歴史が根付く場で生まれる、ドラマチックないい時間|こんなだった、なんだかんだ7【前編】
2024年7月19日から21日の三日間、「なんだかんだ7 〜ロードショー〜」を開催しました。
2023年から神田錦町を中心にスタートし、路上に畳を敷いて、いい時間といい出会いの場をつくってきた「なんだかんだ」。第7回目は、神保町での文化拠点の一つである岩波神保町ビルと、2025年1月で休館となる学士会館を会場に実施しました。
数々の物語を生み、多くの人の思い出が詰まった場所を舞台に行われる今回のスローガンは「なんだかんだと、街がドラマになる」。この地に根付く歴史と文化に触れながら、そこから生み出されるドラマチックな出会いや体験を楽しむ時間をお届けしました。
例によって、何が起きるかは当日集まる人たち次第。会場のあちこちで起きていくドラマを追いかけました。
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●なんだかんだ7は、特別なあの場所が舞台
今回の舞台は、路上ではなく岩波神保町ビルと学士会館。歴史ある場で一体何が起きるのでしょうか。期待を膨らませながらいざ現地に立つと、その場の雰囲気にどこか背筋が伸びます。
1967年に建設された岩波神保町ビル。10階には文化活動のためにつくられたホールがあり、映画の上映を中心に多くの方に親しまれていました。ホールは2022年をもって閉館となっていますが、この日は特別に使用できることに。
再開発のため2025年1月から一時休館となる学士会館。国の有形文化財に登録される建物は圧巻ですが、「なんだかんだ」の装飾も意外と馴染みます。
長くこの地で親しまれ、神田の大先輩である二つの建物。そんな場所で新たな取り組みが開催できるありがたみを感じつつ、ものすごく特別な日になりそうな予感がしてきます。
そして、まだ日は沈みそうにない夕暮れ時。交差点に面したステージにて、神田錦町にある正則学園高校ビッグバンド部の生演奏とともに、なんだかんだ7の開会式がスタート!
交差点に音色が響き渡り、道ゆく人も「かっこいいねぇ」と惚れ惚れ。区長や町会長からの挨拶も行われ、なんだかんだ7は華やかに開幕しました。
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●無骨な地下は、爆音と陽気さがよく行き届く
やついいちろう、清水みさと「地下だけど、なんだかんだ盆踊り」
岩波神保町ビルの会場は、イベントホールの他に地下にもあります。地下にはかつて二つの飲食店がありましたが、現在は跡地となっていてインダストリアルな空間に。そんな場所を使ってまず行われるのは、なんだかんだで恒例になりつつある、芸人のやついいちろうさんによるDJタイムです。
コンクリートに囲まれて静けさと物々しさのあった空間も、爆音が響けばダンスフロアに早変わり。女優の清水みさとさんもゲストに加わり、弾き語りや合いの手で湧かせてくれて異常な盛り上がりに!気持ちいい音楽と笑いで埋め尽くされていきます。
この飲食店跡地は神保町駅の地下通路に直結しているということもあり、愉快な雰囲気はじわじわと外へ。足早に帰路に向かう仕事帰りの方々にも爆音を届けていきます。
一時間たっぷり踊り、皆汗だくになったDJタイム。地下だけどふしぎと開放的で、爽快なひとときでした。
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●学士会館の凄さをあらゆる角度で浴びまくる
共立女子大学 建築・デザイン学科 藤本ゼミ、東京都市大学 都市生活学科 中島ゼミ、錦城学園写真部「学士会館って、だから凄いのか!」展
DJタイムが行われている隣では、学士会館の凄さに迫った展示の空間に。
1928年に建設され、100年近くの歴史を紡いできた学士会館。一目見ただけで圧倒されてしまう場所ですが、なぜこんなにも惹き込まれ、愛されているのでしょうか?そんな問いに対し、学生がさまざまな観点から研究しました。
研究に参加したのは、共立女子大学 建築・デザイン学科の藤本ゼミ、東京都市大学 都市生活学科の中島ゼミ、錦城学園の写真部の皆さん。共立女子大の学生は、建物の中で目に留まったものを観察してスケッチと言葉にし、東京都市大の学生は、学士会館に通う方々にインタビューを行い、人それぞれのエピソードをまとめました。錦城学園写真部は部員全員で撮影会を行い、数百枚にも及ぶ写真に収めました。
怒涛の写真とスケッチとテキストによって、学士会館の魅力を深いところまで味わえる展示は見応えたっぷり。展示を見ながらお客さんの感想も聞こえてきて、さらに魅力が溢れていきます。
どんな角度から見ても、学士会館って凄い!と再確認するとともに、岩波神保町ビルとの調和も楽しめる貴重な展示でした。
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●みんなで踊るって、なんでもできてこんなに気持ちいい!
