たくましさを与えてくれる、いい出会いの場を目指して。|こんなだった、なんだかんだ9 #3

「問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫だと思える場をみんなでつくる」
そう掲げているなんだかんだには、出演者みなさんの力が欠かせません。むしろ、なんだかんだが目指そうとしている場をすでに実践されているみなさんをもっと知ってもらいたい、という気持ちも込めて集まっていただいています。

改めて、「大丈夫だと思える場所をつくる」ということはどういうことでしょうか。
そうした場に日々向き合い、なんだかんだがお手本にもしているお二組にお話しを伺いました。

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次にご紹介するのは、「幻聴妄想かるた」を使った出張かるた大会を実施してくださった世田谷の福祉事業所「ハーモニー」。
幻聴妄想かるたとは、ハーモニーのメンバーが実際に体験したことを句と絵にしたかるたです。なんだかんだでは、お客さんたちがかるたを競いながら、一枚取るごとに句のエピソードをメンバー自らお話ししてくださいました。

「トゥルルルルと幻聴で電話 ケンタッキーに行くとおさまります」
「コンビニに入るとみんな友達だった」
「弟を犬にしてしまった」
など、読み上げられるたびに内容が気になって仕方がないかるたたち。ユニークな絵とメンバーから語られるエピソードを通して、知らなかった幻聴や妄想の世界に触れていきます。

当事者からなかなか語られる機会のない幻聴や妄想と、かるた大会というなんともくだけた場で出会わせてくれる幻聴妄想かるた。そんなすごいパワーを持ったかるたを手がけたハーモニーの施設長・新澤克憲さんに、アイデアのきっかけや場のつくり方などお話を伺いました。今回の聞き手も、なんだかんだのクリエイティブディレクター・池田さんです。

ハーモニーさんの事務所にて。
施設長の新澤克憲さん(中央)と、なんだかんだにも参加してくださったメンバーの益山さん(左)。

●幻聴妄想かるたがもたらすこと

池田 先日はなんだかんだに参加いただきありがとうございました。改めてハーモニーさんのことをもっと知ってもらいたいなと思って、新澤さんとお話ししたく世田谷の事務所にお邪魔しています。

新澤 久しぶりですね。よろしくお願いします。

池田 まずは、幻聴妄想かるたが誕生したきっかけから教えていただけますか?

新澤 はい。幻聴妄想かるたというのは、ここハーモニーで定期的に実施しているメンバーミーティングから生まれたものです。ミーティングではメンバーの困り事や悩みをそれぞれ話して、みんなでアドバイスし合うということをしているんですが、ある時それを絵に表現してみようと思いついて。

池田 その発想が素晴らしいです。

新澤 それで実際にやってみると、すごくおもしろかったんです。そもそも幻聴って、聞こえはするけど本人にも見えてないことじゃないですか。でも、他の人たちが話を聞いて絵にすることで、途端に幻聴の主が視覚化される。そうすると、本人が一人で抱えてたものをみんなでシェアできるようになるんです。
「幻聴妄想かるた」のことを精神障害の具体的な症状をわかってもらうためのものと取り上げられることもありますが、実はそうではなくて、ここに集まった人たちが一人のことを心配してみんなで絵を描いたという記録なんです。

写真提供:ハーモニー

池田 本当に画期的だと思います。一人で抱えていたものをみんなでシェアできるようになったことで、メンバーの中で変化はありましたか? 

新澤 それまでは幻聴の悩みというのは他の人には言えないことで、スタッフと一対一で話して個別で対応していました。でも、「みんなに自分の話をする」ということが案外おもしろいことだとわかったみたいです。

池田 素晴らしい、大発見ですね。

新澤 自分の話を誰かに聞いてもらえて、「俺もそういうことあったよ」と言われるとわかってもらえた気がするじゃないですか。スタッフとの一対一の関係ではなくて、その場にいる人たちと横の関係ができたということが大きかったと思います。彼らの間で関係性ができることで、お互いが怖くなくなったんです。

●敬意をもって世界を開いていく

池田 やっぱりそれは、新澤さんがみんなに尊敬の目を向けて話を聞いているということが、お手本のように影響しているんじゃないかなと思うんです。
以前ミーティングに参加させてもらいましたが、みなさんが話している間にもかなりの沈黙があるんですよね。でも、それを急かしたり沈黙を埋めるように誰かが話し始めることもなく、その人が自分と向き合う時間としてちゃんと受け止めているんだなと思って。そこにすごく感動したんですよ。その人がそのままで居られることって大事だなと。

新澤 単純にメンバーのみなさんがいい人たちばかりというのもありますけどね(笑)

池田 これって障害の有無は関係ないことですよね。学校にしても会社にしても、どこでも揉め事が起きてるわけで、それは「敬意を持って接する」ということができないからだと思うんです。
ただ、大事なことだとわかってはいても、どんな相手でも尊敬することと、そうした姿勢を教えることって本当に難しいと思います。

新澤 そうですね。例えばたまに事務所にセールスの人が来ることがありますが、そういう外部から来たものに対して丁寧に応答するというのは大事だと思っていて。人をあしらう姿を彼らに見せたくない、という気持ちはありますね。

池田 すごい、なかなか全部そういうわけにはいかないですよ。

新澤 外部から来たものに丁寧に答えるというのは、この場所を閉じた場所にしてはいけないと思っているところもありますね。
やっぱり僕らの人生は偶然で回っていて、たまたま知り合いになったから何かが起きると思うんです。入学式で隣に座ったから友達になったりみたいな。本来そうやって人生は回っていくはずなのに、彼らを取り巻く人間関係はほぼ必然で回っていくしかないんです。例えば、施設に行っても周りには医療関係者とか福祉支援の人とか、彼らに「良いこと」をする人たちだけが集まってくる。
そうした限られた関係の中に閉じ込められて、偶然性を奪われることが嫌なんです。だからハーモニーではいろんな人を受け入れて、突然何かやっても平気なようにしてます。

●やっと行き着いた場で学び直す

池田 いや〜本当に素晴らしいです。場のつくり方っていろんな人が考えていることだと思うんですが、ハーモニーさんから学ぶことってすごくあると思うんです。

新澤 先程池田さんが「その人がそのままで居られることって大事」と言ってくれましたが、今それが脅かされていると思うんです。一般社会からこぼれ落ちてしまった人に対して、「治す」「改善する」ことをしないと社会で生きていけないという構造に危機を感じます。

池田 ハーモニーには、治すということではなく「学び直す」みたいなことがあると思うんです。

新澤 学び直す、そうですね。特に統合失調症の人は20代前後で発症することが多く、そこから長い期間の入院によって社会から遠ざけられ、40代になって帰ってくる、といったことがよくあります。
ただ、そこから何か始めようとしても感覚は10代のままなんですよね。なので、まずは友人とのトラブルをどう解決するかとか、10代みたいな悩みから一つひとつ向き合う必要がある。そういう意味でも、学び直すというのはその通りだと思います。
ただ学び直すにあたっては、彼らが10代だった高度経済成長期の価値観に戻るんじゃなくて、詩を書いたりギター弾いたり、病気とのつき合いのなかで、やりたかったけれどできなかった好きなことからはじめていけばいい。それで本を売ったりライブをしたり、それぞれができることから丁寧に進んでいけるといいんじゃないかと思っています。

池田 幻聴妄想かるたのアイデアも、メンバーの物語やつくったものを商品にすることで、他の福祉施設で行うような作業が難しい人に工賃を支払えるようにする仕組みになっていますもんね。

新澤 そうなんです。一般社会とされる環境においては、決まった時間で正確に多くの仕事をした人が評価される、という価値観がありますよね。でも、そこからこぼれてしまった人が集まる福祉施設で、同じ価値観を掲げても彼らが自信をもって日々過ごしていくことにはつながらないんです。なので、ハーモニーではその価値観を捨てようと思いました。
もちろん社会での自立に向けた支援施設はとても重要なので、ハーモニーが正しいということではなく、そうした施設をいくつか巡ったけどうまく馴染めなかった人が、最終的に辿り着けるような場にできるといいなと思っています。

池田 ハーモニーさん自分たちのことを「片隅」といった言い方をされていたことが印象に残っていて。やっと行き着いた場所だからこその心地よさがある気がしますね。

●話せることを話すだけで大丈夫

池田 なんだかんだでは、お客さんたちとかるた大会をしながら、読まれたかるたのエピソードをメンバーの方に話していただきました。
これがとっても貴重な機会だったんですが、ハーモニーで普段やられているように、お客さんたちも一緒にメンバーの話を聞いて絵を描くということもできそうですか?

新澤 幻聴妄想かるたは、メンバーのハーモニーという場に対する信頼から生まれたものなので、自分の物語を知らない人に委ねて絵を描かれることに抵抗がある人もいると思うんです。ただ、場によっていろいろなやり方の可能性はありそうですね。知らない者同士だから語れることもあるかもしれませんし。

池田 場によって引き出されるものって違いますもんね。

新澤 「なんだかんだ」の場合は、オープンさ加減が並大抵のものじゃないですか(笑)
いろんな人がいていろんなことが起きているので、じっくり話を聞くことはやりにくい環境だと思うけど、その開放感がおもしろくなりそうな場ですよね。幻聴や妄想といったことに絞らずに、それぞれが話せることをシェアして、みんなで絵を描いて、それで遊んでみるだけでもいい体験になる気がします。

池田 多くの人があまり自分と向き合う時間を持てていないと思うので、すごくいい時間になると思います。「話せることを話す」ってとても大事ですよね。それがわかるだけで大丈夫でいられる気がします。

新澤 そうなんです、人それぞれが自他境界を持って、ここまでは明け渡して大丈夫ということを話せばよくて、必ずしも本当のことを言わなくたっていいんです。言ってしまえば、幻聴や妄想も本当かどうか第三者にはわからないわけですし。そういった許容範囲のあり方含めて、どう場をつくるか次第かなと思いますね。

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巡り堂とハーモニーのお二方のお話を通して、「大丈夫だと思える場所をつくる」ことのヒントをたくさんいただきました。
それぞれに共通していたのは、「その人がそのままで居られる」という状態を大事にしていることです。多くの人が意識的にも無意識的にも社会に順応して生きている中で、「そのままで居ること」を肯定し、それを可能にするような場をつくる。それはもちろん簡単なことではありませんが、「画材循環プロジェクト」や「幻聴妄想かるた」といった鮮やかなアイデアで取り組んでいることがなにより希望を与えてくれました。

さまざまな人が暮らしをともにする街において「その人がそのままで居られる」ことを目指すのは、より良い街をつくる上で向き合うべき命題と言っても過言ではありません。
神田の街にもこうしたアイデアが芽吹いていけるよう、なんだかんだを通して考えていきたいと思います。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI), Mariko Hamano,
Joki Hirooka

たくましさを与えてくれる、いい出会いの場を目指して。|こんなだった、なんだかんだ9 #2

「問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫だと思える場をみんなでつくる」
そう掲げているなんだかんだには、出演者みなさんの力が欠かせません。むしろ、なんだかんだが目指そうとしている場をすでに実践されているみなさんをもっと知ってもらいたい、という気持ちも込めて集まっていただいています。

改めて、「大丈夫だと思える場所をつくる」ということはどういうことでしょうか。
そうした場に日々向き合い、なんだかんだがお手本にもしているお二組にお話しを伺いました。

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最初にご紹介するのは、京都・亀岡市を拠点に展開する画材循環プロジェクト「巡り堂」。
家の押し入れや会社の倉庫で眠っている鉛筆やクレヨン、絵の具など、いずれ廃棄されてしまう画材を次の人の元へと繋いで、巡らせていくプロジェクトです。なんだかんだでは、回収した画材のクリーニング作業の体験や画材を使って自由に創作を楽しめる場を展開してくださいました。
色とりどりの画材が大量に並び、見ているだけでわくわくする巡り堂のエリアはいつも大盛況。なんだかんだに楽しい彩りを添えてくれています。

そんな巡り堂を立ち上げたのは、みずのき美術館キュレーターの奥山理子さん。発足のきっかけからさまざまな展開、現在の悩みなどをお話しいただきました。聞き手はなんだかんだのクリエイティブディレクター・池田さんです。

巡り堂のスタッフみなさん。真ん中にいらっしゃるのが奥山理子さん

●巡り堂のはじまり

池田 いつも京都・亀岡から神田まで来ていただいていますが、今日はぼくらが巡り堂の拠点・みずのき美術館にお邪魔しています。壁に展示されているのは美術館の収蔵作品ですね。

奥山 遠いところありがとうございます。
作品はそうですね。みずのき美術館は、障害者支援施設「みずのき」で実施していた絵画教室が発端にあって、そこから生まれた作品の所蔵と展示をおこなっているんです。

池田 神田ポートでも作品の展示をやらせてもらっているんですが、素晴らしい作品がものすごい量あって選ぶのが本当に大変。

奥山 作品の数は約2万点ありますからね(笑) みずのきの絵画教室が始まった1964年当初からのものを収蔵しているのでそれはもう膨大です。

池田 絵画教室はどういった経緯ではじまったんですか?

