしては暖かく(写真の方も半袖!)、
ビールののどごしがたまらない日でした。
多機能型就労支援事業所ひまわりの
「なんだかんだピザ屋さん」
錦三縁日で好評だった窯焼きピザはここでも大人気。
世田谷区にある発達障害者就労支援センター ゆに(UNI)の
「コッペパンサンド屋さん」
スモークサーモン&クリームチーズや海老&アボカドなど、
手の込んだ豊富なラインナップであっという間に完売!
静岡県掛川市から神田にはるばるやってきてくれた
駄菓子屋「横さんち」
静岡の実店舗では、
障がいのある方がいきいきと働く駄菓子屋さんです。
たくさんの駄菓子を前に子ども達が集まり、
普段のお店の様子が感じられました。
神田ポートビル2階では、
ほぼ日のなんだかんだパン屋さんが出店。
ほぼ日さんセレクトのとびきりおいしいパンが並び
どれもすぐに売り切れに!
ワインストア&スタンドPeròの
ソムリエ・熊本千絵さんがセレクトしてくれた
ナチュラルワインを楽しめる「響くワイン」
ワインにまつわるエピソードのお話とともにいただくと、
味と香りが心に響く!
日が暮れてからは伝統茶「tabel」の
薬草調合師・新田理恵さんによる薬草茶shopが出店。
一人ひとりに合わせたブレンドティーを
淹れてもらうことができ、
薬草茶の深い世界が味わえました。

●遊んでも遊んでも、まだ遊べる

たくさん楽しんで、食べて飲んだ後も、まだまだいられるなんだかんだ。ゆるく時間を過ごせる空間がありました。

何をするか迷ったら「なんだかんだガイドさん」へ
共立女子大学 建築・デザイン学科 藤本ゼミの
学生たちがイベントをご案内。
全国各地をとびまわり、
どんなところにもあそび場を作り出してしまう
「移動式あそび場」
畳いっぱいに広げられた遊具の数々に、
子ども達の遊びが止まらない。
熱せられたサウナストーンに、
柄杓で水を注いで水蒸気を発生させるロウリュを
誰でも楽しめる競技にした「ロウリュ投げ大会」
2m先の桶に向かって放った水の量を競うだけ。
シンプルだけど癖になるトリッキーさ。
株式会社アルバンさんのご協力のもと、
なんだかんだの会場の一角が雀荘へと様変わり。
家族で麻雀したり、麻雀牌をきれいに並べたり、
遊び方はいろいろ。
神田ポートビルの地下にあるサウナラボは、
なんとこの日は時間制限なしで1,000円で利用可能に!
一旦ととのってから、遊び直すことだってできる。

●日が暮れたって、まだまだのびのび過ごせちゃう

日が暮れても、提灯の灯りが引き続きあたりを楽しく照らします。
暗くなった時間にぴったりの寝たままできるヨガの体験や突如ランウェイが出現してファッションショーが行われたり、畳を使ったパフォーマンスやDJなど、自由に場をつくり替えてさまざまなことが起きていきました。

TOTONOLによる寝たままでできるヨガ体験。
リラックスした参加者を眺めながら、
レクチャーの声を聞いているだけで心地よい。
畳の間にランウェイができたと思ったら、
ムサビ津村ゼミナール有志による
「fashion show “KIDS”」がスタート。
あたりの空気をガラリと変える世界観に全員釘付け。
パフォーマーの加藤紗希さんと
建築家の藤本信行さんによる
「なんだかふしぎな出会い」
みんなで畳を建てて、不思議な空間に誘われていきます。
シークレットゲストで坂本美雨さんがアカペラを披露!
昼間にダンススル会で盛り上げてくれた
篠崎芽美さんたちの踊りも即興で加わり、
息を呑むようなひと時に。
やついいちろうさんの寝っころがりDJ
軽快なトークと絶妙な選曲でフロアを湧かし
寝っころがりどころか総立ちになって、
外にまで飛び出す勢いの盛り上がり!

最後は神田といえばお馴染みの木遣で締め!
記念に集合写真を撮ってお開きとなりました。

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一見どういうこと?と戸惑いつつも、
巻き込まれてみるとさまざまな発見に出会えた
なんだかんだ2。
なんでもありのカオスなようで、
身を委ねてみたくなる安心感がありました。
この絶妙なバランスは
いかにしてできたのでしょうか?

