神田祭密着レポート|はじめての神輿担ぎ編

神田の街の一大祭事、「神田祭」が5月に斎行されました。
かつては江戸城内も巡行し、徳川幕府も支援した天下祭の伝統が受け継がれたこのお祭りは、祇園祭、天神祭と並ぶ日本三大祭りの一つです。氏子の人々にとって待ちに待った“ハレの日”であり、地域の心が一つになる場でもあります。

絢爛豪華な行列や、お揃いの半纏で練り歩く地域渡御など、神田祭は地元民でなくても高揚するもの。
今年は4年ぶりの開催ということで、当日を向かえる前からそわそわした空気が神田の街に漂っていました。そんな待ちに待った神田祭を、街の人たちと楽しみたい! あわよくば御神輿を担いでみたい! と意気込んだ「オープンカンダ」編集スタッフが神田祭をレポート。

はじめて御神輿を担ぐにはどうすればいい?
実際どれくらい重い?肩が腫れるというけど大丈夫?
そもそも御神輿はどこからやってきてどこに向かっているの?

これを読めば、一度御神輿を担いでみたかった…! という方もこれからは臆せず参加できるはず。
見るだけでは体験できない、神田祭の一歩踏み込んだ楽しみ方を3回に分けてお届けします。

TOPIC
1.半纏を身につけたら担ぎ手の仲間入り
2.いざ出陣!担いでわかる、御神輿の重さと重み
3.オフィスビルの下で近隣の御神輿たちと出発式
4.いよいよ担ぎ手だけが入れる宮入りへ!
5.交差点で5基の御神輿がもみ合い…!
6.担いで歩いて食べて飲んでの町内渡御

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1.半纏を身につけたら担ぎ手の仲間入り

5月14日(日)、神輿宮入りの当日。朝9時過ぎに「ちよだプラットフォームスクエア」に集合します。今回神輿担ぎにトライする編集スタッフの林は、事前に受け取った半纏に袖を通して現場入り。

この半纏と帯は神田ポートビルがある錦町三丁目の町会からお借りしたもの。半纏を借りるには、神田祭の1週間ほど前から設けられる町会ごとの「御神酒所」に前日までに行きましょう。錦三丁目町会と錦町三丁目第一町会は、ちよだプラットフォームスクエアに御神酒所ができます。
※クリーニング代だけでOKですが、さらに奉納金を包んで持っていけば、もれなく名前が奉納版に掲げられますよ〜!

半纏の下に着たのは黒い長袖とズボン。黒い足袋は自前で準備(エアー入り3000円弱をネットで購入)。半纏一つで、身も心もグッと引き締まるよう。う〜ん、キマってる!

錦三丁目は企業単位で参加されている方が多いそうで、襟に「錦三」と書かれた町会の半纏をはじめ、「安田不動産」「ゆかい」「新日鉄興和不動産」「ほぼ日」などの企業名が書かれた半纏を着た人たちが各所からぞろぞろと大集合してきます。初めての参加でも、お揃いの半纏に身を包めばあっという間に溶け込めます。

女性も想像よりたくさんいて少し安心。髪を高い位置でお団子にして、その上に鉢巻をぐるっと巻いたものを乗せたスタイルがかっこいい!

2.いざ出陣!担いでわかる、御神輿の重さと重み

10時、担ぎ手たちが揃ったところで、錦町三丁目町会の前田智彦会長と、錦町三丁目第一町会の神田錦町「更科」の堀井市朗会長によるご挨拶。夜まで続く御神輿の巡行に向けて、士気を高めます。

まずは神田祭で最も見応えのあるビッグイベント・神輿宮入りへ。
神輿宮入りには大小200を超える各町の神輿が参加し、それぞれが神田の街を練り歩きながら神田明神を目指します。
さあ、いよいよ出陣です!

「エイサ!」「ソレ!」などの掛け声をかけながら進んでいく姿にこちらも胸が高鳴ります。
足袋を忘れたのか、時折裸足のままの方も!? と思いきや、これはベテランの証とのこと。

錦三丁目の神輿は、担ぎ手と見守り等、総勢150名。ひとまず編集スタッフは、イメージトレーニングを兼ねて担ぎ手たちを神輿のそばで見守ることに。

神輿はかなりの重さがあるため、想像以上にゆっくりと進みます。重さは、担ぎ棒も含めると1トンほどあるのだとか…! 長く受け継がれてきたものということもあり、二重の重みがあります。

当然ながら、重い神輿を最初から最後まで同じ人がずっと担ぐことは到底できません。先導する方が担ぎ手のバランスを見て、だいたい5〜10分ごとに「安田不動産さん入って〜!」などの声掛けがあり、担ぎ手が入れ替わっていきます。 積極的に担ぎたい時は、神輿のそばを歩いて隙間が空いたらさっと入ったり、「もう、限界…」という顔をしている担ぎ手の人と自ら交代しても◯。

編集スタッフ林を発見! 後ろのお兄さんが大きくて、肩に棒が乗っていない感じもしますが…うん、指の腹でしっかり担いでる!!
背が高い人に負担がかかりがちなので、タオルなどを肩に忍ばせているのだそう。

