なんでもアカデミック!|聖地であり、沼。カレーから見る神田の街

「学問の街」と呼ばれる神田。
それは大学や書店が多く集まっていることから来ていますが、学問という言葉が「知の体系」を意味するように、人々の学びへの熱量が絡み合ってきた街、とも言えます。

「なんでもアカデミック」は、そんな学びが深く根づくこの街で、多様な分野で活動する方々とあらゆるものをアカデミックに捉えて掘り下げていく企画です。

第一回目は、神田といえば学問よりもこの印象の方が濃いであろう「カレー」がテーマ。
ゲストには「神田カレーグランプリ」の発起人である中俣拓哉さんを迎え、神田と秋田を拠点に“学びのアップデート”に取り組むナビゲーターの丑田俊輔さんとともに、グルメな視点とは異なる角度で掘り下げていきます。
さあ、聖地であり沼でもあるカレーの街へ繰り出しましょう。

中俣拓哉さん

神田カレー街活性化委員会委員長/株式会社ロハスコミュニケーションズ代表。2006年、東京・神田でサプリメントや化粧品の企画製造販売会社を起業したのをキッカケに、神田の街づくりに関わるようになる。2011年秋に第1回神田カレーグランプリを企画・実施。加えて2014年より神田カレー街食べ歩きスタンプラリーを毎年開催している。今ではカレーの素晴らしさに魅了され、カレーの街としての神田を広めるとともに、日本文化としてのカレーを世界に発信していきたいと考えている。

丑田俊輔さん

神田錦町の公民連携まちづくり拠点「ちよだプラットフォームスクウェア」を運営。日本IBMを経て、新しい学びのクリエイティブ集団「ハバタク」を創業し、国内外を舞台に様々な教育事業を展開。2014年より秋田県五城目町在住。遊休施設を遊び場化する「ただのあそび場」、住民参加型の小学校建設や温泉再生、コミュニティプラットフォーム「Share Village」等を手掛ける。幼少期は頻繁に父に連れられて、神田神保町で書店とカレーを嗜んでいた。

〜〜〜〜〜〜〜

INDEX

STUDY1 カレーは社会のコモンズ
STUDY2 カレーから見る街の境界線
STUDY3 神田は趣味嗜好を掘り下げる街
余談 神田~飯田橋エリアの「カレー散歩」

●STUDY1 カレーは社会のコモンズ

神田カレーグランプリは2011年からスタートし、参加店舗は125店(※2022年度)にものぼります。IT企業が集積するシリコンバレーのように、神田はもはやカレー文化圏として先端的な場所とも言えるのではないでしょうか。

丑田 僕は神田の他に秋田にも拠点があるんですが、実はそこでまちのカレー好きを集めて古民家で食べる企画をやってるんです。神田の規模とはまったく異なりますが、カレーはおじいちゃん、おばあちゃんから子ども達まで垣根なくつながることができるプラットフォームだなと感じます。
神田カレーグランプリも「カレー」というコンテンツだからこそのパワーが働いていると思うのですが、中俣さんがカレーを中心に企画しようと思ったきっかけには何があったんですか?

中俣 私はもちろんカレーが好きです。けれど、カレーマニアだからイベントを立ち上げようとしたわけではないんですよ。
元々は15、6年前に起業したばかりの頃、たまたま神田の活性化の仕事に関わることになり、B級グルメとカレーを掛け合わせたイベントを企画したんです。ところがお客さんの反応はカレーにばかり集中していて。そんなにみんなカレーが好きなら、いっそカレーだけを集めた企画をしようと思ったんです。

丑田 カレー縛りとはいえ、参加している店舗はかなり幅広いですよね。

中俣 最初の3年くらいは20店舗集めるのもやっとでしたが、いまでは120店以上に増えました。独立店や専門店だけでなく、チェーン店やおそば屋さんもいますね。「美味しいカレーを食べてもらおう」という思いがあれば、どんなジャンルのお店でもOKというスタンスです。

丑田 その寛容さってすごく重要ですよね。思いがあれば何でも誰でもOKという枠の広さによって巻き込まれる人もいるでしょうし、なんだか神田カレーグランプリの求心力が見えた気がします。
あと、神田だけでなく、下北沢・十条・金沢・横須賀など、さまざまな地域でカレーで街を活性化する取り組みが広がっていますよね。

中俣 そうですね。このイベントの良いところは、似たことをしていても競合にならないんですよ。

丑田 おお、なるほど…!