次の記事では、クリエイティブディレクターの池田さんにお話を伺いました。

#3へ続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI),
Mariko Hamano

なんだかんだ2って結局なんだった?|
#2 盛りだくさんすぎる演目。みんな何やってた?❶

2023年11月3日。
神田錦町にて、路上実験イベント「なんだかんだ2」が開催されました。
第一回目を春先に開催してから半年足らず。
前回の手応えと反省を活かして、
パワーアップした第二回目となりました。

路上に畳を敷き詰めて、
さまざまなものごとに出会うそのイベントは
どのようにできて、どんな場所を
目指していたのでしょうか。
なんだかんだ2って、結局なんだった?
その疑問に、オープンカンダ編集部が迫ります。

INDEX
#1協力と許可と仲間と資金と
#2 盛りだくさんすぎる演目。みんな何やってた?
#3 クリエイティブディレクターに聞く。これからのなんだかんだ

#1はこちら

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#2
盛りだくさんすぎる演目。みんな何やってた?❶

いよいよ迎えたなんだかんだ2当日は、常にいろいろなことが起きていましたが、まとまりがないということはなく、同じ畳の上でそれぞれに過ごしていても不思議と居心地の良さがありました。

クリエイティブディレクターの池田さんは、なんだかんだ2の開催に向けた想いを以下のようにステートメントに込めています。

「すごくいいからためしてほしい」というオススメ心で集まった方々は、ダンス、演劇、ヨガ、駄菓子屋など多種多様。みなさんここに集まる人たちとの関わりを楽しみにしていて、自分たちが持ってきたものを一緒に楽しもうとしている方ばかり。安心してその場に巻き込まれてしまえる感覚がそこにはありました。

実際にどんなことが繰り広げられていたのか、いくつかご紹介していきましょう。

〜〜〜〜〜〜〜

困っている人を助けながら車いす体験!
「車いす夢のデリバリー」

車いす体験スタンプラリー「車いす夢のデリバリー」は、参加者がZKNEats(ズキン・イーツ)の新人配達員となって、車いすに乗って人助けをしながらデリバリーのミッションに取り組みます。
いざ街に繰り出すと、困っている人たちがそこかしこに…。お腹を空かせた河童、寒さに耐えるストリートミュージシャンなどトリッキーな困りごととの出会いを楽しみながら、どんどん人助けをしていきます。

さまざまなミッションがありますが、「困っている人に声をかける」ということがこのスタンプラリーの大きなポイント。困っているみたいだけどどうしたんだろう?何か助けが必要?自分にできることはある?など様子を伺いながら、勇気を出して声をかけて助けになる、という体験を重ねていきます。
車いすを体験するだけではなく、困っている人にどう歩み寄ればいいのか知ることは、何よりの一歩になりそうです。「車いす夢のデリバリー」は、たくさんの人助けを通して誰かの役に立つことを楽しく考えさせてくれる体験でした。

●自分を解放して何にでもなれる、ダンススル会!!

ダンサーの篠崎芽美さんと自由に楽しくダンスをするワークショップでは、篠崎さんに誘われるように、子どもから大人までダンスの輪が広がっていき、一緒におもしろダンスをしていきます。
カニになったり石ころになったり太陽になったり…創造力と体の動きを最大に発揮して、自分をどんどん解放していく様子が圧巻でした!

●シェイクスピアの世界に巻き込まれる

続いて演劇プロデュースカンパニーのカクシンハンが「ロミオとジュリエット」を披露し、あたりがシェイクスピアの世界へと一変!神田ポートビルの窓と路上を使って、畳でくつろいでいる人の間をロミオが悶えて歩き回ったり、ジュリエットの悩める声がその場の人たちを引き込んでいきます。

台詞が書かれた色紙を一枚一枚放っていくパフォーマンスには、子どもたちも釘付け。席に座ってステージをじっと観る演劇とは異なり、いまいるところがじわじわと物語に巻き込まれていくという、街での演劇の楽しみ方がありました。

●どんな場所でもリラックスに誘う、青空ウィスキング

演劇やダンスで盛り上がる畳とは別の一角では、なにやら瞑想をしている集団が。サウナで行われるリラクゼーショントリートメント「ウィスキング」の体験が行われており、シラカバなどの枝葉を束ねたウィスクを用いて、植物の香りや音とともに癒しのひと時を過ごします。
通常はサウナ室の中で行うものですが、街中で体験すると開放感もひとしお。どんな場所でもリラックスさせてしまうウィスキングの力が垣間見えました。

●第一回神田ポート「パン食い競走」

なんだかんだ2の中でも、独特な盛り上がりを見せたのが「パン食い競走」。
吊り下げられたパンをいかに早く食べられるかタイムを競いつつ、パンを狙う表情の芸術点が評価されます。芸術点をコメントするのは精神科医の星野概念さん。星野さんは、「メンタルヘルススーパー銭湯」というワークショップを神田ポートビルで定期開催しています。

普段のワークショップでは、サウナに入って緊張をほぐしてから畳の上でさまざまな人と対話をしていきますが、今回はパン食い競走というなんとも気の抜けた企画で知らない人同士が集まるこの場を緩くほぐします。出場者も知らない人だけど、人目を気にせずパンに食いつく様子を見ていると自然と応援したくなり、楽しくあたたかな空気に包まれました。