入れ替わり立ち替わりみんなで力を合わせながら歩を進め、最初の目的地へと近づいていきます。

その2へ続く

Text: Kana YOKOTA(BAUM)
Edit: Akane HAYASHI
Photo: Yuka IKENOYA(YUKAI)

なんだかんだって結局なんだった?|路上実験イベントなんだかんだレポート

3月30日、4月1日に開催された路上実験イベント「なんだかんだ」。
「あたらしい神田の縁日をつくろう!」をテーマに、
ご近所の方やゆかりのある方が集まって
あたらしい出会いや体験を楽しむ場がたくさん生まれました。​​

路上を実験するイベントということもあり、
普段は見られないようなあんなことやこんなことが次々と起こった二日間。

果たして「なんだかんだ」とは、一体なんだったのでしょうか?
神田の一角で生まれたさまざまな光景をレポートでお届けします。

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ドキュメンタリードラマはこちら▼
(YouTubeにリンクします)

監督・編集・撮影 菊池謙太郎
撮影(動画) 添田康平
撮影(写真) 池ノ谷侑花、濱野まり子、池田晶紀

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▶︎SCENE 1
街の人の協力があれば、路上に畳をたくさん敷ける

なんだかんだの大きな求心力となった畳たち。
路上に敷くなんて、おそらく畳も驚いたことでしょう。
前代未聞のチャレンジングな試みでしたが
町会や警察署の協力により実現しました。

畳を敷けることになったものの、広〜い路上に敷き詰めるとなると一大事!

かと思いきや、
畳を待ち構える行列が。
ボランティアの学生のみなさんの出動により
瞬く間に敷かれていきます。
特に打ち合わせしていないのに、きれいなまでの流れ作業。
すいすいと敷かれていく様子はもはや心地よい。
おかげで100枚以上の畳が数分で設置完了!

作業はあっという間でも、みんなで敷くと達成感もひとしおです。
たくさんの準備ののち、いよいよ舞台が整いました。

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▶︎SCENE 2
畳を敷くと、〇〇が起きる

畳を敷いてみると、
あちこちでさまざまなことが起きていきました。
街中に畳があるという光景は、日常ではそうあり得ない不思議なものですが
すんなり馴染んでしまうのは神田の土地柄か、畳のパワーか。

畳を中心に繰り広げられたあれこれをダイジェストでご紹介します。

畳に入ってしまえば、路上でも周りを気にせず無になれる。
畳の上では、赤ちゃんも身を委ねてのびのびできる。
畳を敷けば、ギャラリーがお茶の間になる。
畳でかるたは当然に盛り上がる。
畳で書道は当然に落ち着く。
畳があるとおしゃべりが弾む。
畳があると、読み聞かせに集中できる。
畳に茶道の精神が揃えば、結構なお手前をじっくり楽しめる。
畳があると、身体をめいっぱい使って踊れる。
畳なら、こんなに大胆になっても大丈夫。
畳をフロアに、DJプレイができる。
畳のそばに脱いだ靴が並ぶと、
誕生日会で同級生たちが家に来た日みたいでわくわくする。

屋外なのに、いや屋外だからこそ
ポテンシャルがおおいに発揮された畳。

畳には、懐かしくほっとする心地よさと
あらゆることを受け入れる懐の深さがありました。

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▶︎SCENE 3
道のたのしみ方いろいろ

なんだかんだは、神田の道のおもしろい使い方を考え、
あたらしい出会いや体験の場となることを目的とした
「実験イベント」​​ということもあり、道の使い方も実にさまざまでした。

ここから道の様子をご紹介。

通り沿いのビルも使って、ダイナミックに演劇ができる。
みんなの視線を感じつつも、プロに写真撮ってもらえると嬉しい。
文房具が並んでると、なんだかときめいて引き寄せられる。
道路の袖に芝生があればモルック大会が開催できる。
サウナチャンピオンだって開催できる。
道端で右ストレートを披露すると拍手がもらえる。
道にお店が並べば、あっという間にお祭りムードになれる。
道端で、超老舗店にふらりと出会えるとより嬉しい。
道路の上でも神社は出張できる。
竹尾の紙絵馬が並ぶと道が華やぐ。
路上であっても、全身を委ねるハンモックは気持ちいい。
最先端のモビリティに乗れば、優雅に神田の街並みを楽しめる。
道端でも工作大好き。
ちょっと開けた場所には即席でプレーパークだってできる。
道の一角でも神輿を担げばたちまち熱気に包まれる。

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神田の道の上が一人一人にとっての
「あたらしい出会いの場」になってほしいという思いではじまったなんだかんだ。
たった二日の出来事でしたが、同時多発的にこんなにもの光景が生まれ
あたらしさとうれしさが溢れる場だったように思います。

なにより路上でたのしいことが起きていると、
歩くたびにたのしい光景がすぐに目に飛び込んできて
街自体がその空気に包まれていきます。

たのしいことを考えて披露した皆さんと、たのしく過ごす皆さんが出会う様子に
たくさん触れることができた、なんだかんだでした。

Text: Akane Hayashi(BAUM LTD.)
Photo: TADA(YUKAI), Mariko Hamano

神田いらっしゃい百景|竹尾 見本帖本店

神田の街を歩くと次々に目に飛び込んでくるお店たち。色とりどりの看板や貼り紙は、街ゆくすべての人に向けて「いらっしゃい」と声をかけているようで、街の人の気風を感じることができるでしょう。