奥山 当時の入所者を対象にした余暇活動として始まり、そこから才能を見出され、選抜された人向けに専門的な活動へと展開していったんです。アール・ブリュットの草分け的な存在として展開を広げていきましたが、指導をしていた先生が亡くなられたことを機に活動は途絶え、作品だけが残る状態がしばらく続いていたんです。
そこから10年ほど経った頃、もう一度作品やみずのきの歴史をしっかりアーカイブしていくとともに、これからに向けて作品を外に開いていく場所をつくろうと、ここ『みずのき美術館』を2012年に立ち上げました。

障害者支援施設「みずのき」のアトリエ

池田 一度は活動が途絶えながらも、これだけの作品がしっかり残っているのはすごいことです。

奥山 ただ、作品を展示するだけではみずのき美術館とさまざまな人が交流することには十分に繋がらないと思っていて。なので、開館当初からアートプロジェクトやワークショップを企画してきました。それでもアートが好きな人は集まってくれるものの、そこからもう一歩広げることがなかなかできないジレンマがあったんです。作品をつくる人とそうでない人を分けてしまっているような感覚というか…。

池田 アートによって外に開いていけるかもしれないけど、“アート”というカテゴリーに閉じてしまうこともありますからね。

奥山 そうなんです。それに加えて地域で暮らす軽度の障害者やひきこもり当事者の就労の課題にも関心がありました。というのも、自立に向けて思い切って就労研修を受けたものの、途中で心が折れてしまった人の話をよく聞いていて。そもそも社会資源がとても少ないので、そんな人たちも受け入れられる場がほしいなと思っていたんです。挑戦してみてしんどくなったら戻れる場所というか。

池田 そこから思い付いたのが「巡り堂」なんですよね。はじめて話を聞いた時、よくこんな素晴らしいアイデアが思いつくなあと、すごく感動したんです。

奥山 本当に偶然の出来事でした。前々からテレビなどで家財回収や遺品整理が紹介されているのを見るたびに、これはいつか絶対に仕事になりそうだと思っていたんです。「誰かの家を片付けに行く」ということは必ず需要がありますし、心の不調を抱えていたり日々の生活に苦労している人たちも仕事として関われる余地があるんじゃないかと感じて。
そんなことを漠然と考えていたところに、家財回収の業者さんが訪ねてきてくれたんです。よかったら画材をもらえませんか?と。

池田 へ〜! そんなことあるの、すごい。

奥山 最初は廃棄される家財や日用品を使ってアップサイクルしてもらえないかという相談でしたが、そこに含まれていた画材を実際に見せてもらうとそのまま使えそうな状態のものが多くて。これをもう一度使えるようにきれいにすることがひとつの仕事になるんじゃないかと思い付いたら、ずっと考えていたことが全部一気に繋がったんです。

池田 ものすごい出会いだな〜。

奥山 そこからすぐに画材を送ってもらい、まずはスタッフで数ヶ月ひたすら拭く作業をしていきましたが、「先が見えない…」「しんどいです」という想像と真逆の感想だったんです。クリエイティブな作業のはずなのになんでだろう…と思いながら、拭きやすいものからやってみたり、日の当たるところで作業するようにしたり少しずつやり方を変えて、うまく回るようになっていきました。

池田 シンプルな作業だからこそ、やり方や環境で大きく変わりますからね。今日巡り堂の作業場も見せていただいて、収納がすごくきれいでいいなと思っていたんですが、そういう些細なこともうまく場をつくっているなと思います。

奥山 しばらく無料でもらった紙箱を使っていたんですが、使いやすさに慣れるとだんだん所帯じみた作業になっていく気がしていて。やっぱりここは美術館なので、外から見ても気持ちいい見栄えのものにしたいと思ったんです。かなりの時間かけて探してやっと見つけた収納方法なのでそう言ってもらえて嬉しいです(笑)

池田 巡り堂は運がいいというか、なんか神様が宿ってる感じがしますね。

奥山 そういえば、巡り堂をお披露目する日も二重に虹がきれいにかかっていたんですよ。家財回収業者さんが突然訪ねてきてくださったのもそうですし、そういうミラクルが多いかもしれません。

●最初の一歩となるような場として

池田 お話を聞いていて、改めてすごく考えてこの場がつくられているんだなと思います。活動を始めて3年が経ち、メンバーの入れ替わりもあるようですが、最近の悩みはありますか?

奥山 そうですね…。巡り堂はイベントなど展開できる可能性がたくさんあって、スタッフの中ではさまざまなアイデアが膨らんでいます。ただ、普段画材の仕分けや清掃作業をしてくれているメンバーからは、淡々と静かに画材を拭いていたいという声もあるんです。

池田 ここは居心地がいいですもんね。

奥山 私たちとしてはいろんな可能性を広げたいけど、「このままでいたい」という声もちゃんとサポートしたいんですよね。拭く作業が丁寧だったとか、少し会話が増えたとか、はじめて自分一人で行き帰りできたとか、ささやかな変化に喜び合うことも素敵なことですし。そういうメンバーを見守りながら少しずつ外に出ていく機会を考えています。

池田 「見守ること」ってとても必要だなと最近思うんです。人が社会に出ていくための支援をする中で、実は「誰かが見守っている」ということがまずは大事で、誰かと交流することはもっと後に考えてもいいぐらい。

奥山 本当にそう! そうなんですよ。

池田 巡り堂さんは見守りつつも、なんだかんだのときにははるばる神田まで来てくれましたよね。

奥山 メンバー7人連れて行きましたね。はじめて新幹線に乗る子もいましたがとても喜んでいました。お土産買ったりしっかり東京を満喫して。自分がきれいにしたものを直接渡せて嬉しいとも言ってくれましたね。

池田 本当にすごいことですよね。家の外に出るのも大変だったのに、新幹線に乗って東京まできてくれるなんて。変化って、大きくなればなるほど怖いものじゃないですか。

奥山 そうなんですよね。ただ一方で、なんだかんだに参加したメンバーの中には、その後で環境が変わってまた家から出にくくなって巡り堂にすら来れなくなってしまった子もいるんです。巡り堂にだけでもおいでよと家庭訪問した方がいいかもしれないけど、あくまで美術館という立場なのでそこまですることは踏み込み過ぎているとも思っていて。
でも、私たちスタッフとしては外に出ることを諦めたくはないんです。見守りながらも、また一歩外に出れた時に安心して通える場所としてありたいですね。

池田 とにかく活動を続けるということが大事ですよね。すべてに全力を注いでもどこかで体を壊してしまうし、無理のない範囲でやっていくしかないと思うな。

●拭くことの大きな意味

奥山 悩みは尽きませんが、こうやって関心を向けていただける方がいることって嬉しいんです。とても励みになるので。

池田 なんだかんだに参加してもらってるのも、結局は巡り堂のことをたくさんの人に知ってもらいたいからなんです。アイデアが素晴らしくて、活動について知ることで、いろんなことを学び、考えることができますよね。

巡り堂にとって外に出ていくことも重要だけど、こちらが巡り堂と出会うこともとても大事なことなんです。

奥山 嬉しいです。そうですね、お互いにとっていい機会になることが大切ですね。

池田 やっぱり社会全体ですごく孤立が進んでる気がしていて、もっといろんな形で見守る仕組みができないかなと考えてるんです。それで巡り堂の話を聞いて思ったのは、 画材をきれいにする行為って案外快感があるんじゃないかと。写経もそうだけど、集中する時間っていうのは結構気持ちがいいと思うんですよ。ある一定のリズムで何かをするという行為は、もうそれだけで十分ケアになるというか。

奥山 確かに、人それぞれのやり方や工夫もできますしね。巡り堂でも特にノルマはなく、メンバーが得意な作業をやってもらうようにしています。

池田 そういう作業が、成果として巡り堂に貢献できているということもとても重要だと思うんです。自分の手元でやっていたことが、社会につながっていく感覚を得るというか。このままでいいんだと思えることって大事なので。

なんだかんだに参加することも一見大きなチャレンジかもしれないけど、環境は違っても普段やり慣れている作業をしていると、意外と大丈夫なんだと気付ける機会になるのかなと思いました。

奥山 たまにぐっと背中を押してみると、思いがけずジャンプできたりしますしね。

池田 本当に毎回ジャンプしてくれてありがとうございます。まだまだ巡り堂さんのことを知ってもらいたいので、引き続きよろしくお願いしますね。

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#3に続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI), Yuka Ikenoya(YUKAI)

たくましさを与えてくれる、いい出会いの場を目指して。|こんなだった、なんだかんだ9 #1

2023年3月に第1回を開催し、2024年11月には9回目の開催となった路上実験イベント「なんだかんだ」。1年半の間で、大小さまざまな規模で居心地のよい出会いの場を多くの方とつくってきました。
特に2024年は、路上実験イベントからスピンオフし、レディースデー、福祉、ケア、カルチャー、防災といったひとつのテーマに絞って多数展開。さまざまなテーマを通して、これからの生活に役立つものごとに、出会い、触れ、考える場を積み重ねてきました。

<これまでのなんだかんだ>
なんだかんだ3
ひな祭りの日をレディースデーにして考えたことやってみました
なんだがかんだ4
障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所。「駄菓子屋 横さんち」の話
なんだかんだ5
誰かと一緒に鑑賞するからこそたどり着く何かがある。写真家・白鳥建二さんとの美術鑑賞会
なんだかんだ6
障がいや病気があっても旅を諦めてほしくない。「ume, yamazoe」から広がる旅の未来
なんだかんだ7
歴史が根付く場で生まれる、ドラマチックないい時間
なんだかんだ8
より安全で、より快適な、あたらしい防災を考える

そして、文化の日である11月3日に開催した「なんだかんだ9」では再び路上を舞台とし、畳を敷き詰めてこれまでのテーマが一堂に介す場に。

今回のスローガンは、「なんだかんだと、たくましい」。
あたらしい、やさしい、に続いて掲げられた「たくましい」とは一体どういうことでしょうか? 当日の様子を振り返りつつ、第1回目から一緒に場をつくってくださっている出演者の方にもお話を伺い、「なんだかんだ」が考えるたくましさに迫りたいと思います。