中俣 積極的に真似してくださいと言っているくらいです。下北沢が盛り上がっているからといって、神田が下火になることはないんです。むしろ各地と連携を取れるところがすごくいいなと思いますね。

丑田 いまのお話、カレーとアカデミックというテーマにすごく繋がる気がします。
神田は「学問の街」と言われているように、大学が多くあって、全国から人が集まって、学んで、交流して、また散っていく、というのを繰り返してきたアカデミックな土壌がありますが、神田で育まれた知が広まっていく様子が神田カレーグランプリの動きとすごく似ていますよね。

基本的に教育機関で研究されたことはオープンソースとなって、社会のコモンズとなりますが、カレーグランプリの仕組みもまさにそれだなと。
ベースとなる取り組みをリスペクトしつつ、それぞれ自由に使って盛り上げていこう、というスタンスってとてもアカデミックですよね。
思いがけずテーマに着地できました(笑)

●STUDY2 カレーから見る街の境界線

そんな神田カレーグランプリが展開するスタンプラリーの地図を見ると、まず気になるのはその範囲。店舗の数はさることながら非常に広範囲です。確かに神田は広いけれど、明らかにそれ以上に広いのでは…?

(神田カレー街食べ歩きスタンプラリー MAP)

中俣 エリアについてはよくご指摘を受けます(笑)ただ、イベントの目的は街を盛り上げること。神田で一番を決めることではないんです。なので旧神田エリアを中心に、神田から少し離れたお店も加盟しているんです。

丑田 日本橋や飯田橋まで入ってますもんね。

中俣 実際に参加する人は『神田はここからここまでだ』と細かくエリアを意識しませんし、厳密に線引きをしても誰が得するわけでもありません。それよりも美味しいカレー屋さんを知ることができればwin-winだと考えています。

丑田 確かにそうですね。日本のカレーはいろいろなジャンルがあって、世界一自由なスタイルだと思うんです。さまざまな文化をミックスさせて良い塩梅を探す独自の島国での進化をしていて、ルールもありません。
そういうカレーが持つ自由さや自然発生的に何かが生まれるところが、このイベントのあり方に繋がっている気がしますね。カレーグランプリを通して神田を見ると、自由でいいなあと思います。

●STUDY3 神田は趣味嗜好を掘り下げる街

ここまでカレーの自由さが街を盛り上げる機能として大いに影響していることが見えてきました。ところでなぜ、神田という街にここまでカレー文化が根付いているのでしょうか。

中俣 神田の特性とカレーがマッチしているのだと思いますね。古本・スポーツ・楽器や、秋葉原方面まで足を伸ばすとアニメ・マンガなどの文化も混在するこのエリアは、個人の嗜好を追求して楽しむ街と言えますよね。
カレーもそうで、それぞれ好きなカレーは違います。家庭のカレー、ナンで食べるインドカレー、スパイスの効いたカレーやボンディのような欧風カレーもある。そういった趣味嗜好にこだわりを持つ人との親和性があると思いますね。

丑田 そう聞くと、カレーっていかようにでも探究できる「偏愛のプロダクト」ですよね。
神田にはつくり手からカレーファンも集まっていて、熱烈なコミュニティがカオスに混在しているおもしろさがあります。