神田いらっしゃい百景は、街に溢れる「いらっしゃい」な風景をご紹介します。

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竹尾 見本帖本店
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-18-3
アクセス:
地下鉄神保町駅 A9出口より徒歩8分
地下鉄竹橋駅 3bKKR出口より徒歩5分
地下鉄新御茶ノ水駅 B7出口より徒歩8分

訪問者 林亜華音
オープンカンダ編集スタッフ。
制作の仕事は大変なことが多いけれど、紙選びはいつも楽しい。

フォトグラファー 池ノ谷侑花
オープンカンダ撮影スタッフ。
もう取り扱い終了してしまったようですが、
「桃はだ」という本物の桃のような
触り心地の紙がすきでよく撫でていた思い出。

なんだかんだ ふたりの町会長と街あるき

2023年3月31日、4月1日に開催がせまる路上実験イベント「なんだかんだ」。
神田ポートビルと神田スクエアを会場に、神田の道のおもしろい使い方を考え、たくさんの人をつなぎ、あたらしい出会いや体験の場をつくります。

ふたつの会場は歩いて5分ほどと行き来しやすい距離ですが、当日はそれぞれの会場を巡回をするモビリティが登場。モビリティに乗って風景を楽しむのもよしですが、街の歴史を感じながら回るともっと楽しいのでは?
ということで、イベント開催に先立って町会長による神田の街歩きツアーを決行。
春の訪れを感じる陽気に、どこか色めき立つ街をぐるっと巡りました。

当日お越しになる方はこのレポートとともにお楽しみください。

〜案内してくださった人〜

〜なんだかんだ 会場MAP〜

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学士会館の前に参加者の皆さん集合。
この日は5月くらいの暖かさで、絶好のお散歩日和です。
前田町会長が用意してくださったガイドを片手にいざ出発。
錦町コーデでいらっしゃった前田町会長。
隣りの大きなブロンズ製のモニュメントは、「日本野球発祥の地」の碑。
かつてこの地にあった第一大学区第一番中学で
アメリカ人教師が学生に野球を教えたのが始まりだそう。
この日は日本中が湧いたWBC優勝直後ということもあり、石碑も一層輝いて見えます。
学士会館の建物は、1928年に竣工したもの。
ドラマ「半沢直樹」で土下座が行われた部屋があり、中も立派です。
いまでこそきらびやかな印象ですが、
火災や震災による2度の全焼を経ていまの姿があります。
さらに学士会館をぐるっと回っていくと…
生垣の間に「東京大学発祥の地」の碑と
新島襄生誕の地の碑が。
このあたりはかつて蕃書調所(江戸幕府直轄の洋学研究教育機関)があったり
上州安中藩の江戸上屋敷だった背景があったりと、
あらゆる物事がはじまった地である学士会館。
学士会館を後にし、桜を横目に神田警察通りを歩いて行きます。
通り沿いにある神田税務署は、かつて錦輝館という大規模な多目的会場があり、
1897年に東京で初めて映画上映が行われた場所です。
(税務署からは到底結びつかない歴史…)
当時は三等席でも盛りそば11枚相当の料金だったのだとか。
こちらは東京電機大学の創立者でもある、
廣田精一​​が立ち上げた電気科学系出版社のオーム社。
紙の専門商社の老舗、竹尾も100年以上神田錦町に本社を構えます。
一見ビルが並んでいるように見えますが、実は古くから高校もあります。
こちらは1896年創立の正則学園高校。部活動が盛んで、最近は花いけ男子部が有名。
そのお隣には錦城学園高校。1880年に創立し、1889年に神田に移転しました。
100年以上もの歴史を持つ場所が次々と現れる驚き。
そしてなんだかんだの会場、神田スクエアに到着。
この石はもしかして…
電機学校(後の東京電機大学)発祥の地の碑でした。石碑多し。
日本で初めてテレビの公開実験が行われたのもここなのだそう。
一方で、町会長たちが子どもの頃はここがラジオ体操の会場だったとか。
野球、大学、テクノロジーと発祥のジャンルが多岐にわたる神田錦町、奥が深い。
続いて神田スクエアからすぐの老舗そば店、更科へ。
ランチタイムが明けたばかりのお店を抜けて堀井町会長が合流です。
更科の前にあるビルもかつては映画館で、
神田の町にはどこにでも一軒は映画館があったのだそう。
神田錦町三丁目にあった「南明座」という映画館は
そのさらに昔、南明館という勧工場​​(百貨店の前身のようなもの)で
↓のような立派な建物があったようです。見てみたかった…
『風俗画報』増刊 第193号「東京名所圖會 神田區之部 上巻」
(明治32年7月25日発行)
堀井町会長はアドリブの案内スタイル。ずんずん紹介してくれます。
ビルの隙間にひょっこり現れる五十稲荷神社。400年(!)以上鎮座する神社。
なんだかんだでは、神田スクエアに出張所をつくり、限定御朱印スタンプを行います。
左にある社殿・社務所は、次の100年に向けて2021年に建てられたのだそう。
やはり神社は見据える時間のスケールがすごい。
なんだかんだのポスターも貼ってくれていました。
神田スクエアの方へ戻ります。
敷地内を見ると、ここにもひっそりと豊川稲荷がありました。
明治時代にこのあたりで立て続けに火災があり、社殿も荒れ果てていたところを
町内の有志が集まって清掃修復を行い、以来残り続けているそうです。