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開催にあたって、クリエイティブディレクターの池田晶紀さんは以下のようにコメントを寄せました。

これまで重ねてきた経験を活かしたカタチでさまざまな課題に取り組んでいこうと計画しています。
わたしたちの考える場は、その問いや問題に対して、不確実なことでも、受け入れて居れることを目指しています。
つまり、問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫な場をみんなで作り、「対話し触れること」。この時間を出会いの場と捉えて、楽になれたり、楽しくなったりできたらと思っています。

畳の上には、はじめて触れるものや一見何だかわからない不思議な出来事が盛りだくさん。知らないものに触れることは勇気がいるものですが、なんだかんだではどこか踏み込んでみたくなる安心感や解放感がある場となるようにつくられています。
書道の横で心臓マッサージを体験したり、熱々のピザを食べつつ熱々の鉄を叩いたりと…渾然一体としていた当日。緊張と緩和がほどよく混ざり合った全体の様子を、たっぷりの写真とともに振り返っていきましょう。

●ここだけのなんだか不思議な出会いたち

路上に畳が敷き詰められている。それだけでも普段と違う過ごし方がありますが、さらにそのまわりには普段はなかなか出会えない体験が散りばめられました。畳でくつろいでいるだけだったはずなのに、否応なしにいろいろなことに巻き込まれていくのも、もはやなんだかんだのお馴染みの風景です。

鉄作家・小沢敦志さんによる「鉄をぺちゃんこにするワークショップ」
熱して真っ赤になった鉄を思い切り叩く、叩く、叩く!
熱した鉄の感触や、狙いを定める難しさ。叩くだけでもはじめて知ることがたくさん。
ダンサー・伊藤千枝子さん(a.k.a.珍しいキノコ舞踊団)と声の魔術師・中ムラサトコさんの
即興パフォーマンスは、お客さんとの会話からその場で歌と踊りを捧げていくスタイル。
仕事明けで来た、娘に痛風を心配されているなど、
どんなワードも最高のパフォーマンスにしてしまうので話を聞いてほしい人が続出!
編み物ワークショップ「あおいちゃん、がおがお」
畳に寝転がるあおいちゃんが着るニットに、みんなで編み物を繋いでいきます。
はじめましての人に直接編み物するってスリリングで楽しい。
アウフグースマスター・HIKARIさんの風を受けながら、
インスピレーションの赴くままに作品を描いていく「サウナマットアートコンテスト」。
参加者のみなさんは突然開催されたコンテストに半ば巻き込まれるように描き始めていきますが、
そんな戸惑いがかえって感性を解き放ち、名作が爆誕していきました。

●心強さを与えてくれる出会いたち

賑やかな演目の傍らでは、ちょっと真剣な空気が流れるエリアも。防災をテーマに開催したなんだかんだ8に参加してくださった方々もこの日集まっていただき、災害や備えについて考える場をつくりました。
「いざという時」に役立つ知識は、誰にとっても必要なことだけれどなかなか得る機会がないもの。それだけに、ほんの数分の体験でも大きな心強さを与えてくれました。

男性看護師による救命処置体験『大切な人の命を救えるのはあなたしかいない!』
畳でくつろいでいる時でも何が起きるかわかりません。
現場で活躍する看護師の方から本気のレクチャーを受けると
少したくましくなれた気がしてきます。
災害時に都市で生き残るためのサバイバル術を教えてくれる
「かーびーの防災ワークショップ 都市サバイバル編!身近なモノで生き残れ!!」。
知識はいつでもどこでも持ち運べる大事な備え!
神田ポートでは、個人向け防災グッズセット「THE SOKO 錦町」を販売。
非常食ってこんなに豊富で、こんなに美味しいあらたな発見。
さらにご近所の神田消防署からはポンプ車の展示も。
消防署員の方からポンプ車の装備や消火器の使い方を教えてもらいたい子供たちが大集合。

●大丈夫な場から生まれる出会いたち

クリエイティブディレクターの池田さんのステートメントにもあったように、「問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫な場をみんなで作り、対話し触れること」を目指していた今回のなんだかんだ。
「大丈夫な場」とは、安心できたり、受け入れられたり、居心地を感じたり、靴を脱いで畳に上がることと同じように、どこか心がほぐれるような場とも言えるかもしれません。そんな場を、みなさんの力をお借りしながらつくっていきました。

福祉事業所〈ハーモニー〉の幻聴妄想かるた大会。
ハーモニーのメンバーが実際に体験した幻聴や妄想などを句と絵にしたかるたで、
「トゥルルルルと幻聴で電話 ケンタッキーに行くとおさまります」
「弟を犬にしてしまった」
など、勝敗よりもかるたの内容が気になって仕方がない。
篠崎芽美さんのダンススル会では
今回は朝に集合して練習してから、お客さんの前でダンスの発表へ!
教えてもらった振り付け通りでなくても飛び入り参加でも大丈夫。
身を任せて思いのまま踊ると気持ちいい。
京都を拠点に展開する画材循環プロジェクト「巡り堂」。
家で使われなくなった画材たちが畳にずらりと並び
膨大な画材に囲まれると、創作欲も爆上がり。!
眠っていた画材も息を吹き返したように大いに彩りを放ちます。
ウィスキングマイスター・千葉有莉さんの青空ウィスキング。
無防備すぎる後継だけど、周りの気配を感じるからこそ
リラクゼーションの世界により集中して没入できる。
茶道裏千家の専任講師・石澤宗彰さんの茶道教室「露天風炉3」。
普段はなかなか見ることができない茶道の様子が大公開されていて
道ゆく人たちも興味津々。
旧ホテル跡地では劇団カクシンハンによる
プロアマ混合のシェイクスピア「十二夜」を上演。
演者と観客の境もほぼなく、プロアマが混ざり合った空間は臨場感が一層あり、
あっという間にシェイクスピアの世界へ引き込まれていく!

●一緒に場をつくる心強い仲間たち

かなりの演目をご紹介してきましたが、なんだかんだをともにつくってくださった仲間はまだまだたくさん。入れ替わり立ち替わり、いろいろな方がとっておきのひとときを楽しませてくれました。

オープニングアクトに登場した正則学園ビッグバンド部。
路上に力強い演奏がよく響く!
路上に遊びの空間が広がる「移動式あそび場」
子どもたちがのびのび遊んでいると、周りの大人も嬉しくなる。
税務署の駐車場が会場の一つということもあり、
税金について遊びつつ学べるワークショップも。
楽しく知るって、とっても大事。
会場の所々に設置されている標識は、
東京都市大学都市空間生成研究室企画の妄想標識スタンプラリー。
標識の意味を考えてみると、この場の楽しみ方ももっとわかる。
TOBICHI東京の「おちつけ書道会」
「おちつけ」の文字に、その人の落ち着き具合が見えてくる気がする。
茨城県日立市にある就労支援事業所ひまわりの「なんだかんだコーヒー屋さん」
茨城県さんの立派なさつまいもを大量に持ってきてくれました!
大きい農作物ってなんだか嬉しい。
誰でも楽しめる「ロウリュ投げ大会」はギャラリーを囲んで大盛り上がり。
神田錦町にお店を構える炭をテーマにしたカフェダイニング「廣瀬與兵衛商店」も出店。
炭焼きソーセージの香ばしさは絶品!
神田ポートのご近所にある名店・カレーハウス「ボルツ」の特製ポップコーン。
ポップコーンの箱の心踊るデザインって改めて秀逸!
神田ポート内ではほぼ日が紹介する能登のとっておきワインを販売。
楽しい気分になるといいお酒もほしくなる。
ストリート写真館で、この日を思い出の1ページにパシャリ。
日が暮れたら寝たままできるリストラティブヨガ体験も。
皆さんすっかりこの場に慣れきって、畳で寝ていても誰も気にしない様子がまたいい光景。
最後お馴染みの木遣りで締め!
楽しい時間を一瞬で切り替えてくれる潔さがあります。

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なんだかんだは9回を迎え、お客さんも出演者の方も程よく分け隔てなく、のびのびと楽しむ様子が見られました。今回目指していた「問題の解決が目的ではなく、まずは大丈夫だと思える場をみんなでつくる」ことが実際に現れていたように思えます。

それにしても、「大丈夫だと思える場所をつくる」ということはどういうことでしょうか。
次の記事では、そうした場に日々向き合い、なんだかんだがお手本にもしているお二組にお話しを伺いました。

#2に続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI), Mariko Hamano

より安全で、より快適な、あたらしい防災を考える|こんなだった、なんだかんだ8

防災とは、災害に備えること。それは、災害自体を「未然」に防ぐものから、被害の「拡大」を防ぐもの、被災からの「復旧」まで含めることがあります。
私たちは日々さまざまな災害と隣り合わせで生活していますが、じっくりと防災について考える機会はあまりないもの。そこで、9月1日を「防災の日」とし、そんな災害や備えについて理解を深める防災啓発デーに定められています。

いい時間といい出会いの場をつくることに取り組んできた「なんだかんだ」でも、9月1日に合わせてあたらしい防災アプローチを探求する場を企画しました。
テーマは、「快適な避難所」。必要な備えの中に、苦しい状況でも少しの快適さを得られるような知識やアイテムが神田ポートに集まりました。

当日は台風接近により、規模を縮小して安全を確保しての開催となりましたが、それもまた災害時の対応の一つ。あらゆる状況に応じて、備えておくべきこととは何か。いざという時に向けた、防災への心構えと準備の練習となりました。

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●現場のプロから、救命処置を改めて学ぶ
男性看護師集団・Nurse-Menの救命処置体験

会場の神田ポートには、横たわるマネキンが二体。もしこれがマネキンではなく、自分の目の前で突如倒れた人だとしたら…。人命救助の場面は、いつどこで起きるか当然わかりません。実際にその場に出くわした時、対応を調べているちょっとした間にも命の危険性が高まってしまいます。

ずいぶん前に講習を受けたきりで記憶が曖昧だったり、情報がアップデートされていなかったりという方も多いはず。そこで、全国各地で救護活動を行う男性看護師集団・Nurse-Menの皆さんによる救命処置体験が行われました。

まず、倒れている人がいたらどうするか。一刻一秒を争う救命処置ですが、まずは意識の確認、119番へ電話、AEDの確保…と迅速に対応しなければなりません。そのため、周囲に人がいる状況であれば、助けを呼ぶことがとても重要です。その時に「誰か」とお願いするのではなく、相手の目を見て「青いジャケットを着ている男性のあなた」「白いトートバックを持っている女性のあなた」と、自分だと認識してもらうこと、緊急時だからこそ丁寧に正確に声をかけることが大事になります。

ひと通りのレクチャーを受けた後は、いざ心臓マッサージとAEDの操作を実践。救急車が到着するまでの数十分間、かなりの力で押し続けなければなりません。骨が折れてしまうのでは…と初めは躊躇気味だった参加者も、「骨は折れても治るけれど、命が失われてしまってはどうにもならないので躊躇なく!」とNurse-Menの方の言葉でハッとしたように力が入ります。

AEDも日常生活でほとんど意識することがないので、どこにあるのか、どう使うのかわからないもの。ですが、いまのAEDは蓋を開けると手順をアナウンスしてくれるのでそれに従うことで初めてでも使うことができます。
使い方がわからずとも、「使い方はアナウンスしてくれる」ということを知っているだけで、焦りが一つ解消される。こうした些細なことでも知識として持っておくことで一秒でも早い対応につながると感じられました。

なにより、さまざまな現場を見てきたNurse-Menの方々の頼もしさが身に沁みるばかり。ほんの数分のレクチャーでいざという時に教えてもらった通りに動けるかというと不安ではありますが、ここで得た心強さを保ち続けられるよう折に触れておさらいしたいと思います。

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●備えがなくても、知恵を駆使してサバイバル!
防災ワークショップ 都市サバイバル編!身近なモノで生き残れ!!