中俣 本好きに行きつけの本屋さんがあるように、カレーにもそれぞれの行きつけがありますもんね。

丑田 そこに対して神田カレーグランプリは、スタンプラリーのようにコミュニティをホッピングするような仕掛けもあって、それぞれの文化が溶け合うような感じもします。

中俣 新しいカレーと出会うのって楽しいですからね。スタンプラリーも120店以上ありますが、すべて制覇するマイスターも結構いるんですよ。
参加者の熱も年々高まっていて、追求しがいのある街ですね。

●余談 神田~飯田橋エリアの「カレー散歩」

神田とカレーの話を深めた後は、実際に街に繰り出すことに。
まずは、神田カレーグランプリの聖地とも呼ばれるイベントの会場、小川広場に向かいます。

道すがら見えてきたのは、『神田カレーグランプリ』初回での優勝店「ボンディ・神田小川町店」。笑顔で何かを指さす中俣さん。

よくよく見ると

第一回目の賞状が飾ってあります。
はじめたばかりの頃は参加店を集めるのに苦労したそうですが、回を重ねるごとに重みを増す賞状です。

道中も、スープカレーが美味しいバーや最近できたスパイスカレーのお店など、あちこちの情報を教えてくださいます。
普通に歩いてるだけだと気付けないお店もあり、街にカレーが潜んでいる感じが探究心をそそります。

ビルの間を進んでいくとぽっかりひらけた空間に到着。ここが神田カレーグランプリの会場、小川公園です。
「今年は3年ぶりの開催でどのくらいご来場いただけるのか不安でしたが、入場規制を行いながらも2日で3万人以上の方に集まっていただけました。小さなお子さんからご年配の方までカレーを楽しんでいるたくさんの笑顔をみると、やっぱり食のイベントっていいなってあらためて思いました」と中俣さん。
マイスターやカレー好きのボランティア、近隣の学生の方が手伝ってくれるようで、街全体でイベントをつくっている感覚だそうです。

続いて、激戦区へ。

「スパイスキッチン」「ヒナタ屋」「エチオピア」「鴻」「豚バルピッグテイル」「べっぴん舎」「キッチンカロリー」「MAJI CURRY」と、新旧織り交ぜた有名店が並びます。

「この並びはアツい。古びた店構えも美しいですね…」と、絶景を眺めるような二人。

その後もカレー店を何度も横切っていきます。

神田とカレーの話に花を咲かせながら進んでいくと、どーんと大きな看板が目印の2015年のグランプリでも話題になった「上等カレー」が見えてきます。
ここはもう飯田橋駅のすぐそば。確かに街の境界を意識することなく、たどり着けてしまう距離です。

神保町から飯田橋エリアまでのカレー店を巡る街歩きもこれにて終了です。
時間にして約30分。ほどよい運動になるのでカレーのはしごにもぴったりかもしれません。

「カレー店を見ながらあるくと、街の景色が違って見えますね」と言いながら、最後に写真をパチリ。

神田とカレー。お馴染みの関係になっている2つですが、カレーの奥深いカルチャーと街の歴史が絶妙に絡み合っていることが見えた今回のトーク。
神田が持つ自由でさまざまな文化を包みこむ魅力に惹かれ、それぞれのカレーを追求するお店が集い、街もカレーも愛するファンが通うのは自然なことかもしれません。
集まる人をまるっと受け入れて引き込んでしまう街をカレーと一緒に探究してみませんか。

Text: Satori Fujiko
Photo: Yuka IKENOYA(YUKAI)
Edit: Akane Hayashi(BAUM)

Title Design: Kosuke Sakakibara(BAUM)

オープンカンダ(以下、「当サイト」といいます。)は、本ウェブサイト上で提供するサービス(以下、「本サービス」といいます。)におけるプライバシー情報の取扱いについて、以下のとおりプライバシーポリシー(以下、「本ポリシー」といいます。)を定めます。

第1条(プライバシー情報)
プライバシー情報のうち「個人情報」とは、個人情報保護法にいう「個人情報」を指すものとし、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、住所、電話番号、連絡先その他の記述等により特定の個人を識別できる情報を指します。