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徒歩5分圏内をあちこち巡ってあっという間に1時間。
町会長のお二人の話には、この街に生まれ育ち、これからを考えているからこその想いが溢れていて、歩いたり調べただけではたどり着くことができない、街の一面を見ることができました。

ツアーの最後に、堀井町会長がこうお話ししてくださいました。
「当時の街の商人は、あらゆるものに神が宿ると考え、植物から建物まで街にあるものすべてを大切にしていました。時代とともに街の風景は変わっていきますが、いまの時代の人にも街を大切に思う気持ちは変わらず持ち続けて、もっといい街にしてほしいと思いますね」

街の歴史は自然に積み重なるものではなく、実際に過ごし、残し、語り継ぐ人の存在が欠かせません。
街のみなさんとあたらしい出会いや体験をつくる「なんだかんだ」も、神田の歴史をつむぐ特別な日となりますように。ぜひお誘い合わせの上、お越しください!

Text: Akane Hayashi(BAUM)
Photo: Yuka IKENOYA(YUKAI)

神田いらっしゃい百景|TOBICHI 東京

神田の街を歩くと次々に目に飛び込んでくるお店たち。色とりどりの看板や貼り紙は、街ゆくすべての人に向けて「いらっしゃい」と声をかけているようで、街の人の気風を感じることができるでしょう。

神田いらっしゃい百景は、街に溢れる「いらっしゃい」な風景をご紹介します。

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TOBICHI 東京
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-18
ほぼ日神田ビル1F
アクセス:
地下鉄神保町駅より徒歩5分
地下鉄竹橋駅より徒歩6分
地下鉄新御茶ノ水駅より徒歩7分

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訪問者 林亜華音
オープンカンダ編集スタッフ。
2022年一番のお買い物は、
『MOTHER2』オネットのレプリカスクリーン。

フォトグラファー 池ノ谷侑花
オープンカンダ撮影スタッフ。
ほぼ日手帳愛用!食べたものを記録してます。

神田いらっしゃい百景|神田錦町 更科

神田の街を歩くと次々に目に飛び込んでくるお店たち。色とりどりの看板や貼り紙は、街ゆくすべての人に向けて「いらっしゃい」と声をかけているようで、街の人の気風を感じることができるでしょう。

神田いらっしゃい百景は、街に溢れる「いらっしゃい」な風景をご紹介します。

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神田錦町 更科
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3丁目14
アクセス:
地下鉄神保町駅より徒歩5分
地下鉄淡路町駅より徒歩5分
地下鉄小川町駅より徒歩5分

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訪問者 林亜華音
オープンカンダ編集スタッフ。
そばはつゆをつけずに嗜む派だった幼少期の思い出。

フォトグラファー 池ノ谷侑花
オープンカンダ撮影スタッフ。
ナスが大好きなので、ナスぶた肉汁せいろをよく頼みます!

神田いらっしゃい百景|レ・シャルトロン

神田の街を歩くと次々に目に飛び込んでくるお店たち。色とりどりの看板や貼り紙は、街ゆくすべての人に向けて「いらっしゃい」と声をかけているようで、街の人の気風を感じることができるでしょう。

神田いらっしゃい百景は、街に溢れる「いらっしゃい」な風景をご紹介します。

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ボルドーワイン専門ショップ レ・シャルトロン
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3丁目6
アクセス:
地下鉄神保町駅より徒歩5分
地下鉄淡路町駅より徒歩3分

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訪問者 林亜華音
オープンカンダ編集スタッフ。
初めて買ったワインは母への誕生日プレゼント。

フォトグラファー 池ノ谷侑花
オープンカンダ撮影スタッフ。
ワインが似合う素敵な大人になりたい31歳。

なんでもアカデミック!|聖地であり、沼。カレーから見る神田の街

「学問の街」と呼ばれる神田。
それは大学や書店が多く集まっていることから来ていますが、学問という言葉が「知の体系」を意味するように、人々の学びへの熱量が絡み合ってきた街、とも言えます。

「なんでもアカデミック」は、そんな学びが深く根づくこの街で、多様な分野で活動する方々とあらゆるものをアカデミックに捉えて掘り下げていく企画です。

第一回目は、神田といえば学問よりもこの印象の方が濃いであろう「カレー」がテーマ。
ゲストには「神田カレーグランプリ」の発起人である中俣拓哉さんを迎え、神田と秋田を拠点に“学びのアップデート”に取り組むナビゲーターの丑田俊輔さんとともに、グルメな視点とは異なる角度で掘り下げていきます。
さあ、聖地であり沼でもあるカレーの街へ繰り出しましょう。

中俣拓哉さん

神田カレー街活性化委員会委員長/株式会社ロハスコミュニケーションズ代表。2006年、東京・神田でサプリメントや化粧品の企画製造販売会社を起業したのをキッカケに、神田の街づくりに関わるようになる。2011年秋に第1回神田カレーグランプリを企画・実施。加えて2014年より神田カレー街食べ歩きスタンプラリーを毎年開催している。今ではカレーの素晴らしさに魅了され、カレーの街としての神田を広めるとともに、日本文化としてのカレーを世界に発信していきたいと考えている。