救命処置の体験の隣では、被災地での移動式遊び場の展開や、防災教育などを手掛けるかーびーさんによる防災ワークショップ。災害時の都市で生き残るためのサバイバル術を体験型ワークショップにして伝授してもらいました。

地震が起きたらどう身を守るか、怪我人をどう運ぶか、避難所で食器がなかったり寒い時にどう工夫するか。あらゆるシチュエーションで、備えがないという時にも対応できる知識を教えてくださいました。

頭で理解した後は、身体に覚えさせることが何より大事。ということで、ワークショップ形式で実践へ!大人も子供も参加できるゲーム形式で、身体を動かしていきます。

例えば寒い時には紙を丸めて服の中に入れたり首に巻くと、それだけで防寒に。実際に服に入れてみると空気が閉じ込められる感覚がわかります。
ものの備えももちろん大切ですが、いつでも手を離れることのない知識を持つことの大事さも感じました。

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●いざという時に食べられるものではなく、いざという時に“おいしい”ものを
防災グッズ「ソナエテ」/「THE SOKO」販売

一階のスペースでは、防災グッズの販売が行われました。
一つ目のブースは、防災セットの「ソナエテ」とおいしさを重視した長期保存食「イザメシ」。
イザメシは、賞味期限が3年のものが多く、他社の保存食と比べると短めですが、これは味を重視してさまざまな食材を使用しているから。賞味期限が3年を越えると途端に使用できる食材が限られ、味のバリエーションもクオリティも狭まってしまうそうです。
さらに、栄養バランスが偏りがちな保存食の中で、イザメシは野菜たっぷりのメニューや台湾料理などバリエーションが豊か。純粋に食べてみたいものばかりで、保存食選びが楽しくなるラインナップでした。

防災袋セットの「ソナエテ」は、クリエイティブグループ・Bob Foundation監修によるインテリアとしても映えるデザインが魅力。袋はリュックとキットとポーチの3パターンがあり、中には本当に必要なものだけが揃っており、そこに自分なりに追加する余裕もあるそうです。なぜそれが入っているのか、なぜそれを選んだのか。理由を聞いていくうちに、自分にはどんな防災セットが必要なのかイメージが膨らんでいきました。

もう一つ目のブースは、神田錦町のオフィス向けの防災備蓄品ワンストップアウトソーシングサービス「THE SOKO 錦町」。安田不動産株式会社が株式会社Laspyとともに展開するオフィステナント向けの備蓄セットを、個人向けパックとして販売されました。
備蓄品のラインナップは、プロジェクトメンバーが実際に食べ比べて選んだおいしい保存食を揃えたセット。避難時は食事が限られるからこそ、味を楽しめることは気持ちをほぐす役割として非常に大事だと言います。クマのロゴマークもチャーミングで、目が合うとなんだかほっとしそうです。

防災グッズはいまやかなりの種類が展開されています。何を選べばいいか悩ましいかもないけれど、とにかく長く保存できるものだけでなく、長く保つものと、味が好みなものをそれぞれ備えておくという選択も大事だと感じました。そんな小さな判断の一つが、不安な心を支えるかもしれません。
そして、どちらのデザインも部屋の目立つところに置いてもおしゃれで映えるというのもポイント。いざという時にクローゼットの奥から取り出すのではなく、すぐ手の届くところに置いておきたくなることで、日々の安心感にもつながりそうです。

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●地域の方と防災でつながる
炊き出し/備蓄品の無償提供/テント「konoha」体験

他にも、災害・防災にまつわる体験やアイテムを展開しました。

会場に漂ういい香りは、神田錦町の地域の方に協力いただいた「炊き出し」。じゃがいもを蒸したり、揚げたり、チップスにしたり、さまざまな味でいただきました。お腹に溜まるとともに、地域の方につくってもらった温かみを感じます。
東日本大震災の時も町会のみなさんが協力し合い、おにぎりなどの炊き出しをしていたそう。防災というテーマを通して、神田錦町の人たちとの交流する機会となりました。

炊き出しの他にも、千代田区が備蓄している防災食や携帯トイレを来場者の方々になんと無償で提供。ハザードマップは頭に入れておきたいところです。

さらに、ほぼ日オリジナルのテント「kohaku」が登場し、テントの中でも楽しめる遊びを展開しました。テントがあるだけでわくわくするとともに、空間が仕切られている安心感もあります。遊びや息抜きも生活に欠かすことができない要素の一つ。避難所のテントを遊びの空間のために使うということも、とても大事な選択だと感じました。

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防災についてじっくりと考える機会となったなんだかんだ8。
何かを教えてもらうたびに心強さを感じ、知識はそれだけで大きな備えになると実感しました。また、災害時はさまざまな苦難が起きますが、苦難を取り除くことは難しくても、苦難をやわらげる術を持つことも非常に大事です。
もちろんこうした知識が活用されずにいることが望ましいですが、いつ何が起きるかはわかりません。だからといって後ろ向きにならず、今だからこそ備えられることにしっかり目を向けることが、被害や苦難を少しでもやわらげることにつながると感じました。
そんなことに気づかされながら、防災に取り組む方々の力強さに触れて、たくましさを分けてもらったなんだかんだ8でした。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI),
Mariko Hamano

歴史が根付く場で生まれる、ドラマチックないい時間|こんなだった、なんだかんだ7【後編】

2024年7月19日から21日の三日間、「なんだかんだ7 〜ロードショー〜」を開催しました。
2023年から神田錦町を中心にスタートし、路上に畳を敷いて、いい時間といい出会いの場をつくってきた「なんだかんだ」。第7回目は、神保町での文化拠点の一つである岩波神保町ビルと、2025年1月で休館となる学士会館を会場に実施しました。

数々の物語を生み、多くの人の思い出が詰まった場所を舞台に行われる今回のスローガンは「なんだかんだと、街がドラマになる」。この地に根付く歴史と文化に触れながら、そこから生み出されるドラマチックな出会いや体験を楽しむ時間をお届けしました。
例によって、何が起きるかは当日集まる人たち次第。会場のあちこちで起きていくドラマを追いかけました。

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●笑う時間も、笑いを考える時間も心地いい
楽亭じゅげむ「落語から学ぶ、気持ちの良い笑いとは?落語表現ワークショップ!」

3日目は落語教育家の楽亭じゅげむさんによる落語表現ワークショップからスタート。
元々は小学校の教員だったというじゅげむさん。教員として働く中で、子供たちが誰かをいじったり貶すことで笑い合う場面を多く目にし、学校では笑いを学ぶ機会がないことに気づいたのだそう。そこから心温まる笑いを教える活動に取り組んでいます。

まずは落語のさまざまな表現を披露してもらい、お客さんも一人一人芸名をつけて高座に上がって挑戦。
そばの食べ方やオチの付け方などレクチャーしてもらったことを活かして、おなじみの演目を自由にアレンジしていきます。

緊張しながらも落語を披露して、ええやん!と笑ってもらえるとやっぱり気持ちいい。笑ってもらえることはもちろん、どうしたら笑ってもらえるかと考える時間も心が満たされることに気づいていきます。
最後はじゅげむさんの落語を一本丸ごと披露してもらい、臨場感のある表現力に感動と笑いで包まれました。

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●孤高の書体、精興社書体の魅力がほとばしる
葛西薫、正木香子「精興社活字の魅力について大いに語る」

続いて、精興社書体の魅力について大いに語る会へ。精興社書体とは、神田創業の印刷会社「精興社」が生み出したオリジナル書体で、岩波書店をはじめとする出版社の書籍に使われ、多くの作家や読者に愛されています。

そんな神田に縁の深い書体について、アートディレクターとして精興社書体と深く関わりのある葛西薫さんと、精興社書体についての著書のある正木香子さんをお招きし、お二人が感じる書体との魅力や書体の歴史、デザインについての謎など貴重な資料をもとに対談いただきました。

精興社書体は優れたアナウンサーと似ていて、聞きやすいけど堅苦しくないというか、個性と無個性の間をちょうどよく表現されている
本にはスラスラ読める気持ち良さもあるけれど、精興社書体にはとどまったり噛み締めながら読ませる感覚がある
文字にも音楽みたいに良い抑揚があるように、こぶしを効かせすぎなくてちょうどいい爽やかさが残っているのが精興社書体

数ある書体の中でも精興社書体が好きであり、文字に長く向き合っているお二人だからこその言葉に触れていくうちに、書体の魅力がほとばしります。

同じ言葉でも、受け取る印象を大きく変える書体。生活のあらゆる場面に応じて多くの書体が存在する中で、名著とともに親しまれてきた精興社書体には、そうした文章に見合うような書体そのものの魅力が詰まっているのだと気付かされました。

会場の外には実際に精興社書体で印刷された書籍がずらり。トークを聞いた後の来場者の皆さん、食い入るように実物を眺めてはうっとりとしていました。

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●壁にひそむ文字たちと出会う
大日本タイポ組合「壁にシミあり なぞれば字あり」

DJやダンスが終わった後の地下空間では、大日本タイポ組合さんによる壁に潜む文字を探索するワークショップを実施。一見何もない壁でも、塗装跡やヒビをじっくり眺めていると、不思議と文字が浮かび上がってきます。

机の木目が顔に見えた幼少期を思い出して懐かしさを覚えつつ、視点が研ぎ澄まされていくのを感じていきます。

見つけた文字はトレーシングペーパーでなぞって採集完了!複雑な文字を発見したときの喜びはひとしおです。隠れていた文字が自分にだけ姿を見せてくれたような感覚もあり、見つけた文字は一層愛おしく思えました。

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●学士会館で、お点前頂戴する
小堀宗翔(遠州茶道宗家13世家元次女)「学士会館茶屋」

学士会館では遠州茶道宗家13世家元次女・小堀宗翔先生によるお茶会が開催。学士会館の一室が茶室になり、参加者の皆さんをもてなします。

元々からあったと思うくらい馴染む茶室でのひとときはとても本格的で、目の前で点ててもらうと神聖な空気が流れます。お茶席は初めてという方も多く、緊張感がありつつも点てたばかりのお茶をいただくとほっと一息。
お茶のやりとり一つで、特別で贅沢な時間を味わえる茶道の力を感じました。

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●57577だけでこんなにも豊かなんだと知りました
鈴木ジェロニモ、トンツカタン お抹茶、さすらいラビー 宇野、谷口つばさ、破壊ありがとう 森もり、バローズ 徳永「なんだかんだジェロニモ短歌賞」

芸人歌人の鈴木ジェロニモさんが開催している短歌ライブ「ジェロニモ短歌賞」をなんだかんだで特別に開催!5名の芸人の方々がこの日のために短歌を考え、それをジェロニモさんが選考するというもの。

はじめに短歌について、「短歌の定型である57577は、漫才でいうセンターマイクと同じ。その中心からどれほど距離を取れるか適切に見極めていく技術が必要」と説明するジェロニモさん。限られたルールの中で、言葉だけでいかに豊かな表現を生み出せるかが短歌の魅力です。

今回の短歌のテーマは「海」。それぞれの着眼点や表現が光る5つの短歌を順位とともに講評しながら、ジェロニモさんだったらこう書くという代案も用意され、なるほど&おもしろい!
短歌の楽しさに触れながら、大いに笑いに包まれてなんだかんだ7の幕は閉じました。

