#3「写真+リズム」|写真家・白鳥建二さんと、リズミカルな神田の街歩き。【中編】
「〇〇のおともに」をテーマに、あるものとあるものをたし算することで広がる神田のたのしみ方を、その道のプロフェッショナルをお迎えして紹介する「おともにどうぞ」。
第三回のゲストには、美術鑑賞者・写真家の白鳥建二さんをお迎えし、写真を撮りながら神田の街歩きへ。全盲という立場から、独自の方法で美術鑑賞や写真活動を行う白鳥さんと一緒に歩いてみると、あらたな街の感じ方がありました。
今回は、街歩きに同行したオープンカンダのクリエイティブディレクター・池田晶紀さんがレポートをお届けします。
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白鳥さんの撮影に同行し、街を歩きまわった2日間。一緒に歩き、撮った写真を鑑賞することで気付いたことがたくさんありました。
展覧会の後日、そんな興奮を白鳥さんにお話しするとまたすごいお話が聞けたんです。
「どこを歩くにしても、歩けば歩くほど自分の気分が乗ってくる感覚があります。歩き始めてから10分よりも40〜50分経った方が、足取りや気分が乗ってきて情報収集能力も上がるんです。だから、ある程度時間かけて歩き続けた方が、いろんなことに気付けるんじゃないかなと思います。
例えば、壁や床に触れることでその感触を知ることができるけど、じっと手を置いているだけだと最初の刺激に慣れてきてだんだん何も感じなくなっていくんですよ。でも手を動かしてみると、ここはざらざらしていてこっちはひんやりしてるな、と新たに気付くことができる。『動く』ということは、何かに気付くきっかけとして必要なことだなと思います」(白鳥さん)

本当にその通りですね。実際に1日5時間近く歩き続けたわけですが、へとへとになりながらもいろんなことにたっぷり気付いた街歩きになりました。
ここからは、みなさんも真似して歩けるように、行って楽しかったりおいしかったスポットや、印象的だったことをレポートしていきたいと思います。
まず、一日目は皇居に行ったり、神田駅周辺でご飯食べたり、東京駅まで歩くコースです。

神田ポートからスタートして皇居方面(竹橋駅方面)へ数分歩くと、高速道路の下には大きな川が見えてきます。ここの歴史を感じるでかい石組みが見事な迫力なんです!



石組みに触るために近づいてみると、さらにでかさを感じます。よく見ると無骨な石がごろごろと絶妙なバランスを保っていてなんとも妙技。
また少し歩いて、平川門という皇居へ続く橋へ。 遠くからでも絵になる、江戸時代への入り口のような美しさ! 橋を渡っていざ皇居に入ります。


皇居内は、まさに森! 森林浴にぴったりな、季節の植物が彩りを見せています。


江戸城跡地となる高台と、でっかい芝生の広場と、全てが開放的でデザインされた空間設計は、本当に素晴らしい楽園です。








観光客が行き交う開けた砂利道をぐんぐん歩いたり、緑が茂る森に入ったり、いろんなところを歩いてみます。 またさらに大きな石組みに出会ったり、緑をよく見ると実がなっていたり、精細な石碑を見つけたり。いろんなスケールを感じることができました。
たっぷり歩き回ってまた外に出ると、皇居ランの人とすれ違い、歩くスピードも皇居内と外では変わっていきます。

さて、次は2024年12月いっぱいで惜しまれつつも、移築のため一度閉鎖となってしまった学士会館へ。


圧倒的な存在感を持った素敵な外観と、ディテールまでこだわった建築は、優雅でありながらも、心地良い空間です。



開放的な皇居とは変わって、厳かな空間をじっくり噛み締めていきます。
再び外に出ると、野球ボールとでかい手の彫刻が!
東京大学発祥の地でもある学士会館は、学問だけでなく、日本野球の発祥の地でもあったのだそう。どんな会議をして「よし、ここにこの大きな像をつくろう!」と決まったんだろう?と想像しただけでニヤニヤします。

で、お次は神保町を通りすぎて、神田駅周辺までゆっくり歩きます。

神田駅周辺の高架下は飲屋街で昭和の香りがプンプン! 何か美味いものでも食べようとやってきたのが、羊肉の串焼きで有名な中華料理屋の「味坊」。

ナチュラルワインもたくさん揃っていることでも有名で、この組み合わせが最高なんです。



すっかり食べ過ぎて、また歩きます。

最後に目指すは、東京駅。神田エリアからでも案外歩ける距離で、景色がガラッと変わっていく様がおもしろいんですよ。





東京って、空が狭いと思っていたけど、東京駅周辺は、空が広く、道も広い。そして、ここがゴールとなりました。

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「神田駅周辺はお店の外まではみ出して飲んでる人がいて、ああいうのは気分として盛り上がりますね。歩きづらいんだけど、何があるのかワクワクする。
一方、東京駅の方はオフィス街だから言ってみればつまんない場所なんだけど、歩くにはすごく快適で写真もたくさん撮ったかな。結婚式帰りの集団とすれ違ったのもこの街らしくていい光景でしたよね」(白鳥さん)
いわゆる名所的なところを多く歩きましたが、白鳥さんはちょっとしたシーンも振り返ります。
知っているようで案外知らなかった東京の景色。心地いい場所。目的もなくただ歩き、お腹が空いたら美味しいご飯が食べられる。こういう時間はなかなかつくれなかったけど、すごくいい!
なので、もう一回違うルートで白鳥さんと歩いてみようと思います。
その前にもう一つ、この日皇居を散歩してから学士会館に行った後、一度神田ポートに立ち寄ってビルの屋上で休憩した時のことを思い出しました。
それまでぼくが先導するカタチで歩いていたんですが、しばらく経っても白鳥さんはカメラを構えようとせず、一度もシャッターを押さないで歩いているように思えて、ピンときてないのか?一度立て直す必要があるのかな?と心配になり、休憩を入れたんです。
そこでぼくが「白鳥さん、写真…いつ撮ります?なにかリクエストがあれば言ってください」と伺ったら、「撮ってますよ!」と言われて本当にびっくりしました。

続けて白鳥さんが「前に池田さんがいるから写っちゃうけど、まぁいいか!と思って。言おうか迷ったんだけど言わないで歩くことにしたんです」と言い、さらに衝撃の事実。全く気が付かなかったんですが、あとで出来上がった写真を見ると、確かにむちゃくちゃぼくが写っていました。
その時にはじめて、白鳥さんがどう撮るのか、そして何かに反応してではなく歩くことで写真を撮り始めていたことを知ったんです。驚きのあまり腰を抜かしていると、そばで白鳥さんは大笑いしていました。

そんな驚きもあって本当に盛りだくさんの一日だったわけですが、まだまだ歩きます。
では、また〜!
Text: Masanori Ikeda(YUKAI)
Photo: Yuka Ikenoya(YUKAI)
Edit: Akane Hayashi