丑田俊輔さん

神田錦町の公民連携まちづくり拠点「ちよだプラットフォームスクウェア」を運営。日本IBMを経て、新しい学びのクリエイティブ集団「ハバタク」を創業し、国内外を舞台に様々な教育事業を展開。2014年より秋田県五城目町在住。遊休施設を遊び場化する「ただのあそび場」、住民参加型の小学校建設や温泉再生、コミュニティプラットフォーム「Share Village」等を手掛ける。幼少期は頻繁に父に連れられて、神田神保町で書店とカレーを嗜んでいた。

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INDEX

STUDY1 カレーは社会のコモンズ
STUDY2 カレーから見る街の境界線
STUDY3 神田は趣味嗜好を掘り下げる街
余談 神田~飯田橋エリアの「カレー散歩」

●STUDY1 カレーは社会のコモンズ

神田カレーグランプリは2011年からスタートし、参加店舗は125店(※2022年度)にものぼります。IT企業が集積するシリコンバレーのように、神田はもはやカレー文化圏として先端的な場所とも言えるのではないでしょうか。

丑田 僕は神田の他に秋田にも拠点があるんですが、実はそこでまちのカレー好きを集めて古民家で食べる企画をやってるんです。神田の規模とはまったく異なりますが、カレーはおじいちゃん、おばあちゃんから子ども達まで垣根なくつながることができるプラットフォームだなと感じます。
神田カレーグランプリも「カレー」というコンテンツだからこそのパワーが働いていると思うのですが、中俣さんがカレーを中心に企画しようと思ったきっかけには何があったんですか?

中俣 私はもちろんカレーが好きです。けれど、カレーマニアだからイベントを立ち上げようとしたわけではないんですよ。
元々は15、6年前に起業したばかりの頃、たまたま神田の活性化の仕事に関わることになり、B級グルメとカレーを掛け合わせたイベントを企画したんです。ところがお客さんの反応はカレーにばかり集中していて。そんなにみんなカレーが好きなら、いっそカレーだけを集めた企画をしようと思ったんです。

丑田 カレー縛りとはいえ、参加している店舗はかなり幅広いですよね。

中俣 最初の3年くらいは20店舗集めるのもやっとでしたが、いまでは120店以上に増えました。独立店や専門店だけでなく、チェーン店やおそば屋さんもいますね。「美味しいカレーを食べてもらおう」という思いがあれば、どんなジャンルのお店でもOKというスタンスです。

丑田 その寛容さってすごく重要ですよね。思いがあれば何でも誰でもOKという枠の広さによって巻き込まれる人もいるでしょうし、なんだか神田カレーグランプリの求心力が見えた気がします。
あと、神田だけでなく、下北沢・十条・金沢・横須賀など、さまざまな地域でカレーで街を活性化する取り組みが広がっていますよね。

中俣 そうですね。このイベントの良いところは、似たことをしていても競合にならないんですよ。

丑田 おお、なるほど…!

中俣 積極的に真似してくださいと言っているくらいです。下北沢が盛り上がっているからといって、神田が下火になることはないんです。むしろ各地と連携を取れるところがすごくいいなと思いますね。

丑田 いまのお話、カレーとアカデミックというテーマにすごく繋がる気がします。
神田は「学問の街」と言われているように、大学が多くあって、全国から人が集まって、学んで、交流して、また散っていく、というのを繰り返してきたアカデミックな土壌がありますが、神田で育まれた知が広まっていく様子が神田カレーグランプリの動きとすごく似ていますよね。

基本的に教育機関で研究されたことはオープンソースとなって、社会のコモンズとなりますが、カレーグランプリの仕組みもまさにそれだなと。
ベースとなる取り組みをリスペクトしつつ、それぞれ自由に使って盛り上げていこう、というスタンスってとてもアカデミックですよね。
思いがけずテーマに着地できました(笑)

●STUDY2 カレーから見る街の境界線

そんな神田カレーグランプリが展開するスタンプラリーの地図を見ると、まず気になるのはその範囲。店舗の数はさることながら非常に広範囲です。確かに神田は広いけれど、明らかにそれ以上に広いのでは…?

(神田カレー街食べ歩きスタンプラリー MAP)

中俣 エリアについてはよくご指摘を受けます(笑)ただ、イベントの目的は街を盛り上げること。神田で一番を決めることではないんです。なので旧神田エリアを中心に、神田から少し離れたお店も加盟しているんです。

丑田 日本橋や飯田橋まで入ってますもんね。

中俣 実際に参加する人は『神田はここからここまでだ』と細かくエリアを意識しませんし、厳密に線引きをしても誰が得するわけでもありません。それよりも美味しいカレー屋さんを知ることができればwin-winだと考えています。

丑田 確かにそうですね。日本のカレーはいろいろなジャンルがあって、世界一自由なスタイルだと思うんです。さまざまな文化をミックスさせて良い塩梅を探す独自の島国での進化をしていて、ルールもありません。
そういうカレーが持つ自由さや自然発生的に何かが生まれるところが、このイベントのあり方に繋がっている気がしますね。カレーグランプリを通して神田を見ると、自由でいいなあと思います。