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これまで畳を敷くことで、何気なく通り過ぎている路上にいい時間やいい出会いの場を生む実験をしてきたなんだかんだ。今回は、多くの物語が宿る建物の力に後押しされるように、自由で豊かな時間が次々と生まれていったような気がします。そしてこの街が紡いできたものの偉大さを改めて感じつつ、これからに向けてどう発展させていけるとよいかも考えさせられました。

圧倒的な風格がありながら、懐が深い岩波神保町ビルと学士会館。そんな場所だからこそ生まれた時間や出会いを大切にしながら、なんだかんだの取り組みはこれからも続いていきます。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI),
Satomi Ebine, Akiko Sugiyama,
Miyu Takaki, Mariko Hamano

歴史が根付く場で生まれる、ドラマチックないい時間|こんなだった、なんだかんだ7【前編】

2024年7月19日から21日の三日間、「なんだかんだ7 〜ロードショー〜」を開催しました。
2023年から神田錦町を中心にスタートし、路上に畳を敷いて、いい時間といい出会いの場をつくってきた「なんだかんだ」。第7回目は、神保町での文化拠点の一つである岩波神保町ビルと、2025年1月で休館となる学士会館を会場に実施しました。

数々の物語を生み、多くの人の思い出が詰まった場所を舞台に行われる今回のスローガンは「なんだかんだと、街がドラマになる」。この地に根付く歴史と文化に触れながら、そこから生み出されるドラマチックな出会いや体験を楽しむ時間をお届けしました。
例によって、何が起きるかは当日集まる人たち次第。会場のあちこちで起きていくドラマを追いかけました。

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ドキュメントムービーはこちら▼
(YouTubeにリンクします)

クリエイティブディレクション:池田晶紀
監督・撮影・編集:菊池謙太郎

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●なんだかんだ7は、特別なあの場所が舞台

今回の舞台は、路上ではなく岩波神保町ビルと学士会館。歴史ある場で一体何が起きるのでしょうか。期待を膨らませながらいざ現地に立つと、その場の雰囲気にどこか背筋が伸びます。

1967年に建設された岩波神保町ビル。10階には文化活動のためにつくられたホールがあり、映画の上映を中心に多くの方に親しまれていました。ホールは2022年をもって閉館となっていますが、この日は特別に使用できることに。

再開発のため2025年1月から一時休館となる学士会館。国の有形文化財に登録される建物は圧巻ですが、「なんだかんだ」の装飾も意外と馴染みます。

長くこの地で親しまれ、神田の大先輩である二つの建物。そんな場所で新たな取り組みが開催できるありがたみを感じつつ、ものすごく特別な日になりそうな予感がしてきます。
そして、まだ日は沈みそうにない夕暮れ時。交差点に面したステージにて、神田錦町にある正則学園高校ビッグバンド部の生演奏とともに、なんだかんだ7の開会式がスタート!

交差点に音色が響き渡り、道ゆく人も「かっこいいねぇ」と惚れ惚れ。区長や町会長からの挨拶も行われ、なんだかんだ7は華やかに開幕しました。

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●無骨な地下は、爆音と陽気さがよく行き届く
やついいちろう、清水みさと「地下だけど、なんだかんだ盆踊り」

岩波神保町ビルの会場は、イベントホールの他に地下にもあります。地下にはかつて二つの飲食店がありましたが、現在は跡地となっていてインダストリアルな空間に。そんな場所を使ってまず行われるのは、なんだかんだで恒例になりつつある、芸人のやついいちろうさんによるDJタイムです。

コンクリートに囲まれて静けさと物々しさのあった空間も、爆音が響けばダンスフロアに早変わり。女優の清水みさとさんもゲストに加わり、弾き語りや合いの手で湧かせてくれて異常な盛り上がりに!気持ちいい音楽と笑いで埋め尽くされていきます。

この飲食店跡地は神保町駅の地下通路に直結しているということもあり、愉快な雰囲気はじわじわと外へ。足早に帰路に向かう仕事帰りの方々にも爆音を届けていきます。
一時間たっぷり踊り、皆汗だくになったDJタイム。地下だけどふしぎと開放的で、爽快なひとときでした。

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●学士会館の凄さをあらゆる角度で浴びまくる
共立女子大学 建築・デザイン学科 藤本ゼミ、東京都市大学 都市生活学科 中島ゼミ、錦城学園写真部「学士会館って、だから凄いのか!」展

DJタイムが行われている隣では、学士会館の凄さに迫った展示の空間に。
1928年に建設され、100年近くの歴史を紡いできた学士会館。一目見ただけで圧倒されてしまう場所ですが、なぜこんなにも惹き込まれ、愛されているのでしょうか?そんな問いに対し、学生がさまざまな観点から研究しました。

研究に参加したのは、共立女子大学 建築・デザイン学科の藤本ゼミ、東京都市大学 都市生活学科の中島ゼミ、錦城学園の写真部の皆さん。共立女子大の学生は、建物の中で目に留まったものを観察してスケッチと言葉にし、東京都市大の学生は、学士会館に通う方々にインタビューを行い、人それぞれのエピソードをまとめました。錦城学園写真部は部員全員で撮影会を行い、数百枚にも及ぶ写真に収めました。

怒涛の写真とスケッチとテキストによって、学士会館の魅力を深いところまで味わえる展示は見応えたっぷり。展示を見ながらお客さんの感想も聞こえてきて、さらに魅力が溢れていきます。
どんな角度から見ても、学士会館って凄い!と再確認するとともに、岩波神保町ビルとの調和も楽しめる貴重な展示でした。

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●みんなで踊るって、なんでもできてこんなに気持ちいい!
篠崎芽美+青山健一+関根真理「ダンスワークショップ “chika〜chijou”」

2日目にはなんだかんだ常連のダンサー・振付師の篠崎芽美さんチームが地下空間に登場。
がらんとした飲食店跡地を広々と使って舞い踊ります。音楽家の関根真理さんのライブ感溢れる演奏も相まって、お客さんも次第に巻き込まれていき、大所帯の宴へ…。

皆さんの動きがしなやかになってきたところで、あたりは真っ暗に。ダンサーたちがライトを灯し、壁に大きな影が映し出されると、ペインター・映像作家の青山健一さんがゆらゆら動く影絵に呼応するようにダイナミックにペインティング!子供たちも加わり、絵は縦横無尽に広がっていきます。

気の向くままに何人もの人が一緒に筆を走らせると、次第に一体感に包まれていきます。たっぷり描き込んだところで地下でのパフォーマンスは終了!そして会場は地下を飛び出し、地上10階のイベントホールへと移ります。

ホールをぐるぐるダンスしながら練り歩き、大人も子供もステージへ。芽美さんから「明日やりたいことは何?」と問いかけられ、「ポケモンカード!」「アイスを食べる!」「模型を作る!」など答えが飛び交うと、なんとそこから踊りをつくり出していきます。
思わぬ展開に見ている側も釘付け。いつもあの手この手で自由で楽しい時間を作り出してくれる篠崎芽美さんのダンスに、音楽とドローイングが加わって、さらに感動的で唯一無二の体験となりました。

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●猛暑でも絶やさないホスピタリティを浴びる
「飲食とサウナと、あそび場と」

岩波神保町ビルの外では、隣接する駐車場に食べたり遊んだりととのったり、さまざまな体験が集まりました。
次々に人が吸い込まれていく大型トラックは、モバイルサウナの「サウナフリーザー」です。サウナ室とアイスルームが併設されていて本格的。猛暑によって火照り切った体もアイスルームが爆速で冷やしてくれます。

サウナラボのマイスターがゲリラでウィスキングまでしてくれるという贅沢なおまけも。富良野の白樺の香りが漂います。

さらにサウナフリーザーの隣には、移動式あそび場や、神田ポートのご近所にある喫茶プペさんや廣瀬與兵衛商店さんの屋台も出店!容赦のない暑さでしたが、皆さん笑顔を絶やさずお客さんたちをもてなす様子に心あたたかな空気に溢れた空間でした。

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●絵本の世界を“体感”する
廣瀬弘子/サンプルパパ+竹下花音「食育講演会〜音楽と絵本の朗読会」

再びホールでは、食育インストラクター・廣瀬弘子さんによる食育講演会がスタート。心と体、そして人間性を育てていくことが目的である「食育」。健康だけでなくさまざまな面に影響があることを学んで、大人も日頃の食事を改めて見直したくなりました。

講演の最後は、絵本ソムリエのサンプルパパさんとチェリストの竹下花音さんも加わり、廣瀬さん作の絵本の読み聞かせ。臨場感のある朗読と美しいチェロの音色が絵本の世界へと誘います。

続く音楽と絵本の朗読会では、さらにいろいろな絵本を朗読してくれました。

文と絵に、耳からの情報も加わることで、一人で読むときには決して味わうことができない贅沢な体験に。絵本を読むというより、絵本の世界を体感するようなひとときでした。

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●自由であたらしい、ここだけのシェイクスピアの世界へ
カクシンハン「納涼!みんなでおどろう、みんなでうたおう、シェイクスピア夏祭り」

一日の締めくくりとなる演目は、劇団カクシンハンによるシェイクスピアを題材にした移動式演劇。屋外ステージ、ホール、地下空間に神出鬼没に現れては、その場を作品の世界へとあっという間に変えていきます。

作品の世界に入り込んだかのような近すぎる距離感に戸惑う間もなく、たまたま居合わせた大人も演劇に加わろうとする子供たちも自然に巻き込んでいきます。

クライマックスは学士会館へ移動して、ロミオとジュリエットを披露!ジュリエットの人数が多い気もしますが、お客さんも一緒に名台詞を叫んで最後は大団円。
歴史ある建物で名場面が観ることができ、ものすごい瞬間に立ち会ってしまったような忘れられないパフォーマンスでした!

後編へ続く

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI),
Satomi Ebine, Akiko Sugiyama,
Miyu Takaki, Mariko Hamano

障がいや病気があっても旅を諦めてほしくない。「ume, yamazoe」から広がる旅の未来|こんなだった、なんだかんだ6

「日常と違う場所に飛び込む」ことは、旅でこそ味わえる楽しみの一つ。
ですが、障がいや病気がある方にとってはそれがハードルにもなり、日常と違うけれど飛び込んでも大丈夫だと思える場所は選択肢が非常に限られてきます。

そうした現状を変えるためには、設備やサービス、制度などさまざまな面のあり方を考える必要がありますが、独自の取り組みをしているのが、奈良県東部の山添村にある宿泊施設「ume, yamazoe」です。障がいや病気がある方とその家族に向けて旅の選択を増やすことを目指した「宿泊招待 HAJIMARI」という名の取り組みは、山奥の小さな宿から少しずつ反響を呼んでいる現在。どのようにして不安をほぐしながら、旅の楽しさを届けているのでしょうか。

今回はume, yamazoeを運営する梅守志歩さんとHAJIMARIのメンバーとしてともに取り組む桂三恵さんをゲストにお招きし、取り組みへの想いや課題、これからについてをお話しいただきました。
題して、「なんだかんだ6 〜ume, yamazoeの取り組みいろいろ聞いてみようか 〜」の開催です。

この日はume, yamazoeがある山添村の山で取れた葉っぱや、お茶を煮出して作ったロウリュ水を用意したスペシャルサウナも実施。奈良名物の飛鳥鍋も特別メニューとして用意し、山添村を肌と舌で感じながらトークの時間へ移ります。