篠崎芽美+青山健一+関根真理「ダンスワークショップ “chika〜chijou”」
2日目にはなんだかんだ常連のダンサー・振付師の篠崎芽美さんチームが地下空間に登場。
がらんとした飲食店跡地を広々と使って舞い踊ります。音楽家の関根真理さんのライブ感溢れる演奏も相まって、お客さんも次第に巻き込まれていき、大所帯の宴へ…。
皆さんの動きがしなやかになってきたところで、あたりは真っ暗に。ダンサーたちがライトを灯し、壁に大きな影が映し出されると、ペインター・映像作家の青山健一さんがゆらゆら動く影絵に呼応するようにダイナミックにペインティング!子供たちも加わり、絵は縦横無尽に広がっていきます。
気の向くままに何人もの人が一緒に筆を走らせると、次第に一体感に包まれていきます。たっぷり描き込んだところで地下でのパフォーマンスは終了!そして会場は地下を飛び出し、地上10階のイベントホールへと移ります。
ホールをぐるぐるダンスしながら練り歩き、大人も子供もステージへ。芽美さんから「明日やりたいことは何?」と問いかけられ、「ポケモンカード!」「アイスを食べる!」「模型を作る!」など答えが飛び交うと、なんとそこから踊りをつくり出していきます。
思わぬ展開に見ている側も釘付け。いつもあの手この手で自由で楽しい時間を作り出してくれる篠崎芽美さんのダンスに、音楽とドローイングが加わって、さらに感動的で唯一無二の体験となりました。
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●猛暑でも絶やさないホスピタリティを浴びる
「飲食とサウナと、あそび場と」
岩波神保町ビルの外では、隣接する駐車場に食べたり遊んだりととのったり、さまざまな体験が集まりました。
次々に人が吸い込まれていく大型トラックは、モバイルサウナの「サウナフリーザー」です。サウナ室とアイスルームが併設されていて本格的。猛暑によって火照り切った体もアイスルームが爆速で冷やしてくれます。
サウナラボのマイスターがゲリラでウィスキングまでしてくれるという贅沢なおまけも。富良野の白樺の香りが漂います。
さらにサウナフリーザーの隣には、移動式あそび場や、神田ポートのご近所にある喫茶プペさんや廣瀬與兵衛商店さんの屋台も出店!容赦のない暑さでしたが、皆さん笑顔を絶やさずお客さんたちをもてなす様子に心あたたかな空気に溢れた空間でした。
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●絵本の世界を“体感”する
廣瀬弘子/サンプルパパ+竹下花音「食育講演会〜音楽と絵本の朗読会」
再びホールでは、食育インストラクター・廣瀬弘子さんによる食育講演会がスタート。心と体、そして人間性を育てていくことが目的である「食育」。健康だけでなくさまざまな面に影響があることを学んで、大人も日頃の食事を改めて見直したくなりました。
講演の最後は、絵本ソムリエのサンプルパパさんとチェリストの竹下花音さんも加わり、廣瀬さん作の絵本の読み聞かせ。臨場感のある朗読と美しいチェロの音色が絵本の世界へと誘います。
続く音楽と絵本の朗読会では、さらにいろいろな絵本を朗読してくれました。
文と絵に、耳からの情報も加わることで、一人で読むときには決して味わうことができない贅沢な体験に。絵本を読むというより、絵本の世界を体感するようなひとときでした。
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●自由であたらしい、ここだけのシェイクスピアの世界へ
カクシンハン「納涼!みんなでおどろう、みんなでうたおう、シェイクスピア夏祭り」
一日の締めくくりとなる演目は、劇団カクシンハンによるシェイクスピアを題材にした移動式演劇。屋外ステージ、ホール、地下空間に神出鬼没に現れては、その場を作品の世界へとあっという間に変えていきます。
作品の世界に入り込んだかのような近すぎる距離感に戸惑う間もなく、たまたま居合わせた大人も演劇に加わろうとする子供たちも自然に巻き込んでいきます。
クライマックスは学士会館へ移動して、ロミオとジュリエットを披露!ジュリエットの人数が多い気もしますが、お客さんも一緒に名台詞を叫んで最後は大団円。
歴史ある建物で名場面が観ることができ、ものすごい瞬間に立ち会ってしまったような忘れられないパフォーマンスでした!
Text/Edit: Akane Hayashi
Photo: Masanori Ikeda(YUKAI),
Yuka Ikenoya(YUKAI),
Satomi Ebine, Akiko Sugiyama,
Miyu Takaki, Mariko Hamano