●STUDY3 神田は趣味嗜好を掘り下げる街

ここまでカレーの自由さが街を盛り上げる機能として大いに影響していることが見えてきました。ところでなぜ、神田という街にここまでカレー文化が根付いているのでしょうか。

中俣 神田の特性とカレーがマッチしているのだと思いますね。古本・スポーツ・楽器や、秋葉原方面まで足を伸ばすとアニメ・マンガなどの文化も混在するこのエリアは、個人の嗜好を追求して楽しむ街と言えますよね。
カレーもそうで、それぞれ好きなカレーは違います。家庭のカレー、ナンで食べるインドカレー、スパイスの効いたカレーやボンディのような欧風カレーもある。そういった趣味嗜好にこだわりを持つ人との親和性があると思いますね。

丑田 そう聞くと、カレーっていかようにでも探究できる「偏愛のプロダクト」ですよね。
神田にはつくり手からカレーファンも集まっていて、熱烈なコミュニティがカオスに混在しているおもしろさがあります。

中俣 本好きに行きつけの本屋さんがあるように、カレーにもそれぞれの行きつけがありますもんね。

丑田 そこに対して神田カレーグランプリは、スタンプラリーのようにコミュニティをホッピングするような仕掛けもあって、それぞれの文化が溶け合うような感じもします。

中俣 新しいカレーと出会うのって楽しいですからね。スタンプラリーも120店以上ありますが、すべて制覇するマイスターも結構いるんですよ。
参加者の熱も年々高まっていて、追求しがいのある街ですね。

●余談 神田~飯田橋エリアの「カレー散歩」

神田とカレーの話を深めた後は、実際に街に繰り出すことに。
まずは、神田カレーグランプリの聖地とも呼ばれるイベントの会場、小川広場に向かいます。

道すがら見えてきたのは、『神田カレーグランプリ』初回での優勝店「ボンディ・神田小川町店」。笑顔で何かを指さす中俣さん。

よくよく見ると

第一回目の賞状が飾ってあります。
はじめたばかりの頃は参加店を集めるのに苦労したそうですが、回を重ねるごとに重みを増す賞状です。

道中も、スープカレーが美味しいバーや最近できたスパイスカレーのお店など、あちこちの情報を教えてくださいます。
普通に歩いてるだけだと気付けないお店もあり、街にカレーが潜んでいる感じが探究心をそそります。

ビルの間を進んでいくとぽっかりひらけた空間に到着。ここが神田カレーグランプリの会場、小川公園です。
「今年は3年ぶりの開催でどのくらいご来場いただけるのか不安でしたが、入場規制を行いながらも2日で3万人以上の方に集まっていただけました。小さなお子さんからご年配の方までカレーを楽しんでいるたくさんの笑顔をみると、やっぱり食のイベントっていいなってあらためて思いました」と中俣さん。
マイスターやカレー好きのボランティア、近隣の学生の方が手伝ってくれるようで、街全体でイベントをつくっている感覚だそうです。

続いて、激戦区へ。

「スパイスキッチン」「ヒナタ屋」「エチオピア」「鴻」「豚バルピッグテイル」「べっぴん舎」「キッチンカロリー」「MAJI CURRY」と、新旧織り交ぜた有名店が並びます。

「この並びはアツい。古びた店構えも美しいですね…」と、絶景を眺めるような二人。

その後もカレー店を何度も横切っていきます。

神田とカレーの話に花を咲かせながら進んでいくと、どーんと大きな看板が目印の2015年のグランプリでも話題になった「上等カレー」が見えてきます。
ここはもう飯田橋駅のすぐそば。確かに街の境界を意識することなく、たどり着けてしまう距離です。

神保町から飯田橋エリアまでのカレー店を巡る街歩きもこれにて終了です。
時間にして約30分。ほどよい運動になるのでカレーのはしごにもぴったりかもしれません。

「カレー店を見ながらあるくと、街の景色が違って見えますね」と言いながら、最後に写真をパチリ。

神田とカレー。お馴染みの関係になっている2つですが、カレーの奥深いカルチャーと街の歴史が絶妙に絡み合っていることが見えた今回のトーク。
神田が持つ自由でさまざまな文化を包みこむ魅力に惹かれ、それぞれのカレーを追求するお店が集い、街もカレーも愛するファンが通うのは自然なことかもしれません。
集まる人をまるっと受け入れて引き込んでしまう街をカレーと一緒に探究してみませんか。

Text: Satori Fujiko
Photo: Yuka IKENOYA(YUKAI)
Edit: Akane Hayashi(BAUM)

Title Design: Kosuke Sakakibara(BAUM)

神田いらっしゃい百景|カレーハウス ボルツ

神田の街を歩くと次々に目に飛び込んでくるお店たち。色とりどりの看板や貼り紙は、街ゆくすべての人に向けて「いらっしゃい」と声をかけているようで、街の人の気風を感じることができるでしょう。

神田いらっしゃい百景は、街に溢れる「いらっしゃい」な風景をご紹介します。

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カレーハウス ボルツ 神田店
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3丁目17
アクセス:
地下鉄神保町駅より徒歩4分
地下鉄竹橋駅より徒歩4分

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#1 「地図+サウナ」|清水みさとさんと歩く、入谷から神保町まで1万歩コース