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●障がいや病気がある方の、旅への気持ちをほぐす

ume, yamazoeがあるのは奈良県山添村。コンビニもスーパーもなく、85%が森林、15%が住居といった自然に溢れた集落にあります。築100年以上の建物を使った宿は、段差や坂道が多くて電波が入りづらく、不便で不自由とも言える環境だそうです。しかし、それゆえにこの場所でしか味わえない時間があり、旅の目的地として訪れる方も多い人気の宿となっています。

そんなume, yamazoeでは、2022年から障がいや病気のある方とその家族を無料で招待する「宿泊招待 HAJIMARI」という取り組みをスタートしました。「無料で招待する」という思い切ったこの取り組みはどのように始まったのでしょうか?
「本日のイベント、東京で開催ということで、だいぶドキドキしながら奈良の山奥からやってきました。ただ今サウナに入ってきたのもあって、気持ちがふわっとしてるかもしれないです(笑)」とはにかみながら梅守さんが話してくださいました。

梅守「障がいや病気がある方にとって外食や旅行をすることは、物理的なハードルよりも心理的なハードルがあるんじゃないかなと考えていました。例えば、医療機器をつけているとびっくりされるかもしれないとか、障がいによって急に大きな声を出すかもしれないとか、周りからこう思われるんじゃないかという理由で諦めてしまうことが結構あるんです。
そこで、旅をしたいけどできないと感じている方たちに、施設側から『ここならできますよ!』と迎えることでまずは気持ち的なハードルを下げていきたいと思って取り組みを始めました」

そんな梅守さんの強い想いとともにはじまったHAJIMARI。宿泊招待の他にも、さまざまな施設で同様の取り組みが実施できるよう、宿泊事業者向けに「障がいや病気がある方への接客研修プログラム」も開発・展開しています。

梅守「2年間さまざまな方を招待して、ちょっとした心構え一つで超えられるハードルがたくさんあると気が付いたんです。そこで、私たちが培ってきた心構えや接客ノウハウを、研修プログラムにして広めていくことを始めました。
やっぱり私たちは山の中にある小さな宿なので、ここだけで取り組んでも世界は変わらないと感じていて。でも、研修を通してもっと多くの地域で迎えられる場所が増えれば、障がいや病気がある方がより外出しやすい未来になるんじゃないかと思うんです」

●目の前のできることからはじめていく

実際にHAJIMARIでは、どのようにして「ちょっとした心構え」でお客さんを迎えているのでしょうか。

梅守「訪れる方も招く方もお互いはじめて接するので、どこまでのことならできるか毎回伺いながら、可能な限りトライできるようにしてます。体が不自由な方を担いでサウナに入ってもらったこともありますが、新しいことに挑戦する様子を見てご家族もとても喜んでくださいました。でも、実際そこまで特別なことをしているわけじゃないんです。
車椅子を押すことは技術が必要なのでできないけど、車椅子の周りにいっぱいある荷物を一緒に運ぶことはできるし、食のこだわりが強い場合は、メニューにはなくても作れる範囲で対応する。基本的にできる範囲のことしかしてなくて、ハード面を整えたりお金をかけずとも、いまあるスペックでできることがたくさんあるんです」

専門的な知識はなくても、一歩寄り添って考えるだけでできることは大幅に広がる。そのことに気づくだけでも十分に意味があると話します。
そうした日々の気づきを取り入れた研修プログラムは、現在もブラッシュアップ中なのだそう。HAJIMARIのメンバーとして活動する桂三恵さんは、研修を通しての課題を話してくださいました。

「さまざまな企業の方に研修を行う中で、伝え方がとても難しいと感じていて、一歩間違えると『そうは言っても自分たちにはできない』『何かあったら責任が持てない』と捉えられてしまいます。
自分が知らない障がいがある方への接客は不安もあると思いますし、知るほどにリスクも感じてしまう気持ちはわかるのですが…ただ知らないからと言って遮断するのも違うかもと感じていて…。
障がいに関係なく、お客さんからの要望に対してこれはできる・できないといった判断軸はどんな施設にもあるはずで、それに沿って対応することと同じなんです。病気や障がいがある人には優しくしないといけないという漠然とした固定概念も却って考えを狭めているような気がしていて。そうした考え方や不安を私たちの研修で取り払えると、できることが広がるんじゃないかと思っています」

●旅の楽しさを諦めてほしくない

日々宿を運営しながら、未来を変えるべく取り組み続ける梅守さんたち。そのまっすぐな想いには、ご自身の経験が根幹にあると話します。

梅守「私は四人姉妹の三女で、一番上の姉が後天的な重度の精神疾患があるんです。姉は短大を卒業して働いていましたが、ある日突然精神的に不安定になり、2、3歳ぐらいの知能にまで落ちました。またその2年後には妹が白血病を患い、無菌室の外から見守ることしかできなくなったんです。
そこからレストランに行ったり見たことがない景色を見に行ったり、家族みんなで何か同じ経験をすることは、私たちにとっては今後一度あるかないかという遠いものになりました。…というよりも、それは選択できるはずがなく、選択してもいいということさえ忘れてしまっていたんです。

どこか我慢して気持ちを閉じ込めたまましばらく日々が過ぎていったのですが、ある時自然の中でゆっくり過ごすことがあって、ふとそんな自分の心の状態に気が付いたんですね。自然や旅に出てその場に身を委ねることで、自分の気持ちだったり家族との関係を俯瞰して見直すというタイミングってあるんだなと思って。そこで、同じような気持ちを抱えている人にも心の状態を解消できるきっかけをつくりたいなと思いました」

HAJIMARIの取り組みを始めて2年が経つ現在も、お客さん一人一人とコミュニケーションを重ねながらその人にとっていい旅の時間を考えて提供しています。決まった正解はなく手探りの日々ですが、HAJIMARIを通して宿泊にきたお客さんからのあるメールが、梅守さんの目指すものに繋がっていると話します。

梅守「自閉症のお子さんとお父さんが宿泊に来てくださって、最初こそ不安そうにしていたのですが、少しずつ話してくれるようになり、最後は本当に楽しかったと言って帰ってくれました。その後お父さんからいただいたメールがとても心に残っていて、少し紹介させてもらいます。

“関わり方とかスタッフさんもよくわからないことがあったと思うんですけど、息子も大絶賛でした。当事者と家族が一番救われるのは、プロのテクニックではなくて、寄り添いやわかろうとしてくれるその気持ちです。同じ病気や障がいでも、人によって必要な配慮とか自分のやりたいことは全然違う。そのため、どんな人にも適用する魔法のテクニックはプロの現場でもありません。お客さんと一緒に手探りで対応策を決めて、楽しい時間を作っていくことと、お互いが無理せずにできることが一番いいんじゃないでしょうか”

私たちの取り組みは『福祉』というカテゴリーに括ることもできるかもしれませんが、福祉のことをやっている感覚はなくて。これこそ、私たちがこういう距離感でやっていけるといいなと目指していることなんです」

「ハード面で便利にしていけることはたくさんあるけど、そこを突き詰めると旅先にしかない魅力や楽しむ要素がどうしても減ってしまいます。お客さんがここに来て新しいことに挑戦したり積極的になれるのは、旅先で起こる発見やワクワクする感覚が損なわれていなかったから起こることだと思うので、『旅の楽しさを提供すること』は諦めずに大事にしていきたいです」

福祉サービスではなく、旅の時間をつくりたい。その想いが、HAJIMARIならではの体験につながっているのかもしれません。

●HAJIMARIが目指す景色

2年間で24組94名を招待し、今年また新たに12組程招く予定です。継続的に続けていく仕組みも検討されており、昨年は活動資金のクラウドファンディングを実施。今後は研修プログラムを広げながら、スポンサーを増やすことも考えているそうです。

梅守「『いつでも来てください!』と繰り返し発信しているうちに普通に予約してくださるようになって、この前は海外の観光客が一組、若いカップルが一組、車椅子の方のご家族が一組という組み合わせで。いろんなものを超えて同じ空間にいる感じがすごくよくって、私が見たかった景色がある!と思いました。
ただ、現状この取り組みが大事だと思っている人がまだまだいません。でも、誰しも何十年か経てば体の変化が起きるはずで、いまのように何も気にせずに旅ができるとは限らない。そう考えると障がいや病気がある方に向けた活動に見えるかもしれないですけど、本当は自分たちの未来を作るためにやってるんじゃないかなと思ってます」

●参加者のみなさんと対話実験

梅守さんと桂さんのお話は多くの気づきを与えてくれるとと同時に、大事な問いを置いていってくれました。ここからは参加者のみなさんと対話という形式で、そんな問いについて話を深めていきます。

「大変な話、難しい話で終わらせないためはどうするか」「障がいや病気でフィルタリングしない関わり方」「障害や病気のある人が身近にいない立場ができること」など、それぞれの経験や考えを通してゆっくりじっくりと言葉を重ねていきました。

さまざまな立場の参加者の言葉を受け取り、また自分の中で新たな言葉が湧き上がり、じんわりと熱を帯びていくその対話の場は、答えに向かっているわけではないけれど、確かな兆しに向かっているように感じられました。
1時間の対話を経て、改めて梅守さんと桂さんから感想をいただきました。

「言葉としては知っているけどわかっていなかったことがたくさんあるなと思っていて、例えば『自閉症』と言っても、感覚過敏の方も大きな声を出してしまう方もどちらも当てはまります。でも梅守さんを手伝うまで身近にいなかったので、漠然としたイメージしか持ってなかったことに気付かされました。

私自身、そこまで当事者意識があるとは言いづらくて苦しく感じることもあるのですが、たどり着いた考えがあって、『俺か、俺以外か』に尽きると思うんですよね。ローランドさんの言葉なんですけど(笑)
多様性ということでもなく、そもそもが違うというか。同じ障がいや病気でも、みんな違うし、嬉しいことも違うんですよね。というか一番身近な家族でさえ、お互いに根っこで考えてることを実は知らなくて、すれ違うこともあるじゃないですか。それくらい人のことは実はわからない。そういうスタンスで目の前の人に向き合って、都度理解していくと、当事者かどうかに関係なくすごくフラットに考えられるので、改めてそこはぶれないように活動していきたいです」

梅守「今日はもっといろんな人に取り組みを知ってもらいたくて、山奥から東京までやってきました。これまで活動してきた中で、人によってはすごく尊い取り組みという印象だけで終わってしまうこともあったのですが、いざみなさんの話を聞くと、自分たちが思っている以上のことを受け取ってくれてすごく感動しました。
先ほども言ったように私たちは福祉のことをやっている感覚はなくて、ただ単純にもっと楽しい未来の方がいいと思っていて。そのために、私たちが考えていることをどう伝えて、受け取ってくれた人がどう変わっていけるといいのかずっと難しく考えていたんです。でも答えは結構シンプルで、今日来てくださった皆さんが身近な人に伝えてくださったり、街で障がいのある人がいたらちょっとおおらかな目で見るとか、それくらいのことでも心の中に芽生えていたとしたら、素晴らしいし嬉しいと思いました」

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悩みながらもがきながら未来に向かうお二人の言葉は参加者にも深く届き、これからも折に触れて思い返すであろう大切な時間になりました。
そして、投げかけられた問いは一筋縄ではいかないものだとしても、自分一人がまずできることとして『俺か、俺以外か』の心持ちがあればいい。それがわかっているだけで未来につながる一歩を踏み出せる気がしました。

この日の話を、温度のある声として受け取ることと、画面上の文字として受け取ることで、言葉の届く深さは異なるかもしれませんが、この記事を通して少しでも多くの方に届き、何かの支えになることを願います。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI)

