いざという時の心に寄りそう防災のかたち|こんなだった、なんだかんだ11
「備えあれば憂いなし」と言いますが、災害という非常事態においては、どれほど備えがあっても、憂いを完全になくすことは難しいものです。だからこそ、憂いをなくすのではなく、安心や落ち着きをもたらす。そんな備えも必要かもしれません。
今年も9月1日の「防災の日」にあわせて開催したなんだかんだ。今回は、食や道具といった物理的な備えに加えて、災害時には「心の備え」も大切であることに目を向け、不安な気持ちをほぐす工夫やアイデアが集まりました。
さまざまな団体、作家、学生のみなさんと協力しながら、お互いの知恵やアイデアを持ち寄り、安心や心強さが広がっていく場となりました。
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会場はお馴染みの神田ポートビル。路上に畳を敷き、屋内外がゆるやかにつながる空間の中で、来場者は思い思いに立ち止まり、体験し、語り合いました。


●在宅避難時の強い味方!パッククッキング
共立女子大学 食物栄養学科 山田ゼミ


会場入口の調理コーナーでは、共立女子大・食物栄養学科の学生による「パッククッキング」を実演紹介。在宅避難時でも可能な調理方法のアイデアをレクチャーしてくれました。
この日つくられたのはシーフードカレー。使用するのはすべて常温保存が可能な食材で、調理器具は使わず、ビニール袋で材料を混ぜて湯煎するだけですが、あさりや鯖缶を使うことで、避難食のイメージを覆す贅沢な味わいに。



こうした制約の中でも、一工夫すればおいしい食事をつくれることは嬉しい発見です。
栄養が偏ると心の調子も乱れてしまうので、避難時だからこそしっかりした食事を摂るアイデアを備えておくことの大切さを実感しました。
●いざという時に寄り添い、役立つ大事な友達
子どものための防災グッズ わらべぇ


調理コーナーの隣には、ちゃぶ台の上に3色のぬいぐるみが並びます。これは、女子美術大学短期大学部プロダクト研究生の礒邊未彩さんが考案した、子どものための防災グッズ「わらべぇ」です。
普段は一緒に遊べるぬいぐるみですが、お腹を押すと暗い場所で安心できるライトになったり、頭部のポーチに防災グッズやお気に入りの小物を入れられたりと、非常時の機能性も兼ね備えています。
さらに腕に巻きつけることもでき、両手を自由にしたまま持ち歩けるのも心強いポイント。
なによりほんのり微笑むわらべぇの姿がとてもチャーミングで、心細い気持ちにやさしく寄り添ってくれる気がしました。
●避難生活の心をほぐす、HEART MEET
共立女子大学 建築・デザイン学科 藤本ゼミ


神田ポート内の畳や壁には、手のひらサイズの小さな人形たちがずらりと並びます。
これらはすべて、手芸用のモールでつくられたもの。ハサミやのりは使わず、モールを折り曲げてビーズなどを刺すだけで、なんとも愛くるしい人形をつくることができます。
つくり方はとてもシンプルですが、モールの色や長さやパーツの配置などちょっとした調整で表情が大きく変わり、自分の好みにこだわることができるのも魅力。





没頭していくうちに、隣の人と見せ合ったり、アイデアを交換したり、自然と会話が生まれていきます。
このHEART MEETは、人形をつくるワークショップであると同時に、「誰かと一緒に人形をつくる」ことを通して、災害発生後の避難生活で生まれる不安やストレスに寄り添い、少しでも心を楽にすることを一緒に考える場でもあります。
人形をつくりながら何気ない会話を交わすその時間そのものが、心をほぐす力を持っているようでした。
●日常から非常時にも役立つ、ひも1本の驚くべきパワー
TOTONOL

外の畳に出ると、何やら身体にひもを巻き付ける人たちの姿が。リストラティブヨガのマイスター・TOTONOLさんによる「ひもトレ」講座では、身近にある丸ひもを身体に巻くだけで起こる変化を体験しました。巻き方次第で、肩や腰の不調が楽になったり、歩きやすくなったり、眠りやすくなったりとその効果はさまざま。
災害時は環境の変化で体調を崩しがちだからこそ、自分を整える術を知っておくことが大切です。
ほかにも、重いリュックを背負う際にひもを巻くことで、荷重が安定し、負担が軽減されるという実践的な知恵も。なにより、「ひもを巻くだけ」という手軽さは、非常時にもすぐ活かせるので備えておく知恵としてぴったり。

●知恵や知識を振り返ることも、大事な防災
昨年に続いて参加してくださった方も多く集まりました。
一度学んだことでも、時間が経てば記憶は薄れてしまうもの。年に一度、振り返る機会を持つことも大事な備えです。



星野諭(かーびー)さんによる「あそぼうさい 〜都市サバイバル編!身近なモノで生き残れ〜」。




厳選されたおいしい保存食を揃えたセットで楽しく備えることも大事。


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畳に集まってそれぞれの知恵を交わし、試し、話し合う。
「あの人から教えてもらった」という記憶は、その知識をより確かなものにし、いざという時の心強さにつながるように感じられました。
災害は、一人ではどうにもならないことが多いからこそ、周囲と知恵やアイデアを共有し、広げていくことが大切です。備えは自分を守るだけでなく、誰かを支える力にもなり得る。そんな防災の可能性を改めて感じる一日でした。