カレーの街として名高い、神田。学生が本を片手に、スプーン1本で簡単に食べられるということから、カレーの需要が高まったという。読書のおともにカレー、新幹線旅行のおともに駅弁、ドライブのおともに音楽。おともがあると、楽しみもぐっと増す気がします。この企画では「〇〇のおともに」をテーマに、あるものとあるものをたし算することで広がる神田のたのしみ方を、その道のプロフェッショナルをお迎えして紹介します。

第一回目にご登場いただくのは、屈指のサウナ好きとして知られる女優の清水みさとさん。実は彼女、意識的に1日2万歩歩くという”さんぽのプロフェッショナル”でもあります。後に入るサウナをより気持ちよく味わうために、Googlemapを片手に歩きまくる━。脚がクタクタになるまで歩いたのちに到達する最高の”ととのい”とは。サウナセンターから神田ポートまで、さんぽの達人が地図を片手に行く、大さんぽの始まりです。

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地図は”くすぐられる!”の記録と、”だいたい”の目印

「せっかくだからサウナを横断するルートで!」とみさとさんのご提案もあり、今回は外から神田に踏み入れるかたちで入谷からの出発。

いってらっしゃい〜!と手を振る吉田さん。

お見送りに来てくれたのは、都内サウナーの聖地「サウナセンター」の吉田秀雄さん。「ここから神田ポートまで歩くの!?」と驚かれつつ、元気よく送り出していただきました。

早速スマホを取り出すみさとさん。と、ここで驚きのひと言。「実は今日の朝で1万歩歩いていて!新宿から次の仕事がある渋谷までなら歩けるなって」

どこかに行く時は最寄り駅ではなく目的地まで徒歩30分圏内の駅で降りることを習慣にしていたり、1時間半以内で歩ける範囲を自分の”だいたい歩ける円”として地図上で把握していると言います。忙しい合間をぬって歩くことはもちろん、早起きをして1日のスタートを早めにきることで意識的に歩く時間を確保しているんだとか。

次に地図アプリを開き、大まかな道順を考えます。

現在地から神田ポートまでを調べると57分。「1万歩歩くには大体1時間40分」とさらりと教えてくれて、寄り道をしながら歩くことに。

地図には、みさとさんが普段のさんぽで気になったお店や、知人からのおすすめされた場所が「お気に入りスポット」としてピンで登録されています。その数なんと、700個以上!今回はその中から、入谷から”だいたい”南下したところにあるかっぱ橋道具街(以下、かっぱ橋)に惹かれ、歩き出します。

荷物はトートバッグに、貴重品は斜めがけのサコッシュに入れて持ち歩くと両手が空いて、スマホも取り出しやすい
「道を間違えても全然気にしないですね。だいたいの方向に進んでいって、時には道順にはない歩道橋に上がって眺めを楽しんだりして。”だいたい”だから土地勘も育つんだと思います」
●広く見て、ときには足を止める

みさとさんの穏やかなおしゃべりと軽やかな足取りに誘われるままあっという間にかっぱ橋の入り口に到着。

包材、家具、電子器具、キッチン用品。業務用の大型製品から小さな雑貨までが揃い、食品のプロから長年にわたり愛され続ける問屋街です。

かっぱがモチーフの「かっぱ橋」
到着〜!
店頭に並べられた不揃いな小瓶。なんだか見覚えのある模様も

目を引く品々が並んでいるとついついお店に注目してしまいますが、実はこの通り、道路の向こう側の景観にもレアな面白さが。窓側にとんでもない数でマネキンがずらりと並べられたショーウィンドウや、巨大なカブトムシが外壁を這うマンション…。どうやらみさとさんも気づいたご様子。

左右上下、360度見渡しながら、時には歩みを止めながら街に目を向けると、小さな驚きやたのしみに出会えるのかもしれません。「信号で止まるときも何かあるかなとついついキョロキョロしてしまいます」とみさとさんも言います。

“偶然”に会いに行く、余白の時間

かっぱ橋を過ぎ、浅草を超え、田原町駅にあたったところで、そろそろ神田を目指して東に方向転換。日も強まり、だいぶ温まってきました。

そもそもみさとさんはいつからそんなに歩くようになったのでしょうか?女優というお仕事柄、体型維持という理由も予想がつきますが、彼女にとって歩くことは今の忙しいシティライフを送るなかで自然と習慣づいたと言います。

「サウナもさんぽも言わば無駄な時間。だから目的がないことを避けたり、常になにかしなきゃ!と日々考えている人からすると、すこし怖い時間だと思うんです。でもその余白の時間を自ら確保しにいくことで、予想外の景色に出会ったり、たまたまその場に居合わせたひとたちの交流が生まれる。偶然が生んだ産物がそこらじゅうにあって、その体験にくすぐられるんですよね。くすぐられたいからさんぽを選ぶ、という方が的確かもしれません」

田舎の広さや穏やかさはないかもしれませんが、一歩踏み出せば何かしらが待っている、疲れたら電車にもすぐ乗れる「都会」だからこそ、歩くことがルーティンになり得るようです。

後ろには中央線の電車。「田舎ほど歩けないんですよ、不思議なもんで!」
神田に突入。秋葉原駅を超え、万世橋でひと休み。ビル群の間からのぞく夕日が美しいスポットです
●歩いて自家発電! 摂取と発散は同時にする