誰かと一緒に鑑賞するからこそたどり着く何かがある。写真家・白鳥建二さんとの美術鑑賞会|こんなだった、なんだかんだ5

「鑑賞」を辞書でひくと、『芸術作品について、自分の立場からそのよさを味わうこと』といったことが書かれています。「自分の立場から」とあるように、捉え方は一つではなく、自分の感じるままに楽しむことができる。それが作品鑑賞の醍醐味の一つと言えるでしょう。

味わい方はさまざまある中で、「全盲」という立場からアート鑑賞を行っているのが美術鑑賞者/写真家の白鳥建二さん。目を通して作品を見ることはできませんが、独自の鑑賞法を編み出し、日本全国の美術館をめぐっています。

一体どうやって、目が見えない中でアートを鑑賞するのでしょうか?
実際に白鳥さん独自の鑑賞法の体験と、そんな白鳥さんを追ったドキュメンタリー映画の鑑賞、そして参加者のみなさんとの対話を通して、そんな問いに迫りました。題して「なんだかんだ5 〜写真家・白鳥建二さんに会ってみたい!みんなで映画を観たあと、お話聞かせてください。〜」の開催です。

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●白鳥建二さんと、自由な会話で美術鑑賞

初めて美術館を訪れたきっかけは、恋人とのデートだったという白鳥さん。そのときの経験から「目が見えなくてもアートを楽しむことはできるのかもしれない」と思うようになり、あちこちの美術館を訪れていったそうです。そうしていつの間にか「自由な会話を使ったアート鑑賞」という独自の鑑賞法を編み出しました。
この「自由な会話を使ったアート鑑賞」とは一体どういったものなのか。白鳥さんをお招きして、鑑賞会を開いていただきました。

この日の会場である神田ポートビルでは、京都府亀岡市にある「みずのき美術館」の展覧会中ということで、その中からいくつかの作品を選んで鑑賞することに。参加者全員で一緒に作品を見て話し合いながら、じっくりと鑑賞するというのが白鳥さんのスタイルです。
何から話せばいいのだろう…という空気が漂う中、白鳥さんはこう話します。

「まずは作品を見て、色や形などすぐ言葉にできそうなものから話してみてください。慣れてきたら、連想したことや思い出したことなど、作品に関連することであればなんでも大丈夫です。
あと、僕は誰かが喋らないとどんな作品かわからないんですが、あまり僕のことは気にしないでくださいね。僕のための鑑賞会ではなくて、このメンバー全員で鑑賞するという時間にしたいんです。みんなの意見がまとまってもバラバラになってもなんでもOKなので、自由に喋ってもらいたいです」(白鳥さん)

白鳥さんの言葉に場がほぐれ、いざ鑑賞会へ。なんとなく目に留まった絵についてぽつりぽつりと話していきます。

「この作品は黄色いですね。オレンジでもないし、山吹色というのかな」
「とにかく抽象なんだけど、何かに見えなくもない」
「私は焼き魚を食べた後みたいな気がします」
「ああ…!茶色が皮で、白いのがちょっと残った身か」
「皮は食べない派だ」
「実は僕も同じように感じてたんですけど、昨日アジの開きを食べたからそう見えるのかなと思って躊躇してて(笑)」
「あはは!」(一同)
「みんなもそう見えてて安心しました」

「これは今日の絵の中で一番小さい」
「タイトルをつけるとしたら『真夜中の森のえのきだけ』」
(一同笑)
「植物的なものを感じますよね」
「これがワインのラベルだとしたらどんな味?」(ソムリエをされているという参加者に向けて)
「黒っぽいところが丘で…直線に区切られているのは畑ですね。白い塊が石灰石だとすると…そういった土地柄でも育つブドウはミネラル豊富で結構シリアスなワインな気がします。イタリア北東部の」
「なるほど〜すごい!(笑)」
「完全に見え方変わっちゃったよ。味がしてきたね」

1時間半たっぷり使って鑑賞したのは4作品。一つの作品を20分程かけてじっくり鑑賞していきました。そして再び輪になって白鳥さんと鑑賞会の振り返りへ。
参加者からはこんな声が飛び交いました。
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“「見る」ということが体感により近づいた感じがしました”
“絵には正解がなくて無限の可能性があるし、相手のことを想像しつつ自分のことも投影されていく感覚があって面白かったです”
“作品だけでなく、作品について話すその人に対しての関心も出てきました”
“このメンバーで時間をかけて鑑賞しないと得られない体験をした気がします。その場にある絵や人や居心地など、すべての要素が鑑賞に必要なことで、その場だからたどり着く何かがあるんだと感じました”
“専門家じゃなくても絵を見て感じたことを言ってもいいんだという安心感が心地よかったです”
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鑑賞会を経て、みなさんの感想もどこか饒舌に。そんな様子に白鳥さんは「ふふふ」と微笑みながら耳を傾けます。鑑賞中も、みなさんの会話を楽しんでいる様子が印象的でしたが、白鳥さんの頭の中には会話からどのような絵が見えていたのでしょうか。

「僕の場合、みなさんの話を聞いてイメージを頭の中に描くことをゴールにしてないんです。時にはイメージが浮かぶこともありますが、今日だと言葉の方が印象として強く残っています。
鑑賞会時は基本的に音で情報収集してるんですが、それは発せられた言葉だけではなく、参加者が作品とどれくらい距離をもって見ているのか、 作品の周りをどのように移動してるのかなど、足音だったりちょっとした物音も含めて情報として得ています」(白鳥さん)

人と一緒にいるということも含めて絵を見てるという白鳥さん。それは20年以上鑑賞会を続けていく中で見つけた面白さだそうです。

「最近気づいたのは、ゴールや答えを決めないことがこの鑑賞会を続ける中で一番飽きないところかなと思っています。僕は誰かが楽しんでいるのを見るのが好きで、みんなが盛り上がってくると僕も盛り上がってくるので(笑) そんな感じで楽しんでるんです」(白鳥さん)

アート業界には「対話型鑑賞」と呼ばれるメソッドがありますが、白鳥さんの鑑賞会には決まったメソッドがあるわけではなく、その場に集まった人とその場の空気を楽しむことを一番大事にしているそうです。
とにかくその場のあらゆるものを受け入れて楽しむこと。白鳥さんの様子に感化されるように、この日の鑑賞会も得も言われぬ一体感があり、終始あたたかな空気に包まれていました。

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●映画を鑑賞してオープンダイアローグ

美術作品の鑑賞会の後は、ドキュメンタリー映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』の上映会へ。白鳥さんの「全盲の美術鑑賞者」としての20年を振り返りながら、美術鑑賞の様子から、普段の生活、周りの人々との交流を記録したドキュメンタリー映画です。

約100分の映画をじっくり観た後、感想が湧き上がるままに白鳥さんを交えたトークの時間へと移ります。

50人近い参加者同士で映画の感想を共有し合い、白鳥さんに感じたことや疑問を投げかけていきました。

参加者① 私は普段美術を教える立場にいますが、作品の説明を求められても正直わからないことってあるんです。でも、本来美術鑑賞はフラットな関係をつくることができるものなんだと気付かされ、対等になれることが面白さだなと感じました。

白鳥 美術作品って「わかった」と言ってしまえばそれで終わりとすることもできると思うんです。でも、20年以上鑑賞会をやっていると、美術好きの人から慣れてない人までいろんな人の鑑賞があって飽きないんですよね。なので、答えを求めずに話す方がいいんじゃないかという気がします。

参加者② 映画を観て、白鳥さんの生き様というか力強さを感じました。はみ出して生きようみたいな姿勢が生まれたのはいつ頃でしょうか?

白鳥 特に「はみ出そう」とは思ってはいないのですが(笑) 天邪鬼だという自覚はしていて、カテゴライズで決めつけられたくない思いはあります。
そのきっかけというわけでないですが覚えていることだと、子供の頃に祖母から『目が見えないから頑張れ。見える人の何倍も頑張らなきゃいけない』と言われたことがあって。そのときに、『見えないから苦労する』という感覚が理解できなかったんです。幼かったのでまだ経験も知識もないし、言葉の意味はわかるけど『本当に?』って思ったんですよ。そこから「目が見えない=苦労する」と決めつけられるのが嫌で、天邪鬼な感覚になっていったのかもしれません。

参加者③ 映画の中で写真活動をされている様子がありましたが、シャッターを切るタイミングはどのように決めていますか?

白鳥 写真は2005年から撮り始めていて、最初は車のエンジン音とか、人の足音とか、お店から聞こえてくる音楽とか、音がする方にカメラを向けてボタンを押すことをルールとしていました。いまは歩くリズムだったり熱を感じる方だったりとルールが増えていて、もうほとんど意識せずに撮り続けています。ただ、歩きながら撮るということはずっと変わらないですね。あとは気分が乗らないときは撮りません(笑)

参加者④ 白鳥さんは相手に話をさせるのが上手で、もっと来い!と言われてるような感じになります。何かテクニックがあるのでしょうか?

白鳥 元々自分から喋るのが苦手で、相手の話に乗った方が面白いんですよね。だからどんなことに興味があるか、何が好きなのかを質問して、それをいかにもわかってる感じで聞いていくんです。全然知らないことでも。そうするとどんどん喜んで話してくれる。鑑賞会もそういったところがあって病みつきになってます(笑)

そんな白鳥さんにすっかり乗せられてしまった参加者のみなさんからは時間ギリギリまで質問が飛び交い、トークが尽きることはありませんでした。
アフタートークの後のフリータイムには、ナチュールワインを楽しめる「響くワイン」も開催され、お酒好きの白鳥さんとワインを飲み交わしながら残りの時間までたっぷりと楽しみました。

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この作品は何たるものか、お互いが何を考えているのか、いろいろなことを探りつつも、ゴールを決めずに漂うように言葉を投げかけてみる。
白鳥さんとの鑑賞は、作品を見れば見るほど、話せば話すほど、新しい視点や感情が開かれていくようなひと時でした。

考え抜かれた発言も、脱線するようなジョークも、「ふふふ」という微笑みも、すべてが居心地に繋がっていることに気づくと、その場が途端に大事なものに思えてきます。白鳥さんとの鑑賞会にはまさにそうした感覚があり、なんだかんだが目指すべき心地よさがありました。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI)

車いすの高校生・佐野夢果さんが繰り広げるアイデアの裏側|こんなだった、なんだかんだ4 【後編】

『もっと日常的に、障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所がなくてはならない』
静岡県掛川市にある駄菓子屋「横さんち」は、そうした思いから生まれた場所。さまざまな障がいを持つスタッフたちで日々お店を運営しています。

神田から遠く離れたところにありますが、これまでの路上実験イベント「なんだかんだ」にもはるばる参加してくださっている横さんち。
改めてその取り組みをじっくり聞き、そして多くの人に知ってもらいたい!ということで、運営サポートをしている池島麻三子さんとボランティアスタッフとして通う高校生の佐野夢果さんをゲストにお招きし、たっぷりとお話を伺いました。

前編はこちら

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●神田と夢果ちゃんの出会いと、車いす夢のデリバリー

続いて二人目のゲストは佐野夢果さん(以下、夢果ちゃん)。幼少期から車いす生活を送っており、横さんちにはボランティアスタッフとして参加している高校3年生です。高校に通う傍ら、障がい当事者の立場からイベント企画や執筆などさまざまな活動を行っており、ここ神田でも夢果ちゃんのアイデアによる車いす体験スタンプラリー「車いす夢のデリバリー 〜困っている人を助けよう!〜」を開催しました。