〜〜〜〜〜〜〜

かなりご紹介してきましたが、まだ全体の1/4程度。
まだまだある、とっておきの演目たちを全部ご紹介します。

#2-2へ続く

Text/Edit/Manga: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI),
Mariko Hamano

オープンカンダ(以下、「当サイト」といいます。)は、本ウェブサイト上で提供するサービス(以下、「本サービス」といいます。)におけるプライバシー情報の取扱いについて、以下のとおりプライバシーポリシー(以下、「本ポリシー」といいます。)を定めます。

第1条(プライバシー情報)
プライバシー情報のうち「個人情報」とは、個人情報保護法にいう「個人情報」を指すものとし、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、住所、電話番号、連絡先その他の記述等により特定の個人を識別できる情報を指します。

第2条(プライバシー情報の収集方法)
当サイトは、お客様がご利用する際に氏名、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスなどの個人情報をお尋ねすることがあります。
当サイトは、お客様について、利用したサービス、閲覧したページ、利用日時、利用方法、利用環境(携帯端末を通じてご利用の場合の当該端末の通信状態、利用に際しての各種設定情報なども含みます)、IPアドレス、クッキー情報、位置情報、端末の個体識別情報などの履歴情報および特性情報を、お客様が当サイトのサービスを利用しまたはページを閲覧する際に収集します。

第3条(個人情報を収集・利用する目的)
当サイトが個人情報を収集・利用する目的は以下のとおりです。

お客様に、氏名、住所、連絡先などの各種情報提供
お客様にお知らせや連絡をするためにメールアドレスを利用する場合やユーザーに商品を送付したり必要に応じて連絡したりするため、氏名や住所などの連絡先情報を利用する目的
お客様に本人確認を行うために、氏名、生年月日、住所、電話番号などの情報を利用する目的
お客様に代金を請求するために、利用されたサービスの種類や回数、請求金額、氏名、住所などの支払に関する情報などを利用する目的
お客様が代金の支払を遅滞したり第三者に損害を発生させたりするなど、本サービスの利用規約に違反したお客様ーや、不正・不当な目的でサービスを利用しようとするユーザーの利用をお断りするために、利用態様、氏名や住所など個人を特定するための情報を利用する目的
お客様からのお問い合わせに対応するために、お問い合わせ内容や代金の請求に関する情報など当サイトがお客様に対してサービスを提供するにあたって必要となる情報や、お客様のサービス利用状況、連絡先情報などを利用する目的
上記の利用目的に付随する目的

第4条(個人情報の第三者提供)
当サイトは、次に掲げる場合を除いて、あらかじめお客様の同意を得ることなく、第三者に個人情報を提供することはありません。ただし、個人情報保護法その他の法令で認められる場合を除きます。

法令に基づく場合
人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
国の機関もしくは地方公共団体またはその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき
予め次の事項を告知あるいは公表をしている場合

第5条(個人情報の開示)
当サイトは、お客様ご本人から個人情報の開示を求められたときは、ご本人に対し、遅滞なくこれを開示します。ただし、対応にあたっては、不正な開示請求による情報漏洩防止のため、適切な方法にてご本人確認をさせて頂きます。
お客様からの個人情報の開示請求にあたり、お知らせの手数料として別途実費を請求させて頂くことがございます。

第6条(個人情報の訂正および削除)
お客様は、当サイトの保有する自己の個人情報が誤った情報である場合には、当サイトが定める手続きにより、当サイトに対して個人情報の訂正または削除を請求することができます。
当サイトは、ユーザーから前項の請求を受けてその請求に応じる必要があると判断した場合には、遅滞なく、当該個人情報の訂正または削除を行い、これをお客様に通知します。

第7条(個人情報の利用停止等)
当サイトは、お客様本人から、個人情報が、利用目的の範囲を超えて取り扱われているという理由、または不正の手段により取得されたものであるという理由により、その利用の停止または消去(以下、「利用停止等」といいます。)を求められた場合には、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、個人情報の利用停止等を行い、その旨本人に通知します。ただし、個人情報の利用停止等に多額の費用を有する場合その他利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するために必要なこれに代わるべき措置をとれる場合は、この代替策を講じます。

第8条(プライバシーポリシーの変更)
本プライバシーポリシーを変更する場合には告知致します。 プライバシーポリシーは定期的にご確認下さいますようお願い申し上げます。
本プライバシーポリシーの変更は告知が掲載された時点で効力を有するものとし、掲載後、本サイトをご利用頂いた場合には、変更へ同意頂いたものとさせて頂きます。

第9条(お問い合わせ窓口)
本サイトにおける個人情報に関するお問い合わせは、下記までお願い致します。
info@kandaport.jp

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