神田エリアにようやく踏み入れ、そろそろ小腹もすいてきた頃。甘味好きのみさとさんもしっかり地図上にピンを落としていた、あの有名店に入店。

神田淡路町の「近江屋洋菓子店」。昔ながらの洋菓子・ケーキ・デザートはシンプルでありながらとても可愛らしい。季節毎に販売されるケーキに使用されるフルーツは毎朝青果市場で仕入れているという
食べる場所に迷っていると、すぐ側にちょうどよさそうな広場を発見
「ワテラス(WATERRAS)」
選んだのは「白苺のタルト」。箱から取り出しただけで甘酸っぱいフレッシュな香りが漂います
木漏れ日の下、ケーキを食す。幸せ

気づけばゴールまであと少し。エネルギーも補給したところでまた軽やかに歩き出します。

自分の体で自分をあたため続ける、さんぽ。「じわじわ暑い、蒸されている」という感覚はサウナを思わせるほどです。ただ違うのは、自分自身が熱源となり、摂取と消費を繰り返すことで身体の循環を生み出しているということ。

歩くことで身体と心が軽くなることを日々実感するというみさとさん。その偉大さにあまりにも感銘したのか、思わず「歩く(スペース)すごい」でネット検索をしたこともあると話します。

「『偉人はだいたい歩いている』という記事が出てきたときはすんなり納得しました。フィンランドでビジネスミーティングをサウナの中で開く文化に見られるように、何かを取り入れるときに同時に発散もできていれば、受け皿に常にスペースがある状態でインプットを迎え入れられるんだと思います。さんぽも似てますよね」

さんぽ旅も終盤へ。西日が差す、神保町の「神田すずらん通り」
お昼どきの賑やかさも落ち着いて、とても歩きやすい
言わずと知れた本の街、神田。長い年月をかけすっかり街に馴染んだ老舗古書店に立ち寄り、本の手触りを楽しみます

すずらん通りを抜け、神田ポートを目指す間のオフィス街に突如現れた緑のトンネル。新緑に囲まれ、季節を感じながら外でのひとり時間を確保することができるのもさんぽの醍醐味です。

よい”気”を感じる場所では一足を止め、頭を休める時間をとります
オフィス街でも自然と触れ合えるよう、神田には多くの植栽が。日陰がありがたい
この道は見覚えがある…ということは…?

そして「ゴ〜〜〜ル!」神田ポートに到着しました!玄関先のベンチに腰を降ろすと、心地よい脚の重みを感じます。万歩計アプリを確認すると、しっかり1万歩歩いてる…!達成感に満たされる編集部ですが、よく考えればみさとさんはこの倍歩いているのか〜、と感心を隠せません。

神田ポート前で記念写真。まだまだ歩けそうなみさとさん
今日もたくさん歩きました
ここからも楽しみどころ。体がまわっているままサウナに直行します
●”ととのう”とは自分にとって”ちょうどいい”状態

さんぽを終えたその足でサウナへ直行したみさとさんに今日の感想を伺います。

「たくさん歩いた状態でサウナに入ると、ととのった状態に達するのがいつもより早いんです。ゆっくり運動をしたことで体はすでに循環しているし、頭の中も整理できている。いつもはまずは体を温めることやあちらこちらに向いている気を落ち着かせることから始まりますが、直前まで歩いていると、その工程をある程度スキップしてサウナに入れるんですよね」

ととのった状態までなかなかいかず、サウナは暑くて苦手だと感じるひとにも、歩くことでまた違った体感があるのかもしれません。そもそも”ととのう”とはどういうことなのでしょうか。みさとさんいわく、それはあくまでも「自分にとってのちょうどいい状態」だと言います。

「それぞれの感じ方があって当たり前。暑い興奮状態から急に冷却されたときに起こる身体の急転で飽和状態になることを『ととのう』というひとも多いと思います。ただ私にとってそれは体の嫌な熱が放熱されて、自分にとってちょうどいいバランスが取れている状態。サウナに入って水風呂から上がったときの均衡感覚を日常にもいかしたいと思っています。最終的には自分が気持ちよければよい気がしますけど!サウナもさんぽもそういうことじゃないですかね」

SaunaLab Kandaの休憩スペース。まるで湖のほとりで森林浴してるような心地よさ
湯上がりにはお土産で買った、近江屋洋菓子店の名物「フルーツポンチ」をいただきます
大ぶりの果物にすっきりとした甘さのシロップが絡む絶品

入谷から神田まで、地図を片手に1万歩。あえてスタート地点を遠くしたり、”だいたい”の方向を把握したり、気になる場所を記録したり、さんぽをたのしむ上での地図の使い道はまだまだありそうな予感がしました。普段は電車で通り過ぎるためにまだ知らないあの場所や、忙しさのあまり後回しにしてしまう自分と向き合う時間は、案外”歩く”というシンプルな選択を通して、毎日のなかに取り入れられるのかもしれません。

自分にとっての”ちょうどいい”心地よさを求めた先に、サウナと歩くことで毎日の循環をつくりだしているみさとさん。「地図のおともにサウナ」。聞き慣れない響きですが、その相性はかなり良さそうです。

さて、次は神田でどんな〇〇+〇〇をたのしみましょうか。

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