第2条(プライバシー情報の収集方法)
当サイトは、お客様がご利用する際に氏名、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスなどの個人情報をお尋ねすることがあります。
当サイトは、お客様について、利用したサービス、閲覧したページ、利用日時、利用方法、利用環境(携帯端末を通じてご利用の場合の当該端末の通信状態、利用に際しての各種設定情報なども含みます)、IPアドレス、クッキー情報、位置情報、端末の個体識別情報などの履歴情報および特性情報を、お客様が当サイトのサービスを利用しまたはページを閲覧する際に収集します。

第3条(個人情報を収集・利用する目的)
当サイトが個人情報を収集・利用する目的は以下のとおりです。

お客様に、氏名、住所、連絡先などの各種情報提供
お客様にお知らせや連絡をするためにメールアドレスを利用する場合やユーザーに商品を送付したり必要に応じて連絡したりするため、氏名や住所などの連絡先情報を利用する目的
お客様に本人確認を行うために、氏名、生年月日、住所、電話番号などの情報を利用する目的
お客様に代金を請求するために、利用されたサービスの種類や回数、請求金額、氏名、住所などの支払に関する情報などを利用する目的
お客様が代金の支払を遅滞したり第三者に損害を発生させたりするなど、本サービスの利用規約に違反したお客様ーや、不正・不当な目的でサービスを利用しようとするユーザーの利用をお断りするために、利用態様、氏名や住所など個人を特定するための情報を利用する目的
お客様からのお問い合わせに対応するために、お問い合わせ内容や代金の請求に関する情報など当サイトがお客様に対してサービスを提供するにあたって必要となる情報や、お客様のサービス利用状況、連絡先情報などを利用する目的
上記の利用目的に付随する目的

第4条(個人情報の第三者提供)
当サイトは、次に掲げる場合を除いて、あらかじめお客様の同意を得ることなく、第三者に個人情報を提供することはありません。ただし、個人情報保護法その他の法令で認められる場合を除きます。

法令に基づく場合
人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
国の機関もしくは地方公共団体またはその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき
予め次の事項を告知あるいは公表をしている場合

第5条(個人情報の開示)
当サイトは、お客様ご本人から個人情報の開示を求められたときは、ご本人に対し、遅滞なくこれを開示します。ただし、対応にあたっては、不正な開示請求による情報漏洩防止のため、適切な方法にてご本人確認をさせて頂きます。
お客様からの個人情報の開示請求にあたり、お知らせの手数料として別途実費を請求させて頂くことがございます。

第6条(個人情報の訂正および削除)
お客様は、当サイトの保有する自己の個人情報が誤った情報である場合には、当サイトが定める手続きにより、当サイトに対して個人情報の訂正または削除を請求することができます。
当サイトは、ユーザーから前項の請求を受けてその請求に応じる必要があると判断した場合には、遅滞なく、当該個人情報の訂正または削除を行い、これをお客様に通知します。

第7条(個人情報の利用停止等)
当サイトは、お客様本人から、個人情報が、利用目的の範囲を超えて取り扱われているという理由、または不正の手段により取得されたものであるという理由により、その利用の停止または消去(以下、「利用停止等」といいます。)を求められた場合には、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、個人情報の利用停止等を行い、その旨本人に通知します。ただし、個人情報の利用停止等に多額の費用を有する場合その他利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するために必要なこれに代わるべき措置をとれる場合は、この代替策を講じます。

第8条(プライバシーポリシーの変更)
本プライバシーポリシーを変更する場合には告知致します。 プライバシーポリシーは定期的にご確認下さいますようお願い申し上げます。
本プライバシーポリシーの変更は告知が掲載された時点で効力を有するものとし、掲載後、本サイトをご利用頂いた場合には、変更へ同意頂いたものとさせて頂きます。

第9条(お問い合わせ窓口)
本サイトにおける個人情報に関するお問い合わせは、下記までお願い致します。
info@kandaport.jp

Open Kanda. All rights reserved.
Title logo: Daijiro Ohara