ここで「車いす夢のデリバリー」のあらすじを簡単にご紹介。
参加者はZKNEats(ズキン・イーツ)の新人配達員となって、車いすに乗って配達物の調達から届けるまでのミッションに取り組みます。しかし、ミッションを遂行すべくいざ街に繰り出すと、お腹を空かせた河童、寒さに耐えるストリートミュージシャンなど、困っている人たちがそこかしこに。少し変わった困りごとですが、何に困っているんだろう?助けが必要?自分にできることはある?など様子を伺いながら、自分なりの方法で人助けをしながらデリバリーをしていく、という二重の構想になっています。
困りごとを抱える人たちはプロの役者の方に演じてもらい、車いすは千代田区や近くの学校から借りるなど、さまざまな協力を得てこの壮大な企画は実現しました。

「この企画では、街中で車いすに乗るという体験とともに、困っている人と出会って、少し立ち止まって考えるという機会を作りたかったんです。あえてテーマを一つに限定しないことで、思いがけない発見や気づきが生まれる空間にしたいと思ってこの企画を考えました。

イベントが始まる前も、こちらからは深く説明せずにフラットに参加してもらったのですが、終わってから参加者の方がたくさんの気づきを教えてくれてました。いろいろな視点の感想をもらえて嬉しかったですし、それを多くの人の前で安心して伝えられる環境にできたこともひっくるめてとても素敵な場になったなと思いました」(夢果ちゃん)

車いすに乗って当事者の立場を知ることも大事な体験ですが、困っている人に対してどう振る舞えば良いか知ることはその後の生活に持ち帰って活かせる体験です。得られた気づきをイベント限りのものにせず、私たちがこれから生きていく中で大事なまなざしや気遣いを教えてくれました。

●考えていることを楽しく伝える、アイデアの源泉

何段階もの発見があるスタンプラリー企画は大盛況。高校生ながらにこの複雑な企画を生み出した夢果ちゃんは普段何を考えて、活動につなげているのでしょうか。

「社会で生きている中で日々感じたことが源泉にあると思います。特に一人で出かけると多くのことを感じるんです。自販機のボタンが届かなかったり、届いたとしても買ったものを出せなかったり、 エレベーターのは乗るときはボタンを押せても、乗ったら階数のボタンが押せなくて閉じ込められたり。私の生きてる世界は、マリオみたいに何回もゲームオーバーになるんですよ。
そんなサバイバルな世界で過ごしているので大変と言えば大変なんですけど、「つらいね」「かわいそうだね」ということではなく、そうした現状を楽しい方法で伝えていきたいんです。

おにぎりもチョコレートとかちょっとユーモアを混ぜて出せば、より印象深くなるというか。ストレートにぶつけても一定のところまでしか届かないけど、少し変化球で投げかけてみると受け手の印象とか社会への浸透度が変わってくると思うんです。そういった意味で、どう伝えようか、どう楽しい形に変換していこうかなっていうことは常に考えてることだったりしますね」(夢果ちゃん)

スタンプラリー企画も、デリバリーというキャッチーな設定や、困りごとを抱える人たちも個性的なキャラクターばかりで参加者が純粋に楽しむ様子が印象的でした。
そしてさらりと話してくれましたが、それをしっかり楽しませる形にできるのは夢果ちゃんの表現力があってこそ。そんなアイデアあふれる夢果ちゃんの今後の夢について伺ってみました。

「ちょっと語弊があるかもしれませんが、私は特段『頑張りたい』とは思ってなくて。私が頑張らずにいることにも価値があるんじゃないかな、なんて思ったりするんです。
だから、普段感じてることも、さっき言ったようになるべく楽しい方法で伝えていきたいんです。 その手段や方法、一緒に作る人の選択肢はいろいろあると思うので、これから大学で学びながら自分の視野をもっと広げたいですね。楽しいことはこれからも続けつつ、社会にさまざまな変革を起こすような空間をつくれる人になりたいななんて思ったり…思ってなかったりしています(笑)」(夢果ちゃん)

●オープンダイアローグ
わき上がる自分の言葉に耳を傾ける

池島さんと夢果ちゃんのお話をじっくり聞いた後は、参加者のみなさんとの対話の時間へ。
お二人から受け取った言葉を振り返りながら、参加者同士で対話を行い、自分の中に湧き上がってくる気づきや思いにじっと耳を傾けます。

静かにトークを聞いていた参加者も、ぽつりぽつりと話していくうちに言葉が溢れ、トークが止まりません。
なんだかんだのクリエイティブディレクターであり、この日のモデレーターの池田さんはみなさんの対話の様子を受けてこう話しました。

「今日お二人のお話を聞いて、これからの福祉をどう考えようとか、障がいという言い方はちょっと違うよなとか、みなさんいろんなこと考えてると思うんです。そうしたことを安心して共有し合える場が必要だと思って、最後に対話の時間を設けてみました。戸惑いもあったかもしれませんが、いろんなことに気づけてちょっと楽になりますよね。この『楽になる』という時間をこれからもつくっていきたいと思います」(池田さん)

対話に参加した池島さんと夢果ちゃんも、みなさんとの対話を通じて感想をくださいました。

「一回立ち止まって誰かと話す場ってすごく少ないと思うんですよ。今日のように留まって考えることができたり、ゆっくり話していいんだよって受け入れてくれる場がもっとあれば、生きづらさなんかももうちょっと軽減するのかなって思いました」(夢果ちゃん)

「みなさんが話してくださったように、夢果ちゃんの考えや視点ってすごいなという感覚は自分にもあるんですけど、夢果ちゃんとは素直に一緒に過ごす時間が楽しいんです。だから活動をともにする中で大変なことに直面していっぱい考えることもあるんですけど、一緒に楽しむということを第一にしていきたいですね」(池島さん)

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それぞれの立場から、生活する中での疑問や問題への向き合い方のヒントを投げかけてくれたお二人。
さまざまなことに直面しながらも、楽しさを大事にして取り組む姿勢がとても印象的で、参加されているみなさんもお二人の様子に刺激をもらっているようでした。

この日の気づきや感想はそれぞれ持ち帰って、考えを深めたり誰かと話したりしながら、少しずつ考えの輪が広がっていくことを願います。そしてなんだかんだも、こうした寄り添い合える場になるように、引き続きいろいろな方と活動を広げていきます。

Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI)

障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所。「駄菓子屋 横さんち」の話|こんなだった、なんだかんだ4 【前編】

『もっと日常的に、障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所がなくてはならない』
静岡県掛川市にある駄菓子屋「横さんち」は、そうした思いから生まれた場所。さまざまな障がいを持つスタッフたちで日々お店を運営しています。

神田から遠く離れたところにありますが、これまでの路上実験イベント「なんだかんだ」にもはるばる参加してくださっている横さんち。
改めてその取り組みをじっくり聞き、そして多くの人に知ってもらいたい!ということで、運営サポートをしている池島麻三子さんとボランティアスタッフとして通う高校生の佐野夢果さんをゲストにお招きし、たっぷりとお話を伺いました。
題して、「なんだかんだ4 〜駄菓子屋横さんちの取り組みとそこに通う夢果ちゃんの願いとかいろいろ聞いてみようか〜」の開催です。

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ドキュメンタリードラマはこちら▼
(YouTubeにリンクします)

企画:池田晶紀 監督:菊池健太郎

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春の訪れを感じる暖かな陽気の3月16日。畳を敷き詰めた神田ポートビルの会場に30名近くのお客さんが集まり、ゆるやかにスタートしました。

●駄菓子屋 横さんちのきっかけとは?

はじめに、駄菓子屋「横さんち」の運営サポートをしている池島麻三子さんから、取り組みを紹介いただきました。
店長である横山さんの愛称が店名の由来である横さんち。元々は企業に勤めていた横山さんですが、ある経験がお店をつくるきっかけとなったそうです。

「幼少期から車いす生活を送っている横山さんですが、釣りやスキー、飲み会などどこへでも出かけるパワフルな人なんです。そんな横山さんは、企業に勤める傍ら、障がいへの理解を深めるために学校で講演をしたり、車いす体験会を開いたりと福祉教育の活動をされていました。しかし、そうした機会はせいぜい年に一度、人によっては一生に一度しかないようなもので、それだけでは伝え切ることができません。そこから『もっと日常的に、障がいのある人とない人がごちゃ混ぜになれる場所がなくてはいけない』と考えるようになり、駄菓子屋『横さんち』の誕生につながっていったんです」(池島さん)

運営サポートをしている池島麻三子さん

そんな横さんちの店舗は、車いすユーザー向けに空間設計がなされており、スタッフはさまざまな障がいのある方、後期高齢者の方、障がいはないものの生きづらさを抱える方などがそれぞれできることを発揮して働いています。

「例えば、キラキラなビーズが好きなスタッフの服部くんは、アクセサリーを作るワークショップを毎週開いています。参加するのは小学校高学年の悩み多き年頃の子たちなんですけど、服部くんは受け止め上手なのでアクセサリーを作りながらお悩み相談をしていて信頼が厚いんです。

横さんちで働く人には、なるべく個々の得意なことに合わせたお仕事をお願いしたいと思っていますが、それを見つけるのもそう簡単にはいかなくて。服部くんもいろいろな仕事をしてもらいつつも、長い間お互いにこれだ!と思えるものが見つけられなかったんです。
横さんちのコンセプトは『障がいのある人がいきいきと働く』なので、社内会議でもその仕事はその人がいきいきしているかどうかということが論点に必ず挙がってくるんですが、ビーズのワークショップを始めてから、服部くんは楽しそうで私たちも嬉しいんです」(池島さん)

●働く人も訪れる人も補い合うことは当たり前

それぞれの得意を仕事として活かすことができる横さんちですが、得意ではないことは補い合いながら働いています。補うのはスタッフ同士だけではないそうです。

「レジに時間がかかってよく行列ができるんですが、お客さんが商品のスキャンや袋詰めを自然と手伝ってくれるんです。ここを利用するお客さんの間には、補い合うことは当たり前という感覚があっていいなと思っています。手伝ってくれるのは子どもたちが本当に多くて、手伝ううちに違う学校の子同士で仲良くなったりと交流の場にもなっていますね」(池島さん)

働く人も訪れる人も自然に関わり合うことができ、街に開かれた場所として親しまれている横さんち。
肩肘張らない「駄菓子屋」という場の力も絶妙に関係しているように感じますが、いまの時代にはなかなかめずらしい形態です。実は、運営会社による一事業という側面もあります。

「『横さんち』の形態は、ITエンジニアの人材派遣会社が運営会社となっていて、そこの一事業として取り組んでいます。そのため、ここで働いているスタッフは“社員”という扱いで、いわゆる一般就労になります。
きっかけとしては運営会社の規模拡大に応じて障がい者雇用をすることになったものの、エンジニア向けの会社なので新たな仕事やポジションを考える必要があったんです。ただ、当初から見えないところで単純作業をするだけではなく、いきいきと働ける職場をつくろうという思いがありました。そこを出発点に生まれたのが、駄菓子屋というアイデアなんです。
いまの時代、駄菓子屋という形態のみで利益を出すことは難しいですが、その代わりに地域に開いた福祉や教育の場になったり、子どもたちの居場所となるように取り組むことが事業の役割になっています。地域に貢献するお仕事としてみなさん働いていますね」(池島さん)

この日は「駄菓子屋 横さんち」が神田ポートに出張出店してくださり、
お子さんはもちろん大人も「懐かしい!」と目を輝かせていました。

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横さんちの様子を思い浮かべながらじっくりお話を聞いていると
すっかりお店のみなさんに会いにいきたい気持ちに。
この日も出張で駄菓子屋さんを開いてくれましたが
駄菓子を囲むとあっという間に距離が縮まるようでした。

続いては、そんな横さんちに通いながら自らさまざまな活動を行う
高校生の佐野夢果さんにお話を伺っていきます。

後編へ続く

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